二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chapter05 〜キオクのウタ〜 学級裁判編 ( No.233 )
日時: 2014/02/14 19:16
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: GsLNLUDc)

「神崎……お前……」
「うぅ…うぅっ……!!」


神崎くんは、彼の命が終わるその瞬間まで…『生を諦めていなかった』。絶望など、していなかった。
裁判場にはいつもより覇気のない泣き声と、まさにイラつきが最高潮に達したモノクマの怒声が響いていた。
———でも、今までのおしおきを見た時とは何かが違った。『この街を、出ていく』———。今は、その思いが私の胸を満たしていた。


「あ〜あ、興醒めだよまったく…。あいつ、かつての仲間が撃たれても表情一つ変えないなんて。せっかく『絶望』させてあげようと思ったのにぃ〜。しょぼ〜ん………」
「神崎くんが、絶望するはずないのよ。残念だったわねモノクマ」
「いいも〜ん。オマエラを絶望させる糧には出来たんだから」
「どういうこと?」
「うぷぷ…。いずれ、分かるさ」


そう言ってモノクマはいつもの調子に戻り、滑稽に笑い始める。まるで、命を賭してモノクマを追い詰めた神崎くんを嘲笑うかのように。
「あいつの死を無駄にしてやるよ、ぷひゃひゃ」と繰り返しながら。
そしてしばらくあいつの御託を聞いた後、私達にこういう提案を持ちかけてきた。

「決着つけようよ。『最後の』学級裁判でさ」
「待って。学級裁判は今回が最後じゃなかったの?」
「そ、そうだよ!アナウンスでもそう言ってたんだし!」
「なに寝ぼけたこと言ってんのさ〜。それは、『犯人を外してオマエラが処刑された』時のことを想定して言ってんだよ〜?ま、今回のクロだった神崎クンについても、どっちにしても『最後』って意味だったから違いはないか!!ぷひゃひゃひゃひゃ」
「でも、今回僕達が生き残って、神崎くんがおしおきされたから…決着を着けるためにもう一回裁判を起こそうってこと?…まさか、また僕達の中の誰かを殺すの?」


恐る恐る、星野くんがそう問う。すると、モノクマははにゃ?と変な声を出し、私達を見つめこう答えた。


「もうボクが殺すことなんてしないよ〜。これ以上ルールを破っちゃったら『外のみんな』にも失望されちゃうしねー!!
 だから、次回の学級裁判のテーマはコロシアイじゃなくて………




 『ボクの正体とこの街の謎』についてです!!!




 数日間オマエラに情報収集の時間をやるから、その謎を完璧に明かすこと。それがオマエラの勝利条件だよ〜?」
「……つまり……この街の謎を解いて……お前の正体を見破れば……このコロシアイ職業体験は……」
「終わる、ってことだよね…?」
「うん。そういうこと。ちゃんと解析してボクに勝てたらね。公平を期すために全部の部屋のカギは解除してあるから、自由に調べるといいよ。
 ……うぷぷぷ、ちゃんと『真実を見つけられたら』だけどね……」


最後に意味深な言葉を発し、モノクマはいつものように一瞬で椅子から消えた。
『この街の全ての謎を解き、モノクマを操っている黒幕を暴き、そいつに勝てば』、この街から出ることができる…。モノクマのいうことだから信用はできないけど…今は、この街から脱出できるかもしれない唯一の情報。
だったら———その勝負、受けてやろうじゃないの。絶対にみんなで勝って———それで、こんな街出て行ってやるわ。
そう思いみんなの方を向くと、みんなも私と同じ目つきだった。……気持ちは、すでに一つにまとまっていた。


「絶対に…謎を解こうよ。それが…死んでいった、みんなに出来る最後の報いだと思うから」
「うん。わたし…もう逃げないよ。長月ちゃんや花岸ちゃんの分まで頑張って、この街出ていく!」
「私も…ここまで生きてこれたのはみんなのおかげだと思ってる…。だから、力不足だと思うけど…一緒に頑張ろうよ」
「……俺も……自分にできることを……やるだけだ……」
「神谷。このコロシアイ修学旅行は———村上が殺されちゃったことから始まったよね」
「えぇ。そうね」
「それで、東条が殺されて立花が処刑されて、
 影浦が殺されて雨宮が処刑されて、
 花岸と長月が殺されて豊島が処刑されて、
 佐藤が殺されてシオンが処刑されて、
 羽柴が殺されて……神崎が処刑された。
 ———本当は、みんなで出たかった。だけど…それももう叶わないんだよね」
「えぇ」
「オレ…死んでいった神崎の、みんなの分まで頑張りたい。オレはクラスメイトじゃなかったけど、ここに閉じ込められてから過ごしたみんなとの記憶は『本物』だからさ。だから……一緒にここから出ような、神谷」
「…大丈夫よ。私も同じ気持ちだから。……みんな、まずはホテルに戻りましょう。そして……明日から、謎を解くために協力し合って頑張りましょう」


みんなの決意を一通り聞いた後、私はそう叱咤激励する。すると、みんなは希望を持った目で頷いた。
———ねぇ、神崎くん。もしかして、これがキミの思っていた『希望』なのかな。ここにいるみんな、それから殺されてしまったみんなが胸に抱いている…『希望』なのかな。
いないから確かめようがないけれど……。絶対に、ここから出てみせる。だから。最後だけ力を貸して。
——————私とみんなの戦い、見守っててね。
そう、もう暗くなって映らないモニターを見つめながら、そう思った。




入手アイテム
『十字架マークの帽子』
神崎満月の遺品。
『超高校級の風紀委員』にプレゼントされた帽子。
彼の誕生日プレゼントに用意したものだったらしい。

chapter05 〜キオクのウタ〜 学級裁判編 ( No.234 )
日時: 2014/02/15 14:09
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: /v7BfUQP)

ホテルに戻って体調を整えていたところ、秦野くんが部屋に入ってきた。何やら、アルターエゴのメールに誰かからメッセージが残っていたらしい。


「……誰かは分からないけど……俺が寝てる間に……入れたみたい……」
「誰なのかしらね?」


不思議に思いながら秦野くんと共に更衣室に向かうと、既に他のみんなも集まっていた。
どうやら全員秦野くんの話を聞き、ここまでやってきたらしい。


「メッセージが残ってるって聞いたんだけど…」
「何だろうね?一体誰が……。まさか、黒幕?」
「開いてみないと分からないよ。秦野、開いてみてくれる?」
「……分かった……」


冥雅くんに頼まれ、秦野くんはアルターエゴを起動する。
すると、みんなの顔を認識した彼女は笑顔で挨拶をするのだった。そして…彼が要件を喋ると、真面目な顔になってメッセージについて話し始めた。


『うん。これは書いた本人…神崎君から頼まれたことなんだけどね?みんなが集まるまでは、メッセージがあること以外は話さないでくれって言われてたんだぁ』
「メッセージを書いたのは神崎くんだったのね…」
「……出せる……?」
『うん。大丈夫だよぉ。それじゃ出すからちょっと待っててねぇ』


そう言って、彼女はメールフォルダを開く。すると、確かに1通のメッセージの履歴が残っていた。
秦野くんがそれをクリックすると、ずらずらと文字が並び始めた。
…アルターエゴに音読を頼み、とりあえず中身を確認することにした。





『神谷へ。そして一緒に目の前の絶望と戦っているみんなへ。


 神谷達がこのメッセージを読んでいるってことは、きっと俺はモノクマに殺されたかなんかしてここにいないと思う。
 だから、アルターエゴを通じてメッセージを書かせてもらった。

 まず、黒幕の目的について。黒幕は神谷達生き残りを『真の絶望』に叩き落とすために行動しているって言っていた。…俺達に殺し合いをさせていたのも、それが理由だと思う。
 そこで俺は、モノクマの隙を利用して『あるもの』を手に入れた。シオンの裁判が終わった次の日、『全部のカギを開いた』って言っていたけど、あれは嘘だ。一つだけ、開いていない扉があるんだ。
 …それで、『あるもの』を俺の部屋に隠したんだ。部屋の鍵はこのメッセージを書き終わった後に細工して壊しに行く予定。だから、モノクマの邪魔は心配しなくていいと思う。まぁ…その前にモノクマに見つかってたら、このメッセージのことは忘れてくれ。

 俺の部屋で『あるもの』を手に入れたら、ホテルにあるモノクマの部屋の隠し扉に向かってほしい。その奥に、何か『学園と通じる部屋』があることを見つけたんだ。その鍵だけロックがかかっていたから…。きっと、とんでもなく重要なものが眠っているんだ。…多分だから、見当違いだったらごめん。

 モノクマが何を仕掛けてくるかは分からない。だけど…絶対に諦めちゃだめだ。突破口は必ずどこかにある。俺は…そう信じてる。
 絶対にこれ以上誰も欠けることなく…街を脱出出来ることを祈っている。———そして、出来ればモニャンも助け出してほしい。


 大丈夫。みんなには、みんながいるだろ。俺は、みんなのこと信じてるから。俺がいなくたって、もう、大丈夫。


 神崎満月』




———メッセージの内容は、神崎くんが命を賭して繋ぎ止めた『希望への小さな一歩』であった。
彼も、彼なりに頑張っていたのだ。モノクマに立ち向かうために。『絶望』へと、立ち向かうために。いつモノクマに襲われるかわからない状況で、きっと彼でも不安だったんだろう。
———それでも、諦めることを許さない彼は、ずっと頑張っていたのだ。一人で。誰の犠牲も出さないことを祈り。


『このメッセージを打っているとき、神崎君凄く覚悟を決めた表情だったんだぁ。だから…きっと、自分が死ぬのも怖くなかったんじゃないかなぁ』
「そんなわけないよ。みんな…死ぬのは怖いよ」
『……うん。でもねぇ?昨日、神崎君と少しだけお話ししたんだぁ。その時に…神崎君、言ってたんだ。


 『生きることを諦めちゃいけない』って。『死ぬことを恐れちゃいけない』って。


 どこから湧いて出た言葉なのかは知らないけれど…。これも、神崎君が『お兄さん』として慕ってた人から教えてもらった言葉、らしいんだぁ。
 神崎君…本当に強い人なんだよねぇ』
「……神崎くん……」


アルターエゴと神崎くんとの会話の内容を聞きながら、私は彼の思いについて模索していた。
———生きることを諦めてはいけない。私も……どこかで聞いたことがある。どこで?いつ?
そこまでは思い出せないけど……。きっと、そこにもモノクマの悪意が隠れている。そして……忘れてしまっている『1年間の思い出』を紐解くヒントも絶対にある。





———みんなのためにも———頑張らなきゃ。




改めて、そう思った。もう、絶対に犠牲者は出さない。絶対に———全員で外に出るんだから。









<死亡者>
「超高校級の科学部」羽柴陸斗
神崎満月によって殺害される。
モノクマの罠に彼が引っかかってしまい、殺されてしまった。






「超高校級のDJ」神崎満月
5回目の学級裁判のおしおきによる処刑。
ライブハウスが崩れた塊に押し潰され、死亡。







<生き残りメンバー> 残り:6人
「超高校級の知識」神谷春子
「超高校級の幸運」冥雅雪斗
「超高校級のパティシエール」安西桃花
「超高校級の映画監督」白戸佳織
「超高校級のハッカー」秦野吟也
「超高校級の美化委員」星野梓沙







chapter05 〜キオクのウタ〜 非日常編/学級裁判編 END