二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ダンガンロンパF 第1章 〜希望の知識と絶望の運命〜 ( No.26 )
- 日時: 2013/09/27 20:51
- 名前: ランスロット (ID: EAhWcc2P)
街は意外に広く、「西方面」の看板の場所まで行くのには結構かかった。
ここまでくる途中で、モノクマ型の建物やオブジェがあったのは…あいつの趣味なんだろうか。
「さて、どこから調べましょうか」
「適当に歩いてみる?目立った建物ならすぐに気付くと思うし」
「そうしましょう」
とりあえず冥雅くんの言葉に従って、西方面を歩いてみることにした。
…モノクマの形の建物、少し多すぎではないだろうか。
歩いていると、奇抜な看板を掲げた店を発見した。
「なんだろう?この店」
「『何でも屋 シロクマーケット』…?どうやら売り物がある店のようだな」
「気になるんだったら、入ってみる?」
私がドアを開けると、カラカラ…と鐘の音がした。どうやらドアの内側に小さなベルが取りついていたらしい。
店の中はいわゆる「マルチショップ」のような風景だった。食べ物から服、スポーツ用品、挙句の果てには凶器になりそうなアンティーク用品まで揃っている。
「モノクマは『ここの品を使って殺し合いでもしたら?』とか思ってるのかな?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ!…でも、服はあるみたいだから洗濯には困らなそうね」
「店に置いてないようなものまであるのはちょっと気になるけどな…」
私達は店を出て、歩き始めた。
次に目に付いたのは、いかにも怪しそうなテント。中に魔法使いが住んでいるのではないか、と思ってもおかしくないデザインだった。
「こんな所にテント…?変なの」
「中を見てみたけど、占いに使う用品が沢山そろってたぞ。何故かマジックに使えそうなものも入っていたから、後で佐藤にでも話しておくか」
「この街には占い師でも住んでいたのかしら?」
次に、私達は可愛らしい風貌の店を見つけた。
看板には『フラワーショップ ジュネス』と書いてある。どうやら花屋のようだ。
「ジュネスって、俺が楽曲を提供してる『ポップルミュージン』ってゲームにもいるぞ。無限増殖するキャラクターとして」
「えっ、無限増殖?!」
「そういう設定なんだよ。実際にはいないから安心しなよ、冥雅」
はぁ、とため息をついて冥雅くんは安堵の表情を浮かべた。…あれ?キャラクターって神崎くん言ってなかったっけ?
…まぁいいか。とりあえず中を調べてみよう。
中には色とりどりの花が並べてあった。ガーデニング用品も所狭しと用意してある。それだけを見れば、至って普通の花屋…だったのだが。
「あら、あれは何かしら?」
立花さんが壁の方向を指差す。そこには、シャベルやスコップが置いてあった…のだが、その量が尋常じゃなかった。大きなバケツの中に山盛りになるほどのスコップが入っていたのだ。
「ガーデニングするにもこんなに必要ないし、これも殺し合いを促進させるための罠なのかしら」
「そう考えるのが普通だろうな…。あいつ、どうしても俺達に殺し合いをしてほしいようだな」
「え〜?ボクそんなこと思ってないよ〜?」
「うわっ?!」
噂をすると何とやら。いつの間にか目の前には今まさに話題にしていたモノクマがいた。
急に現れたので、私を含め4人は驚きが隠せなかった。
「全く、ボクを快楽殺人鬼みたいないい方しないでよね!ボクはオマエラに『秩序ある生活』を求めてるんだから」
「まったくそういう風には思えないのだけど。さっきの何でも屋のアンティークの異様な数といい、この店のスコップの異様な数といい…何を企んでるのよ」
「でも使うのはオマエラの自由だよ〜?ボクは『殺し合いをしてほしくて』ここに大量のスコップを置いていたわけじゃないんだから。ここに前に住んでいた庭師辺りが使ってたんじゃないの?」
「庭師がそんなにスコップ使うのかよ!」
「ちょっと待った。…モノクマ、今『ここに前に住んでいた』って言わなかったか?」
「…あ」
神崎くんの指摘に、モノクマに焦りの表情が見えた。
…どうやら、言ってはいけないことをぽろっと口に出してしまったらしい。
モノクマは1、2回咳払いをし、私達にこう告げた。
「も、もしかしたらの話だよ!ボクの言ったことは全部忘れること!じゃあね〜!」
…すごいスピードで花屋を出て行ってしまった。
余程私たちに言いたくなかったのね…。
「これ、かなり有益な情報なんじゃないの?」
「『この街は以前誰かが住んでいた』…か。話してみる価値はありそうだな」
「凄い情報ゲット!だね」
「あいつもたまには役に立つのね」
私達は互いを見ながら笑い合った。
「…西方面にはこれ以上の施設はなさそうだね。どうする?」
「まだ時間もありそうだし、ここで話でもしていかない?丁度テーブルとイスもあるし。私お茶でも入れてくるわ」
「ありがとう、立花さん」
そう言って立花さんは紅茶の葉とお湯を取りに何でも屋に出て行った。
…この際だから、3人のことをもっと知っておこうかな。
- chater01 〜!ロエコリノヲシ〜 ( No.27 )
- 日時: 2013/09/28 10:25
- 名前: ランスロット (ID: 2GxelfGo)
しばらくして、ティーポットとティーカップ、お茶の葉を持って立花さんが帰ってきた。
彼女は素早く私達のテーブルに4つのカップを置き、お茶を注いでいく。
…その手際の良さに、私はつい見とれていた。
「…見ても何もでないわよ、神谷さん」
「あっ!!ごめんなさい、凄い手付きでお茶を注いでるもんだから、つい」
「いろんなバイトしてるとこういうのも慣れるのよ」
会話を交わしているうちに、彼女はお茶を注ぎ終わり、空いている椅子に座った。
お茶を一口こくり。ハーブの香りと爽やかな喉ごしが私の口内を満たしていく。美味しい。
「私、神谷さんのこともっと知りたいな。家族のこととか、話してくれないかな」
「え?いいけど」
「あ、俺も聞きたいことあるんだ!」
「せっかくだから、改めて質問タイムといくか」
立花さんの言葉を皮切りに、私達は他愛ない世間話を始めた。
「神谷さんって、何人家族なの?」
「父さんと母さん、それからお婆ちゃんの4人で暮らしてるわ」
「へぇ〜。そういう立花はどういう家族構成なんだよ」
「私?お母さんと、私を含めた6人兄弟で過ごしてるわ」
「6人?!それは凄いな…」
「父さんが海外に派遣される前に、6人産んでるのよ。今時こんなに兄弟がいるのも珍しいと思うけど…」
「俺の家にも弟はいるけど、多人数の兄弟って経験ないなぁ。きっとにぎやかなんだろうね!」
「えぇ…そうね」
立花さんは力なさそうにそう答えた。…あれ?立花さん、家族の話をし始めてから元気なさそう…
話題を変えたほうがいいかもしれないわ。
「じゃあ私から神崎くんに質問。神崎くんがDJを目指すようになったきっかけは何?」
「え?そうだな…俺には『兄』と呼べるようなお隣さんがいたんだ。俺とそいつはあいつが高校生になるまでずっとお隣さんだったんだ。そいつに、『君は音楽作りの才能があるな』って言われて。それで、DJを目指すようになったんだよ」
「確かに、才能は凄いと思うわ。神崎くんの音楽、なんとなくだけど『音が生きている』感じがするもの」
「俺も神崎の音楽聴いたことあるけど、同じ感触だったよ。なんというか…凄いね!それも才能なの?」
「いや…俺にそこまでの才能はないよ。音を操れるようになったのは、沢山音を聴いてそれを生かせるように努力した結果さ。そいつも、『努力に勝るものはなし』って言ってたから」
「『努力に勝るものはなし』か…」
神崎くんは思った以上に努力家のようだ。落ち着いている態度も、それを表しているように思えた。
「冥雅は、好きなものはあるのか?」
「ハーブティーが大好きなんだよ!俺、これに関しては美味しいものと不味いものを判断することが得意なんだ!」
「へぇ〜。じゃあ、このお茶の味が美味しいかも分かるの?」
「これは、凄い美味しいよ!今まで飲んできたものの中で上位に入る。ハーブティーって、お茶の葉じゃなくて、入れる人の技術も大切なんだよ。だから、どんなに美味しいお茶の葉でも入れる人が下手糞だったら、結果的に不味くなっちゃう。立花は、お茶を入れるのが本当にうまいよ」
「ありがとう」
「冥雅くんが話すと、説得力あるわね…」
ハーブティーのことを話す冥雅くんは、凄く生き生きしていた。
こうして話していると、自分たちが置かれている状況を忘れてしまいそうだ。
…でも、そういうわけには行かないのよね。
「そろそろ戻らないか?きっとみんな戻り始めてると思うし」
「そうね。待たせたら悪いものね」
「…お茶の葉持って帰っていいかな」
冥雅くんが名残惜しそうにハーブティーを見ている。「後でモニャンに淹れてもらえばいいだろ」と神崎くんが励ます。
私はそれを苦笑して見ていた。
「さぁ、戻りましょう!」
私達は花屋を後にし、ホテルへの道を戻り始めた。
- chater01 〜!ロエコリノヲシ〜 ( No.28 )
- 日時: 2013/09/28 17:53
- 名前: ランスロット (ID: 9RoM5lpe)
食堂には、既に私達以外の全員が戻ってきていた。
一部の人達は暇だったのか待ちくたびれていたのか、テーブルに座って安西さんお手製のデザートを食べていた。
「ごめんなさい。遅くなってしまって」
「大丈夫ですよ、わたくし達もつい先ほどホテルの探索が終わりましたので」
「このホテル意外にでかくてよォ、調べるのは大変だったぜ」
「羽柴くん達もお疲れ様」
辺りを見回してみると、隅っこのほうに影浦くんの姿があった。
花岸さん曰く、今まで一人で街を歩いていたらしい。…すれ違ったかな。
「何だ」
「いいえ、探索する前にあんなことを言っていたのに、ここにいるのが珍しいなーと思っただけよ」
「…ふん。勝手にしろ」
それだけ言うと、彼はそっぽを向いてモニャンの作ったお菓子を食べ始めた。
…普通にお菓子も食べるんじゃない…。
「皆さん、こちらに集まってください。報告会を始めますよ」
「はーい、みなみな!」
私達は、今朝座っていた席と同じ場所に座る。
「では、まずは青グループから報告をお願いします」
「わっかりました〜!」
そういうと佐藤さんはぱっと立ち上がり、両手を後ろに隠す。
「いち、に…さん!」その言葉と共に両手を広げると、そこには一枚の紙があった。
「南方面の地図だよ〜。ももっちとみらいんが書いてくれました!」
「俺たちが見たものや光景を書いてみたんだ。南方面には、スポーツ用品店、カフェ、モノクマ型の変な建物があったぜ」
「モノクマ型の変な建物なら、私達も見たわよ。趣味が悪すぎるわ…」
「僕達も街の散策中に拝見しました」
私とシオンくんが答える。しかし、豊島くんは「そういうオブジェ的なものじゃなくて」と付け加える。
「モノクマ型の壁の中心に、赤い扉があるんだ。モノクマ型の変な建物は他にもあったんだけど、扉があるのは南方面のこの建物だけだったぜ」
「不思議ね…」
「カフェは普通のオシャレなカフェだったし、スポーツ用品店はスポーツに使うような品物全部置いてあったよ」
「他には…目ぼしいものはなかったかな」
「ありがとうございます。次に、黄色グループの報告をお願いします」
花岸さんはそう言って、シオンくんの方に顔を向ける。
私も、彼の方向を向いた。
「僕達が調べた西方面には、先日皆さんが集まった公園、そしてゴミ捨て場がありました」
「ゴミ捨て場?」
「はい。公園と同じ広さの土地です。看板に『ゴミ捨て場』と書いてあったので、恐らくそうなのでしょう」
「途中でモニャンとすれ違ったぞ。そのゴミ捨て場について聞いてみたんだが、『私が皆様の捨てたゴミを廃棄するための場所ですので、あまり気になさらないでください』と言っていたぞ!」
「ゴミ捨て場は、あまり気にしなくてもいい…ってことね」
「他に目に付いたものは特になかったよ」
「ありがとうございます。次は、わたくし達のグループの報告と参りましょう」
こほん、と花岸さん咳払いをし、みんなの方へ向き直る。
「ホテルの中なのですが、こんなものを見つけました」
そう言って、花岸さんは一枚のシートをテーブルの上に置いた。
…見る限り、このホテルの見取り図のようだ。
「このホテルは4階まであるのですが、何故か3階以上は階段にシャッターが閉まっていたのです。4人でなんとか開けようとしましたが、無理でした…」
「……2階までの部屋も……鍵のかかってる部屋が……何ヶ所か……あった……」
「1階は俺達の部屋、ロビーの他に、ランドリー、大浴場、会議室みたいなところが開いてたんだ。それ以外は全部鍵がかかってて開かねェんだよなァ…」
「鍵のかかっている部屋、それと3階以上のスペースに何かあると考えたほうがよさそうね」
「…そうね…」
「わたくし達からの報告は以上です。最後に、緑グループの報告をお願いします」
そう言って、彼女は私の方を向いた。
隣で小さく「俺たちの番だね」と冥雅くんが伝えてくれた。
私は1回深呼吸をし、西方面で見たものを話し始めた。
- chater01 〜!ロエコリノヲシ〜 ( No.29 )
- 日時: 2013/09/29 10:01
- 名前: ランスロット (ID: /kqYaBvn)
「じゃあ報告を始めるわね。私達が調べた西方面には、マルチショップ、占いグッズが置いてあるテント、花屋があったわ」
「マルチショップには本当に色んな物が置いてあったんだ。食べ物、服、アンティーク家具などなど…種類もいっぱい」
「花屋には様々な花とガーデニング用品が置いてあった。…異常な程のスコップも発見したぞ」
「占いグッズのテントは…入ってみたけど、占いに使うものとマジックに使えそうなものしか置いてなかったわ」
「マジック?!それ本当?!」
目をキラキラさせながら佐藤さんが立花さんに近づいていく。
立花さんは苦笑しながら、「そうよ」とだけ答えた。
「あぁ、そうだ。モノクマから有益な情報を手に入れたわ」
「それとは?」
「この街、前に『誰か住んでいた』らしいのよ」
「…えっ?!」
私の報告を受けた他のグループの面々は、驚いた顔をしている。
「それって、本当のことなの?あのモノクマのことだから嘘を言ってるかも…」
「俺達が聞き出したんじゃなくて、あいつが勝手に言ったんだ。俺がそれについて問い詰めたんだけど、モノクマは急に焦って店から出て行ってしまったんだ。…嘘には到底思えなかったな」
「あのモノクマが焦る…嘘ではなさそうですね。有益な情報、ありがとうございます」
「私達の報告は以上よ」
私が全て言い終えると同時に、長月さんの筆を走らせる腕も止まった。
どうやら、私達の情報を頼りに街の地図を描いているらしい。
「出来たわ。こんな感じね」
そう言うと、彼女はみんなの方に紙を向けなおした。
図書委員らしく、綺麗にまとまった分かりやすい地図だった。
私はその地図を確認し、街の全体図をイメージする。記憶するのに大して時間はかからなかった。
「長月さん、お疲れ様でした。…では、次の議題に参りましょう」
「次の議題?」
「はい。街の4方向に伸びている大きな黒い柱のことです」
モノクマは、私達を閉じ込めるために柱を建てた、と言っていた。
確かに、見に行って分かったんだけど私達が壊せる代物ではない。…でも、向こうに何かある。そういう感じはする。
「ねぇ、でもあの柱は『私達を閉じ込めるために』あるんでしょ?」
「モノクマもそう言ってたしな」
「むむむ…でも、くるみたちを閉じ込めるなら『柱』じゃなくて『扉』でも良くないのか?」
「なぜ柱なのか…気になるな」
柱の正体について考えていると、「……あの」と手を挙げる人がいた。
声の主は、秦野くんだった。
「……あの……えっと……」
「どうしたの?秦野くん、何か思いついたことでも…?」
秦野くんは何かを言いたそうに口をパクパクしている。
…どうやら、彼はコミュニケーション能力が極端に低いようだ。
「秦野さん?口をパクパクしているだけでは分かりませんよ?」
「……えっと……その……」
「何か気付いたことがあったら言ってよ。もしかしたら解決の糸口、つまり脱出の手掛かりになるかもしれないし」
私はすかさず助け舟を出す。すると、彼はもぞもぞと小声で話し出した。
「村上が殺されて……ホテルに戻る時に……柱を見た……柱に……文字が書いてあった……」
「文字?そんなのあったっけ?」
「……柱と似た色だったから……見えにくい……でも確かに……書いてる……」
「どんな文字が書いてあったんです?」
シオンくんが彼に尋ねる。すると、彼は言いづらそうに口を閉じてしまった。
そして、一回深呼吸をしてみんなの方に向き直り、こう話した。
「……『希望ヶ峰学園』って……」
「…え?」
希望ヶ峰学園?じゃあ、この街は希望ヶ峰学園所有で、私達は学園の誰かに閉じ込められた…ってこと?
「待ってよ!じゃあ、ここは希望ヶ峰学園の敷地内ってこと?!」
「秦野くんの情報が真実なら、そうかもしれませんね」
「……信じられないなら……後で……見に行けばいい……」
「ねぇ、じゃあさ、さっき神谷ちゃんが言ってた『以前住んでいた人』って…」
「希望ヶ峰学園関係者、ということになりますね」
…ここには以前希望ヶ峰学園の関係者が住んでいた。そう考えれば、柱の文字とモノクマの言葉が一致する。
でもここでまた疑問が浮かび上がった。一体…誰が住んでいたんだろう。
「でもよォ、今はそう深く考えることでもなくねェか?確かに脱出の手掛かりッぽそうだが、今脱出出来るわけじゃねェしよォ」
「そうだよ〜!今はお腹空いたからモニャンにお昼ご飯作ってもらおうよ!」
…確かに、今は先延ばしにしてもいい問題なのかもしれない。
「では、この話の続きは後日するとしましょう。では、昼食をいただきますか」
「やった〜!モニャン探してくるー!」
「待て佐藤!くるみも探すのだ!」
佐藤さんと雨宮さんが食堂から駆けていった。
彼女たちの行動に、私はいつの間にか笑みを漏らしていた。
- chater01 〜!ロエコリノヲシ〜 ( No.30 )
- 日時: 2013/09/29 16:59
- 名前: ランスロット (ID: e5UV9RVW)
私は昼食後、冥雅くんに誘われてカフェに来ていた。
この街の今のところの全貌は分かった。でも…まだ謎が多すぎる。
そもそも、ここはどこなのだろう。私達はなぜこの街に閉じ込められてしまったのだろう。
…犯人は、いったい誰なのだろう。
「神谷ー?」
「?!」
急に冥雅くんの声がしたので、私はハッとして彼の方を向いた。
彼は、心配そうに私を見ていた。
「大丈夫?起きてからあんまり笑ってないよ?」
「…気を遣わせてごめんなさいね。なんで私達がここに閉じ込められたのかな、って思ってたの」
力なくそう答える。すると、冥雅くんは私に向かってこう言った。
「神谷は、俺が守ってあげる」
…は?今さりげなく恥ずかしいセリフをサラッと言わなかった?
傍から見れば好きな女の子に告白するセリフにも聞こえる。
その言葉の意味をはき違え、私の顔は真っ赤になっていた。
「うわああああちょっと冥雅くん?!キミサラッと何言ってるの?!」
「え?だから、神谷は俺が守るって…」
「何回も言わなくていいから!黙ってて!」
ついに私は顔をうつ伏せにして隠してしまった。あぁ私の顔は絶対真っ赤になっている。…あんなこと言われたの、初めてよ。
冥雅くんはきっと戸惑っているに違いないだろう。
そう思っていると、カラカラ…と音がして、誰かがカフェに入ってきた。
その人物は、入ったなり呆れた声で冥雅くんに話しかけた。
「冥雅…。神谷、顔真っ赤だぞ」
案の定、神崎くんだった。
彼の言葉で冥雅くんは自分の放った言葉の意味を理解したのか、慌てふためいて私に誤り続けた。
「ごごごごごごめん神谷!!そういう意味じゃないんだよ!うん!」
「…大丈夫。気にしてないわよ全然」
「気にしてなくて顔真っ赤にする奴いるかよ」
そういうやりとりが数分続いて、私はやっと気分が落ち着いた。
…神崎くんが来てくれて、良かったのかもしれない。
「そういや、モニャンがもうすぐ夕食だから戻って来いって。…お邪魔虫は先に帰ろうか?」
「いや!神崎くん帰らないで!!」
「冗談だよ」
…神崎くんが一瞬神様に見えたのは、気のせいにしておこう。
夕食後、私は自室に戻って日記を書いていた。
記憶力は元々いい方だが、流石に日々の行動までは覚えていない。なので、幼いころから日記を書くことが私の日課だった。
何故か自室に私の愛用しているペンと手帳があったので、それに学園での思い出や感想を書いているのだ。
…書いておけば、証拠になったり情報になったり…って、何思ってるのかしら。
日記を書き続けていると、部屋のドアのノック音が聞こえた。
扉を開いてみると、そこには長月さん、花岸さんを除いた女性陣が集まっていた。
「はるちゃ〜ん、今からみんなでお風呂入ろうと思うんだけど、一緒にどう?」
「いいの?」
「いいもなにも神谷を誘いに来ているのだぞ?!もちろん歓迎するに決まってるだろう!女子同士の友情を深めるイベントなのだ!」
「長月さんと花岸さんがいないみたいだけど…」
「2人とも先に入っちゃったんだって。残念そうにしてたよ…」
「それなら、ご一緒させてもらおうかな」
私は日記を書くのを止めて、彼女たちと一緒に大浴場まで歩き始めた。
…更衣室には、監視カメラはないみたいね。コンセントもあるみたいだし、ドライヤーを持ってきて置いておけば便利かもしれない。
「神谷ちゃんなにしてるの、早く入ろうよ!」
安西さんの呼びかけに私は答え、浴場まで向かった。
…後ろからの誰かの視線が見えた気がしたのは気にしないでおこう。
私はお風呂を満喫し、自室へ戻った。今日一日で沢山の人と話したなぁ。…溶け込めたのかしら。日記に追加しておこう。
…明日はどんなことが起こるのかしら。何事もなければ…いいな。
『希望ヶ峰学園職業体験実行委員会がお知らせします。夜11時になりました。今から朝7時までは、夜時間となります。街内の一部の建物の鍵が閉まりますので、注意してください。それでは皆さん、いい夢を、おやすみなさい…』
耳障りな声と共に、私は眠りについた。
明日も何事もなく迎えられることを信じて…。