二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.1 )
- 日時: 2013/10/05 13:52
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: w1PAg8ZW)
「……なぜだ」
何故だ、何故だ、と彼は何度も理由を尋ね続けた。だが、彼は誰に尋ねているわけでもなかった。どちらかと言うと、独り言の類い。彼は、嘆きたかった。——どうしてこうなった、何が間違っていたのだと。
だが、いくら嘆いても何も変わりはしない。溢れてくるのは涙だけで。全身が熱を帯びたように熱くなり、視界も熱で溶けたの如くぐにゃぐにゃしている。
彼は大好きだったあの人に裏切られ、大好きだったあの子を傷つけた。
もはや自分を支えてくれる人などこの世にはいない、と彼は絶望する。
あの人に裏切られることはまだいい。納得がいく。あの人は元々えこひいきだった。好かれようと努力したところで、結果は目に見えていた。だから、裏切られても平気だった。
だが、あの子を傷つけてしまったことだけは許せなかった。
短時間に作りあげた絆は脆くも崩れ去り、何も残らなかった。ただ、昔のように彼と仲良くしたかっただけだった。——それなのに。
彼の横でかが、涙を滂沱のように流している。喉を震わせ、しゃくりあげている。
「あいつを……取り戻したい。オレたちには、あいつが必要なんだっ」
「……珍しく意見が合うようだね」
二人は顔を上げた。
ふと、思い出が走馬灯のように蘇る。
幼いあの子が笑う顔ばかりだった。からかうといじけ、むくれて。綺麗なものをみるとすぐにはしゃいで。本当に女々しくて情けない子だった。でも、その先にはいつも笑顔があった。パッと周りを明るくするあの笑み。宝石や——大好きなあの人よりも大切な宝物。だが、どんなに望んでも、あの子は決して自分たちには見せてくれないだろう。最後に浮かんだのは、蔑むような顔。二人は現実に引き戻された。
二人の瞳は潤んでいるが、その先には異様すぎるほど強い眼光が宿っていた。
「これなら……きっとあいつを取り戻せる力をくれる」
一人が何かを手に取った。
それは彼の手の中で激しく点滅している。毒々しい紫色の光。
「得られるのか?」
もう一人が尋ねる。
「ああ。絶対に」
一人が頷いた。もう一人は覚悟を決めたような顔で一人の手の中の”あるもの”を見つめる。
「……私の身など滅んでしまってもいい。取り戻せるのなら——」
「あいつを絶対に取り返してやる!」
二人は……まがまがしい、空間を切り裂くような光に包まれていった。数秒程遅れて、苦し気な叫び声が上がった。
*
あ、雨かな、と呟く友人の呟きで少年は窓の外を眺めた。
「……雨?」
少年はバスの窓を開けると、そこから手を出す。強い風が黒い前髪を乱した。
少年は雨を確かめようと、指先を伸ばす。その先の思いなど知りもせずに。
白鳥くん、濡れるから止めて欲しいな、と隣の席に座る友人に苦笑された少年——白鳥 蓮は、窓を閉めた。
〜つづく〜
二年前より下手になっているかもwリハビリ頑張ります。