二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.73 )
- 日時: 2014/03/22 22:39
- 名前: しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: Heq3a88y)
夜の雑談「1000突破記念」
台座から足を垂らし、二人で空を見上げていると、不意に涼野が呟いた。
「……星が綺麗だな」
「そうだね」
蓮は限界まで首を傾け、夜空を見上げる。
暗い夜空に輝く、たくさんの星たち。静かな夜を裂くように波のさざめきが聞こえ、何とも言えない、不思議な風景を作り出していた。
東京ではまず見られない光景に、蓮は目を輝かせた。綺麗な風景を、涼野と見れて本当に良かったと思う。
「こんな夜空を見たのは、いつ以来かな……」
寂し気に呟いた涼野。蓮は頭を涼野の方に向けた。星を見上げる彼の顔は、どこか遠くを見ているようで。
「風介が住んでいる街は、星が見えないの?」
「ああ。星は全く見えないな」
「そうなんだ……都会に住んでるの?」
答えはない。無言で俯き、翡翠色の瞳に複雑な感情を宿す涼野を見て、蓮は黙ってしまう。何と声をかけてよいのか分からない。困った表情で涼野と海を交互に見ていた。
二人の間に、沈黙が降りた。
海風が涼野と蓮の髪を乱していく。
しばらく無言が続き、それを破るように蓮は口を開いた。
「雷門町も、あまり星は見えないなあ。街灯が明るいから、星はあまり見えないんだ」
その声で今まで俯いていた涼野が顔を上げ、仏頂面で蓮を見つめる。
「ところで蓮、キミは将来の夢はあるか?」
聞かれた蓮は、腕を組んで唸る。プロのサッカー選手、サッカーの審判、サッカーに関する雑誌の記者。あれこれ浮かぶが、サッカーに関わる仕事ばかりだ。
悩むが、あれこれ考えるのはとても楽しい。蓮は自然と口元を綻ばせながら、自分の将来を空想する。
悩んだ末に、蓮は一つの結論に至った。
「やっぱりプロのサッカー選手かな」
でも、と蓮は付け加える。
「体力ないからなあ……ん……まだ決めてないや」
未来の夢に思いを馳せる蓮は生き生きした表情で、瞳を輝かせて話す。
その顔を見ていた涼野はふと自虐的な笑みを浮かべ、蓮を眩しそうに見た。
「……自由に悩めるキミが羨ましいな。私は、将来のことなど考えられない」
キミと違ってね、そうボソリと呟いた涼野の言葉の意味を蓮は分からなかった。
「え?」
「……ただの独り言だ」
蓮が問うと、涼野は首を振り、口角をあげて見せる。先程の言葉の意味を蓮は知りたかったが、涼野は聞くなと言わんばかりに鋭い眼光で睨んできた。
嫌なものを無理に聞くわけにも行かず、蓮は諦めて話題を変える。
「ねえ、風介の夢は?」
「私か?私は……秘密だ」
「僕は言ったのに」
不満そうな顔で蓮が言うと、涼野はくすりと笑う。
「私はキミの夢を聞いただけだ。答える義務など、どこにもない」
「えーひどい」
そう言いつつも、蓮は楽しそうに笑っていた。涼野も口元を緩め、笑っていた。楽しい、夜だった。
——涼野の言葉の意味を、蓮はもっと後で知ることになる。
——
宗谷岬でパス練する前の会話です。