二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapterEpilogue 〜サヨナラ、モノクマシティ〜 ( No.282 )
- 日時: 2014/03/23 19:28
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 0TdvNrVL)
———絶望には勝った。希望が打ち勝った。だけど…どうしてだろう。彼女が傷付くところを見てしまったからなのだろうか。新しい絶望が現れたからなのだろうか。
私の心は、複雑な気持ちでいっぱいだった。ついに、こんな恐ろしい街から出ていけるというのに。自分達が目指していたところまで、ついにやってきたというのに。
「…神谷様、ご気分が優れないようならばホテルで休息を取った後でよろしいかと」
「ううん、他のみんなに迷惑かけちゃだめよ。とにかく、この街から出ましょう。でも…出口なんてこの街になかったわよね?」
「そうだよね…。裁判後に解放されてた街も、モノクマ曰く『室内』らしいからね…」
「『最初にモノクマに呼ばれた場所』…。覚えているでしょうか」
「オレ達が閉じ込められて、最初に呼ばれた場所?…『エメラルドパーク』のこと?」
「はい、そうです。そこに…『出口』はあるはずです」
「え?でもエメラルドパークって、何もない公園のはずだったよね?」
白取くん、何を言ってるのかしら。安西さんの言う通り、エメラルドパークは何もない、だだっ広い公園だったはず。
でも、彼がそこまでして行くように催促しているのだから、きっと何かあるのだろう。私は、彼の言葉を信じてみてもいいと思えるようになっていた。
「…行ってみれば分かると思いますよ。脱出スイッチもここにありますし、向かいましょう」
「……そうだな……。……立ち止まっても、何も生まれないんだし……」
「行きましょう」
意を決して、私達は言われた通りエメラルドパークへと足を運ぶ。
———そして、エメラルドパークへとたどり着いたその時、私は目の前の光景にただ、混乱を深めていた。
だって……エメラルドパークのど真ん中に、機械で作られた大きな『扉』が、姿を現していたのだから。
「……扉……?!」
「いつの間に?!僕達が最後の学級裁判に向かう時、こんな扉なんてなかったよね?!」
「…この扉の出現条件は、『村上一夜の意識を閉ざすこと』。生きていても、死んでいても構いません。…私はそのことを知っていました」
「じゃあ、この扉をくぐれば…!!」
「街の外へと、出ることができます」
これが、これが。私達が見つけていた『答え』。絶望を打ち破って。このコロシアイ職業体験を終了させて、見つけた『答え』だったのだ。
この扉を潜れば、こんな恐ろしい数週間の生活に終わりを告げられる。だけど……死んでいったみんなはどうなるんだろうか。あの死体安置所の中で、永遠に眠ることになるのだろうか。
気になった私は、思わず彼に言葉を発していた。
「…ねぇ、白取くん。私達がここを出たら、この街はどうなるの?」
「恐らく機能を停止し、街の全ての施設の動きが止まるでしょう」
「えっ?だったら東条くんたちはどうなっちゃうの…?」
「保管機能を失われた死体安置所はただの腐り果てた墓へと、姿を変えることでしょう。そして、亡くなられた遺体も…ゆっくりと、腐り果てていくはずです」
「そんな…!!」
「仕方ないのです。それが…自然の摂理、というものですから」
「火葬でもしとけばよかったかなぁ…」
「…今更遅いわよ。もう…終わってしまったことだから。私達は、死んだ彼らの分まで前を向いて生きていかなきゃならないの」
そう言って、私はかつて一緒に頑張って生きていた仲間の遺品を取り出す。
———立花さんのクマ型のゴム。
———雨宮さんの星形のブローチ。
———豊島くんの黒いチョーカー。
———シオンくんの黒い蝶ネクタイ。
そして、神崎くんの十字架マークのついた帽子。返してくれと頼まれた赤い腕章。
彼らも、確かに生きていた。私達と一緒に、頑張っていた。
だから私達は彼らの分まで、被害者の分も、クロの分も。頑張っていかなければならないのだ。
「…ここで立ち止まってちゃ、駄目なんだよね…。私たち、前を向かなきゃ駄目なんだよね…」
「……出よう。……みんなの思いを……受け継ぐんだ……」
各々に決意を述べた後、私達は扉の前に並ぶ。そして、私は白取くんから脱出スイッチを受け取った。
「これを押せば…この街ともサヨナラ、なのね…」
思わず言葉にしてしまう。
「犠牲になっちゃったみんなも…これで、救われるのかな。死体が腐っていくってのは辛いけど…。これで、良かったのかな」
そう、星野くんが空を見上げる。
「分からないよ。だけど、わたし達はみんなの思いを受け継いでここから出ていくんだよ?前を…向かなくちゃ」
安西さんが扉を真剣に見つめてそういう。
「……そうだよ……。……俺達はまだ……地面に足をつけてる……。……生きてるんだ……。……生きていれば……運命だって……変えられる……」
秦野くんは、フードの下の青い瞳を優しく揺らめかせながらそういう。
「何をすればいいんだろうって、何回も悩むと思う…。だけど、自分が信じたことをやっていけばいいんだよね。それが…私たちができること、だもんね」
天使のように微笑んで白戸さんがそういう。
「大丈夫だよ。前を向いて、希望を持っていれば、道は切り開けるよ。『絶望』で蘇ったオレでも、こうして今希望を持っている。だから…きっと何とかなるよ!
…今、殺される前のオレの気持ちが分かったかもしれない。きっと…殺される前のオレだって、そう思うはずだからさ」
私を見つめて、冥雅くんはそう言った。
「…もう、言葉はいりませんね。私は皆様を…信じています」
目を閉じて、白取くんはそう言う。
「…この一歩を、『希望』への一歩にしましょう。いいわね、みんな?」
『うん!!』
最後に私はみんなにそう言った後、ゆっくりと脱出スイッチのケースを外す。
そして———
沢山の思いや希望を抱えて…。目の前には何があるのか分からない不安もあるけど…。確かに、前を向いて。
——————脱出スイッチを、押した。
扉の向こうに広がっている世界は、『希望』なのか『絶望』なのか。
そんなの、私にすらわからない。だからこそ、私は暗闇の中を照らす『明かり』になろうと思う。
———みんなが信じてくれている限り。みんながいる限り。
一人じゃない限り。
私は、いつまでも永遠に。立ち向かう。目の前の『世界』に。『絶望』に。
広がってくる白い光を身に浴びながら、私は……そう思った。
- Re: ダンガンロンパF 第1章 〜希望の知識と絶望の運命〜 ( No.283 )
- 日時: 2014/03/24 19:56
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: NStpvJ0B)
———残酷なコロシアイを生き残った『希望』は、それを胸に携え世界の『絶望』へと立ち向かっていく。
———彼女達が外に出たその時、街は機能を失い。枯れ果て腐っていくであろう。
———だが、生き延びた彼らなら。彼女らなら。出来るであろう。
———仲間の志をも力に変え、前へと進んでいくことが出来るであろう。
———『希望』よ。前へ進め。そして信じろ。自分を、仲間を。未来を。これからを。
———全ての未来が、『絶望』へと染まるわけではない。そう、未来は変えられるのだ。
———枯れてしまった『絶望』の土に、『希望』の苗を植えよ。そして『未来』の日を浴び、『絆』の春を待て。
———戦いはまだ終わらない。だけど……神谷達なら、乗り越えていけるって信じてるよ。
『だから…………。
…………さよなら。神谷春子』
最期にそう微笑みを浮かべ、消えゆく街と共に『彼』は消えていったのだった。
ダンガンロンパF 第1章 〜希望の知識と絶望の運命〜 Fin.