二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 非日常編 ( No.239 )
- 日時: 2014/02/17 21:51
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 7.F5HCJo)
隠し部屋の扉を確認し、私は懐からマスターキーを取り出す。仲間が繋いでくれた、小さな希望の光。絶対に……繋いでみせる。
そう思いながら、私はゆっくりと、鍵を穴に入れて回す。そして———その向こうの世界へと、確実に、歩いて行ったのだった。
……目の前に広がっているのは、しばらく続く暗闇。完全に暗くはないが、明かりもない。壁にぶつからないように慎重に進まないと。
「薄暗いよね…まぁ真っ暗じゃないだけいいんだけど」
「いかにも、ラスボスに挑む勇者たちって感じだよね…!」
「白戸さん、まだ興奮してるの?」
「だって…凄く綺麗な写真が撮れたんだよ…?この先何があってもこれがあれば生きていけるよ…!!」
「白戸ちゃんの変な趣味が出来たー?!」
「…ううん。違うよ。私、もともと男性に女装させるの、好きなんだよね…」
「そろそろやめてあげて…。秦野くん怯えてるから」
「……白戸怖い……」
しばらく歩いていると、視界の先に一筋の光が見えた。……あの光の向こうに、私達の求めるものが……?!
私は思わず歩みを早める。この先に何があるのかしら。私達を絶望させる何かかしら。過去に関する何かかしら。
……一刻も早く知りたかった。だから———ついつい足を速めてしまったのだった。
そして、光の先に広がっていたのは——————
「書庫……?」
辿り着いた先に広がっていたのは、埃を被った本が所狭しと並ぶ小さな部屋。『書庫』といっていい広さだろう。
……でも、ホテル内にこんな古い書庫があったなんてね…驚きだわ。
「ここ、ホテルの雰囲気とは全然違うよね…。どこなんだろう?」
「でもホテルから繋がってるんだから、ホテルの中の部屋だよねぇ?」
「……これ……『希望ヶ峰学園』って書いてる……」
秦野くんが近くにあった黒いファイルを拾い、私達に差し出してくる。確かに、表紙には『希望ヶ峰学園』との文字が書いてあった。
それじゃあ…ここは…希望ヶ峰学園に関係する場所…なのかしら…。例えば……『図書室』の一部屋とか。
「確か、神崎くんのメッセージではここが『学園と通じる部屋』だったはずだよね?」
「じゃあ重要な情報があるかも!!」
「調べてみましょう」
私の言葉を皮切りに、みんなは書庫の捜索にあたる。…確かに、こんなに埃をかぶっているのなら、かなりの年月が経っていると考えておかしくないわ。……重要な文献も、残っているはず。
そう思って私は一つのファイルを取り出してみる。そこには、『ジェノサイダー翔』についての特記が書かれてあった。
えっと……ジェノサイダー翔は、『自分が惚れた男性』のみをターゲットとして付け狙う『超高校級の殺人鬼』なんだっけ。……ってことは、もしかしたら『あいつ』の情報もあるのかも。私は黙ってページをぱらぱらと開いてみる。……あった。『超高校級の殺人鬼殺し』イズモについての特記。
彼についてはあまり書かれていなかったけど、殺人鬼の情報と合わせてどうしても抑えておきたかった。だって、彼のことについてはどこを調べつくしても知ることが出来なかったんだもの。……って何を語ってるのかしら、私。
確かにジェノサイダーのことも情報にはなるとおもうけど、今はそれどころの話ではない。もっと違う情報を集めなければ。
そう思って、他の本に手を伸ばしたその瞬間だった。
誰かと、手がぶつかった。
「あっ、ごめん!もしかして読もうとしてた?……神谷、ぼーっとしてるけど大丈夫?」
「…なんでもないわよ…」
案の定冥雅くんだった。世間知らずのことだからわざとではないのだけれど…幸運というかラッキースケベというかなんか変なところで幸運を発揮しすぎだと思う。
———今思うことじゃないと思うんだけどね。
- chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 非日常編 ( No.240 )
- 日時: 2014/02/17 21:53
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 7.F5HCJo)
今はそんなことを思っている場合ではない。私は一瞬揺らいだ甘い誘惑を振り切り、目の前の本を素早く取った。
「冥雅くんもこの本を読もうとしていたのよね。一緒に見ましょう」
「いいの?神谷が読みたかったんでしょ?」
「情報の共有は大切なことよ。えーと…これは、『絶望感染者』について書かれてある本みたいね」
本の表紙には『絶望感染者ファイル』と書かれてある。
……恐らく、モニャンが言っていたあの『絶望的な2つの事件』にかかわった人物なのであろう。もしかして、冥雅くんを今の姿にした人達も書かれているのかしら…。
恐る恐る、ページをめくってみる。すると、そこには絶望の感染者と思われる名前がびっしり載っていた。
どうやら、絶望の感染者のことが書かれた書類のようだ。最初のページに一覧が載ってあり、それ以降のページには絶望感染者のプロフィールが簡潔にまとめられてある。
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これより記す人物を捕まえ、抹殺すること。
<1ページ目>
・カムクライズル
・狛枝凪斗
・超高校級の詐欺師
・終里赤音
・ソニア・ネヴァーマインド
・左右田和一
・田中眼蛇夢
・澪田唯吹
・西園寺日寄子
・罪木蜜柑
・小泉真昼
・九頭龍冬彦
・辺古山ペコ
・花村輝々
・弐大猫丸
<2ページ目>
・一ノ瀬悠魔
・須賀井良彦
・シャルン・ルミエール
・赤平町華
・斬先信吾
・黒沢凛
・暗井リュウ
・水無月愛美
・渋谷零
<3ページ目>
以下に記す者は『カムクライズル』として覚醒した者である。捕獲には十分注意せよ。
・八幡飛鳥
・瀬川勇樹
・◆●■▲
・日向創
<4ページ目>
首謀者である絶望シスターズは既に死亡しているが、念の為に警戒を怠るなかれ。
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「絶望って…こんなにいたんだ…。そして、その中の誰かが、俺を…」
「……そうね」
「…でも、そいつには感謝しなきゃね。狛枝に殺されて、そいつに絶望を埋め込まれてなかったら、今の俺はいないんだもん。……いるかどうかは分からないけど」
「冥雅くん…」
「余興に浸るのは後でもいいや。ねぇ神谷、ちょっと気になったことがあるんだけど…」
「…もしかして、3ページ目のかすれた文字のこと?」
3ページの、ある一つの名前だけにつけられたわざとらしいかすれ文字。いくら私でも読むことは出来なかった。……こんな時に長月さんが生きていれば、読むことが出来たのかしら…。
いや、それは問題ではない。読めないものを不自然に出す、ということは……これも『黒幕』の仕業なのかな…。
「黒幕がやったのかしら…」
「分からない。けど…その可能性は高そうだね」
「とにかく、後でまとめることにしましょう」
ここで考えることではないと気持ちを切り替えて、本を棚に戻す。
それと同時に、今度は秦野くんが珍しく大きな声をあげた。
「……これ……もしかして……」
彼の持っている本には———『希望再生プログラム』と、確かに書かれてあった。
- chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 非日常編 ( No.241 )
- 日時: 2014/02/18 18:32
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: g7gck1Ss)
「何の本なの?」
「……まだ見てない……だけど……、生徒達に関係しているものなのかも……」
秦野くんはどうやらまだこの本を読んでいないらしい。みんなで読もうと、声をあげたようなのだ。
『希望再生プログラム』か…。一体何が書かれてあるのかしら。秦野くんから本を受け取り、私はゆっくりとページを開き始めた。
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『希望再生プログラム』とは
不二咲千尋の作り上げたアルターエゴの技術を応用し、電脳世界の中でアバターの再構築をする。そして、生前と全く同じ年月を過ごさせた後、心臓の壊死した死体に再び戻す、というプログラムである。
この技術を使えば人間の蘇生はもちろんのこと、人格変更や別人にすることだってできる。
しかし、このプログラムには大きな『欠如』がある。『プログラム内でのバグを発見するため、現実世界からアバター世界へと向かう被験者は複数人必要』というものだ。
被験者がバグを見つけ次第専用の道具を使って直す。それを繰り返していき、完璧なプログラムへと構築していくことを目的としている。
なお、重大なウイルスやバグが発生し被験者にまで危険が及ぶような場合、被験者以外のアバターの『記憶』をすべて抹消しサンプル世界をぐるぐると回ることになる。
<被験者リスト>
・苗木誠
・霧切響子
・十神白夜
・朝日奈葵
・腐川冬子
・葉隠康比呂
・舞園さやか
・戦刃むくろ
・桑田怜恩
・不二咲千尋
・大和田紋土
・石丸清多夏
・山田一二三
・セレスティア・ルーデンベルク
・大神さくら
・日向創
・終里赤音
・左右田和一
・ソニア・ネヴァーマインド
・九頭龍冬彦
・狛枝凪斗
・超高校級の詐欺師
・花村輝々
・小泉真昼
・辺古山ペコ
・西園寺日寄子
・澪田唯吹
・罪木蜜柑
・弐大猫丸
・田中眼蛇夢
計 31名。
なお、被験者をサポートするNPCとして、以下の3名を監視者として置くことにする。
・七海千秋
・アルターエゴ
・ウサミ
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……『死人を甦らせる』……。簡単に言えば、そういう内容だった。
なんだか絶望側が冥雅くんを蘇らせた『あの実験』と似ているような内容だけれど…。
もしかして、絶望側は不二咲千尋という人のアルターエゴのプログラムを盗んで、先に似たようなことをやっていたのかしら…。
日付を見る限り、これは明らかにあのノートの実験の期日よりも後に書かれているものだ。
どうやらみんなも私と同じことを思っていたようだった。
「冥雅くんのあのノートの記述と似てるよね…」
「……絶望側がこの実験のプログラムを……盗んだとか……」
「逆、ってことも考えられるよね。絶望側がアルターエゴのプログラムを応用して冥雅くんを甦らせて、その後にこの本の所属している人達がプログラムを奪い返したとか…」
「考えれば考えるほど分からなくなってくるよー!!でも…結局は希望も絶望も、同じことをやろうとしていたことには変わりないよね。『死人を甦らせる』ってことをさ…」
「…ねぇ、でも…この本、あまり埃を被ってるようには思えないよ?」
ふと、白戸さんがそう呟く。よく見てみれば、確かに他の本とは違い埃の付き方が違うような気がした。まるで、最近書庫に入れられたような…。
もしかして、この実験は『現在進行形』で行われているとか…?いやいや、ないない。そんなことがあったらあの写真やデータベースはどう説明を付けるのよ…。
「もしこの本の内容が今行われてるんだったら、もしかしたら…ここにいる31人が生き返ってるって可能性も考えていいんだよね?」
「……だけど……可能性は低いかも……。……埃が少ないからといって……新しいものとは限らないし……」
「他の情報と、照らし合わせてみる必要がありそうね」
そうだ。まだ確信を持ってはだめだ。もっと、過去の学園の情報を調べなきゃ。そうすれば…見えてくるはず。あの街の『謎』。そして———私達が失った『過去』について———。
- chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 非日常編 ( No.242 )
- 日時: 2014/02/18 19:08
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: g7gck1Ss)
「ねぇ!これ見て!!コロシアイのこと書かれてる!」
「え?79期生のもの…?」
「違うよ!名前とか見てみたんだけど、どうやらあの31人が関わっているコロシアイみたいなんだ」
そう言って星野くんはファイルをこちらに見せてきた。彼が開いて見せてくれたページには、以前写真館で見た『血まみれの少年少女』が文章と共に載っていた。
———ええっと、確かに文章をざっと読んでみると、『コロシアイ』について簡潔にまとめられてあった。
『江ノ島盾子によって学園の中に閉じ込められた15人の高校生は、『ここから出ること』の条件に『学園内の生徒を殺すこと』を強要され共同生活を送ることになった。
生徒間のコロシアイを得て、生き残ったのは苗木誠、霧切響子、十神白夜、朝日奈葵、腐川冬子、葉隠康比呂の6名。彼らは学園脱出後未来機関に保護され、機関の一員として絶望を消滅させるために動いている。』
———この腕章の持ち主は、殺されてしまったようね…。でも、さっきの『希望再生プログラム』との関係性もある。もう少し読み進めてみよう。
『未来機関として動き始めた苗木ら6人は、江ノ島盾子が死んだことにより暴走を続ける15人の高校生の捕獲に成功した。そして、彼らは15人の高校生を『希望更生プログラム』にかけ、絶望時代の記憶をまっさらなものにすることを決定させた。
しかし、そこで問題が起きた。かつて『カムクライズル』であった日向創が『江ノ島アルターエゴ』をウイルスとしてプログラムに持ち込んだのだ。そこでプログラムはめちゃくちゃにされ、当初の予定から大幅にずれ込み、ここでも『コロシアイ』が起こる結果となってしまった。
南の島の生活を賭して、生き残ったのは日向創、ソニア・ネヴァーマインド、左右田和一、終里赤音、九頭龍冬彦の5名。彼らは電脳世界から復活し、死んでしまった仲間の目覚めを信じつつ苗木達と共に動いていくこととなった。』
「写真館の写真や、アルターエゴの画像は全部本物だったんだね…」
「うん。写真は『被害者』の、画像は『クロ』のもの。間違いないよ。でも…なんでこんなにコロシアイが起こるんだろう…」
「……これで2回……図書室のノートの記述で1回……そして俺達のやつで1回……。……もしかしたらもっとあるのかも……」
「『絶望』って、そんなに大きな組織だったの?!」
「組織、というより…『概念』のようなものなのかもしれない。南の島で殺し合いをさせられた15人も、元々は普通の学園生活を送っていたみたいだから」
「みんな…同じだったんだね…」
私は静かにファイルを閉じ、星野くんにそれを返した。
———この『2つの殺し合い』と『希望再生プログラム』にかけられている31人。恐らく、プログラムにかけられているのは本当なのだろう。
しかし、問題はそこではない。その殺し合いが、プログラムが、『いつ』起こったものであるのか。それを確かめなければならない。
「このファイルには期日は書いていなかった。だから…この殺し合いがいつ起こったのかは分からないわ。もしかしたら…私達が思っているものよりもっと過去に起こったものなのかもしれないし…」
「だったら、あのDVDはどう説明すればいいんだろう。みんなこの殺し合いに関わっている人に襲われたり、交流していたりしていたんでしょ?」
「……近いうちに起こったって考えのほうが……いいかも……」
「あーーー考えれば考えるほどわけがわからなくなっていくよーーー!!」
「キュ○べえみたいなこと言わないでちょうだい…」
想像の斜めを過ぎ去っていく事実の数々に、私はただ考えをまとめられずに混乱していた。
そりゃそうよ。だって……一気に、急に、こんなに頭に情報が入ってきても…まとめて納得のいく答えが出てくるわけがない。
———でも、頭の奥底で、どこか希望は持つことができたような気がする。幾度も夢に出てきた『田中眼蛇夢』という人物。そして、この殺し合いと希望再生プログラム。
私の記憶の奥底に眠る『彼』が、『生きているのではないか』という微かな希望を。
確かに頭に残ったそれを支えとしながら、私は進んでいくことしか出来なかった。
「もう他に情報になりそうなものはなさそうだね」
「いったん戻ってみる?」
「あのドレス…秦野くんの部屋に置いちゃダメ…?」
「……やめて……」
「やめてあげてちょうだい…」
とりあえず、ホテルに戻って情報をまとめることにした。
———少しずつ。少しずつだけど。真実が…眠っている『過去』が…。呼び起されているような気がした。