二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 非日常編 ( No.246 )
- 日時: 2014/02/20 18:03
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 9BxfvGUD)
〜ホテル内 4F 死体安置所〜
「…かかかか神谷ここここここに何かようでもあるのののの」
「あからさまに寒がるともっと寒気がするわよ…?」
死体安置所にやってきた冥雅くんは早速身体をブルブル震え上がらせていた。……連れてくるべきじゃなかったのかしら。いや、彼がいなければ状況の整理ができない。
冥雅くんには悪いけど、しばらく安置所に付き合ってもらおう。
「村上さんの死体をもう一度見てみるのよ」
「どうして?あれは村上だろ?」
……違う。彼女は『村上一夜』さんではない可能性がある。
とにかく、開けて確かめなければ。そう思い、私は素早く彼女の遺体が入っている扉を開く。
扉の向こうには、水色のサスペンダースカートを履いている少女が眠っている。
「村上だろ…?」
「やっぱり…。東雲さんでなければないはずのものが…彼女にあるわ」
「どういうこと?」
「冥雅くん。東雲さんのプロフィールと、生徒手帳に記述してある村上さんのプロフィールを調べてもらえないかしら?」
「いいけど…ここでやったらオレ死んじゃうよ…」
「…科学室で確認してらっしゃい」
顔を青ざめブルブル震える彼を安置所から出し、生徒手帳の確認に向かわせる。
———彼女が村上さんでないのなら、この髪も…。
私は、彼女の髪を思いっきり引っ張ってみた。
カポッ
あっさりとした軽い音がして、彼女から『あるもの』が抜けた。その下から現れたのは…目が覚めるようなピンク色の髪の毛。つまり、これはウィッグだったということになる。
やっぱり…彼女は…。
「『東雲スミレ』さん、だったのね…。だったら、村上一夜さんはどこに…?」
不思議に思い、他の扉も開いてみる。しかし…入っていたのは東条くんから神崎くんまでの、今まで犠牲になった生徒だけであった。
「彼女の容姿がわからないから確定は出来ないけど…。彼女は『東雲スミレ』さん。彼女は黒幕ではないのね」
「神谷ー、そろそろ戻ろうよー!!」
「わかったわ」
私はウィッグを彼女の頭に再び被せ、安置所を後にする。
「冥雅くん、どうだった?」
「…一致したんだよ。東雲のプロフィールと、村上のプロフィール…」
そう言いつつ彼は二つの写真ファイルを並べて見せてくれた。一つはデータベースでいつの間にやら撮っていた東雲スミレさんのプロフィール。
もう一つは、この電子生徒手帳の通信簿に書いてある村上一夜さんのプロフィールだ。
———確かに、一致していた。
「おかしいよね、一卵性双生児でもない限り身長や体重まで同じになることはないのに」
「一卵性双生児でも一致することはないと思うわよ…」
「神谷の言ってること…本当なのかもしれないね」
「えぇ」
そんな会話を繰り広げながら、私達は更衣室へと戻って行った。
〜ホテル内 1F 更衣室〜
———更衣室に戻ってみると、秦野くんが自信満々気に私達を見ていた。どうやら、解析していたデータベースの中に、見たことのない写真が入っていたという。
「……これ……なんだけど……」
「…これは…!!」
秦野くんが見せてくれた写真には…『ピンクの髪の毛の少女』が写っていた。どうやら何者かのデータベースにあったものを剥がされてしまったようなのだ。
———これで、繋がった。最初に殺された村上一夜さんは———!!
「……東雲スミレさんは黒幕じゃない…!!」
「え?!ちょっと神谷ちゃん…?!」
「私の考えが合っていれば…あの村上一夜さんは…東雲スミレさんだわ」
「どうしてそう言い切れるの?」
「死体安置所に行って良かったわ。彼女はウィッグを被っていて、その下の髪の毛の色が…写真の彼女と同じだったの。今思うと写真と顔も一緒かもしれない…」
調べて分かったことをみんなに話す。みんなは、驚きの表情を隠せずにいた。
そりゃそうだ。今まで『村上一夜』だと思っていた人物が他の人、しかも『黒幕』だと思っていた人物だったんだもの。
事実が分かって話が一区切り着いたところで、秦野くんがこう切り出してくる。
「……神谷と二人きりにしてほしい……」
「どうして?」
「……出来た……ネットワークにつなぐ準備……」
「ほ、本当?!でもどうして神谷ちゃんと秦野くんだけなの…?全員で行ったらいいじゃん!」
「……全員で行ったら怪しまれるよ……。……だから……、俺と神谷でネットワークに繋げる場所まで……行く……」
「目星はついてるの?」
「……あの書庫……あそこならつなげられる……!!」
彼の髪の奥の青い瞳が、やけに鋭いように見えた。秦野くんも本気なんだ。
それなら…彼の条件を呑んで行動するしかないわね。
「分かった。書庫へは、二人で行きましょう」
「神谷とじゃなくてオレとじゃ駄目なの…?」
「……パソコンに詳しそうなの……神谷しかいないから……ごめん……」
「………ぶー。」
———冥雅くん、それは嫉妬なのかしら?
まぁ、いいだろう。行動は早く起こさないといけない。いつモノクマがタイムアップを仕掛けてくるか分からないから…急がなくちゃ。
「……みんなは……自由行動でいいから……」
「分かった。二人とも気を付けてね!」
「行ってくるわ」
秦野くんがパーカーの中にアルターエゴを隠した。彼女は『くすぐったいよぉ』と声を出していたが、彼が「しー」というしぐさをするとしばらくの機械音の後、音がしなくなった。…秦野くんはすごい。
最後にみんなの顔を見回して、再度更衣室を後にした。
ネットワークに繋げられれば…何か、外の情報がわかる…はずよね?私は胸に小さな希望を抱きながら、あの書庫まで向かったのだった。
- chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 非日常編 ( No.247 )
- 日時: 2014/02/21 18:09
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: LTX6Bi5r)
〜書庫〜
書庫へとやってきた私達は、早速アルターエゴをネットワークに繋ぐための準備に入った。コンピューターのエキスパートである秦野くんが中心に動いているためか、時間がかかると思われていた準備もあっさり終わった。
後は、彼が持っているプラグをアルターエゴに差し込めば、アルターエゴが自動的にネットワークに繋げてくれるのだという。
「これで、外の情報が少しでも分かればいいんだけど…」
「……危険な賭けだと思う……。……だけど……ここまでやってきたならやらなきゃだめだ……」
『僕のことなら心配いらないよぉ!みんなと繋いできた希望だってあるし、なにより…みんなの役に立てることが、僕嬉しいんだぁ!』
そう言ってアルターエゴは満面の笑みを浮かべる。…今は、彼女のその笑顔が支えになっているような気がした。
そして、しばらく彼女と会話を交わした後、『プラグを繋いでくれるかなぁ?』と彼女が頼んできた。
秦野くんは黙って頷き、プラグを静かにアルターエゴに差し込む。
———すると、彼女は目を閉じて何かを瞑想し始めた。…ネットワークに繋がろうとしているのね。後は、うまくいくことを祈るだけ……。
そう……なる、はずだった。
「……アルターエゴ……どうした……?!」
『痛い…痛いよぉ…!!』
「……嘘だろ……セキュリティも万全にしておいたのに……!!」
ふいに、アルターエゴが苦痛を訴え始めた。何か…あるのだろうか。秦野くんがセッティングしてくれたはずだから、ウイルスなどの心配もないとは思ったんだけど…まさか、そんなはずないわよね…?
秦野くんは慌ててプラグを抜き彼女のプログラムソースを開いた…の、だったのだが。
その瞬間、彼は絶望した。
「……ウイルス……やられた……!!」
『ごめんねぇ…僕が弱いからっ…!!』
「……違う……死なせない……不二咲先輩のアルターエゴは……死なせない……!!」
秦野くんは必死にプログラムをいじる。しかし、それと比例するようにエラーの数も増えていく。……ウイルスの脅威が、秦野くんの処理を上回ったのだ。
彼の滅多に出さない大きな声。今にも泣きそうなほどにぐぐもったその声は、髪で見えない表情を表しているかのようだった。
アルターエゴがやられた———。機械と共に人生を歩んできた彼にとっては、これ以上の絶望があるだろうか。今まで一緒に戦ってきた仲間が……。こんなにもあっさり、やられてしまうなんて。
『もう…駄目だよぉ…このままじゃ…秦野くんが…おかしくなっちゃうよぉ…!!』
「……死なせない死なせない死なせない死なせない……死なせてたまるものか!!!」
「秦野くん…」
『やめて…やめてよぉ!!こんな秦野君、ご主人タマも見たくないはずよぉ…!!』
アルターエゴから発せられた『ご主人タマ』という一言で、彼はキーボードを打っていた手を止めた。もう、無理だと自分の中で納得してしまったのだろうか。それとも、『ご主人タマ』に———。
アルターエゴはノイズが入った音を響かせながらも、私達に話しかけてくる。
『●はね、みん▲と一緒にい&$てとっ★も嬉し%ったよぉ。パ?コ!の中にず▼■一人ぼっ#で…でも、☆野●が僕を起こ★▽くれて…凄く嬉しかった。またみんなとお話しできるんだなぁ…って、凄く満足感でいっぱいだったんだよぉ』
「…………」
『つ■さっきね、ご主人▲#…不二▲千●のことを思い出したんだぁ。僕にいつも話しかけてくれて、それで79期生の人達が入学してきた時には…『後輩ができたんだ』ってすごく嬉しそうにしてて。僕はね……僕はね……ぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくは』
「ウイルスが…アルターエゴを侵食してる…」
『みんなのことしんしんしんしんじてじてるからねぇねぇねぇ。僕がしんしんしんしんでもでも、、、、、、絶望しないでほしいんだぁ…。
お空から、みんなの事見てるからねぇ。神崎君や、みんなのところに行くだけだから。だから…絶望しないで。』
『泣かないでよ。秦野君。泣き顔は男の恥だって、大和田君言ってたんだぁ。だから…一緒に頑張ろう?』
——————ぷつん。
電力が、落ちた。恐らくウイルスの大量侵入によるオーバーフローを引き起こしたのだろうが…。もう、彼女が蘇ることはないだろう。彼女は……『死んだ』のだ。
- chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 非日常編 ( No.248 )
- 日時: 2014/02/21 18:34
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: LTX6Bi5r)
一緒に頑張ってきた仲間の死を、目の前で見つめる。彼女の最期の言葉を傍で聞いていた『彼』は……ただ黙ってパソコンの目の前に座っていた。
「……殺しちゃった……俺がアルターエゴを……」
「ち、違うわ!!秦野くんはアルターエゴと一緒に頑張って来てくれたじゃない!!単独行動っていう、殺されるかもしれないっていう大変な状況で頑張って…それで…これは仕方ないことだったのよ…」
「……みんなと久しぶりに話せて……みんなのために何かしたくて……ゲームセンターでパソコンを見つけて……『俺にもできることがあったんだ』って思って……頑張ってきた……だけど……」
「秦野くん!!」
「……結局……何も変わらなかった……。……みんなの大切のしていた『仲間』を殺しちゃった……」
「そうだよ。秦野クンはアルターエゴを殺したんだよ」
「…………!!」
響くはずのない、能天気だがトーンの低い声。振り向いてみると、そこには白と黒のぬいぐるみが立っていた。ど、どうしてここに…?!
「オマエラの姿だけ見えないから探し回ってたら…まさか神崎クンがボクから盗んだあれでここに来てるとはねぇ。でもー、ネットワークに繋ぐなんて不公平なことはボクが許しません!!だから…強力なネットワークウイルスを仕込んでみましたーー!!
ボクプログラマーの才能あるかもね!」
「……お前が……お前が……ウイルスを、仕込んだのかあああああ!!!!」
「ど、どうしちゃったのさ秦野クン?!キミは大人しいキャラのはずでしょ?!頭がパンクして口調もおかしくなっちゃった?!」
モノクマの野次なんて関係ない。彼は、モノクマが『ウイルス』をばらまいた真実に怒っていた。普段は見せない素顔を見せ、整った顔を歪ませて、普段は絶対に見せない口調と威圧感で……いや、彼の本性なのかもしれない…。
『大切にしていたものを奪われた恐怖』……。彼は、それを何よりも恐れていたんだ。
秦野くんは周りが見えなくなっているようで、私の静止に目もくれずモノクマに掴み掛る。普段の彼では絶対にありえない行動だった。
———それほどまでに。彼は。『怒っている』んだ。この状況に。
「うるさいッ!!!アルターエゴは何も悪くないじゃないか!!!どうして…どうして俺の方を殺さなかったんだよ!!!」
「オマエは校則違反を犯してないからさ。ま、たった今起こしそうになってるんだけどね。だから、調子に乗ったオマエラに制裁を与えてやったわけだよ」
「アルターエゴがどんな顔で苦しんでいたかお前には分からないのか!!!『機械なんてどうせ道具』って決めつけて乱暴に扱う奴らと一緒じゃないか!!!アルターエゴだって生きているんだ!!!一人の『人間』なんだッ!!!俺達の『仲間』なんだッ!!!」
「秦野くん!!!やめて!!!このままじゃキミまで殺されちゃう!!!」
「神谷!!!でも……!!!」
「秦野くんまで失いたくないの!!!ウイルスもろとも、学級裁判で明かせばいい話でしょ?!」
「…………」
「ま、いいけどね。ボクがここに来た用事はオマエラに『学級裁判』の開廷を知らせることなんだから。このまま秦野クンを校則違反にして殺してもツマラナイし、学級裁判場で神谷さんや生き残りもろとも殺してあげるよ!!!
勝つ自信はあるんでねっ!!」
静止がやっと届いたのか秦野くんはフードを深くかぶりモノクマを手放す。あいつは、「あーやれやれ」と呆れたフリをしつつ秦野くん、そして私に牙を向ける。
私がモノクマを睨み付けると、あいつは「おおこわ!まーこれ以上の絶望が味わえるんだから、ちゃんと来てよねー!!じゃあねー!」と書庫を去って行ってしまった。
———その場には、二度と動かなくなったアルターエゴと私達だけが残っていた。
「…………」
「秦野くん…」
「……ごめん……。……俺……、どうかしてた……。……頭に血が上ってた……」
「分かってたわ」
「……まだまだだな……俺……。……不二咲先輩の足元にも……及んでないから……。……俺は壊すことしか出来ないから……」
「そんなことない。キミは、自分に出来ることを探してみんなのために頑張ってたじゃない。それがどんな結果に終わったとしても…私は、キミを、秦野くんを。尊敬するわ」
「……俺……どうすればいいのかな……」
「恨みに囚われちゃダメ。アルターエゴのことは悲しいけれど…前を向いていきましょ。秦野くんはまだ一人じゃないんだから」
精一杯の励ましを彼に送る。彼は今絶望している。モノクマのせいで、自分の実力不足(たぶん違う)のせいで、自分を追いつめている。
私にできることは……その負の感情を、一緒に分かち合って負担を少なくすることだけなのだ。
私は秦野くんの手を握る。冷たいけれど…彼が生きている。鼓動を感じる。それだけで十分だった。
「……ありがとう、神谷……。……俺……神谷に出会えて良かったと思ってる……」
「私もよ」
「……もし良かったら、なんだけどさ……。……『親友』になって、もらえないかな……」
「…へ?」
「……俺、多分これからも失敗するし……この性格だから人の誤解になること沢山しちゃうんだと思う……。……だけど……神谷となら……みんなとなら……前に進める気がするんだ……。
……今の俺は昔の俺と違う……。……『ひとりぼっち』じゃないから……」
「秦野くん…」
「……あの、その、だから……」
「何言ってるのよ。もう『親友じゃない』。私達は」
秦野くんの本音を初めて聞いたのかもしれない。でも、嬉しかった。あの秦野くんがここまで私に話してくれるようになってたなんて。
『親友』なんて、なるもんじゃないわ。もう、私達は………
——————『親友』になってるんだよ。
そう、一言だけ彼に伝えて書庫を後にした。
すぐ秦野くんが追いかけてきたので「アルターエゴのことはいいの?」と聞いてみると、彼は。
「……今は前だけ見てる……。……悔やむのは全部、終わってから……」
そう、返してきた。
その言葉を聞いて———私は、少し安心できたのかな。心の中に、温かいものが生まれた気がした。