二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter05 〜キオクのウタ〜 学級裁判編 ( No.228 )
- 日時: 2014/02/12 19:33
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: gG5ipZbC)
「議論の結果が出たみたいですね。では投票ターイム!!
前回と同じようにお手元のスイッチで『犯人だと思う人物』に投票してくださいねーっ!!
あれ、これで投票タイムも見納め?あらあら、残念だなぁ…」
「…………」
……分からない。どうして彼が羽柴くんの殺害を認めたのか。今回は黒幕が殺人を用意したんでしょ?神崎くんはそれに乗っかってしまっただけ。
———彼がおしおきされる理由なんて、どこにもない。でも、聞かなくちゃ。彼が『どうして』認めたのかを。
「さてさて、投票の結果、クロとなるのはいったい誰なのでしょうか!!!
その答えは、正解か、不正解かーーーーーーーーーーー?!」
モノクマの席の真下で、カジノのスロットのようなものが回り始める。…これも、最後。最後、なのよね…。
……スロットは、神崎満月くんの顔で、全て、止まった。
それと同時に、スロットのファンファーレが鳴り響き、紙吹雪がスロットに舞う。
何故だろう。スロットに自分の顔が映っているのに、彼は表情を何一つ変えていなかった。これから、死ぬというのに。
「今回も大正解!!ボクは優秀な生徒を持って幸せだよ!!
『超高校級の科学部』羽柴陸斗クンを殺したのは、神崎満月クンなのでしたーーーーーーー!!!!!!
言っておくけど、ボクは『とどめを刺しては』ないからね?」
「やっぱり…神崎くんの推測は本当だったのね…!!」
———今回の事件に『黒幕』が関わっているという可能性。最初にそれを提示して、謎を真実へと導いていった神崎くん。モノクマが自らそれを言ったため、それはただの推測ではなく『真実』へと姿を変えた。
……でも、どうしてモノクマは羽柴くんを襲ったりなんか…。私がそう考えていると、神崎くんは軽く深呼吸をして、ゆっくり話し始めた。
「…さっき、『黒幕は俺を殺そうとしてた』って言ったよな」
「そう…だね。今モノクマが自分から告げてくれたから、それは本当なんだよな。でも…どうしてモノクマは神崎を殺そうとしたんだよ?…羽柴を、利用して」
「そんなの決まってんじゃ〜ん!!」
冥雅くんが俯きつつそう言うと、台座に座った白黒パンダのような生命体は、けらけらと笑い滑稽にこう言い放った。
「『邪魔だから』。まぁ、羽柴クンはボクのルールの『タブー』を犯してたからターゲットにしたんだけどね〜」
「邪魔って…!!」
「だってさぁ?神谷春子、冥雅雪斗、神崎満月。この3人がいるから、オマエラは恐怖に屈せずに頑張っているんだろ?不安にも『仲間がいる』なんて下らない言葉で立ち向かってるんだろ?そんなの………
恐ろしいほどに反吐が出るんだよ!!!
『希望』だの『絆』だの『友情』だの、そんな甘っちょろい言葉で繋がりやがって…。だからさ、これはボクからのささやかなプレゼントだよ。大事な『仲間』を黒幕に奪われるっていう、『絶望』なんだよ!!!」
「…そんな下らないことのために、お前さんは『ルール違反』を犯したんだ?」
「ルール、違反…?」
彼の発した『ルール』という言葉に、私は一瞬だが考える意識を取り戻した。
……神崎くんの言う『ルール』って、校則のことよね。確か、影浦くんの事件が起こる前に『1人のクロが殺せるのは2人まで』って校則が追加されたはずだけど…。
「る、ルール違反?な、何の事さ?」
「俺達の知らない間に、お前さんは新しい校則を一つ、追加していったんだ。『教師は生徒に危害は加えない』っていう校則をな。
多分追加されたのは…雨宮が処刑されてから、すぐだったと思う。だけど、みんないろいろありすぎて校則のことについてなんか見てなかった。
…だけど、モノクマは今回『それを破った』。どういうことだか、分かるか?神谷」
「…羽柴くんを黒幕が襲ったこと…!!」
「う、うぐぅ!!気付いてないと思ってたのに!!!」
「黒幕だって所詮は俺達と同じ土俵に立っている奴らなんだ。だから…校則は守らなきゃだめだよ、なぁ…?」
そう言って、自信満々にモノクマを睨み付ける神崎くん。そ、そうだ。今回の事件もモノクマもとい黒幕がでっち上げたこと。神崎くんがおしおきされる権利はないはずだ。
…そうだ、神崎くんがおしおきされる理由なんて、どこにもないんだ。
- chapter05 〜キオクのウタ〜 学級裁判編 ( No.229 )
- 日時: 2014/02/12 19:35
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: gG5ipZbC)
だけど…目の前で睨まれた『そいつ』は、怯える様子も見せずに言い放つ。「だが、羽柴陸斗を殺したのはそいつだ」と。まだ悪あがきするの…?!
「モノクマ、いい加減にしなさいよ!!大体今回あんたが用意しなかったら…」
「いや、俺が羽柴を『殺した』のは事実だよ。それが、誰に用意されてたものだって…同じさ。だから、処刑は甘んじて受けるつもりだよ」
「全く、このままじゃオマエ絶望しないよ!!いいよ、オマエにはおしおきで最高級の絶望を味わわせてやるから!!」
そう嫌味っぽくモノクマは言う。神崎くんはそれをひらりとかわすように、「そっか」とだけ呟いた。
彼の目は…『絶望に立ち向かう希望』そのものだった。何故そう感じたかは分からない。だけど…無意識に、そう思えるのだった。
……考え込んでいると、ふと神崎くんが私の目の前に『あるもの』を差し出した。
彼が握っているのは———古臭い文字のスタイルで『風紀』と書かれた、赤い腕章。確か神崎くんが、ズボンにつけていたものだ。
「これ、持ち主に返してもらえないかな」
「…え?」
「俺が『DJ』を目指すきっかけになった奴。それが…『これ』なんだよ。
今の俺があるのはそいつのおかげだから…生きているかどうかわからない。だけど…俺はもう、自分で返すことは出来ないからさ」
「…嫌よ。返すんだったら自分で返して。キミにおしおきを受ける資格はないわ」
「俺には、あいつにこれを『返す資格』なんてもうないから。……頼む」
彼の目には、先程感じたものと、少しだけの『不安』が渦巻いているような気がした。
———そうだ。彼も…普通の高校生なんだ。
彼の真剣な目に押し負け、ついに私は———彼の腕章を受け取った。分かった。これは…絶対に、持ち主に返す、わ。だから…死なないで。そう、呟きながら。
私の言葉を聞いた神崎くんは、覇気のない笑みを浮かべて……
『一緒に出られなくて…ごめんな』
そう、呟いた。
「おしゃべりの時間はもうおしまいだよ?それでは張り切っていきましょー!!!
『超高校級のDJ』である、神崎満月クンのために、スペシャルなおしおきを用意させていただきました!!!
行きますよっ!!!!早速参りましょうっ!!!おっしおっきタ〜イム!!!!」
モノクマは素早く赤いスイッチをハンマーで叩く。
すると、モニターにドット絵の神崎クンがモノクマに引きずられている映像が映った。
『カンザキくんが クロに きまりました。 おしおきを かいしします。』
「これからおしおきされるのに、不思議と怖くないんだ」
「なんで…?」
「分からない。だけど…俺、みんなのことを信じてるから。だから…なのかな」
「……私にも分からないわ」
「だけどさ…これだけは覚えておいてほしいんだ」
「…何…?まさか俺を見捨てろなんて言うんじゃないでしょうね?」
「ばっかお前…………違うよ。」
そう言うと、彼ははぁ、とため息をついて私達の方へ向き直る。
そして———
『みんなが、ついてるだろ』
最期に彼はそう、笑顔でVサインを作った。
———そして、鎖に引きずられていったのだった。
絶望など、せずに。