二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chater02 〜モウ一度俺ニ愛ヲ下サイ〜 ( No.69 )
- 日時: 2013/10/19 10:25
- 名前: ランスロット (ID: n6vtxjnq)
…私は、またおかしな夢を見ていた。
前回と街の雰囲気は似ているが、紫のストールの男の子、そして前回では手を握っている私とよく似た髪色の男の子が倒れている。意識を失っているのだろうか、それとも…。
そして、その隣には怯えて目の前の複数の男性を見るラベンダー色の髪を長く伸ばした女の子。
前回の夢から察して、恐らく彼女を守ろうとして二人はやられてしまったのだろう。
「チッ、どこまでもしぶとい奴だぜ。さっさと気絶してくれないかな〜お嬢ちゃん」
「どうしてわたしたちをいじめるの…?」
彼女の話し方も、どこか懐かしい感じだと思った。…本当に、この子に私はどこかで会っているのかな。
男達は彼女の言葉に対して、粗暴な返答をした。
「テメーらが邪魔くせーんだよ。我ら『絶望』にとってはな」
「おい!!『あの方』には『自分らが絶望だとは教えてはいけない』って言ってただろ!!」
「スザク様なら俺のことを見逃してくれるって、あの方は優しいから」
スザク。また新しい名前が出てきた。…もしかして、私達をここに閉じ込めたのも『スザク』という人なのだろうか。
「そんな…ひどいよ!!」
「残念だが、悔やむなら生まれつきの才能を悔やむんだなっ!!」
男性が女の子の腹に一撃を入れる。彼女は当然、それを真正面から喰らって倒れる。
それと同時に、私も何かで殴られたような痛みを腹に覚え、意識を失ってしまった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
『希望ヶ峰学園職業体験実行委員会がお知らせします。オマエラ、おはようございます。朝です。朝ですよー!今日もはりきっていきましょー!』
「あ…朝か…」
私は、いつものアナウンスで目を覚ます。今日ばかりはモノクマに助けられたと言っても過言ではないだろう…。
夢の中で感じていた腹の痛みは、今ではすっとなくなっている。まるで、最初からなかったかのように。
…そりゃそうだ、あれは夢なのだから。しかし、あの残っていた彼女…。
私に、似ていたような…。
と、とにかく、朝食会に参加しないと。モノクマがいつまたDVDの件のような罠を仕掛けるか分からない。
出来るだけ複数人でいた方が、事件も起こりにくい。
私は複雑な思いを振り切り、食堂へと足を進めた。
…そして、時間は過ぎ、ちょうど昼を迎えるところだった。
偶然会った神崎くん、シオンくんと共に軽い昼食を済ませて、私達はカジノで一勝負することになった。
そういえば、自己紹介の時にした約束、まだ果たしてなかったわね。シオンくんのカジノ捌き、とくと見るとしましょう。
「では、大富豪でもいたしましょうか」
遊技場内、カジノ台。シオンくんはまず、大富豪をしようと勧めてきた。でも、3人じゃちょっと手札のカードが多すぎやしないかしら?
「大富豪は、いうなれば心理戦。相手がどのカードを出そうとしているのかを事前に予測し、どのカードを出すかを検討せねばなりません」
「…意外に、難しいんだな。軽く考えてた」
「いえ、軽く考えていただくのが一般的です。しかし、この勝負の世界は『お金のかかった勝負』…。数々のギャンブラー達は、如何にしてディーラーを欺くのか。ディーラーは、それを読んでゲームを進行しなくてはなりません」
「ギャンブルに、命をかけている人もいるものね…」
「さて、カード分けが終わりました。お二方、どうぞ好きなのを選んでください」
三角形状には綺麗に三等分されたトランプのカードが並んでいた。
…まぁ適当に、ここは自分から近いカードを取っておこう。
「ふふっ、お二人とも自分に近いカードを選ぶのですね。正直なのですね」
「カードを選ぶときでも、相手の心理が読めるものなのか?」
「そうですね…。カードを選ぶ、ということはすなわち手札を貰う、ということです。自分から遠くのカードを選ぶ方は、本気で勝ちに来る方が多いです。結果、欲を出しすぎていいカードが回ってこなかったりするんですけどね」
「まぁ、これはお金のかかった勝負じゃないんだし、気楽に行きましょ」
大富豪が始まった。スペードの3を出したのは…シオンくんか。流石に、シオンくんは強そう。そして、学級裁判でもかなりの推理力を見せていた神崎くん。彼も強いだろう。
…勝てる気がしなくなってきたわ。
私達はカードを出し合っている時に、シオンくんに話題を吹っかけてみた。話題はもちろん、「唯一引き分けた『超高校級のギャンブラー』との対決」の話。
…『超高校級のギャンブラー』って、どういう人なのかしら。
「…あれは、僕がまだ中学生の頃でした。アメリカのラスベガスで、僕は既にディーラーとして働いていて、幾人とのカジノ勝負を捌いてきました。
とある日、黒いゴスロリの服に身を包んだ小柄な少女がやって来ました。彼女のことは、僕も当時から知っていました。
『超高校級のギャンブラー』セレスティア・ルーデンベルク…。ゴスロリが好き、ということ以外が謎のベールに包まれている、ということで噂になっている女子中学生でした。
僕は彼女に興味を魅かれ、彼女と『ポーカー』で勝負をすることにしました。彼女との対戦は白熱を期しました。そして……
最終戦。僕は、ストレートフラッシュを出しました。彼女も…ストレートフラッシュを出しました。結果、勝負は引き分け。いつの間にか他のお客様も僕等の勝負を見続けていたそうです。
彼女とはその後お会いしていないですが、いつか再開した日には、今度こそ勝ちたいですね」
そう言葉を残し、シオンくんの手札がなくなった。
シオンくんが、一番乗りだった。話してる間でも頭で考えていたのね…。
結局、神崎くんにも読み負けて、私は惨敗してしまった。
…その後の勝負も、ことごとく負けてしまったのは、ここだけの秘密にしてちょうだいね?
- chater02 〜モウ一度俺ニ愛ヲ下サイ〜 ( No.70 )
- 日時: 2013/10/19 18:08
- 名前: ランスロット (ID: W8wXq41i)
次の日、私は豊島くんの誘いでモノクマタワーにやって来ていた。
報告で聞いたものでのイメージとは全然違ってて、少しだけ自分の感性を疑った。
目の前にあった塔は……。本当に白と黒のとぐろ状に巻かれている、まるで貝のような建物だったのだ。頂上にちょこんと乗っているモノクマが、あいつらしさを引き立たせている。
「でもよ、この塔ってなんのためにあるんだろうな?」
「娯楽施設らしいけど、一体どんな施設なのかしら」
「入ってみるっきゃないだろ!入ろうぜ、神谷!」
そういいながら豊島くんは我先にとタワーへ走って行った。
…流石ダンサー、足が速い。…って、考えてる場合じゃないわね。私も後を追わないと。
私は豊島くんに続き、タワーの中へと足を踏み入れた。
「中身も白黒なんだなー」
「まるで昔のテレビみたいね」
タワーに入っても、外装と同じく壁は白黒が続いていた。ある程度進んでみると、そこでは分かれ道が広がっており、一種の迷路のように感じた。
…これは、錯覚を使った迷路なのかも?
「うわっ、分かれ道かよ…。入っちゃったのは仕方ねえけど、どうやって頂上まで行けってんだ」
「何か法則性があるはず。それを考えましょう」
何本にも別れた分かれ道。分かれ道の色は、奇数のものが白、偶数のものが黒だった。
試しに一番左の白の道を通ってみたが、元の場所に戻ってきてしまった。…どこまで行っても白黒だから元の場所かどうかはわからないけど…。
「あぁ〜、俺たちここで死んじゃうかもな〜…」
「柄でもないこと言わないでください」
…ここで死ぬなんてまっぴらごめんよ。
「…ん?」
…あれ、真ん中の道の色が入れ替わっている…?私は目を凝らしてよく見てみた。
すると、真ん中の分かれ道が一本になっているのが分かった。
「豊島くん、たぶん…真ん中の道を行けば上に行けるわ」
「マジか?!」
「確証はないけどね。これは、7本の分かれ道に見せた3本の分かれ道だったのよ。壁を触ってみて」
私に言われたとおりに豊島くんは壁を触る。
…やっぱり。豊島くんの手は壁で止まった。
「すげえ!!俺7本あるかと思ってた!!」
「目の錯覚を使ったトリックね。さぁ、次の階に行きましょう」
次の階は、単純な迷路だった。
迷路は小さいころによくやっていたから、お手の物よ。
難なく次の階へと行くことができた。
そして、3階。
そこには、見覚えのある小柄な少女がいた。
「雨宮さん?」
「神谷に豊島か!!神谷らもここに来たのか?」
どうやら彼女の話を聞く限り、彼女も興味を持ってここにやって来たらしい。
そして、3階のクイズの謎に困っているそうなのだ。
「これなんだが…解けるか?神谷」
そう言って雨宮さんは目の前のパネルを指さす。
パネルのすぐそばには、問題と同じ漢字のブロックと、グループ分けするための箱が置いてあった。
ゴールへの道を示せ
【問 次の漢字を、2つのグループに分けよ
周 圭 火 重】
「3階はクイズなのか」
「考えてみたんだが、くるみにはさっぱりなのだ…。神谷たちが来てくれて、良かったのだ!!」
…これは…。
私は何も言わずに、漢字を正しい箱に置いていく。
途中で、「おぉ!!」など、感嘆の声が聞こえたけど…。私の様子に、二人はどう思ったのだろうか…。
「…できたわ。一つのグループは、部首が「さかなへん」の漢字。もう一つは、部首が「のぎへん」の漢字よ」
ピーンポーンピーンポーン
どこからともなく正解を示すサイレン音が流れ、ドアのロックが解除される音が聞こえた。
…タワーの高さからして、これ以上の謎解きはないと信じたい。
私達は、次の階へと進んだ。そこで、待っていたのは………
「おめでとう神谷さん!!」
…このタワーのモデル本人だった。モノクマは、手に黒いファイルを持っている。
「はい、クリア報酬!今ここで読まずにホテルでじっくり読むことをお勧めするよ〜」
「…なにかしら、これ?」
「開けてみてからのおったのっしみ〜!」
それだけ言って、モノクマはエレベーターで降りてしまった。
豊島くんも、雨宮さんも、黒いファイルに釘付けになっている。
「…怪しいファイルなのだ」
「何か凄いことが書いてありそうだけどなー…。多分俺には分かんねーよ。神谷、お前が見ろよ」
「くるみもそれに賛成なのだ!!」
それって責任の押しつけなんじゃ…
「一人で見るのが怖かったらさ、誰か自室に呼んで一緒に見ればいいんじゃね?」
「とにかく、タワーを降りるのだ…。くるみ、疲れた…」
私も疲れた、いろんな意味で。
まぁとにかく、このファイルは自室でゆっくり見ることにしましょう。
私達はモノクマの降りて行ったエレベーターを使いタワーを後にし、ホテルへと戻って行った。
- Re: ダンガンロンパF 第1章 〜希望の知識と絶望の運命〜 ( No.71 )
- 日時: 2013/10/20 17:53
- 名前: ランスロット (ID: 83yASpp9)
「開くべきか、開かざるべきか…」
私は、昼間豊島くん達に託された黒いファイルとにらめっこをしていた。
流石に一人で見るのはいただけなかったので、頼れそうな冥雅くんと神崎くんを呼んで一緒に見ることにしたのだが……。遅い。
私は二人が到着するまで、こうしてファイルとにらめっこを続けているのだった。
「神谷、来たぞ。冥雅も首根っこ引っ張ってきた」
「ハーーーブティーーーーー…………」
神崎くんの声がしたので、私は自室のドアを開ける。そこには冥雅くんの服の襟を引っ張っている神崎くんと、ひたすら「ハーブティー」と嘆き続ける冥雅くんがいた。
「冥雅くん…どうしたの?」
「約束の時間になってもハーブティーの選別に迷っててさ。無理やり連れてきた」
「あ、うん…」
心なしか冥雅くんがかわいそうに見えた。
…いや、今はそんなことを思っている場合ではない。昼間の黒いファイルについて、二人に話さないと。
私は二人を部屋の中に入れて鍵を閉め、黒いファイルを二人に見せた。
「いかにも怪しそうなファイルだね」
「重要そうな情報がたんまりありそうだな。でも、モノクマはなんでこんなものを3人に渡したんだろう?」
「…気まぐれじゃないかしら?モノクマの」
神崎くんの疑問に、私は適当に思ったことを答える。
本当は別の意図があるのかもしれないが、今はその意図を考えても仕方ないだろう。
「…開けるわよ」
「うん」
意を決して、封をはさみで切る。
中に入っていたのは、1冊の冊子だった。紙が束ねられて、ひもでくくりつけられている。
表紙にはこの街によく似た写真が貼ってあり、『希望ヶ峰学園 学生隔離街計画案』とタイトルが書かれてあった。
「何これ?」
「この写真…今俺達が閉じ込められている街に似てるな」
「とにかく、中身を見てみましょう」
私達はその冊子の1ページを開き、目次を見てみる。会議で使いそうな、計画書だと感じた。
ただ、やたらと多い「学生を隔離する」という文…。どこか、違和感を覚えた。
「この街は元々、希望ヶ峰学園の生徒が使う予定だった街なのかしら」
「今までに見た建物も高校生が行きそうな場所がたくさんあったし、そうかもしれないね」
「…モノクマが言っていたことは、本当だったんだな」
何も言わずに冊子を読み進めていく。
すると、とあるページで神崎くんが止めるように言ってきた。
「どうしたの?」
「このページ、街に住む『住居予定者』が書いてある。…もしかしたら、前にこの街に住んでいた奴が分かるかも」
「よーし、読むよー」
『希望ヶ峰学園79期生から、以下の者を住居予定者として認定する』
79期生 A組
・白取幸輔
・斎藤和香
・一ノ瀬悠魔
・赤平町華
・斬先信吾
・黒沢凛
・暗井リュウ
・篠原由依
・五戸武
・シャルン・ルミエール
・渋谷零
・緑間あゆみ
・須賀井良彦
・水無月愛美
・七峰佳純
・八幡飛鳥
「…79期生?俺達も79期生で入学するはずだった。でも…」
「自己紹介したメンツの中には、こんな名前なんてなかったよね」
「どういうことかしら…」
ということは、79期生は私達だけじゃなく、他にもいる、ってことになるんだけど…。
そう思って次のページを開こうとしたが。あれ?
冊子を見てみると、その後のページがすべて破り取られ、最後の裏表紙のみが残っている。
「不自然ね。後のページが全部ないなんて」
「後のページに重要な情報が書いてあった、って考えるのが自然だが…」
「モノクマの奴、本当に何考えてるんだろうね」
…モノクマ、重要な情報は私達には教えないつもりなのね。
まぁ、この街に住んでいたのが、恐らくではあるが『私達と同級生』だった。これだけの情報でも、かなりの収穫だと思う。
「…にしても、なんでこのページに書いてあった人みんないないんだろうね。79期生なら一緒に閉じ込められてもおかしくないのに」
「でも、希望ヶ峰学園が集める生徒は、各期生1クラス分だけだと聞いているけど…」
「どうして2クラス分の生徒がいるのか。それも新しい疑問だな」
解決した問題と共に、新たな問題が湧き出てくる。
…この街の謎、明かすことができるのだろうか。そして、私達はここから出られるのだろうか。突然の不安に襲われるが、気持ちを強く持ち不安を振り払う。
…今解決すべき問題ではない。そう思い、2人とは後日話し合うことを提案した。2人も賛成してくれたようで、今のところはそれぞれの自室に戻ることになった。
冥雅くんが「ハーブティー!!」と再び叫び始めたのは……きっと気のせいだろう。