二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chater00 〜絶望職場体験・スタート〜 ( No.8 )
日時: 2013/09/21 09:05
名前: ランスロット (ID: UbyZEBNe)

ホテルのロビーに着いて、16人の少年少女がいた。
そして、隣にいる冥雅くんは「超高校級の幸運」として学園に入学する…。
恐らく、この人たちも「超高校級」として学園に入学する生徒なんだろう。
しばらく考えていると、金髪の小柄な少女が冥雅くんに確認を取り始めた。


「冥雅、そいつでラスト?」
「うん、そうだよ。他にも回ってみたけど、彼女意外は見つからなかったし」


間髪入れずに、動きやすそうな服装をした青年が私に話しかけてきた。


「じゃあキミ、名前教えてくれよ。俺達自己紹介終わっちゃったから、後はキミだけなんだ」


もう自己紹介は終わってしまったらしい。彼らのことについては後で個別に話しかけることにしよう…。


「分かった。私の名前は神谷春子。『超高校級の知識』ってことで学園に入学することになったわ。よろしく」


「知識…?なぁお前、聞いたことあるか?」
「さぁ…。でも冥雅の『幸運』だってネットに載ってなかったんだし、そういう肩書が合ってもおかしくないよ」


ざわざわと数人が話し始めた。どうやら私の情報はインターネットに載ってないらしい。…そりゃそうだ、私は別に特別なことはしてないんだもの…。
でも、みんなに話しかけるチャンスかもしれない。まずは、左に群がっているあのグループから話しかけてみよう。

私は、くるくる巻いたポニーテールが特徴的な女子に近づいた。


「どーも、村上一夜です!よろしくね〜!!」


村上一夜。彼女がリポートした場所や食べ物はすぐさま人でいっぱいになって「人気スポット」と化したり、販売直後に完売してしまう「人気メニュー」になるなど、テレビでも大人気の『超高校級のリポーター』だ。
テレビでも何回か見たことがあるけど、やっぱり明るくて元気な雰囲気を感じる。


「ねぇねぇ、神谷ちゃんの住んでいる町のおススメスポットを教えてよ!あたしがリポートして人気スポットにしてあげるからさ!!」
「え?でも…私の住んでいる町はあんまりそういうのないから…大丈夫よ。お気持ちだけ受け取っておくわ」
「そうなんだ…残念。…あ!でも神谷ちゃんをリポートすればあなたを訪ねて全国から人が集まるんじゃない?!『ありえない記憶力の持ち主!世界の理を知り尽くした少女!!神谷春子特集』って感じでさ!」
「いや…それは…遠慮しておこうかな…」


…この子、放っておけば私を取材しかねないわ…。
私で町が活気に溢れるのはいいんだけど、プライベートをさらけ出されるのは流石に嫌だもの…。
私は村上さんと軽くあいさつをして、バンダナを巻いた金髪の男性の方に顔を向けた。


「僕、星野梓沙っていいます。これからよろしくね!」


星野梓沙。『超高校級の美化委員』として、国から功労賞を貰った経験のある男子高校生だ。彼に掃除をさせると、どんなに汚れたものでもたちまち新品同様になって戻ってくるらしい。
薄紫のバンダナがよく似合ってる、爽やかそうな男子だと感じた。


「神谷さんは、普段から部屋の掃除はしてる?」
「なるべくするようにはしてるけど、忙しいときは掃除をしないこともあるわね」
「神谷さん。忙しくても、毎日の掃除だけは怠っちゃだめだよ。掃除には運気も関わってくる。部屋が汚いと幸運の神様も逃げて行っちゃうから。流石に、冥雅くんの幸運は逃げないと思うけど…」
「へぇ〜。気を付けてみるわ」


星野くんから掃除の心得について少し話し合った。
本当に掃除が大好きなんだなぁ…私はそう感じた。掃除のことを話す星野くんはとても楽しそうだった。
次に、金髪の小柄な少女の方に顔を向けた。


「雨宮くるみ!『千変万化のコスプレイヤー』くるみんとはくるみのことだー!!!」


雨宮くるみ。全国のコスプレイヤーの憧れの的で、彼女に衣装制作を頼めば、最高の出来で仕上がると言われている『超高校級の着ぐるみ職人』だ。
本人も自作の衣装を着てイベントにも参加したことがあるらしい。
まるで小学生を思わせるような小柄な少女だった。


「神谷ー、神谷はコスプレとかするのか?」
「え?私?したことないけど…」
「なんと!もったいないぞ神谷!お前ほどのぷろぽーしょんなら、露出の高い衣装だって着られると思うぞ!後で着てみるか?」
「うーーん…興味はあるけど…また今度ね」


露出度の高い衣装がすごく気になるけど、嫌な予感しかしないのでやんわりお断りしておいた。
そういえば、過去に「超高校級の同人作家」と言われた人と合同でイベントに参加して、新作の同人誌とコスプレ衣装を完売してしまったらしいのよね…。
…やっぱり露出度の高くないものなら来てみようかな。

chater00 〜絶望職場体験・スタート〜 ( No.9 )
日時: 2013/09/21 09:43
名前: ランスロット (ID: UbyZEBNe)

次に、私は黒ずくめの向こうを向いている男子の方に顔を向けた。


「…何だ」
「いや、名前を聞こうと思って。分からないと何て呼べばいいか分からないでしょ?」
「…影浦凍耶だ」


影浦凍耶。日本中、いや世界中で人気を博している歌舞伎界のプリンス。つまり、『超高校級の女形』だ。
特に、彼の女形は、まるで本物の女性が演じているようだ、とすごく高評価を得ているという。


「お前と話すことは何もない。さっさとどこへでも行ってしまえ」
「そういう言い方はないんじゃないの?」
「俺はお前らとつるむつもりはさらさらないからな。これからも一人で行動させてもらう」


そういうと、影浦くんはスタスタとどこかに歩き去ってしまった。ちょっと性格に難ありの子ね…。
私が立ち尽くしていると、冥雅くんが話しかけてきた。


「ごめんね、影浦あんまり人と話すのが好きじゃないみたいなんだ。他の人が話しても同じような態度だったから、あんまり気にしないで」
「えぇ。冥雅くんも、私のこと気にしてくれてありがとう」


冥雅くんは人を気遣える優しい人なんだ。それも、素敵な才能だと思った。
次に、エメラルドグリーンのパーカーを被った青年の方に顔を向けた。
…あれ、もしかしてこっちに気づいてないのかしら?


「…あのー」
「あっ……えっと……その……」
「名前を教えてもらえるかしら?」
「……秦野……吟也……」


秦野吟也。幼い頃からパソコンをいじり、小学生の時に世界の闇企業が立ち上げている闇サイトに楽々ハッキングし、その組織を壊滅させたという逸話がある『超高校級のハッカー』だ。
現在に至るまでに彼のパソコン一つで潰した闇企業は数えきれないほどある。


「…………」
「もしかして、他人と話すのが嫌なの?」
「……いや……そういうわけじゃない……。単に話すのが苦手なだけ……変な勘違いさせてゴメン……」
「そう、それなら良かったわ。影浦くんみたいに嫌われたらどうしようかと思った…」


秦野くんはペコペコと私に謝ってきた。その様子を見て私はちょっとほっとした。私のこと、信じてくれているみたいだから…。
そう思っていると、秦野くんが誰かとぶつかった。声からして星野くんあたりだろうか。


「あっ、ごめん秦野くん!!」
「……あ」


ぶつかった衝撃でパーカーのフードが脱げた。そして、私は見てしまった。秦野くんの素顔を。…あれ、この中で一番の美形なんじゃ…。
マジマジと見つめている私に気付いたのか、秦野くんはフードを即座に被りなおして顔を両手で覆ってしまった。


「……神谷……。今のは……忘れて……」
「え?でも秦野くんすごく綺麗な顔つきしてる…」
「……お願い……忘れて……」
「…うん」


秦野くんの言葉に私は黙って頷いてしまった。
…もしかして、素顔を見られるのが嫌だったのかしら…?
私は「ごめんね」と一言謝り、秦野くんとの会話を終えた。


次は、中央に群がっているグループに話しかけてみよう。
私はコック帽を可愛く被った三つ編みの女の子の方に近づいた。


「やっほー神谷ちゃん!私は、安西桃花っていうんだ。よろしくね!」


安西桃花。両親が有名なお菓子作りの達人で、彼女も幼い頃から手伝ってきたためお菓子作りは両親の腕と互角、もしくは上とも言われている『超高校級のパティシエール』だ。
彼女の制作するお菓子は、予約がすでに埋まっており、今頼むとしたら数年は待つ覚悟をしなければならないほどの人気だ。
女子とスイーツの話で盛り上がっているところを見ると、彼女はこの中で一番「女の子」らしいと感じた。


「神谷ちゃん、お菓子は好き?」
「えぇ。特に好きなのはケーキの類ね。キミのお店のケーキも食べたことがあるけど、そのケーキ以上の味は今までには見つからなかったわ」
「えっ、あたしの店のケーキ食べてくれてたんだ!」
「とても美味しかったわ。まるで楽園にでもいるかのように」
「神谷ちゃん大げさすぎ〜!もしよかったら、明日にでもケーキ、作ってあげよっか?シオンくんにでも頼んで飲み物を用意してもらってさ!」
「ええ。いいわね」


完全に女子会ムードだ。でも、悪くないわね。
安西さんは「ケーキだけじゃなくてタルトも得意なんだよ」と言っていた。安西さんの作るデザート、今から楽しみになってきた。

chater00 〜絶望職場体験・スタート〜 ( No.10 )
日時: 2013/09/21 11:36
名前: ランスロット (ID: 7XXeC3xS)

次に、長い金髪を後ろでまとめている白衣の男子の方に顔を向けた。


「羽柴陸斗だ。ま、これからよろしくなァ」


羽柴陸斗。小学生の時に「不治の病」とまで言われた難病を治す薬を開発し、最年少でノーベル化学賞を受賞した『超高校級の科学部』だ。
その後も難病に効く薬品を開発し続け、医療の発展に基づいたとして「科学の最先端を行く男」として噂になっているらしい。


「…どうしたァ?俺の顔に何かついてるか?」
「いや、科学者って言ってたからもっと陰湿で陰険な人かと思ってて…」
「まぁ、しょーがねェわな。科学者ッたって、口ばかりで大して研究してないクズ野郎も世の中にはわんさかいるんだ。オマエがそう思うのも普通だと思うぜェ」


科学者って割には、まともな考えを持っていると感じたけど…ちょっと失礼なことをしてしまったかしら。
でも、羽柴くんは全然気にしてないと答えてくれた。それを聞いて安心した。
羽柴くんの薬品トークを聞いた後、私は黒髪で紺色のセーラー服を着ている少女の方に顔を向けた。


「長月舞子よ。これからよろしくね、神谷さん」


長月舞子。彼女が元々通っていた高校で図書委員を務めて、学校の全校生徒を読書好きにしてしまったという逸話がある『超高校級の図書委員』だ。
本をこよなく愛し、物語から登場人物の心境を読み取り、筆者が書きたかったことを確実に読み取ってしまう能力もあるという。


「それにしても、ここに集まった生徒は凄いわね。みんな第一線で活躍している器の大きな人達ばかりだもの」
「長月さんの才能も凄いと思う。だって、全校生徒を読書好きにしてしまったんでしょ?それって、並大抵では出来ないことよ」
「買い被りすぎよ。私は本嫌いなクラスメイトに『少し本を薦めた』だけなんだから。本が好きになるかは本人次第。私の力じゃないわ」


長月さんはこう言ってるけど、やっぱり『超高校級の図書委員』の名は伊達ではないと感じた。
お互いに好きな本の話をしている時の長月さんは、凄く楽しそうだったから。
次に、ウエイターのような服を着ている青年の方に顔を向けた。


「シオン・スカーレットと申します。皆さん、どうかよろしくお願いします」


シオン・スカーレット。「真実の探究者」という異名を持ち、数々のギャンブラーの賭けを公平に裁いてきた『超高校級のディーラー』だ。
一番得意なのはルーレットで、狙った場所に球を入れるのは朝飯前らしい。


「神谷さんは、カジノにはご興味はありますか?」
「カジノか…。トランプなら友達とやったことはあるけれど、本格的なのはやったことないわね」
「トランプですか。では、後日僕とトランプゲームで勝負していただけませんか?」
「え?でも私実力はあまりないから、勝負になるかどうか…」
「勝負とは時の運なのです。冥雅さんみたいにとんでもない幸運の持ち主はともかく、勝負に勝つか負けるかは時に委ねられているのです。そこに僕の技術を少し捻じ込んで、カジノのゲームをより面白くしているのですよ。…すみません、話がずれてしまいましたね」
「時の運か…。シオンくん、その勝負、やってみるわ」
「お互いに時間ができたらやりましょう。僕も楽しみにしております」


トランプの勝負、ノリで引き受けちゃったけど大丈夫かしら?
何せ、シオンくんは過去に「超高校級のギャンブラー」とと言われた女子高生と戦って、引き分けている実力の持ち主。
…勝てるかどうか心配になってきたわ。
次に、袴を着た礼儀正しそうな女性の方に顔を向けた。


「花岸美那子と申します。以後、お見知りおきを」


花岸美那子。全国の数々の弓道大会の記録を塗り替え、弓道におけるギネス記録も持っていて、次期オリンピックのアーチェリー競技での優勝候補としても期待されている『超高校級の弓道部』だ。
家は室町時代から続く伝統のある家系らしい。


「神谷さん、これからよろしくお願いしますね」
「えぇ、こちらこそよろしく」
「…それにしても、皆さんには緊迫感が足りないと思いませんか?こんな得体のしれない所に閉じ込められて…。何が起こるか分からないというのに」
「それはそうかもしれないけど、まだ何も起こってないんだし、変に緊張感を持たなくてもいいんじゃないかしら」
「まぁ、それもそうですね。…うふふ、神谷さんが言うとなんだか説得力がありますね」


私に説得力がある?いやいや、と私は必死に首を振った。ご謙遜なさらずに、と花岸さんはくすくす笑った。
まさに日本女子、というような佇まいの大和撫子だった。

chater00 〜絶望職場体験・スタート〜 ( No.11 )
日時: 2013/09/22 17:59
名前: ランスロット (ID: 2GxelfGo)

最後に、右に群がっているグループに話しかけてみよう。
私は、小さなシルクハットを可愛くかぶった少女の方に顔を向けた。


「はろ〜、あたし佐藤かがみ!よろしくね、はるちゃん!」


佐藤かがみ。世界的に超有名なサーカス団の看板娘で、マジック・イリュージョン担当である『超高校級のマジシャン』だ。
彼女の行うマジックは、まるで「魔法使いの魔術のようだ」と老若男女から大反響を読んでいるらしい。


「は〜るちゃん、右手見てみてよ」
「え?」


佐藤さんに言われ、私は握っていた右手を開く。
その中には、可愛らしい包装紙に包まれたキャンディーがあった。


「いつのまに?!」
「ながっちと話してる時あたりにあたしがマジックを仕掛けたのです!はるちゃんあたしに気付かないから仕掛けやすかったよ☆」


長月さんと話してる時…結構前ね。彼女の気配に気づかなかったわ…。
私の表情を見て、佐藤さんは無邪気に喜んでいた。
次に、動きやすそうな服装をした青年の方に顔を向けた。


「豊島未来っていうんだ。これからよろしくな!」


豊島未来。世界で開催されているダンス大会で、毎年優勝していたダンサーを打ち破って頂点に君臨した『超高校級のダンサー』だ。
彼、実は幼い頃からダンスをしていたわけではなく、趣味で踊り始めたのが半年前らしい。半年で世界に認めさせる技術を身に着けたのだ。


「なぁ神谷、お前ダンスは好きか?」
「うーん…好きっていうわけでもないし、でも嫌いっていうわけでもないわね」
「そっか…。せっかくだからクラスメイトで創作ダンスでも踊ろうかと思ってたんだけどなぁ…」


豊島くんは私と話す前にも、他の生徒たちに話しかけているのを見掛けていた。
きっと前いた学校でも積極的に他人と関わっていたんだよね…。多分。
次に、ボーダーのワンピースを着た少女の方に顔を向けた。


「立花実貴よ。よろしく、神谷さん」


立花実貴。務めたアルバイト先の売上をうなぎ登りにさせたとんでもない逸話の持ち主である『超高校級のバイトマスター』だ。
夜間学校に出身であり、年齢の壁を越えて他人と話すことができる才能の持ち主でもあるという。


「立花さん、凄いわね。バイト先の売上をうなぎ登りにしちゃうなんて」
「いえ、私はただ必死だっただけよ。家族に少しでも楽させてあげたいからね」
「家族思いなのね」
「え…えぇ…ありがとう」


最後の反応が少し気になったけど、私が突っ込むべきことではないと判断し、黙っていた。
でも、仕事が出来る女性って、かっこいいなぁ。

chater00 〜絶望職場体験・スタート〜 ( No.12 )
日時: 2013/09/22 18:30
名前: ランスロット (ID: 2GxelfGo)

次に、ゴーグルをかけたつんつん頭の青年の方に顔を向けた。


「俺は東条健悟!よろしくな、神谷ちゃん!」


東条健悟。スキー種目の大会で数々の記録を更新し、次期冬季オリンピックのスキー競技の候補生にも選ばれている『超高校級のスキーヤー』だ。
彼のスキーのテクニックに、全世界からファンが詰め寄せるほどの人気らしい。


「なぁ、神谷ちゃん。後で俺とデートしねぇ?」
「…は?」
「いやぁ、この場所もきっと学園長が俺達の恋路のために用意してくれた…」
「えっと…あの…」
「ちょっと東条!!神谷さんが困ってるでしょ?!」


急なデートの誘いに戸惑っていると、立花さんが東条くんの耳を引っ張って彼を叱り始めた。


「ごめんなさいね神谷さん、東条すぐに女の子をナンパする癖があって」
「うん…ありがとう」


そういうと、じゃあ後でね、と立花さんは東条くんの耳を引っ張ったまま私から離れていった。東条くんの「神谷ちゃん!!俺は諦めねぇからなー!!」という言葉が聞こえた気がしたけど…気のせいだと思っておこう。
次に、ベレー帽を被った三つ編みの少女の方に顔を向けた。


「白戸佳織です。なにどぞよろしくお願いします…」


白戸佳織。史上最年少で数々のアカデミー賞を総なめにしてきた『超高校級の映画監督』だ。
彼女の容姿も相まって、一定の層の熱狂的なファンが後を絶たないらしい。確かに…この容姿なら大きいお友達が興奮しそうだわ。


「神谷さんはどんな映画を見るの?」
「映画?そうね…ミステリーものなんかはよく見るかな。」
「そうなんだ…。ミステリーものの作品なら私のカバンの中にあったはずだから、後で一緒に見る?」
「いいの?」
「うん。見てもらって他の人達から意見をもらうことも大事なことだから…」


そう言って彼女は優しく微笑んだ。…一瞬彼女の笑顔にときめいてしまったのは気のせいだろう。うん、気のせいよ。
これ以上彼女の笑顔による被害を受けるわけにはいかないので、見る約束をして白戸さんから離れた。
次に、帽子をかぶった茶髪の少年の方に顔を向けた。


「神崎満月。まぁ、これからよろしくな」


神崎満月。大人気音楽ゲームシリーズに楽曲を提供し、世界でも注目を浴びている『超高校級のDJ』だ。
私も前に彼が楽曲を提供している「beatun maniax」ってゲームで彼の音楽を聴いたことがあるんだけど、なんていうか…音が生き物のように動いている感じがした記憶がある。


「…どうした?神谷」
「いや、随分派手な格好をしているのに、やけに落ち着いてると思って」
「ははは、俺の所属してるレーベルの仲間にもよく言われるよ。「なんでお前は派手な格好してるのに落ち着いてるんだよ!」って。でも、DJだからといってチャラい必要性はないだろ?」
「確かにそうね」


そう言って神崎くんは苦笑した。私のイメージしていたDJと全然違ったので、私はまだ驚きを隠せないでいた。
「神谷は俺がチャラい方がいいのか?だったらそれらしく振舞うけど」と言ってきたので、とりあえず「神崎くんらしいままでいいんじゃないかな?」と返しておいた。
神崎くんは「そっか」とだけ呟いて自動販売機の方に歩いて行った。
…不思議な人だなぁ。


これで全員と話し終えたかな?
私が辺りを見回していると、隣に冥雅くんがやってきた。


「全員と話できた?」
「えぇ、お陰様で。個性的な人達が沢山いるわね」


打ち解けられるかしら、とつい本音を漏らす。冥雅くんは皆の方を向いて、「神谷らしくいれば大丈夫だよ」と励ましてくれた。
…倒れた時に出会ったのが、冥雅くんで本当に良かったかもしれない。