二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chater01 〜!ロエコリノヲシ〜 ( No.32 )
日時: 2013/10/01 21:30
名前: ランスロット (ID: kVKlosoT)

『希望ヶ峰学園職業体験実行委員会がお知らせします。オマエラ、おはようございます。朝です。朝ですよー!今日もはりきっていきましょー!』


耳障りな声と共に私は3日目の朝を迎えた。
…そう、私達がこの街に閉じ込められて、3日が経過しているのだ。
きっと、母さんも父さんも私のことを探しているんだろうな…。


「今日で3日目、ですね」


朝食会でも私の考えと全く同じ話題になった。
シオンくんの言葉を皮切りに、話はヒートアップしていた。


「お母さん、お父さん…」
「俺たち、本当にここ出られるのかな…」
「きっと警察も動き出してるはずだよ!わたし達、きっと助かるんだよ!」
「警察?警察なんか当てにしてるの?」


安西さんが「警察」というワードを口にした瞬間、空いているイスの一つがガタガタと動き、その下からモノクマが現れた。
…本当どこにでも現れるのね、こいつ…。


「ぷひゃひゃひゃひゃ、笑っちゃうよね!警察が助けに来てくれるんだって!」
「何よ!何がおかしいのよ!」
「だってさぁ、警察は悪を引き立たせるための脇役なんだよ?それがオマエラを助ける、だって?おかしすぎて笑えちゃうよね!あはははは!」
「…それだけじゃない。何か私達に用件があって来た…そうでしょ?」
「流石は神谷さんっ。鋭いねぇ〜。実は…オマエラをここに閉じ込めても、コロシアイが起こらないから、ボクはとってもツマラナイのです!」
「俺たちは殺し合いなんかしない!絶対にだ!」
「そうだ!モノクマの思い通りにはならないぞ!」
「はぁ〜あ、無駄な正義感に目覚めちゃって…。やってられないよ、ホント。…あっ、わかった!ピコーンと閃きました!」


モノクマは急にテーブルによじ登り、右手を握りこぶしにして左の手のひらをポン、と叩いた。


「場所も人も環境も、ミステリー要素だって揃ってるのに、どうして殺人が起きないのかと思ったら…一つ足りないものがあったね!」
「……足りないもの……?」
「そう。ずばり、『動機』だよ!!うぷぷ、だったら簡単だねぇ。ボクがみんなに『動機』を与えればいいだけだもの」
「動機…?」
「皆さん!モノクマの言葉に惑わされてはいけません!!」


花岸さんの声が高らかに響く。しかし、モノクマはそれを無視ししゃべり続けた。


「大会議室…そこに行ってごらん。いいものがあるから」


モノクマはそう言い残して、テーブルから落ちてしまった。きっと自分の元いたところに帰ったのだろう。
…とても嫌な置き土産を残していったけどね。


「……大会議室……あの大きな部屋……」
「どうする?あいつのことだし、無視してもいいと思うんだが」
「でも、行かないでいたら『オマエラ早く行けよ!』って急かさせるかも…」
「とにかく行ってみようぜ。俺も何があるか気になるし」


私達は互いの顔を見て頷き、大会議室へと向かった。
そこには、人数分のDVDケースと、人数分のDVDプレイヤーがあった。
DVDには、各々の名前が書いている。


「モノクマは『これを見てみろ』って言ってるのかしら?」
「…えぇ。でも、警戒は緩めないでね」


私はそう言い残して、プレイヤーの置いてある一つの席に座り、DVDを入れてみた。
…少し長いノイズの後に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


『春子、希望ヶ峰学園入学おめでとう』


その声の主は、父親であった。映像には、母親と祖母も映っている。


『この学園に入学できること、お父さんは嬉しく思うぞ。自分を信じで、学園生活を過ごしなさい』
『春子…。しばらく、会えなくなっちゃうのは寂しいけど、春子も寂しくなったらいつでも、家に帰ってきてね。お母さん、おいしい料理作って待ってるから』
『春子。春子が希望ヶ峰学園を卒業した時…おばあちゃんはもういないかもしれない。だけれども、強く生きるんだよ…。春子は、わたしの宝物だよ』
「父さん…母さん…。おばあちゃん…」


私はいつの間にか涙ぐんでいた。モノクマもたまにはいいことをするじゃない。
…そう思ったのが、間違いだった。
急に、その家族の穏やかな映像はぷつりと消え、次に出てきたのは…


私の家が、壊されていた映像だった。周りの景色はおどろおどろしく、さっきまでいたはずの家族は、映像からぱったりと消えていた。


父さんは?母さんは?おばあちゃんは?みんなどうなったの?
巨大な不安と絶望感、焦りと混乱が私に一斉に襲い掛かる。
…しばらくして、その映像も消え、最後には…


『神谷さんの家族は一体、どうなってしまったのでしょう?続きは、卒業の後で!!』


そう明るく言う、モノクマの声が聞こえただけだった。
私は、強烈な不安と恐怖感に襲われていた。

Re: ダンガンロンパF 第1章 〜希望の知識と絶望の運命〜 ( No.33 )
日時: 2013/10/02 17:03
名前: ランスロット (ID: ty0KknfA)

「ねぇ…なに、これ…」


隣でDVDを見ていた佐藤さんが顔を青ざめながら私を見る。
どうやら、佐藤さんも私と同じような内容の映像を見せられたのだろう。
…話を聞かなくても、一瞬で分かる表情をしていた。
しばらくして、他のみんなもDVDを見終わったらしいんだけど…。
みんな、浮かべる表情は同じだった。


「これが…動機…」
「…酷い。酷すぎるわ…」
「お母さん…お父さん…!!」
「おやおや、どうやらDVDを見終わったようですね」


声の方向を向いてみると、案の定これを仕掛けた張本人がそこに立っていた。
白と黒のクマのぬいぐるみのような物体。私達をここに閉じ込めてこれを見せた、張本人が。


「この映像は嘘よ!あたし、絶対信じないんだから!」
「…モノクマ、キミは一体…私達に、何をさせたいの…?」
「ボクがオマエラにさせたい事?それは……『絶望』、それだけだよ…!!!」


ぷひゃひゃひゃひゃ、とひょうきんな笑い声が大会議室を覆う。
それは、私達を嘲笑っているかのようで。それでいて。
…私達を、おちょくっているような、気がした。


「うぷぷ…。さて、DVDの詳しい内容を知りたかったらオマエラが自分たちの手で突き止めるんだね。この街に潜む謎…知りたければ好きにすればいい。ボクは止めないよ。…だって、オマエラが必死に真実を求める姿も面白い見世物だしさ!!」


モノクマはそれだけ言い残し、大会議室を後にした。
残ったのは…私達の心に渦巻いたある考えだった。


『はやく、ここから出なければ。誰かを、殺さなければ』


…一番考えてはいけない、一番恐ろしい考えを。


「いや…いや…どうして…どうしてなのよ!!!」
「立花…さん?」
「私は早く家に帰らないといけないのに…!」
「このDVDもきっと、モノクマのでっち上げに違いないですよ!自分を失ってはいけません!立花さん!!」
「いやあああっ!!離して!!早く家に帰りたいのよ!!!」
「立花さん!しっかりしてください!」
「そうだぜ立花!こんなDVD、信じるやつがバカなんだって!!」


東条くんが彼女を励まそうとそう言った途端、彼女の暴れ方が変わった。
…いや、暴れるのをやめた、と行った方が正しいだろう。
代わりに、彼女が見せたのは…絶望的な表情。
とても、DVDを見る前までの立花さんには見えない、もはや別人の表情だった。


「…そう…よね。あのDVDは嘘…。ありがとう、教えてくれて」
「立花…さん?」
「自室に戻るわ。ちょっと気分が優れないのよ…」


そう言って立花さんは会議室を出て行った。
花岸さんが彼女を追って行ったけど、立花さん…大丈夫かな?
帰る瞬間に、東条くんを睨んでいたような気がしたのだけれど…。


「神谷ちゃん、ごめんね。わたし達も帰るよ。白戸ちゃんがDVD見て気分悪くしちゃったみたいで…」
「僕達も帰ります。考えを…整理したいので」


一人、また一人と会議室から出ていく。
そうして、会議室には私、冥雅くん、神崎くんだけが残っていた。


「…2人は、大丈夫?」
「俺はなんとか…な。冥雅、お前かなり青ざめてるぞ?…部屋までついていくか?」
「…いや、もう、平気…だよ。あははは…」
「力なく笑っても説得力皆無よ…」


いつものやりとりも、覇気がなく、どことなく寂しげだった。


「…ねぇ、タブーなことを聞くようだけど…。2人のDVDにはどういう映像が映っていたの?」
「…それ、言わなきゃダメ?」


冥雅くんが捨てられそうな子犬のような目で私を見てきた。


「いや、言いたくないなら言わないでいいわよ」
「…ごめん。俺も言えないんだ…。」


神崎くんも申し訳なさそうにそう答えた。…そりゃそうよ、あの内容を喋れる人なんて、余程の勇気がある人でなければ喋れないわ…。


「…ごめんなさい、変なことを聞いてしまって」
「…あいつらがどうなったか、知りたいけど…。でも…。殺し合いは、絶対にダメだ」
「そうね…。モノクマの思うつぼになっちゃうものね」
「そうじゃない。神谷、例えお前が殺人を犯してここから出て、お前の大切な人が生きていたとしてもだ。…お前はそいつらに、真の笑顔で抱きつけるか?」
「え?」


そう私に問いかける神崎くんの表情は、どことなく真剣だった。
…まるで、全てを見通しているかのように。


「神崎くん…?」
「悪い、ちょっと感情入りすぎた。…冥雅の気分も優れてないし、部屋まで送ってくるよ。…じゃあ、またな」


そう言って、気分の優れない冥雅くんの肩を担ぎ、神崎くんは部屋から出て行った。
…私も、とにかく今起こったことの整理をしないと。
そう思って、自室へ戻っていった。