二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.126 )
日時: 2016/08/26 02:22
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: 1TfmKDW9)

chapter3 人類史上最もロマンなのは絶対的絶望ではなく絶対的爆発



コロシアイ学園生活残り24日



ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」


目先がぼやー、とする。目の下には失敗したようなアイラインがカーブを描いていた。
この1週間で5回も人が死んでいく様を見てしまった。何故それを見てなお自分が正気を保てているのか全く理解できない。もう死んでしまった方が楽になるのではないか。生きているのが辛くなる。
「そんなこと考えたらだめだ。落ち武者の思うつぼだぞ!」
俺が負のオーラを放ちながら朝食を食べていると、横から海土が俺の視界にカメラに写りたがる子供のごとく入ってきた。
「お前は何だ?俺の心が読めるのか?」
「言ったのは僕だけど?」
その声は俺から180度反対のほうから聞こえた。
「華狗也…」
「そんなにジロジロ見ないでよ」
俺は華狗也から首をまた曲げ海土の方は見直した。
「そういえばさ、学級裁判後なのに落ち武者が来ないな。いつも通りなら」
落ち武者は俺の言葉に呼応するように食堂の奥に現れた。
「お待たせいたしました。士導くんお待ちかねの落ち武者登場ですよ。本日は新しいエリアとなる3階の地図を持ってきました」
落ち武者はそれをテーブルの上に転がすように広げると、皆がつられたかのように群がっていく。地図を見た限りだと3階にあるのは図書室に管理室のみ。コロシアイさせるにしては穏やかな施設しかないのには違和感を感じるが、コロシアイが起きないに越したことはない。潜んでいる裏切者を早急に見つけ出さなければ。
そう思いながら俺は華狗也の方を見る。
一応候補者はいるが。


「で、何でお前が俺についてくるんだ?」
俺が止まるとシンクロして華狗也も止まり、いつものニコニコした表情で俺を見る。
「僕を疑っているんでしょ?だったら気が済むまで僕を見てたらいいよ。昨日も言った通り僕は裏切者じゃないから僕に時間割くだけ無駄だけどね」
「華狗也。俺からしてみればお前が俺についくることに意味があるようにしか見えないぞ。俺がお前を監視するのは、お前がそう思わせているだけで本当は違うだろ。お前は俺を裏切者だと思ってる。違うか?」
ニコニコした表情は崩れ落ち打って変わって真剣な表情に一変した。
「そうか過度な干渉はこういうことになるのか。士導くんがそう思ってしまったなら謝るよ。これで罪が晴れるかどうかはわからないけど僕は一旦士導くんから離れるよ」
それだけ言い捨てると華狗也は俺の前から消えていった。
何が罪が晴れるだ。これもあいつの演技の一環だろう。俺が華狗也を疑っているのは嘘だ。俺から剥がしたかったのもあるが、あいつ試してみたというのもある。予想以上に効果はあったがこの先どうなるか。
「お互いに疑い合うってなかなか絶望的じゃない?」
「黒薔薇?」
図書室の中から突如として俺の前に現れた。
「士導くんに疑われて清水くん今すっごい絶望してんじゃない?解決に手かしたげよっか?」
どうして俺に近づいてくる人間はみんな変わり者ばかりなんだ。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.127 )
日時: 2016/09/01 17:50
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: OfqjeFpF)

「手を貸す?誰も信じれないこの状況で人の手を借りるバカがどこにいるんだ?というわけで、必要ない」
俺はそれだけ言うと、手を振りながら黒薔薇から離れ図書室に入った。
「何だこの量は?」
天井まで続くビルのような本棚が図書室の端から端まで続いている。地方の図書館はもちろん、国の最大級の図書館でもここまで本はないだろう。そう思っても違和感はないほどの量の本の前で俺はただただ茫然としていた。
俺は本棚に沿って歩いていく。小説、論文、絵本など様々な分野に分類された本棚の最後に「勝ち組ヶ丘学園」と書かれたひときわ豪華な本棚があった。その中の一冊である「勝ち組ヶ丘学園の歴史」と書かれた本を手にとって開いてみる。
「!?」
どのページを開いても全て同じ白で埋め尽くされていた。ため息をつきながらそれを本棚に戻し、「勝ち組ヶ丘学園名簿」と書かれた本を手に取る。一ページ目に一期生の欄があり、見覚えのある名前が並んでいた。柴白未瑠、清水華狗也、海土慎之介。最後には士導静流、俺の名前も載っていた。載っていたの名前だけではない。全員の超高校級の才能などのプロフィールも載っていた。しかし、俺の才能だけはそこにもない、というよりは何者かが俺の才能が書かれていた箇所を上から塗りつぶしたのだろう。そんなことするやつは一人しか思いつかない。
落ち武者だ。
記憶を戻す時も手違いとかなんとか言っていたが、それも意図的なものだったんだ。俺の才能を消すメリットは何だ?落ち武者にとってそれほど俺の才能危険だということか。
「顔色が悪いよ、士導くん」
突然かけられた言葉に俺は我にかえった。
「地近に捕鷹か。急に話しかけないでくれよ。心臓が止まりかけたよ」
「ごめんね。ただあまりにも怖い顔をしてたから」
「謝る必要はない。いつ殺されてもおかしくない状況で声をかけられるまで私たちに気づかない方が悪い」
「そんなに士導くんを追い詰めちゃだめだよ。でも士導くんもちょっと休憩した方がいいかもね。私たち今からお茶するけど士導くんもどう?」


ー食堂ー

「あれ宇津木さんに司翼くん?何か珍しい組み合わせだね」
俺たちが食堂に着くとそこにすでに宇津木と司翼がお茶をしていた。
「たまたまだよ。俺が来たときには宇津木がいてそこから成り行きだよ」
俺は紅茶をもって司翼の隣に腰を掛け、紅茶をすすった。温かい紅茶が喉を通り抜けていくこの感触。心まであったまるようだ。
「士導、この前はすまなかった」
「何が?」
「前回の学級裁判で俺が裁判前に毒殺について語ったろ?死因は毒殺だって。結果は毒殺ではなく圧死で犯人も無事見つかったけど、あのままみんなが毒殺の線を信じ切っていたらと思うと」
だんだん顔が青ざめていく司翼に紅茶が入った紅茶を渡した。
「まぁ、とりあえずそれでも飲めよ。礼は華狗也にでも言っといたらいいんじゃないか。それよりも俺が気になるのは司翼はこの前まで僕だったのに何で急に一人称が俺になってんだ?」
司翼は紅茶を全て飲み干しマグカップを俺の方へ押す。
「初対面なんだ。自分が下になるのは当然だろ。…清水には感謝しないとな。あいつが俺を論破してくれたおかげで」
「礼は言っとけとは言ったけど、掘り起こせとは言ってないぞ。もう忘れろ。引きずってもこの世界ではいいことなんてないんだ」

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.128 )
日時: 2016/09/16 00:59
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: OZxqQ4OG)

ー理科室ー

「理科室は好きだよ。マイホームだよ。けどよ、俺が入りたいのは理科室であって焼野原じゃないぜ」
後ろでぶつぶつ言う海土を無視しながら鍵村はそこが殺人現場だったことを忘れたかのように焼野原と化した理科室に入り奥の方から捜査を始めた。その助手かのように柴白も理科室に入って行った。渋々海土も理科室に入り鍵村とは別の場所に腰を下ろしあたりを探りだした。しばらく漁っていると見覚えのある小さなラジオのような四角いフォルムといった正直誰もそれが価値のあるものとは思えない発電機が手に触れ、海土はそれを手に取って自分の方に引き寄せた。
『ミョルニル』。初見で見た時は正直小ばかにしていた。それは俺だけではない。俺の隣にいた人間や科学者は全員そう思っただろう。だが、そう思った人間は俺含めてそれの本領を目にしたとき全員が唖然とした。ラジオ程の小さな機械がいまだかつて人類が出したことのない強さの電気を簡単に出せる。全人類、少なくとも超高校級のマッドサイエンティストの才能を持っている俺が全ての知識を使ったとしても俺はそれに勝るものどころかそれと同じものすらも作れない。製作者はまだ明らかになっていないがきっとその人は超高校級のマッドサイエンティストなんかよりより素晴らしい才能の持ち主だと俺は信じている。ただ凡人に作られたなんて信じたくないのもあるが。
「さっきからずっと『ミョルニル』を握りしめてどうしたの?」
「きっと恋心でも抱いたんだろう。お年頃なんだ放っておいてやれ」
「なんだそうだったんだ」
「そんなわけないだろ!」
自分でもなぜかわからないが赤面しながら立ち上がり、『ミョルニル』を放り捨てた。柴白は俺が放り投げた『ミョルニル』をかわいそうに見るし、鍵村はこの世の何事にも興味のないかのような何とも言えない顔をしている。そして、そのタイミングで
「みんなお疲れ様。どう調査は進んでる。お茶持ってきたよ」
手に4つのコップを持った図川が理科室に入ろうとした瞬間に中の謎のオーラに気押されてしまったのか一歩踏み入ったとたんに立ち止まった。
「図川、何突っ立ってる?自分からお茶淹れてくると言っていたのになぜ渡さない?」
「ご、ごめん」
「奈夜ちゃん言葉が強いよ…」
柴白が鍵村の肩をポンポンと叩くと、鍵村は暴力的な口を止めた。
「すまなかった」



ー図書館ー

食堂でお茶をし終えた俺たちは再び図書館に戻り探索を開始した。俺は真っ先にさっきまで読んでいた本の本棚の前まで来るとそれを探したが、
おかしい、さっきまであったのに。誰かが持ち出した?似たような本は山ほどあるというのにそれをピンポイントで持ち出したってのか。仕方がない他の本にしようか。
「宇津木さんは何読んどるの?」
「地近…さん。これはお魚の本。これを読んでると何故か親近感がわくんだ」
「だから、超高校級の魚なのかな。そういえば才能と言えば」
そこで地近は俺の方に向かって、おーい、と叫びだした。図書館では静かにって常識だろ。地近の常識の量は身長の長さと比例しているのか。
「なんだ?あと図書館では静かにしろ」
「別にいいじゃん。この学園には私たちしかいないから誰かの邪魔になるわけでもないし。まあそれは置いといて本題!士導くんの才能を教えてよ」
俺を呼んだ時点で聞かれるとは予想はしていたが、
「答えたいところなんだが、俺の才能はまだ思い出せないんだ。才能さえ思い出せればもっとみんなの役に立てるかもしれないのに。悪いな」
「そうかな?思い出しても案外大したものじゃないかもしれないよ。超高校級の…そうだな…疫病神とか」
歌土井がその疫病神なんだが。こいつまさか仲間を忘れたわけじゃないだろうな。地近はニコニコしながら俺の方を見るが俺は無視して探索に戻った。
なんで無視するの?の声が聞こえてきたが俺は無視して図書館の奥の方へ足を進めた。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.129 )
日時: 2016/09/17 17:23
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: dCFCK11c)

コロシアイ学園生活残り23日



ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」


俺は落ち武者のアナウンスを聞いて割とスムーズにベッドから起き上がり、身支度をすませた。何故か今日はいつもより調子がいい。このコロシアイ学園が始まってからいつも疲労で朝が辛かったから目覚めがいいことが少し嬉しかった。


ー食堂ー
食堂に着いたのも今日は俺が最初だった。その後、海土を筆頭に次々に入ってくる。そしていつもの見慣れた風景になった。
「今日はさみんなでプールで遊ばないか?」
全員が朝食を食べるのをやめて、海土の方を向いた。しかし、誰もそれに対して返事をしない。それどころか再び朝食を食べ始めた。
「なんだよ。もっと仲を深めようとか思わないのかよ?」
「仲を深めること自体思わなくもないよ。私が言いたいのは何故プールなんだ?」
「楽しいからに決まってんじゃん」
また誰も海土を見なくなった。来れる人は朝食後プールに集合とだけ言って海土は食堂から出ていくと、食堂の中は行く行かないの話題で持ちきりになった。
このメンバーの中でそんな乗り気な人間がいるのかという話になってくるが、一週間一緒に過ごしたことで俺はわかっている。この中にそんな人間はいないことに。ただ、行かないのは行かないで海土は多少かわいそうなので俺は時間を遅らせて行くことにした。


ープールー
俺の予想は盛大に外れた。俺以外の全員が既に来ていたのだ。扉を開けた俺に目が集まる。俺はプールに向かって走った。そして、ジャンプし、プールに飛び込んだ。
「何してんの?今リレーしてるんだけど」
「…すいません」

「本当なんですぐに来なかったんだよ?俺朝食後プールに集合って言ったよね?」
「誰も行かないと思って、でもそれだと海土がかわいそうだなと思って時間を置いてから行こうと思って実際行ったらこういうことに」
俺が再び体育座りしていると、横からバカだなぁ、という鍵村の声が聞こえてくる。一番行かないと思っていた人間は鍵村だと俺は思っていたよ!
「てか、何で鍵村いるんだよ。お前さっき海土に何故プールなんだとか言ってただろうが」
「その後、柴白に誘われてな。誘われたの断るのもどうかと思い…」
海土の誘いはしっかり拒否したくせに、柴白に誘われたら行くのかよ。確かに俺も柴白に誘われたならば行くと思うが。
「奈夜ちゃんって意外と可愛いんだよ。そういうとこ素直でさ。たまに素がでちゃうけど」
柴白に言われて鍵村は少し赤面する。
「ほらね」
しかし、そのレアな赤面はわずか数秒で終わり、またいつもの表情に戻った。普段の鍵村にマイナス要素が多すぎて少し赤面したくらいでかわいいとは思わないのが俺の率直な感想だが。
「鍵村は普段が怖すぎるのが問題だと俺は感じるな」
鍵村は俺の方をその恐ろしい目でにらめつけると、柴白にそれがだめなんだよと指摘される。
「今のもそうだけど、前に俺の部屋で柴白と泊まったことがあっただろ。そのときのお前なんか」
「何!女の子とお泊りしただって!」
一体いつからそこに居たのか。いつの間にか俺の隣に居たのは海土ではなく憩崎になっていた。超高校級の中二病。そこだけ反応が早いな。
「まぁいろいろあってな」
「何があった?まさか」
こいつだめだ。あらゆるところが中二だ。
「変な勘違いするな。考えてみろ普通望んで士導の部屋に泊まるなど考えられないだろう」
「あの鍵村?それ平常心で言ってんの?もしそうだとしたら今すぐやめてくれ。心が痛いっす」
鍵村の言葉でまた心が痛くなり体育座りし、少しみんなと距離をとった。憩崎は鍵村との士導トークにのめりこみになり、解散するまで続いた。
やっぱり、鍵村怖い。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.130 )
日時: 2016/09/24 01:18
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: CW6zBFcM)

コロシアイ学園生活残り22日




ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」



ここ最近の二日間でより仲が深まった気がする。特に昨日なんかは俺が憧れていた学生生活をそのまま具現化したといっても過言ではない。このままの状況が続けばコロシアイも起こらないのに、みんな平和に過ごせるのに。
逆に言えば二日間あったのに対して得た情報が少なすぎる。それにまだ調査していない部屋も残っている。まずはまだ調査していない管理室から行こう。
食堂で軽く朝食をとると俺はすぐに食堂を出て、管理室に向かった。



ー管理室ー
たくさんのメーターが俺に前に現れた。ここでは各部屋の温度調節などができるらしい。空調システムは基本はオートになっているらしいが自分の意図で温度調節ができるようだ。さらにこの校舎全体の電気を管理しているのもこの部屋らしい。夜時間になると強制的に食堂の電気が消えるのもここで電源を落としているからだろう。そのときにここを訪れた場合はどうなるのだろう?落ち武者の正体がわかるのだろうか?
「ここが管理室か」
「憩崎。何してんだよ」
憩崎は俺がいたことに驚き一瞬身体を震わせた。
「まだここを調べていなかったからな。図書室ほどの情報があるとは思えないがまぁ一応な」
確かに憩崎の言う通りだが何か引っかかるな。これほどにまで巨大な建物である勝ち組ヶ丘学園の全てをこの一室だけで管理できるなんて。なんの手がかりにもならないが不自然と言えば不自然だ。人間界のあらゆるトップが集結しているこの学園なら不思議ではこの程度のこと普通のことのかもしれない。
「さて何もないことがわかったし俺は先出るわ。士導もこんなとこに留まらないで別のとこ行ったほうが…」
ピンポンパンポーン
「お前たち。学園生活は楽しめていますか?渡したいものがありますので、体育館に集合してください。また誰かの過去かもしれませんよ」
落ち武者の放送はそれで終わった。
「行く場所できちまったな。行くぞ」
俺は憩崎に頷き返すと落ち武者からの指示のあった体育館に向かった。



ー体育館ー
「これで全員揃いましたね。それでは渡したかったものを紹介しましょう。じゃじゃーん!!」
落ち武者が手に持っていたロープを引っ張ると地面からそれは現れた。
「爆弾!」
落ち武者の顔が書かれたハンドボールほどの爆弾。それもかごに大量に入れられていた。
「今回我がお前たちに渡すのはこの爆弾です。それとあれをご覧ください」
落ち武者が舞台の方を指さすとライトアップされ大量の札束が舞台の上に置かれていた。
「百億円です。いろいろな動機を考えてみたんですけどね。こういうシンプルなのもいいかなと思いまして用意しました。お前たちの中に眠る欲望をここで出してくださいよ」
「誰がそんな安い手にのるか。大概にしろ。お前の言う通りには俺たちはならない!」
落ち武者は手を口に当て少しだけ笑うと体育館の奥に消えていった。
「あの笑いはなんだったんだろうね。またコロシアイが起こるなんて考えたら私怖いよ」
「大丈夫だ柴白。お金は俺たちの弱みなんかじゃない。だからコロシアイなんか起きない…」
そこまで言って俺は口を止めた。今までも起きないと思っていたのにも関わらずコロシアイは起きた。今回のことだって起こってしまうのかもしれない。そう考えると俺自身も怖くなった。
「とりあえず、今は帰ろう」


ー食堂ー
落ち武者が用意した爆弾は小分けにして俺たちに渡された。一人当たり10個ぐらいだろうか。落ち武者が用意したものだ、これを使って人が死なずに済むなんてことはありえない。つまり、誰かが使ってしまえば犠牲者が現れる。一体どうすれば止められる?そのときだった。
「宇津木!大丈夫か!」
宇津木が食堂の真ん中で倒れていた。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.131 )
日時: 2016/09/24 18:16
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: CW6zBFcM)

宇津木が倒れてから一時間が経ちその看病に行っていた連中がようやく帰ってきた。
「安心しろ。おそらく貧血だろう。念のため今日は部屋から出ないように言っておいた」
俺はそっと安堵の息をついた。ないと思ったがもしコロシアイが起きたらなんて考えていた自分がいたのは事実だ。
「だが、部屋から出ないのはみんなにも言えることだ。爆弾の件でしばらくはそっとしておいた方がいい」
全員が頷き、俺たちはみんな食堂を後にした。
「華狗也。お前は残れ。少し話したい」


俺と華狗也を除く全員が部屋に戻っていったのを確認すると、俺も華狗也の向かい側に座る。
「聞きたいことがあったんだ。今回の爆弾の件もお前は知っていたのか?それとこの爆弾でコロシアイは起きるのか?」
華狗也はいつものニコニコした表情で答える。
「静流君。僕が前に言ったのは最後を知っていることであって、その最後にたどり着くまでの答えじゃないんだ。だからその質問には答えられない、というか答えがわからないよ」
「お前は誰がどんな結末を迎えるか知っているって言ってたじゃねーか!」
「確かに言ったよ。だけどそれも最後にたどり着く過程でしかないんだよ。僕が言う結末の”誰が”は人じゃないんだ」
は?言っていることの意味が全く分からない。やっぱりこいつ適当なこと言って俺を惑わせようとしているだけじゃ…。
俺は無言のまま立ち上がり華狗也の前から立ち去った。俺が出て行っても後ろから足音が聞こえなかったことからおそらく華狗也はついてこなかったのだろう。結末を迎えるのは人ではない?俺たちは生き残れない?いや、考えるだけ損だ。さっきのことは忘れよう。コロシアイなんて…。



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コロシアイ学園生活残り残り21日



ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」


ー食堂ー
「今日は珍しく早くに全員揃ったな…と言いたいところだが、宇津木がいないな。まぁしょうがないか」
俺がそう言った直後のことだった。
何かとんでもない爆発音が俺たちの耳に伝わった。爆発一度だけではなかった。言葉で表すことのできないようなすさまじい音が何度も俺たちの耳お奥底に響いた。
「一体何の爆発だったんだ」
「私宇津木さん見てくるよ」
そう言って柴白が宇津木の部屋に向かって数秒後、次に俺たちの耳に届いた音は柴白の悲鳴だった。
食堂にいた俺たちはすぐに悲鳴の方へ走った。宇津木の部屋から上がる煙、その前に立ちすくむ柴白。俺は急いで部屋の中を見た。煙と煙の隙間から見えたのは


宇津木だった。



「ピンポンパンポーン。死体が発見されました。一定の捜査時間の後に学級裁判を開きます」
また起こってしまったのだ。俺たちを恐怖に突き落とすコロシアイが。
「お前たち、そんなに悲しんでいる時間はないですよ。犯人を見つけないとおしおきされてしまいますからね。というわけで落ち武者ファイルです」
落ち武者がそれを俺たち一人ひとりに渡すと俺はそれを開いた。


ザ・落ち武者ファイル3


死亡  超高校級の魚 宇津木まりん


死因  落ち武者爆弾による爆殺


死亡時刻  不明


死亡場所  不明


落ち武者爆弾による爆殺。起こってしまったのか。そして犯人は俺たち
の中にいる。俺たちが今やらなければならないことは捜査だ。
爆弾の威力は相当なものだった。音を聞けばわかることだが、気になるのは壁だ。あれほどの爆発が起こっていながら壁に穴が開いていない。音だけが漏れて俺たちに聞こえた?
俺は宇津木の死体の傍に落ちてあった爆弾の欠片を手に取りそれを眺めた。この大きさに対してあの爆発。俺は爆弾の欠片を裏向けるとそこには「S」の文字があった。意味はわからないが一応手がかりだよな。
俺は爆弾の欠片の写真を撮ると宇津木の死体に目を向けた。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.132 )
日時: 2018/05/08 01:41
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: X2iPJYSg)

様々な物が焼け落ち粉々になり、宇津木の死体すらよく確認できない。そんな中で何を探せば良いのだろうか。食堂で俺たちが聞いた爆音から推測するに使われた凶器は昨日落ち武者から渡された爆弾でほぼ間違いないだろう。しかし、爆音がした時宇津木を除く残りのメンバーは食堂にいたということは爆弾が仕掛けられたのは少なくとも朝食の時間よりも前だということになる。当然ほとんどが寝ている時間なわけでアリバイがある人の方が少ない。となるとアリバイを聞いてまわるよりは宇津木死亡の原因を解明に時間をかけることが賢明か。
「何かやけに考えてどうしたの?いつもなら真っ先に死体に向かうのに」
いつも通りの人をイライラさせる声で集中モードに入っていた俺を覚ましたのはゲームの最後を知る男清水華狗也だった。
「考えてたんだ。あれだけの爆音ながら壁に穴一つ空いてない。それに爆弾を仕掛けるタイミングを考えるとアリバイのあるやつの方が少なく、容疑者が多くて絞り切れない」
顎に手を付けて知らぬ間に探偵のフリをしながら宇津木の死体が良く見えるようにしゃがむとまずは身体に手をあてた。想像していたとはいえ身体が酷い火傷で覆われている。もちろん車鳥の時ほどではないが身体前進が黒に染まり「超高校級の魚」を表す皮膚のぬめぬめも失われていた。


『落ち武者爆弾』
落ち武者が俺たちに支給した爆弾。凶器として使われた。


宇津木の身体を一通り眺めたが手がかりになりそうなことがないと感じ、その周囲に目をやった。焼け落ちた家具などが散乱し必要なものが正直わからない。時間を考えても全部1人で調べるのはナンセンスだ。そう思って部屋を見回すと俺の意図を感じとったかのように華狗也が部屋を調査しだした。
「部屋調べるんでしょ?手伝ってあげるよ。地近さんと司翼くんも手伝ってよ。静流くんはそっちから頼むよ」
普段はイライラさせるやつだがこういう時は指示を出し本当にありがたい。
「わかった。自分の持ち場を調べたら意見を出し合おう」
と言いつつも焼け落ちた家具の中に手がかりが隠されていたとしても全てが真っ黒なため何が何か全くわからない。そう思いながら足元にあった黒の破片を一つ手に取ってみる。詳細は分からないが布切れのようなもので若干湿っている気がする。ぬめぬめの皮膚を持っていた宇津木が着ていたからかもしれないが、さっき俺が調べた宇津木は服を着ていたことを考えるとやっぱり変じゃないか?


『湿った布切れ』
宇津木の死体の近くに落ちていた布切れ。若干湿っている。


それにしても暑い。爆破による熱気が俺たちの身体を異常に疲労させていく。俺だけじゃない少なくとも部屋にいるやつはみんな汗をかいている。
「ねぇ何か暑くない?サウナにでもいる気分だよ」
あまりの暑さについに地近が声を挙げた。
「確かにそうだね。爆弾が原因だろうけどそれにしても暑いよね。宇津木さん貧血だったわけだし暖房でも入れてたんじゃないかな。えーとそうだな。憩崎くんと図川くんで管理室に行ってみてきてよ」
「俺様は構わないが部屋のリモコンで暖房がついているなら消せばいいだろう」
「そうしたいところだけど部屋の中にあるものはほぼ燃えてるしそもそもどれがリモコンかすらわからないんだよね。となると暖房を消せるのは管理室だけだよね」
華狗也は笑顔で答えると憩崎は図川を連れて部屋を出ていった。
「そろそろ集まったかな。どう静流くん?」
「気になるところは目を通したって感じだな。そっちはどうだ」
しゃがんで調査していた地近と司翼も立ち上がり手がかりと感じたものを手にとっていた。
「これなんだけど。何かのモーターっぽい。ただこれがいくつも転がっているんだ」
司翼の言う通り司翼が持っているモーターと似ている物体が司翼の足元に数個転がっている。部屋の中でモーターを必要とする部品はそもそも少ない。てことは限られてくるはずなんだが、数が多い。
「私は特に何もなかったな。強いて言うならこれかな」
そう言って地近が持ち上げたのは服のような布だった。
「これ私が前見た時聞いたんだけど。ほら真ん中でクジラのプリントがあるでしょ。この服は宇津木さんの寝間着なんだって。これが落ちているってことは着替えて朝食に行こうとしているとこで殺されたのかな?と思って」
「地近ちなみにその寝間着は湿っているか?」
「湿ってないよ。それがどうした?」
また知らぬ間に顎に手をあて探偵ポーズをしてしまう。寝間着は濡れてないのか。俺がさっき手にした布は濡れていた。つまり服ではないということか。ただ布が濡れる理由がつかない。その上暖房までついていた可能性があるのになお濡れているわけがわからない。
俺が考えている間に管理室に行っていた憩崎と図川が帰ってきた。


『数個あるモーター』
部屋にいくつも転がていたモーター。何の機会のものかはまだ不明。


『宇津木の寝間着』
地近が確認済みの宇津木の寝間着。しかし、濡れていない。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.133 )
日時: 2018/05/12 00:36
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: X2iPJYSg)

「管理室で暖房見てきたが、清水の予想通り暖房がついてたよ」
管理室に行っていた憩崎と図川が戻ってきた。華狗也の言った通り暖房がついてたらしいが、貧血程度で暖房までつけるほど部屋を暖めないといけないものか?個人差はあるとしても流石に大袈裟な感じがする。
憩崎と図川が部屋に戻ってきてから調査する場所に困り、全員が無言になり考え事をしていた。微かに黒い煙が見える死体発見が場所がさらに重々しい雰囲気に包まれていく。
捜査する場所がないなら次にすることはアリバイの確認か。朝だから寝ていたで誤魔化すことができる。と思っていた。ただ一人「寝ていた」以外のことを話す人物がいた。
「私も朝は寝ていたからアリバイはない。が昨日宇津木に聞いたんだ。日課で毎朝プールに行くとな」
それを受けて俺と鍵村はプールに足を進めた。

ープールー
「昨日聞いたってことだが、お前は昨日宇津木と会ったのか?」
「ああ。夜になる前に宇津木の様子を見に行ったんだ。その時にな」


『宇津木の日課』
宇津木は毎朝プールに行っていた。

確かにプールサイドがまだ乾ききっていない。それよりも俺は違和感を覚えた。プールサイドに散る水の量が異常に多い。こんな全範囲に水が飛び散るだろうか。相当な派手な泳ぎ方をしたとしてもこれほどまではならないはず。
俺は軽くプールをのぞき込んできた。プールの底に黒い破片が幾つも散らばっていた。見覚えのある破片。その一つにSと書かれている。俺がさっき宇津木部屋で見た爆弾の破片と同じ。それがプールにもあるということはプールでも落ち武者爆弾が使われた?しかし、階が違うとはいえ宇津木の部屋から聞こえたほどの爆音は聞こえなかったはずだ。これはカモフラージュで本当は爆弾が使われていない可能性もあるが、プールで爆弾を使っていないとしたらプールサイドの水の説明がつかない。


『プールの底にあった黒い破片』
プールで落ち武者爆弾が使われた形跡がある。


「わざわざプールで爆弾が使われたということは犯人は宇津木が毎朝プールに来ることを知っていた可能性があるな。それを知っているのは私だけかもしれないが」
「そうだな。たまたま朝早く起きて宇津木を見かけただけでここまで計画的な殺人ができるとは思わない」
だがそうなると現状宇津木の日課を知っている鍵村が疑われることにもなる。自分から不利になりそうなことを犯人が言うわけないと考えれば鍵村は候補から外れるわけだが。犯人候補が如何せんいない何かあれば…。
犯人がプールで爆弾を使ったならその時犯人はどこにいたんだ?プールサイドにいたなら相当量の水を被っていたはずだ。それを宇津木を殺してから短時間で乾かせるはずがない。プールサイドにいなかったなら更衣室に身を潜めていたか。しかし、爆弾を仕掛けてから爆発するまでに更衣室まで逃げ込めるのか?そもそもプールに爆弾を仕掛けるためにどのみち水には濡れないといけない。それに日課のことを黙っておく必要があるため暖房で宇津木を乾かした。その時に自分も濡れた身体を乾かすことができる。なら濡れても関係ないのか。
「士導。私管理室に行ってみるがお前はどうする?」
「ああ。俺も」


ー管理室ー
可笑しい。暖房がまたついている。確か憩崎と図川が暖房をとめに行ったはずだ。誰かがつけたわけだが、そんなことするのは犯人しかいない。犯人の身体はまだ乾いていない。だからこそ乾かすために宇津木の部屋にもう一度暖房を入れたんだ。つまり犯人は今そこにいる。
「なあ士導。宇津木の部屋は爆弾が使われたんだよな?あれだけの規模の爆弾が使われたのなら普通暖房も壊れてないか?」
「え?だとしたら今ついている宇津木の部屋の暖房は一体どういうことだ?」
「管理室での表示はオンだとしても空気を出す方が壊れていたらどうしようもないだろう。それにいくら暖房でも朝の短時間で身体を乾かすこと不可能だ。もっと温風が必要だ」
自分の部屋で暖房をつければ犯人と疑われる。身体を乾かすには宇津木の部屋でする必要がある。暖房だけでは無理。プールから宇津木を運ぶ必要があるわけだから濡れないわけがない。身体を乾かすものと言えば。
俺は管理室から出てある場所に向かった。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.134 )
日時: 2018/05/21 00:37
名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: X2iPJYSg)

乾燥させることのできる機会は数あるが、身近にあるもので一番使いやすいものと言えばドライヤーだ。そう思ってプールの更衣室にもう一度戻ってきたわけだが、やはりなくなっている。犯人は暖房だけでなくドライヤーまで使って部屋を乾燥させようとしていたのか。
ただ、今のところ宇津木の日課について知っていたのは鍵村一人だ。全てを明らかにするためにはなくてはならない情報だが、話してしまえば犯人と疑われる可能性が高い。人は最初の情報に流れを持っていかれやすい。何とかして犯人に口を滑らせたいところだが。
「おーい士導くん。捜査は進んでるかい?」
プールに手を振りながら入ってくる男たちがいた。
「華狗也に憩崎、それに図川。珍しい組み合わせだな。でも何でプールに?」
「僕がやること頼んでおいてなんだけど、この二人が暇そうだったから協力してと」
「管理室で暖房消してからは何をしたらいいか困ってたし、僕は丁度よかったよ。憩崎くんはもともとプールに来てる途中だったみたいだけど」
「捜査とは関係ないが昨日プールに来た時忘れ物をしたみたいでな」
華狗也がプールに来るということは少なからず手がかりがあるということか?いつも最初から全てお見通しみたいな面で動くからかついそう感じてしまう。
「で、何を探すんだ?」
いや、士導くんがもう捜査してくれてたみたいだし、同じ個所を調べても仕方ない。別の場所に行こうか」
「俺様はもうちょっとプール見てからいくぜ。先に行ってな」
華狗也は頷くとくるりと憩崎に背を向け更衣室から出ていった。
「お前何を考えてる?」
「プールのことに関して言えば士導くんがもう調べてくれてたわけだし学級裁判で話してくれればいいじゃないか。それより別の場所を探した方がいいと思ってね。折角図川くんもいるわけだし管理室のことをもう少し聞かせてもらおうかな」
「管理室のことって言ったって憩崎くんに全部任せっきりだったからなぁ。電源を切った後は宇津木さんの部屋に戻ってみんなに合流しただけだし」
宇津木の部屋も調べたし、管理室やプールにも足を延ばして正直俺も行き詰っているのが現状だ。抵抗はあるがまだ何かを隠しもっていそうな華狗也について行くのが案外正解だったりする。そう思った途端華狗也は足をとめた。
「士導くんは次どこ行くの?」
「え?」
「僕正直もうあてがなくてさ。士導くんについて行こうと思ってたんだよね」
わざとらしいしゃべり方に嘘だろと思っていたが、いつもへらへらしている顔がその時に限って笑っていない。それも演技なのではないかと疑ってしまうが初めて見たそのまっすぐな目に嘘はないようにも思えた。それになぜか鏡を見たような気分にもなる。俺の顔が華狗也に映っている気がした。

ピンポンパンポーン

「お前たち捜査は進んでいますか?もしそうでなかったとしても時間切れです。これから楽しい楽しい学級裁判が始まります。いつも通り一階の赤い扉の前に早急に集合してください」

校内に鳴り響く悪魔の呼び声。俺たちはまた行かなければならない。一歩間違えれば地獄行きの片道切符。そこに希望など見いだすことなどできないが、俺たちは先へ進まなければならない。
俺が学級裁判に向けての一歩目を踏み出すとそれに呼応するように隣に居た華狗也と図川も歩き出す。


宇津木を殺した犯人を炙り出すため


三度目の学級裁判は幕をを開ける!!!!





コトダマ一覧
『落ち武者爆弾』
『湿った布切れ』
『数個あるモーター』
『宇津木の寝間着』
『宇津木の日課』
『プールの底にあった黒い破片』