二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chater02 〜モウ一度俺ニ愛ヲ下サイ〜 ( No.61 )
日時: 2013/10/15 17:15
名前: ランスロット (ID: Qv./XS1Y)

『希望ヶ峰学園職業体験実行委員会がお知らせします。オマエラ、おはようございます。朝です。朝ですよー!今日もはりきっていきましょー!』


……もう朝なのか。いつの間に寝ていたんだろう、私。
私は相変わらずな耳障りな声とともに起床する。
昨日、つい昨日。二人、仲間がいなくなってしまった。
一人は、もう一人に殺されて。もう一人は、モノクマにおしおきされた。
…そして、その一人を議論で追い詰めたのは…………私達。
実行犯は確かにモノクマだが、彼女を死の道へと導いたのは、他でもない私達なんだ。
…とにかく、いつまでも落ち込んではいられない。食堂へ向かおう。
私は気だるい身体を無理やり起こし、食堂へと向かっていった。


「おはようございます、神谷さん。昨日は大丈夫でしたか…?」
「おはよう花岸さん。この通り、もう大丈夫よ」


食堂では、いつも通り花岸さんら早起きチームが私を迎えてくれていた。そりゃそうだ。昨日、裁判直後に倒れてしまったのだから。心配されないほうがおかしい。
私は、精一杯の笑顔を作り、手をバタバタして見せる。


「…ふふっ、神谷さんたら、アヒルみたいですね」
「アヒル?!」


…これのどこがアヒルだったんだろうか…。
そんなやり取りをしているうちに、影浦くん以外の全員が食堂に揃う。影浦くんは、いつも通り自室にいるのだろう。
モニャンもいつも通り厨房から食事を持ってきて、長テーブルに用意する。


「皆様、朝食のご用意が出来ています」
「俺、腹ペコペコだぜ〜」
「くるみもペコペコなのだ〜!」


それぞれ、いつも座っている席に座る。
…すると、2つの新しく空いた席が目に付いた。白戸さんの隣、そして安西さんの隣の席。
そこは、紛れもなく、昨日いなくなった仲間の席。
東条くんと、立花さんの席だった。


「人…少なくなったね」


安西さんがふと漏らす。みんな、昨日のことを思い出しているのだろう。無理して明るい表情をしていた数人も、暗い顔になっていた。
私は静かに目を閉じて、昨日の学級裁判を思い出す。


学級裁判の議題は、『誰が東条くんを殺したのか』だった。
調査と議論の結果、犯人は立花さんだということが分かった。
立花さんは…家族のため、そして東条くんへの勘違いから殺人を犯してしまった。
おしおきの時、彼女がミキサーに落ちる前の絶望的な表情は今でも忘れられない。
彼女は許されないことをしてしまった。でも…。彼女も、必死だったんだと思う。


殺人を強要された時は学級裁判なんてルールを説明されてなくて、東条くんが殺されてから説明が入った。
その時…。立花さんは、どういう気持ちだったんだろう。


「…立花さんも、やりたくてやったわけじゃない」
「それは僕たちも分かるよ。でも…人を殺すなんてダメだよ」
「分かってる。でも、誰も立花さんを責められないの。立花さんは…結果的に私達が殺したようなものだから」
「神谷ちゃん…」


とてつもない罪悪感に襲われる、そんな感じがした。


「…だからだよ。もう殺し合いなんて起こしちゃダメなんだ。俺たちが団結して、脱出方法を見つける。…今はそれしか出来ないよ」
「冥雅さんの言うとおりです。過去のことを悔やんでいても仕方はありません。わたくし達は、今できることをやりましょう」
「そうだな!!くるみ、もう落ち込まないぞ!東条や、立花の分まで生きる!」
「…東条がこの場にいたら、こんな空気すっ飛ばしてくれるんだろうけどな。でも…あいつはもうここにはいないんだ。だから…俺たちが元気でいなきゃ」
「うんうん!」


私達は互いを見て、互いに頷く。


「神谷、一人で思いつめないで。俺が、俺たちが、一緒だから」
「大丈夫。絶対…ここから生きて出よう、神谷」


冥雅くんと神崎くんが、私の方を向いてそう言った。


「ええ…二人の為にも、絶対に、脱出する。殺し合いなんて…もう起こさせやしない」


私も二人の方を向いて、頷く。
…久々に、私達が一つになった。そんな気がした。

chater02 〜モウ一度俺ニ愛ヲ下サイ〜 ( No.62 )
日時: 2013/10/16 18:18
名前: ランスロット (ID: 7XXeC3xS)

「…で、オマエラは何を糧に絆なんか語り合っちゃってるの?」


どこからともなく発せられる能天気で、残酷な明るい声。
声の正体は、私達もよく知っている……


「じゃじゃ〜ん!!モノクマだよっ!!」
「急に現れるなよ!!ビックリするだろ!!」
「だって〜、オマエラ何かいい雰囲気ジャン?だから、邪魔したくなっちゃってさ」
「しなくても結構だわ」


私を含めた全員の目がモノクマを睨みつける。
流石に全員に反抗的な態度を見せられたのはあいつにとっても刺さったらしく、モノクマは「しょぼーん…」と落ち込んでしまった。


「オマエラ全員に睨み付けられるなんてボク悲しいよ〜。ボクの防御力もダダ下がりだよ〜」
「ポ○モンかよ!!」
「せっかく新しい情報をオマエラに教えてあげようと思ったのになー」
「新しい…情報?」


モノクマが発した「新しい情報」というフレーズに、つい私はあいつに尋ねた。
彼はそれが嬉しかったらしく、うぷぷ、と笑みを漏らしこう言った。


「そうです。学級裁判を無事乗り越えたオマエラにご褒美を持ってきたのです」
「ご褒美…?」
「はい!!ではでは、発表しちゃいますよ〜。今回、困難を乗り越えたオマエラにご褒美として、ホテルの一部のロック、そして4つあるうちの柱を1つ、解除させていただきました!!」
「柱を解除する、ですって?」
「うん」


ホテルのロックはともかく、あのモノクマが柱を外す…?
あいつは私達をここに閉じ込めるために柱を立てたはず。なぜ…自分から外すようなことをするのだろうか。
あの柱の向こうには…外に出るための出口があるはずだ。


「じゃあ、私たち外に出られるんだね?!」
「ううん、出られませんよ。だって柱の外側も街なんだもん」
「…は?」
「は?じゃなくて、柱の外側は街になってるの。行ってみれば分かるけど、そこの街にはデカいバリケードの壁を用意させていただきました。 …ちなみに、それに触っちゃうと電気ビリビリで死んじゃうからね、気を付けてね!」
「……出られる訳じゃ……ないのか……」


かすかな期待をも打ち砕いているモノクマ。害悪以外の何物でもなかった。


「探索に特に制限はありませんので、どうぞご自由に歩いてみてね!それじゃあ、またね〜!!」


モノクマは笑顔で両手を大きく振り、テーブルから落ちた。
…あの戻り方は何とかならないのだろうか。
いや、そういうことを考えている時ではない。
学級裁判を乗り越えたご褒美に、ホテルと街の柱のロックを解除した。
…ということは、残りの柱の向こうにも同じような街並みが広がっているはず。
どっちにしろ逃げられないのには変わらないが…。


「あの柱の向こうには街があったのか…。でも、なんで小分けにして出す必要があるんだ?」
「あいつは『学級裁判を乗り越えたご褒美』って言ってたな。…モノクマ、俺達が学級裁判を起こすのを待っているみたいだな」
「駄目です!あんな悲しい裁判、もう起こしてはなりません!!」


それぞれがそれぞれの感想を漏らす。
そんな中、前向きに佐藤さんが発言を返した。


「とりあえず、新しく行けるようになったエリアを探索してみようよ!なにか新しい発見があるかもだし!」
「そうだ!くるみも佐藤に賛成なのだ!!」


いつの間にか佐藤さんと雨宮さんは仲良くなっていた。
…息ピッタリに、ハイタッチをして見せる。


「というわけで、今回も用意したよ割りばしのくじ!今いるのは14人だから…。4人のグループと3人のグループに別れて探索しよう!」


前回と同じように、佐藤さんはみんなのところを駆けずり回り、くじを引かせていく。
私が引いたのは……あら、今回も緑……。


「あ、今回は神谷さんと一緒なんだね。よろしくね!」
「はるちゃんと一緒だ!!嬉しいな〜♪」


今回一緒になったのは、星野くんと佐藤さんのようだ。
彼女のおかげか、今回もスムーズにグループが決まった。

赤の割りばしを引いたのは、冥雅くん、シオンくん、白戸さん。
青の割りばしを引いたのは、神崎くん、花岸さん、雨宮さん、豊島くん。
黄色の割りばしを引いたのは、秦野くん、長月さん、安西さん、羽柴くん。
…意外とバランスよくばらけたのかもしれない。


「今回の探索割り振りはどうする?」
「そうですね…。赤グループはホテルの中を、青グループは新たな街の東、黄色グループは西、緑グループは北でよいのではないでしょうか」
「うん!」
「じゃあ、俺たちはホテルの中を調べてくる。お互い頑張ろう!」


一番最初に出て行ったのは冥雅くん率いる赤グループ。
しっかりもののシオンくんがついているから大丈夫だろう。


「私達も出発するわ」
「……行ってきます……」
「いってらっしゃい。良い結果を期待していますよ」


次に探索に向かったのは黄色チーム。
割と大人しめのメンバーに、ムードメーカーの安西さんが加わり、なかなかバランスのとれた構成だ。


「では、わたくし達も出発いたします」
「お互い頑張りましょう!」
「神谷達もな」


そういって、青チームも出発した。
我先にと雨宮さんと豊島くんが走って行ったが、神崎くんと花岸さんがいれば大丈夫だろう。


「それじゃあ、あたしたちも出発しよっか!」
「そうだね。こんなところでグズグズしていられないからね!あぁ〜、どんな街並みが広がっているんだろうね!」
「行きましょう」


私達は再び互いを見て頷き、ホテルを出て新たな街へ向かって行った。