二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 学級裁判編 ( No.260 )
日時: 2014/03/05 18:49
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: KZXdVVzS)

「はぁ〜あ、期待通りの反応されてもツマラナイだけなんですけど。もっと面白い反応してよ、こっちも反応に困っちゃうじゃない」
「とは言っても…衝撃の事実過ぎて…なんていえばいいか…」
「でも、あんたたち絶望の私利私欲のためにわたし達は閉じ込められて、コロシアイさせられたんだよね?!それも知らないままみんな死んじゃったなんて……!!悔しい…自分が許せない…!!」


安西さんはそう言って教壇を殴る。悔しいのだろう…その拳をたたく音は、学級裁判場中に響いた。
そんな光景をみても、村上一夜はあくびをしつつ見下すのみ。
…本当に、彼女にとっては私達がどう思っても『ツマラナイ』のだろう。


「ねぇ、この変わり映えない裁判に変化をもたらしてあげよっか」
「……変化……?」
「『外の景色』だよ。見せてあげる」
「え?!」
「アンタ達が出たがってた『外の世界』の景色よ。見たいでしょ?見たいものね〜?だってあれよね、みんなこの世界を目指して頑張ってたんだものね〜♪」
「もったいぶらないで見せてよ!!!」
「はいは〜い、ではお言葉通り……見せてやるわよ!!!『外の世界』!!!」


村上一夜はどこからか持ち出していた赤いボタンをポチっと押す。すると、いつもは投票結果が表示されるモニターに『それ』は映し出された。
私達が出たがっていた、『外の世界』———。
それは、想像を絶する『絶望』で造られていた。


モニターに映ったのは『炎を纏いながら人間が死んでいくさま』や『人間同士の意味のないコロシアイ』というところから、
『積みにつまった瓦礫の山』などという外の景色まで、様々だった。











これが———これが———私達の出たがっていた、『外の世界』———












「ど〜お?アンタ達はこんな世界に出ようとして必死に頑張ってたのよ?」
「…う、嘘だ!!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だあああああ!!!外がこんなことになっているなんて……!!!
 神谷の両親は?!みんなの関係する人は?!神崎の『家族』は?!どこにいるんだよ!!!どこに!!!」
「……不二咲先輩や……学園のみんなは……」
「さぁ?このご時世だし、もう死んじゃってるかもね〜☆」
「そんな…!!」
「ねぇ?もうこんな世界に出る必要なんてなくない?全部が滅びて消えた世界に、帰る必要なんてないわよね?」
「そんな…そんなこと…!!」
「そんなこと、『ないわよね』??」
「……………」


言葉巧みに村上一夜に追い詰められていく。体の芯からそう思っていた。
だめだ。こいつにはもう叶わない。こいつは私達が戦えるような相手じゃないんだ。
私達は、『ここで終わり』なんだ。
誰もがそう思っていた。こいつに勝てるわけないと。
この圧倒的な『絶望』に勝てるわけないと。
このまま崩れてしまえばいいと。絶望に身を委ねてしまえばいいと。





「絶望しちゃいましょうよ?戦うの諦めちゃいましょうよ?終わりにしましょうよ?もう………『未来なんて見なくていい』のよ?






 アンタ達はね………『永久の眠りにつく』のよ!!!!」








そう、彼女の声だけが響いてきた。





なにもかんがえたくない。なにもかんじたくない。



もうだめよ。なにもかもおしまいだわ。



いままでがんばってきたけど。めのまえにたっていたものがこんなにおおきなものだったなんて。



わたしは、わたしは、わたしは、わたしは——————






















暗闇に閉ざされた思考の中で、一人ひっそりと、目を閉ざした。

chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 学級裁判編 ( No.261 )
日時: 2014/03/06 15:53
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: HyoQZB6O)

——————わたしはいまどこにいるの?







——————あぁそうか、めのまえのてきにあきらめをかんじていたんだっけ。







——————どこにいるんだろう。なにをしているんだろう。







——————なんのためにがんばってきたんだろう。







−−−−−−−−−−−−−−





『おにいちゃん!!がんだむ〜!!』


目の前にぼやけて現れた光景。それは、幸せそうな幼い私の姿だった。
幼い私は隣にいる「おにいちゃん」と、紫のストールを巻いた「がんだむ」と幸せそうに笑っていた。
他愛ない話をしながら、確かに笑っていた。


『どうしたんだよはるこ、はしるところぶぞ?』
『わたしはおにいちゃんとがんだむのいもうとだからころばないもん!!』
『いつおれさまのいもうとになったのだ。お、おれさまはいもうとなどとみとめたわけじゃないのだぞ?!』
『え?でもちいさいころからずーっといっしょだから…もうきょうだいみたいなものでしょ?』
『それもそうだよ!!あ、だったらがんだむがいちばんのおにいちゃんだな!!だっていちばんとしうえだもん』
『ふ、ふふふ、ふははははははは!!!!そうか、おれさまがおまえたちのあにか…。いいだろうはいかたちよ、このおれさまについてくるがいい!!!』
『おーーー!!!』


私は彼をお兄ちゃんと呼んでいた。眼蛇夢はもう一人のお兄ちゃんだった。
お兄ちゃん。私の大事なお兄ちゃん。今どこで何をしているの?どうして勝手にいなくなっちゃったの?どうして……帰ってきてくれなかったの……?
ぼやけが薄くなっていくたびに、そんな思いが脳を埋め尽くすような気がした。



『春子、諦めちゃだめだ』



誰かの声がする。誰?



『もうすぐそっちにつくと思う。みんなを絶望からひっぱりあげるんだ』



無理よ。あんな大きな絶望に立ち向かえるわけないわ。



『俺達なら大丈夫だ。みんなに希望を分け与える、離れ離れになる前にそう誓ったじゃないか!!』



………キミは誰なの……?



『目覚めるんだ。神谷春子。希望を持つんだ。神谷春子。まだ未来は…未来は終わっていないから!!!』



——————あぁ、そうか。キミは………………








『にい、さん……』



謎の声が消えたと同時に、希望ヶ峰学園での一幕が私の脳裏に蘇ってくる。






『神谷さん!』
『どうしたの?咲澄さん。なんだか嬉しそうね』
『えっとね?えーっと…ちょっと良いことがあってさ。何かは言えないけど』
『ふふ、それは良かったわね。…あ、そろそろ次の授業みたいね。また休み時間あったら話しましょう』
『またねーー!!』






私は知っていた。希望ヶ峰学園で過ごしていた楽しい日々を。忘れていただけなんだ。奪い取られていただけなんだ。……いま、こうして記憶のピースが戻ってきている。
——————まだ、『希望』は消えてはいないんだ。






−−−−−−−−−−−−−−




「あ〜あ、ちょっと唆しただけで全員やられちゃったなんて…本当、ツマラナイわ〜。…でも、厄介になる前に戦意喪失してくれてよかった。これで心置きなく殺せるもの」


ふふふと不気味に笑いながら、村上は神谷達生き残りを見回す。その誰もが、彼女と戦う気力を失っていた。諦めていた。
これまでに絶望が強かったのか、それとも神谷達の希望が足りなかったのか。それは誰にもわからない。だが…………
もう、彼らに立ち直る術はない。村上はそう感じていた。そして、懐にしまってあったナイフを6本取出し彼らに狙いを定める。












『後悔するならあの世で後悔することね。ふふ、一瞬の痛みであの世にいけることを幸せに思うのね……!!!』














神谷達にナイフを投げようとした、その時だった。






















『お待ちください。まだ決着はついてませんよ』






















扉から声がした。あの声は、さっきの——————。
思わず振り向いてみる。






『あ、あんた………どうして………!!!』





村上一夜が信じられないという顔をしている。彼は死んだ、爆死させたと繰り返している。
彼の手に持っているものを見て、私も驚愕した。
裁判場には、死んだはずの『モニャンのぬいぐるみ』を抱えた———














『私と同じ髪の色の執事服の男性』が立っていた。





『裁判を再開させましょう。まだ、決着はついておりませんよ』


そう、希望を携えた目を私達に向けて。

chapter06 〜叫べ!希望の彼方へ〜 学級裁判編 ( No.262 )
日時: 2014/03/09 12:20
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: J7xzQP5I)

どうしてだろう。記憶には残っていないはずなのに、何故か懐かしい感触が頭の中に入ってきた。
彼は私の『記憶に関係する人物』なのだろうか。いやそんなことはどうでもいい。
なぜ彼がここに来ているのだろうか。確か、私達18人が閉じ込められた最初の日にはいなかったはずだ。
ならば外から助けが来たのか?いやいやそれもない。モノクマは『何があろうとここから出ることは出来ない』と言っていた。じゃあ、彼はいったい…?


「おや、驚いておられるようですね。まさか、あの爆破如きで私を殺せたと勘違いなさっていたのでしょうか」
「だって…黒焦げになってたでしょ…?!あの、神崎満月が羽柴陸斗を殺した朝のこと…!!」
「確かに爆破されましたね。しかし…『それは本当に私だった』のでしょうか?貴方様の用意した殺人計画を読み、こちらで用意させていただいた『ダミー』という可能性は?」
「あの…お取込み中悪いんだけど…あなたは誰なの…?」
「おっと、『こちらの姿』では初めまして、でしたね。



 私の名は『白取幸輔』と申します。あの憎きコロシアイを生き残った人物の1人であり…『モニャン』だった人物です」


『白取幸輔』。確か、世界中の有名な貴族の執事を務め、その仕事ぶりは世界一だと謳われる『超高校級の執事』と呼ばれる人物だったはずだ。以上、私の記憶の書庫より。
白取幸輔といえば、ここで調べた中に名前があったはず。それに…神社で長月さんが読み解いてくれた血文字…あれにも「しらとりこうすけ」と書かれてあったはずだ。
———彼が、モニャン?確かにモニャンは『自分は人間だった』と告げてくれた。
だけど…今こうして人間の姿で現れても、私の脳内が理解するにはしばらく時間がかかった。


「モニャン…生きてたんだね…!!」
「皆様を生かしてここから出すために動いていたのです。おめおめと死ぬことは許されません」
「アタシを…アタシをだましたのねえええええ!!!!」
「何の罪もない神谷様18名を閉じ込め、コロシアイを引き起こした元凶の貴方には言われたくありませんね。最も、私も貴方に改造されていなければそのまま死んでいたのですが」
「し、死んで…。もしかして、コロシアイの最後に『そのコロシアイの黒幕に襲われた』ってこと…?」
「そうです。私は他の5名を逃がす代わりに、攻撃の最後の抵抗を真っ当から喰らいました。そして、死の淵を彷徨っている時…そこの村上一夜に改造され、命を助けていただいたのです」
「じゃあ、どうして敵対してるんだよ…。命の恩人なんだろ…?」
「当たり前です。彼女は私をあの姿にし、『コロシアイをまた引き起こす』と言ってきたのです。
 それに、その『コロシアイ』の正体こそが———」
「『今回のコロシアイ』ってことになるのね…」


白取くんはただ淡々と事実を述べていく。モニャンの時と変わらない、凛とした表情を浮かべ、大きな絶望に立ち向かうように。
彼はゆっくりと歩みを進めていき…神崎くんの遺影をどかして、そこに立った。
「神崎様、お席をお貸しください」そう、呟きながら。
そして、彼は私にこう言ってきたのだった。


「諦めてはなりません。諦めてしまっては…全てが終わってしまいます」
「でも…私にはもう…」
「邪魔しないでよ!!!アンタには関係ないでしょ?!」
「私はモニャンの姿でだんだんと減っていく皆様のお姿を見た時、胸が痛まずにいられませんでした。何故だろう、何故こんなことを彼らはしなくてはならないのだろうと。ずっと自分を責め続けました。
 ですが…『あの時』…。私のダミーが爆破される前の晩の時…。更衣室で神崎様と話をさせていただきました」


村上一夜の言葉の邪魔は続くも、諦めずに彼は真実を述べ続けた。








−−−−−−−−−−−−−−





「…いるんだろ?『白取幸輔』」
「見破っておられたのですか。…神崎様」
「まぁ、な。今までの情報をまとめて、みんなの発言も頭の中で整理していたらその答えに辿り着いた」
「モノクマに…なにか、吹き込まれたのでしょう?」
「そっちもお見通しってやつね。全くモニャンには叶わないよ」
「…それでいて、自らを犠牲にしようと考えておられるのでしょうか」
「……そうしないと、今の状況は打破できないから。
 それに…あいつらなら絶望を乗り越えられるって信じてるから」
「人間は不完全なものです。いつ、折れてしまうか分かりませんよ。それでも…貴方様は、自分の命を彼らのために使うと仰るのですか」
「俺に死んでほしくないわけね」
「当たり前です!!それに…神谷様方だって、こんなやり方は望んでいないはずです!!」



「———俺がDJとして活動を始めたころさ、脇辺さん…『超高校級のピアニスト』って呼ばれた俺のレーベルの仲間からある『少年の話』を聞いたんだ。
 


 『その世界に住んでいた少年は、世界に絶望しながら生きていた。でも、死ぬときは希望にあふれていた。
  そして、その魂は無の世界へと還り、彼は神様として蘇った。
  神様は自分の命を犠牲にしながらも世界を作り、動物に言葉を与え、音楽を与えた。
  彼らは神様の命がすり減っているのに気付かないまま、彼の命の終わりを見届けた。
  彼は自らが犠牲となることで『世界』を守った。彼は世界を救った『音の神』として祀られ、語り継がれていった。』


 …まぁ、ポップルミュージンの中での『少年は空を辿る』ってタイトルの曲になぞらえた作り話らしいんだけどさ」
「貴方様は、今お話しされた『神様』と同じことをなさろうとしているのですね」
「そうじゃない。誰も…もう誰もいなくなってほしくないんだ。だから…その過程で俺の命が費えることになったとしたら、俺は喜んでみんなのために命を差し出す覚悟でいるよ」
「……狂っておられる」
「かもな」






−−−−−−−−−−−−−−





「彼は『強すぎた』のです。だから…彼の覚悟を聞いた時、何とも言えない衝動に襲われました。私が彼の意思を受け継ぎ行動しないと、と。
 ですから…私は皆様に絶望してほしくありません。希望を持って、立ち向かってほしいのです。
 それが…死んでしまわれた皆様の…願いだと思います」
「……どうして……。どうしてキミは希望を持っていられるのかしら…。目の前で死んでいったみんなを見たのは同じでしょ?ならどうして…」
「なぜでしょうね…。私にもわかりません。ですが…『死んでしまわれた皆様がもしここに立っていたら、同じことを申すはずです』。『あきらめるな』と」


彼のその言葉を聞いた瞬間、私の中でなにかが光った。