二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.140 )
- 日時: 2020/03/11 00:36
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
chapter4 絶望の深淵
コロシアイ学園生活残り20日
「なるほど。そういうことだったのか。彼女には協力者がいたということか。まぁ予想通りと言えば予想通りかな。一人でこのコロシアイを仕組んだとは思えなかったしね」
「ただ君も気を付けなよ。僕らが話しているこの瞬間も見られているかもしれないしさ」
朝時間を告げるチャイムが鳴ると俺たちはいつも通り食堂にいた。重く沈んだ空気は誰も話さないことが物語っている。
当然だ。また仲間が二人も亡くなったんだから。憩崎君もこのコロシアイが始まっていなければ人を殺すことなんてなかったはずだ。全てはあいつが悪い。そう全てあいつが。
なんて思っているいると場の空気なんか察さずにあいつは現れた。
「重い重い。お前たちがそんなだと死んでいった方たちが悲しみますよ」
「…何しに来た?」
「そんなこともう分かっているくせに。焦らす程もったいぶる話でもないのでさっさと発表してしまいましょうか。おめでとうございます。お前たちが踏み込めるエリアをまた少し増やしておきました。そこにはまだ知らない秘密のヒントが隠されていたりいなかったりするので是非探索してくださいませ」
落ち武者はそれだけ言い残すと煙とともに俺たちの前から姿を消した。
重い足を一番最初に動かしたのは華狗也だった。
「行こうよ静流君。止まっていたって良いことなんてないよ。僕らはできることをし続けないといけないんだ」
「確かにそうだね。泣くことなんていつでもできるけど今は清水君の言う通りだよ。私に何ができるかわからないけど協力するよ」
「ありがとう柴白さん。他のみんなもすぐにじゃなくてもいい。気持ちが整理できたら待ってるよ。僕と静流君と柴白さんで先に行っておくからさ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今度は今まで封鎖されていた地下への階段が解放されていた。その階段を進んでみると教室が3つあり、階段に近い順にA、B、Cと扉に書いてある。
華狗也に無理やり連れてこられた俺だったが、新しい場所に興味がないと言えば嘘になる。
「さて、3つ教室があるね。せっかくだしみんなで1つずつ見ていこうか」
華狗也が言うと教室Aに入っていった。
今までに開放された部屋と違いそこは普通の教室だった。俺が思い描いていた普通に学生生活を送る場所、のはずだった。
そこに何かが置かれているわけでもなくただ使われていない空間が広がっていた。念のためロッカーや机の中も覗いてみるがなにもない。何もなかったことを互いに確認し合った俺たちは次に教室Bに入ったが、教室Bも教室Aと同じような光景が広がっていた。
しかし、最後に入った教室Cには教室の真ん中の机の上に目立つようにして大きな本が一冊置かれてあった。
「勝ち組ヶ丘学園名簿。昔俺が図書館で見たことがある本だな。確かあの時は俺の才能だけ塗りつぶされていたけど」
自分の才能が分かると思いながらその本を開いてみると考えもしないことになっていた。
「俺の名前が…なくなってる!」
いや、と華狗也が横から口をはさむ。
「静流君の名前がなくなっているというより、本自体が別のものに代わってない?」
「うん私もそう思う。確か前は士導君の才能の箇所が白く塗りつぶされていたけど、そんな箇所すら見当たらなくなってる」
「同じ名前の本が二冊あるということはどっちかは偽物だろうね。それがどっちなのかはまだ判断できないけど。それも考えながらお茶でもしない?」
ー食堂ー
地下の教室から持ち帰った本をテーブルの真ん中に置き俺たちは腰をかけた。
華狗也が言ったことが本当だとして、新しく見つけた方が本物だった場合、俺はどうなるのかそればかり考えていた。そもそも勝ち組ヶ丘学園の生徒ですらない。だとしたら俺の才能は思い出せないわけではなく才能自体がないことにならないか。
「静流君そんな怖い顔ばっかしていないでさ。楽しくお茶しようよ。僕が考えるに自分が本当に勝ち組ヶ丘学園の生徒かどうかそんなところで悩んでるじゃないの?」
「…」
「図星みたいだね」
「なぁ教えてくれよ。お前は全て知っているんだろ?だったら俺の才能もわかるはずじゃないのか?」
「なるほどそういうことか。ただ、同じ学園の生徒同士なら僕じゃなくても静流君の才能を知っている人が一人くらいいたって可笑しくないよね。だけど誰も君の才能を知らないのは思い出せないからじゃなく静流君に関する記憶を失っているからだと思う。そして僕もその一人だよ」
確かに今に至るまで誰も俺の才能について語った人はいなかった。仮にこっちの本が本物で俺が勝ち組ヶ丘学園の生徒でなかったとしても同じ超高校級の才能を持つ人間同士なら一人くらい知っていても可笑しくない。華狗也の話に筋は通っている。
「お待たせ。疲れた時にはやっぱりこれだよね」
そう言いながら柴白がトレーから3つのハーブティーをテーブルに置いた。
ハーブティーのフルーティーな香りとミントの香りが俺の頭温かく休めてくれているような気がした。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.141 )
- 日時: 2020/03/11 22:09
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
コロシアイ学園生活残り19日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
気づいたら朝になっていた。考えることがとても多く記憶にないが眠くなっていたのかもしらない。もしくは、学級裁判直後の日だったので単に疲れていたのかもしれない。
華狗也が言っていたことに納得できただけかもしれないが、俺は自分の才能や勝ち組ヶ丘学園の生徒であるかどうかを一時的に考えることを止めた。気になることではあるが、俺がいくら推理しても落ち武者が記憶の最後のピースを渡さない限りゴールには辿り着くことはできないと分かったからだ。
食堂に行こう。もうみんな集まってるはずだ。
ー食堂ー
「宇津木の体調が悪くなった時があったよね?その時に思ったんだけどどうしてこの学園には保健室がないのかな?って。けど、昨日校舎歩いてたら保健室があったんだよね」
「なるほど。地下だけではなく今までに開放されていた階にも新たに現れた部屋が存在しているかもしれないということか」
「いやそれだけじゃない。浴場の奥に封鎖されていたサウナもあっただろ。昨日風呂入ったらサウナへ行けるようになってたんだ!扉を開けると地下へ続く階段になっていてその先にサウナが…」
海土が意気揚々と語っている横から司翼が口をはさむ。
「海土。普通は風呂に入っているからそれぐらいのことは気づくだろ」
「ああ。それに女湯も海土の言ったように扉を開けたら地下に繋がっていた。肝心のサウナはどうやら男湯のサウナとは壁一枚で遮っているだけみたい。それも結構薄い。この前配られた落ち武者爆弾はもちろん普通に手でも壊せそうだったな」
言いたいことを鍵村に全て言われ見せ場を奪われ見るからにへこんでいる海土を横目に俺も少しビクビクしていた。自分の身体から察するにどうやら俺は昨日風呂に入っていないらしい。だから、サウナが開放されていたことだけではなく、サウナの仕組みを全く理解していなかった。
朝食を取り終え、みんなが解散していった。
さて、今日はどうするか。まだ見てないサウナや保健室を確認しに行ってもいいし、部屋でゆっくりしていても。
「士導。お前暇ならちょっと来い」
「はい?」
「ここまでくれば大丈夫だな」
鍵村に保健室まで連れられてそこで俺はようやく自由を取り戻す。
「単刀直入に聞く。お前柴白に何をした。返答次第ではお前を殺す」
今までに見たことのないくらい強烈な殺意が俺を襲う。鍵村の目を数秒間直視するだけで失神しそうなくらいだ。
質問については本当に思い当たることがない。昨日は華狗也と柴白と地下を見て回ってその後お茶してそこからしばらくしてから部屋に戻ったことまでは覚えている。風呂に入ってないことから部屋に戻った後はそのまま寝てしまったはずだ。
「奈夜ちゃん、士導君はほんとに何もしてないって」
鍵村の殺意が消え、俺も釣られて横を見るとベッドの上で柴白が顔を赤くして寝ている。
「ごめんね士導君。風邪ひいちゃったみたいで」
「本当に風邪なのか?私は清水か士導が薬を飲ませたと聞いたが」
「そんなことするわけないだろ!」
「奈夜ちゃんも士導君に謝らないとだめだよ」
弱弱しい柴白の声に反応して鍵村の顔が先ほどまでとは別人のように申し訳なさそうになる。
聞こえないくらいの小さい声ですまん、と一言だけ呟くと柴白に寄り添うように椅子に座った。
「俺もごめんな。柴白の体調が悪いことに気づかなくて」
「そんな大したことないよ。熱だってもうそんなに高くないし、朝ご飯も食べれたから明日には回復すると思う」
「俺にできることあったらまた言ってくれよ」
そう言いながら保健室の扉に手を伸ばすと俺が触れる前に扉は開いた。
「未瑠ちゃん大丈夫?朝ご飯下げに来たよ」
地近がトレーを下げようとするが、身長が足りないらしく背伸びをしても届きそうにない。俺が下げれば早い話なのだが、必死な地近を見ているとそんな言葉も掛け辛かった。
しかし、ようやく自分の身長が足りないことを認識し直したのか俺の方を向きアイコンタクトをする。
「はいよ」
俺はそれだけ言って簡単にトレーを持ち上げると俺は食堂にトレーを戻した。
「いいな。私にもそれくらい身長があればね」
と自分の足を見ながら語るが、あまり踏み込むと地近を気づ付けてしまうかもしれないと悟った俺は愛想笑いしてその場を過ごした。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.142 )
- 日時: 2020/03/14 04:02
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
コロシアイ学園生活残り18日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ。それと本日はお前たちに素敵なプレゼントを用意していますので、用意ができ次第食堂に集まってください」
ー食堂ー
「士導君が来ましたね。やっと全員揃いましたか。それでは発表します」
そう言って落ち武者はテーブルクロスを引っ張るとそこには俺たちの数分のスマートフォンが置かれていた。
「スマートフォン?」
「ただのスマートフォンではありません。一度しか使えないスマートフォンです。生き残っているお前たち全員分用意していますので一つずつ手に取ってください。それでは使い方の説明を」
と落ち武者が言い出した瞬間に食堂に愉快な効果音が響く。それと同時に俺の持っているスマートフォンが振動しだした。
俺が画面を確認すると「差出人 清水華狗也」と書かれたメッセージを一件受信していた。内容はおはようと一言書かれただけだった。それをのぞき込むようにして華狗也は頷く。
「なるほど。一度きりと言っても送信するのが一回ってだけでスマートフォン自体まだ使えるところを見るに受信は何回でも可能みたいだね。それに、最初の画面で差出人の名前が出てきたけどそれ以降は一切表示されないみたいだね。つまり、持っている本人は最初の画面で差出人を確認できるけど、他の人は送信先の人間を確認できないと」
「清水君。我の説明を横取りしないでいただけますか」
「いやぁ悪いね。こういうのって実際使ってみるのが一番分かりやすいと思うんだよね。で、これからが本題なんだよね?君が理由も無しにプレゼントをするわけないはずだからさ」
「清水君の予想通りに物事が進むことが少々不本意ですが、お前たちにもう一つ発表です。次の動機ですが、残り16日の夜までにコロシアイが起きなかった場合、残り日数のカウントを15日減らすことにします!」
「!?」
「何ですかその顔は?お前たち忘れていたとは言わせませんよ。この学園生活のもう一つのルールをね」
この学園生活もう一つのルール。俺たちの中にいる内通者をカウントが終わるまでに見つけ出さなければ全員処刑される。俺たちの脳から抹消されていた内通者の存在が再び現れる。しかし、以前から考えていたことではあるが、内通者を見つけたとしてもこのコロシアイは終わらない。だとしたらその内通者が殺されている場合はどうなるんだ。内通者が自らの手で殺人を犯すとは考えにくい。ただ、今までのコロシアイでその内通者が被害者になっている可能性も完全にないとは言えないはずだ。それをわざわざこのタイミングで動機にするってことは何か裏があるとしか思えない。
「お前たち安心してくださいよ。内通者はまだ生きています」
俺の推理を根底から覆すような落ち武者の発言に俺はもて遊ばれた気分になる。
しばらくして落ち武者が食堂から出ていき、俺たちだけの空間になると司翼が初めに口を開いた。
「今回の動機はどうするんだ?俺はコロシアイをする気はないが、今まで通りだとこのままでは全員処刑になるぞ」
「どういうこと?内通者を見つけ出せばコロシアイは終わるんじゃないの?」
「ルールをもう一度確認してみなよ。確かに期限以内に内通者を見つけなければ全員処刑だけど、内通者を見つけたからと言ってコロシアイは終わらないんだ。結局今回の動機はコロシアイが起きなければ内通者のルールで全員処刑、内通者を見つけたとしても学園生活の期限が来てどっちみちアウト。つまり、俺たちは絶対コロシアイをしないといけない状況を強いられてるんだ」
俺も薄々感じていたことではあったが、全て司翼の言う通りだ。
「司翼君の言う通りなのは間違いないよ。ただ、今すぐに話し合っても僕らの混乱している今の頭じゃ良い答えは出ないと思うんだ。タイムリミットまではまだ時間があるわけだし、しっかり一日考えて明日の朝もう一度食堂に集まってそこで話し合おうよ」
「そうだね」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.143 )
- 日時: 2020/03/17 05:56
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
俺たちの誰かがコロシアイを起こすとは考えられない、と思いたい。しかし、コロシアイが起きなければ俺たち全員が処刑されてしまう。華狗也は一日考えようと言ったけど、たかが一日で俺たち全員が納得できる方法を用意できるとは思えない。ゲームが終わらない限り…。
自室に戻ってからベッドの上でずっと天井ばかり見ている。何かしようにも体に力が湧いてこない。聞こえるのは俺の呼吸音と時計の音だけだ。完璧な防音のせいで外の音も一切聞こえない閉鎖的な空間がさらに俺を苦しめる。
俺たち全員の命がかかってるんだ。何もしないのはわけにはいかない。ただ、考える脳が今は活動を停止している。
「お茶でも飲みに行こう」
誰も聞いていない部屋で俺は呟くとドアを開けた。
「士導君?どうしたの?」
「そっか。士導君も悩んでたんだ。ちょっと安心するな」
「安心する?」
部屋を出た後、図川と共に食堂でお茶を飲んでいた。
「士導君ってさ、僕らを引っ張ってくれるリーダーみたいとずっと思ってたんだよ。だって士導君が学級裁判にいなかったら僕らはもうここにはいないと思うんだ。僕は同じ勝ち組ヶ丘学園の生徒として士導君を尊敬しているんだ」
思わぬ言葉に赤面してしまう。俺は自己紹介の時に語ったように普通の学生だ。他のみんなと違って今のところ超高校級の才能すらない。
「だから、今回も士導君ならなんとかしてくれんじゃないかと思ってたけど、そう考えてしまう自分が嫌だったんだ。士導君も同じように悩んでるのを見て、士導君でも悩むんだと安心したけど、それじゃやっぱり駄目なんだね。士導君僕らはどうすれば助かるんだろう。一緒に考えない?」
「俺なんか頼られる存在じゃないよ。だけど、今のところは俺も何も思いついてないんだよな」
「実はね。僕ちょっと思ってることがあるんだけど」
俺と図川が出ていった後、黒薔薇は食堂に入り椅子に腰をかけた。別にお茶を飲むわけでも、誰かと待ち合わせをしているわけでもない。ただ、時間をつぶすための場所に食堂を選んだだけだ。
周りから見れば何かを考えているようにも見えるし、気持ちよさそうに寝ているようにも見える。他の生徒たちが必死に考えている中、彼女は偽りの才能である「超高校級のキャプテン」を一切生かそうとしていない。そもそも、彼女にとってコロシアイは大事ではない。別の目的があってコロシアイに参加している。目的は順調に進むはずだった。
彼女は視線を感じて厨房の方に目を向ける。厨房の入り口からこちらを除く彼女の唯一の誤算がある。
「やぁ黒薔薇さん。どう?僕と少しお喋りでもしない?」
黒薔薇は清水が近づいてくるのを見ると席を立ちあがった。勝ち組ヶ丘学園の生徒の記憶は消したのにも関わらず彼女という存在に感づいている。
流石に食堂を出た後もついてくることはなかったが、いつもの笑顔でこちらを扉から覗いている。
清水が何を言おうと関係ない、たかだか一日考えただけであの動機を回避する方法はない。だからこそ、コロシアイは必ず起きる。彼女の目的はコロシアイを続けさせることにある。コロシアイが終わっては都合が悪いのだ。全員が即座に死んでいくのもあまりよろしくはない。
「目障りな勝ち組の芽はここで刈り取っておかなければな」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.144 )
- 日時: 2020/04/01 05:00
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
コロシアイ学園生活残り17日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ。さて、いつも通り過ごしてもらうのは結構ですが、期限を忘れないでください」
俺たちに与えられた最後の希望。それはこのコロシアイ学園生活の首謀者を見つけ出すこと。昨日、図川が俺に持ち掛けてきた提案がまさにそれだった。
「なるほど。考えたことなかったな。だけど、首謀者を見つけるってのは内通者を見つけ出すことより困難だと思うぞ。そもそも俺たちの中に首謀者がいるのかどうかもわからない。外の人間が首謀者かもしれない」
「だが、私たち全員が助かるにはそれしかないとも言える。まずは私たちの中にそいつがいるのかどうかを考えてみるのはどうだ?」
俺たちは周りを見渡してお互いの顔を見つめ合う。コロシアイ学園生活から抜け出そうと協力してきた俺たちの中に事件の首謀者がいる?そんなことはないはずだ。いや、そういう風に思いたくないだけかもしれない。
「僕の予想だとこの中に首謀者もしくは、首謀者と関わりのある人間のどちらかはいると思うね」
華狗也の一声で一斉に目線の焦点が移動する。
「俺たちの中に首謀者がいる?その根拠はどこにあるってんだ?」
「みんなはこんな言葉を聞いたことはある?”超高校級の負け組”」
「超高校級の負け組?そんな言葉聞いたことないぞ」
「まぁ簡単に言うと世界を壊した張本人たちの総称なんだ。そいつら…」
「ちょっと待てよ。なんだよ世界を壊したって。俺の記憶にはそんなやつら」
「静流君落ち着きなよ。僕らの記憶は落ち武者によって奪われているんだよ。覚えていなくて当然だよ。僕はなぜかその記憶が存在しているけどね。本題はここからだよ。その超高校級の負け組の人間がこの中にいると僕は思ってる。人間と呼ぶのも躊躇ってしまうほどの人道を外れた行為ばかりする超高校級の負け組の人間ならコロシアイ学園生活なんてゲームを仕組んでも可笑しくないと僕は思う」
誰もが聞いたこともない言葉の前に絶句する。そんなバカげた理由に反論したいが、反論する言葉も見当たらない。
みんなが各々思うことがある中に初めに口を開いたのは黒薔薇だった。
「もし、清水の言う通りその超高校級の負け組とやらの仕業として、そいつらをどうやって見つけるんだ?」
「この前人を見たんだ。夜だったからよくは見えなかったけど、あれは僕らの誰かではない誰かだった。コロシアイに参加してないのに学校の中にいるなんて首謀者と関係あるとしか考えられない」
そんな都合の良い話があるわけがない。俺以外もそう思っていただろう。しかし、行動を起こさなければ俺たちは全員死ぬ。バカげた話だけどきっと俺たちは華狗也の話に賭けているんだと思う。
「それで、もしそいつを見つけた場合はどうするんだ?」
「僕もそれがまだ思いついていないんだ」
「こういうのはどうだ。落ち武者が動機として配ったギガントハンマーで見つけ次第殺す」
黒薔薇が怪しい笑顔を見せながら言う。流石の華狗也でも少し引いているように見えるがしばらくして華狗也も頷いた。
俺たちは部屋に戻りギガントハンマーを手に取ると、華狗也の言う通り校舎内を探すことにした。人を殺さなけばならない状況になった時、俺は果たしてハンマーを振れるだろうか。今やってる行為自体も落ち武者の想定内だとしたら俺たちは思惑通りに動かされていることになる。
閑散とした校舎内がいつもよりさらに静かに感じる。自分の鼓動が脈打つ感覚がはっきりとわかるのだ。それはきっと恐怖だと俺は思う。だが、もしうまくいけば外に出られるという期待もあるのかもしれない。
自分の足音だけが聞こえるはずの校舎内を歩いていると少し先から話声が聞こえた。それは華狗也の言う人物ではなく、海土と捕鷹だった。
「何してるんだ?」
「ああ。今から実験しようと思ってな」
「実験?」
ー理科室ー
海土が言うにかけられれば身体が麻痺する液体を作ろうとしているらしい。人を殺すことに抵抗のある俺たちでもそれなら使いやすいのは確かだ。
「けど、そんな液体本当に作れるのか?時間が足りないんじゃ」
「俺を誰だと思ってるんだ?超高校級のマッドサイエンティストだぞ。不可能はない!」
と決め顔で言い切ったその時だった。棚から半分身を乗り出していた瓶が落ち、その衝撃で瓶が割れ、中に入っていた液体が海土を襲った。
「大丈夫か?」
海土は割れた瓶を手に取るとそのラベルを眺めた。
「これだ。俺が探していた薬品は。これを混ぜれば」
その液体は水と混ざり合うことで次第にと変色し黒っぽい色に仕上がった。
「できたぞ。名付けて『パラズン』だ」
「何だそのネーミングセンス」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.145 )
- 日時: 2020/04/02 05:07
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
俺と捕鷹は二手に分かれて全員を呼びに行った。俺が今手に持っている最初の一つは保健室にいる柴白に渡すことにした。保健室にいる柴白には今日の朝のことはもう既に伝えている。『パラズン』を制作した意図もきっと話せば察してくれると思っていたのだが、生憎俺が保健室に着いた時には柴白は眠っていた。俺は『パラズン』が入った瓶と置手紙だけ置いて集合場所の食堂に向かった。
ー食堂ー
俺と捕鷹が『パラズン』についてみんなに一通り説明した後、遅れてきた海土が全員に『パラズン』の入った瓶を渡すと使用上の注意だけ軽く説明した。
「流石は海土君だね。これがあればギガントハンマーなんて物騒なものを持たなくても大丈夫だし、首謀者を生かしたままにできるのも素晴らしい。それで肝心の首謀者の方は誰か手掛かりになるようなものはあった?」
「そっちに関してさっぱりだな。まず私たちの会話を相手が聞いているならのこのこと出てきたりしないと思うが」
「いや隙は必ずあるよ。理由はちょっとここでは言えないけどね。それを聞かれると僕らに勝機はなくなると思ってる。だけど、夜は僕らも寝ないといけないし、交代制にしようか。僕は3日くらいなら寝なくても大丈夫だから僕以外は二時間ごとに二人ずつ交代でいいんじゃないかな」
あまり情報を与えすぎると首謀者も俺たちの動きに合わせてくるかもしれない。そのうえ夜時間帯は人数が減るからこそ首謀者側も動きやすいのだろう。
しかし、変なのは華狗也の方だ。いつもなら自ら動くことはしないはずだ。それなのにここまで具体的な提案をするのは少なくとも俺が知っている華狗也ではない。もはや、みんな後がない状況なだけに華狗也の提案を受け入れているがよく考えてみれば華狗也にそう仕向けられているとしても可笑しくない。華狗也が何を考えているかは今のところ全く理解できないが、きっと何らかの策があるんだろう。華狗也を信じて俺は華狗也の案に乗っかった。
「明日は起き次第食堂に集合でそれまでに見つかったら呼びに行くから鍵は閉めてて大丈夫だけど出てこれるようにはしててほしいな」
夜時間も後半になり俺は食堂の前に向かった。俺の担当の時間は俺以外にも地近とずっと寝ていない華狗也の3人だった。『パラズン』を片手に俺たちは探索場所だけ決めると静かにその場を去った。
保健室の前を通りかかった時にふと柴白のことを思い出し俺は保健室を覗いてみたがそこに柴白の姿はなかった。『パラズン』が入った瓶と置手紙がなくなってるところを見ると自室に帰ったのだろう。確かに首謀者がうろついている校舎内にいるよりかは自室で安静にする方が良いというのはある。
首謀者の姿どころか声すら聞こえない校舎の中で一息つく。俺の中の恐怖と不安を体現しているかのような暗い廊下がそれらをさらに加速させる。しかし、恐怖にも不安にも打ち勝たなければならないことが人生にもあるならそれはきっと今だ。
俺の担当時間が朝のチャイムと同時に終わりを告げる。いつもなら部屋に設置されているモニター越しに見たくもない落ち武者の姿を拝みながら起床する。ある意味平和なチャイムを迎えた俺は約束通り食堂に向かった。
まだチャイムが鳴ってまもなくのせいか俺が一番乗りだった。その後すぐに担当時間が同じだった華狗也と司翼が集まりそれからも人が集まったがいつもより集まりが悪かった。
「夜時間に起きてたからかもしれないけれど今日は集まりが悪いな。来てないのは図川と柴白か。俺呼んで来るよ」
「柴白なら保健室にいるはずだろ。結局昨日だって1日中寝ていたんだし」
「俺がさっき保健室に寄った時はそこにはいなかったんだ。もしかしたら自室に戻ってるのかも」
「じゃあ私が柴白を呼びに行く。お前は図川の方を頼む」
俺は了解とだけ言うと図川を呼びに図川の自室に行くがインターホンを鳴らしても返事がない。試しにドアノブに手を伸ばしてみる。
「!?」
何ら可笑しくないドアノブが回ることに驚愕する。
華狗也の指示では鍵は閉めて良いはずだった。それなのに鍵が開いている?
部屋に少し入ってみるもそこに図川の姿は見当たらない。そこに背後から柴白を呼びに行ったはずの鍵村が現れる。慌てている様子から大体察することができるが。
「柴白がいなかったのか?」
鍵村手を震えさせながら頷く。
「二人を探そう!」
俺と鍵村は食堂にいるみんなに図川と柴白を探すように促した後、各自二人を探すため校舎内を走り回った。しかし、思い当たる場所は探しつくしたがその二人の姿はなかった。後探していない場所と言えば。
「全部探したよな。後は俺たちの自室と浴場くらいか」
「浴場に行こう!」
その場にいた俺と海土と司翼と華狗也の4人で浴場に足を運ぶがそこにも姿はない。が、サウナへ繋がる階段の扉が開いている。俺たちは扉をくぐりサウナへと駆け込んだ。
ピンポンパンポーン
「死体が発見されました!」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.146 )
- 日時: 2020/04/05 02:24
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
ピンポンパンポーン
「死体が発見されました!全員校舎一階浴場のサウナまで集合してください」
落ち武者のアナウンスが俺たちの絶望をさらに加速させる。
サウナを開けた俺たちの目の前に現れたのは図川と柴白の死体だった。お互いが手に持った剣でお互いの身体を刺している。
「嘘…だろ…」
滅多に険しい顔を見せない華狗也でさえも目の前の出来事を受け入れることができないようだ。華狗也は地面に膝をつく。死体を見ても動揺しなかった華狗也がここまで落ち込むのは本当に珍しい。
そういう俺も目の前の出来事を直視できないでいた。昨日までの俺たちは外に出ることができるかもしれないと希望をもっていたはずだった。しかし、少し経てばまた絶望に引きずり戻される。今までもそうだったが、一度希望を抱いただけにその絶望はいつもより強大だった。
「柴白!!」
後からサウナに着いた女子たちがまた先に着いた俺たちと同じような状態になる。その中でも鍵村は柴白の前で崩れ落ち涙を零していた。
「既に死んでいる人間の前で何をしても死人は生き返りませんよ。お前たちが今すべきなのは学級裁判のための捜査なのです」
そう言うと落ち武者はいつものように落ち武者ファイルを配ると、
「では、学級裁判でまたお会いいたしましょう」
それだけ残して煙とともに消えた。
鍵村の泣く声だけが響き渡るサウナ。
仲間が死んだことは何よりも悲しい。できれば寄り添っていたい。だが、その大切な仲間を俺たちの誰かが殺したのならばそいつを放っておくことはできない。今すべきことは事件の解決だ。俺はそう心に決め落ち武者ファイルを開いた。
ザ・落ち武者ファイル4
死者 超高校級の奏者 柴白未瑠
超高校級のマスコット 図川泰大
死因 二人とも落ち武者ソードによる刺殺
死亡時刻 不明
死亡場所 サウナ
落ち武者ソード?と疑問に思ったが柄を見るなりその疑問は解決された。柄には落ち武者ソートと書かれている。死因が刺殺ならば、おそらく凶器は柴白と図川が手に持っているもの落ち武者ソードで間違いないだろう。それ自体は落ち武者が以前配った殺人用具にあったはずだし入手自体はすぐできるはずだ。
『落ち武者ソード』
今回の事件の凶器となった剣。殺人用具の中にあったことから誰でも入手できる。
俺はより手がかりを求めるために二人の死体に近づき捜査をすることにした。
気になる点と言えば死因は落ち武者ソードによる刺殺なのが確定している割には図川の顔面にはいくつかアザがあることだ。図川は犯人に不意に殺されたわけではなく犯人ともみ合った後剣で刺されたということになる。
さらに、サウナにいるにも関わらずシャツを着ているのも不自然だ。このサウナに来るためには浴場を必ず通らなければならず基本的にはサウナだけ利用することはできない。服を着ている理由は分からないが浴場を利用していたのだろうか。
その服自体も血が付着していることを除いても決して綺麗な状態ではなく、少し黒ずんでいるようにも見える。
『顔面のアザ』
図川の顔面にはアザがある。そのため、犯人ともみ合った可能性がある。
『変色したシャツ』
原因は不明だが、シャツが黒ずんでいるように見える。
一方で柴白にはアザは見当たらない。アザはないが、全体的に傷がある。図川のようにもみあってできた傷でもない。そもそも柴白はなぜサウナに来たんだ?昨日は風邪を引いて一日中保健室にいたはずだしわざわざサウナに来る理由なんてなかったはずだ。誰かに呼ばれた可能性もあるからまだ理由がないは断定できないが。
図川と柴白の死体を見比べると図川は犯人に付けられた傷が多い。一方で柴白の傷は犯人に付けられたものではない可能性が高い。
大体外から見た感じはこんなところか。
「大体は落ち武者ファイルに書かれている通りか。僕なら次は死体の持ち物を確認するけど静流君は?」
「お前に言われなくてもそうするつもりだ」
華狗也の野次を無視して再び図川の死体に近づき今度は屈んで持ち物を確認する。図川のポケットから出てきたのは落ち武者から配布されたスマートフォンだけだった。
中を確認すると受信件数は一件で「今日は危ないから戻りな」とだけ書かれていただけだった。
『図川のスマートフォン』
「今日は危ないから戻りな」と書かれたメッセージを受信していた。
次に女子の身体を触ることに申し訳なさを感じながらポケットに手を入れるとこちらもスマートフォンが出てきただけだった。同じようにしてメッセージを確認するとこっちのスマートフォンも受信件数は一件で「今日は疲れたし一緒に風呂でもどうだ?」と書かれていた。
『柴白のスマートフォン』
「今日は疲れたし一緒に風呂でもどうだ?」と書かれたメッセージを受信していた。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.147 )
- 日時: 2020/04/06 03:06
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
ポケットの中に他の物はない。服の中に何か隠していることもなかった。だからこそ、違和感を感じる。俺たちは首謀者を見つける最中だったからみんな『パラズン』を持っていたはずだ。浴場を利用している最中ならともかく服を着ている状態にも関わらず『パラズン』を持っていない理由はなんだ。
「士導、考えていることが口に出てる。確かにお前の言う通りだが、二人とも気を緩めすぎている」
捕鷹に指摘され俺は手で口を隠した。
「ただ、図川にとっては多少慌てていた痕があるぞ。図川のシャツを見てみろ。浴場の更衣室にあったものを無作為にとってきたせいかシャツのサイズがあっていないうえに、そのせいでボタンを掛け違えている」
捕鷹に言われて初めて気づく。改めて見てみると図川のシャツは確かに少し大きい気がするし、ボタンは明らかに掛け違えている。
『図川が着ているシャツ』
シャツのサイズが合っていないように見える。さらに、ボタンを掛け違えている。
再度図川の死体を確認し終えた後、俺はその場に立ち周囲を見渡した。先ほどから感じてはいたが、サウナが焦げ臭い。もちろん、最初からそうだったわけではなく犯人の仕業だ。元はサウナの真ん中に男子と女子を分ける板が存在したが、今はなくなっている。焦げ臭いことからも犯人が爆弾を使ってサウナの仕切り板を破壊したのだろう。よく見ればサウナのあちこちに黒い破片が落ちている。そんな中透明の破片を柴白の死体のすぐそばで発見した。サウナのあちこちに落ちている黒い破片とは全く別物だ。
死体の周辺は大体こんなところか。あと気になる場所と言えば図川と柴白の部屋、それから図川が使用したかもしれない更衣室。それから全員のアリバイを聞いておかないと。
俺はサウナを抜け出し更衣室に向かった。その途中の浴場へ向かう階段で白い物体を発見した。形状からして歯で間違いない。問題は誰の歯なのかだが。
更衣室にいたのは華狗也だった。今回の事件におとなしいのがより不気味に思えた。
「やぁ…」
話し方にもいつものウザさがない。余程落ち込んでいるのだろう。理由は謎だが。
「せっかくだし聞いとくよ。アリバイを聞いて回ろうと思ってるけど、お前はどうだ?死亡時間が不明だから大体でいいよ」
「そうだね。まずだけど夜時間になる前に僕は柴白さんに会ってるんだ。昨日の夜のことを伝えるためにね。その後は夜時間になったから朝時間になるまでずっと校舎内を歩いていたよ。図川君に会ったのは食堂で会ったのが最後だよ」
「じゃあ図川は首謀者探しには参加してないってことか!」
「まぁ僕が会ってないだけで彼も参加していたかもしれないけどね。ちなみに彼の当番は静流君たちの一つ前だったから寝ているだけだったのかも」
『華狗也の証言』
夜時間になる前に柴白に会っていた。図川は自分の担当時間に来なかった。
「僕今手が空いてるから何かあればしておくけど」
「じゃあ、一つ調べて欲しいことがあるんだけどそれを頼む」
俺は浴場とサウナの間の階段で拾った歯を華狗也に渡す。
「そこの階段に落ちていたんだけどこれが誰のものか確かめておいてほしい。後できればサウナにいる人たちのアリバイを聞いといてくれ」
「自分から用事をくれとは言ったけどかなり多いね。まぁやっておくよ」
華狗也が手を振りながら階段の下に消えていったのを見送った俺は更衣室を見て回ったが手がかりとなりそうなものは一つも見つからなかった。図川が浴場を利用したのならば更衣室に何かしらがあると思ったが何もないということは浴場は利用せずサウナに直行したということになる。逆に柴白にはスマートフォンのメッセージから浴場に来る理由があることだし、手がかりがあるのは女子更衣室の方だ。
と思って来てみたものの女子更衣室にも手がかりとなりそうなものはなかった。そもそも、浴場に誘われていながら死体が発見された時は服を着ていた。柴白は浴場を利用していたわけではなくなるが、一体何のために浴場を利用していたんだ。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.148 )
- 日時: 2020/04/07 01:30
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
柴白がなぜ浴場を利用していたのかは後回しにして俺は柴白の自室に向かった。
部屋は綺麗で中で争った形跡はない。それどころか、昨日部屋にいたことが不自然なくらいだ。それに『パラズン』が部屋の中に見当たらない。浴場に持って行っていないはずだからあるとすれば部屋の中か保健室のどちらかにあると思ったが、保健室に『パラズン』がなかったことは俺自身が確認している。
次に俺は図川の自室に入ると、そこにいたのは黒薔薇だった。とりあえず黒薔薇にもアリバイを聞いておかなければいけない。そう思った俺が口を開こうとした瞬間だった。
「私にアリバイない。ただ、一つあるとするなら昨日の夜時間になる前食堂付近で柴白を見たのを覚えている」
「夜時間前?浴場に行こうとしていたのか?それ以外に手がかりになりそうなことはなかったか」
「そうだな。私はさっきから全員の『パラズン』を確認していたが、柴白以外の全員が『パラズン』を所持していた。その点から考えると柴白のそばにあった透明の破片は柴白が持っていた『パラズン』だとは考えられないか?」
『黒薔薇の証言』
柴白以外の全員が『パラズン』を持っている。そのことから、柴白のそばに落ちてあった透明の破片は『パラズン』のものだと考えられる。
「ありがとう。だいぶ真実に近づいた気がするよ。ちなみに何だけど図川の『パラズン』はどこに?」
「最初から部屋に置いてあったぞ。つまり浴場には持って行っていないってことだ」
「そうか。色々調べてくれてたんだな。助かったよ」
その後も俺は全員にアリバイを聞いて回ったが、有益な情報は得られなかった。犯行時間がおそらく夜なこともあり全員が首謀者探しに参加していたと答えた。それ以外にも柴白や図川の目撃証言を求めたが特に手がかりになりそうなものもなく時間だけが過ぎていった。
事件に関係してそうな場所はもう全て調べたつもりだし、全員のアリバイも聞いたはずだ。だが、まだ何か足りない。答えに繋がるヒントがあと少しのはずなんだが。
俺は犯行現場の様子を見ることにした。浴場を抜けサウナにたどり着くとそこには華狗也が待ち構えていた。
「グッドタイミング。君に伝えたいことがあったんだ」
そう言って華狗也は俺がさっき渡した歯を俺に渡した。
「これのこと何だけど。この歯は図川君のもので間違いないと思う」
「図川の歯が階段に落ちていたってことは、まさか足を滑らせたなんて偶然があるわけないと思うけど」
『階段に落ちていた歯』
浴場とサウナをつなぐ階段の途中に落ちていた。図川のもので間違いないと思われる。
俺が華狗也から歯を預かったその時だった。
ピンポンパンポーン
「大切な人の別れはもちろん辛いものですが、その別れが残酷なものほど絶望は増していくのです。しかし、それはお前たち自身で起こしたものなのです。仲間のけじめは残されたものたちの宿命。さぁ絶望と絶望に溢れた学級裁判の始まりですよ。お前たち食堂横にある赤い扉の前まで集合ください」
俺たちに絶望を告げる落ち武者のアナウンスが校舎内に響いていく。みんなの決戦の場へ向かう足音が俺たちから俺たちへと感染していく。失ったものは大きいが俺たちは決して負けることは許されない。
柴白未瑠。いつでも優しく俺たちの間を取り持ってくれた。特に鍵村の変わりようは最初と今とで全く違う。彼女が変えてくれたと言っても過言ではない。
図川泰大。前回の学級裁判からずっと生きる力を失っていた俺たちに希望の策を提案してくれたのは彼だった。彼がいたからこそ俺たちは首謀者を見つけ出しここから出ようという気になれた。
その二人を殺した犯人が俺たちの中にいる。俺は必ず見つけ出す!
辿り着く答えに絶望しかないことは知っている。
それでも俺たちは立ち向かわなければならない。
希望なんて言葉が一切ない四回目の学級裁判が
今、幕を開ける!!!!
コトダマ一覧
『落ち武者ソード』
『顔面のアザ』
『変色したシャツ』
『図川のスマートフォン』
『柴白のスマートフォン』
『図川が着ているシャツ』
『華狗也の証言』
『黒薔薇の証言』
『階段に落ちていた歯』
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.149 )
- 日時: 2020/04/07 22:18
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
学 級 裁 判 開廷!!
落ち武者
「では、最初に学級裁判の簡単な説明をしておきます。学級裁判では、クロは誰か?を議論し、その結果はお前たちの投票により決定されます。ただしいクロ見つけたらクロがおしおき、もし誤ったらクロ以外がおしおきされ、クロだけが卒業できます。まずは、不明点だった死亡時間から話し合いましょうか」
捕鷹
「まずは夜時間に殺されたのか。それとも昼時間に殺されたのかをはっきりさせないとな」
司翼
「夜時間に殺されたって線はたぶんないと思うぞ。実際、俺たちは首謀者探しをしていたっていうアリバイが全員にあるからな」
清水
「僕が自分で言うのも何だけど。首謀者探しをしていたからってアリバイがあるって決めつけるのはよくないな。夜時間に行動していたってだけでほとんどが単独行動だったわけだし二人を殺せるチャンスはいくらでもあったと思わざるを得ないよ」
鍵村
「犯人は全員が動ける時間に二人を殺したことで全員にアリバイがない状況を作ろうとしたってことか」
清水
「いや、ところがどうやらそうじゃないみたいなんだ」
地近
「そうじゃない?」
海土
「どういうことだ。図川は全員にアリバイがない【夜時間に殺された】んだろ?」
【夜時間に殺された】 ← 『華狗也の証言』
士導
「それは違うぞ。華狗也の話によると図川は首謀者探しには参加しなかったみたいなんだ」
清水
「そうなんだ。彼は僕との約束通りに来なかったんだ。彼の担当はかなり遅い時間帯ではあったけど僕らが徘徊している夜時間に犯行を起こすのは少し難しいだろうし。そう考えると彼は夜時間になる前には殺されていたんじゃないかな」
捕鷹
「じゃあ柴白の方はどうなんだ?図川は首謀者探しに参加していなかったことで夜時間になる前に殺されたとしても柴白はそもそもそれには参加していなかったはずだ。そもそもずっと寝ていただけならばいつ殺されたのかわからないぞ」
士導
「それもあり得ないんだ。俺は首謀者探しの時に保健室を覗いているんだが、その時には既にいなかったんだ」
地近
「保健室にいるのが危険だから自室に戻ったってことはないの?」
清水
「戻ったかもしれないけど。結局彼女は浴場に来ていたわけだから、【何らかの理由】があって外には出たんだ」
【何らかの理由】 ← 『柴白のスマートフォン』
士導
「それに賛成だな。柴白のスマートフォンには浴場に来るよう誘われているメッセージがあったんだ。誰からのメッセージかはまだ謎なんだけど」
海土
「だけど、柴白と風呂に入るわけだから女子が誘ったってことだろ」
司翼
「てことは一連の犯行は女子の誰かってことになるのか。だけどよ、柴白を殺した犯人と図川を殺した犯人が同一犯ってことはもうそれでいいのか?図川を殺すためには図川も浴場に呼ばないといけなくなるんだぞ。だとすると図川を殺した犯人は男子の誰かってことになるんじゃないのか」
清水
「ある意味では願望かもしれないけどそれはないよ。落ち武者ファイルによると死亡場所は二人ともサウナだったんだ。別々の犯人が全く同じ場所で犯行を起こすとも思えないし、仮に違う犯人だとしたらサウナをわざわざ爆破する理由がないよ」
地近
「柴白さんだけを殺してサウナを爆破したなら犯人は女子ってことになるかもしれないけど、図川君も殺してしまったら結局どちらにでも犯行が可能になってしまうよ」
清水
「うん地近さんの言う通りだよ。犯人の計画はきっとどちらかだけを殺して誰が犯人なのかを誤認させようとしたんだ。つまり…」
鍵村
「どちらかの殺人は犯人にとって想定外だった?」
海土
「清水はたぶんそう思ってるんだろうな。だとしたら最初から犯人が殺そうとしてたのは浴場に誘われた柴白ってことでいいのか?」
司翼
「図川は本当にたまたま浴場に来ていただけでサウナを爆破させる時に【巻き込まれて死んだ】ってことか」
【巻き込まれて死んだ】 ← 『落ち武者ソード』
士導
「それは違うぞ。落ち武者ファイルには死因は落ち武者ソードと書いていたんだ。爆発にたまたま巻き込まれて死んだってことはあり得ないはずだ」
黒薔薇
「本当にそう言えるのか?」
士導
「どういう意味だ?」
黒薔薇
「二人の死体を見ただろ?どちらかが爆発に巻き込まれた可能性は十分にあると思うが」
清水
「確かにね。柴白さんと図川君の死体には違いがあったよね。特に柴白さんにはたくさんの傷があったはずだよ。一方で図川君の死体には殴られたような傷があったはずだから」
海土
「柴白だけが殺されるはずだった言ったのはお前じゃねぇか」
清水
「僕はそんなこと言ってないよ。どちらかの殺人が犯人にとって想定外だったってことしかさ」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.150 )
- 日時: 2020/04/09 21:06
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
捕鷹
「では聞くが犯人が本当に殺そうとしていたのは図川の方だと言いたいのか?」
清水
「まだ確信をもって言っているわけじゃないけど、二人の死体の傷から考えると図川君を殺そうとしていたと考える方が自然だと思うんだよね」
司翼
「清水の意見には賛成だな。それに加えて図川は一度犯人に会っていると俺は踏んでいる。まずはその証拠から提示させてもらう」
鍵村
「【図川が犯人と会っていた証拠】?」
【図川が犯人と会っていた証拠】 ← 『顔面のアザ』
士導
「これを見てくれ。これは…」
司翼
「おっと。これは俺から説明させてもらう。士導が提示したものと俺が持っている証拠は一緒だ。図川の顔面にはアザがあった。これが何を意味しているかは明白だろう?そう、図川は犯人ともみあった可能性が高いってことだ。落ち武者ファイルによると死因は落ち武者ソードによる刺殺らしいからこのアザが図川の死と直結しているわけではないのかもしれないが、犯人と会っていた証拠にはなるだろ」
海土
「犯人と会っていたことは理解できるが、そのアザは一体どこでつけられたんだよ?殺されたのが夜時間になる前だったら校舎内には俺たちがいるはずだ」
清水
「もちろん浴場でつけられたんだよ。仮に自室で犯人ともみあっていたのなら図川君をどうやって浴場まで運んだってことになる」
鍵村
「ここで話を逸らすようで悪いが、その犯人ってのはこの中にいるってことでいいんだよな?」
黒薔薇
「清水が言っていた首謀者の話か」
鍵村
「私たちが首謀者探しを始めたのは清水が人影を見たという一言からだったはずだ。図川はその首謀者ってのと会い、その末に殺されたってことはないのか?」
地近
「でも、それは清水君の見間違えかもしれないしいるかどうかもわからない人間のことは考えない方がいいと思うな」
清水
「いるよ。僕が見た人影は僕らの誰でもなかった。今この場にはいない人間が少なくとも一人この学園内にはいるはずなんだ。だけど、地近さんの言う通り今はとりあえず考えないでいいよ僕は思うね。歌土井君の最後を思いだして欲しいんだ。もし首謀者が僕らの中の誰かを殺すならこんな学級裁判なんかせず彼のようにみんなの前で殺せばいいだけだしね」
海土
「首謀者が犯人ではないってことはやっぱり俺たちの中に犯人がいるってことだよな。けど、顔面のアザに関しては首謀者につけられただけで殺人とは関係なかったって可能性もあるはずだぞ」
捕鷹
「仮にそうだとしても首謀者は何の為に図川を殴ったんだよ。殴る理由が正直見当たらないな」
司翼
「首謀者探しを決行したのは清水だったわけだから普通誰かを殺そうとしてたのなら清水を殺すはずだよな」
黒薔薇
「最初に首謀者の存在に気づき首謀者探しを私たちに提案したのは図川だったはずだ。図川を襲う理由はある」
海土
「図川が【犯人に襲われた証拠】でもない限り、やっぱりあのアザは首謀者によってつけられたアザだったんだよ」
【犯人に襲われた証拠】 ← 『階段に落ちていた歯』
士導
「それは違うぞ。証拠はこれだ」
海土
「それは歯?一体誰のなんだ」
士導
「そもそもこの歯は俺が二人の死体を発見した後で浴場とサウナの間の階段があったんだ。それをその時には誰のものかはわからなかったけど、俺はその歯を華狗也に預けて誰の歯かを調べてもらってたんだけど華狗也の調べではこの歯は図川のもので間違いないみたいなんだ」
清水
「もう一度言っておくけど静流君が持っている歯は図川君のもので間違いないよ。僕が実際に図川君の口の中を見てみた結果だから後は僕を信じるかどうかだね」
鍵村
「だけど、図川は犯人ともみあった結果歯がとれたって考えれば不自然ではないな。むしろその歯が犯人と図川が会っていた証拠を裏付けている」
地近
「図川君が犯人と会っていたのはもういろんな証拠が出てるから間違いないと思うけど、それなら図川君はどうして犯人と会っていたの?だって、浴場に誘われたのは柴白さんであって図川君が浴場に来る理由がないわけだし」
司翼
「スマートフォンの内容だけだと柴白しか浴場に来る理由がないもんな。図川のスマートフォンには意味の分からないメッセージしか受信してなかったわけだ。まさかあのメッセージが事件に関係しているとは考えにくい。そうすると図川が浴場に来る理由がないってことになる」
清水
「なるほど。そういうことだったのか」
司翼
「どういうことだよ。まさか図川のスマートフォンが事件に関係しているとでも言うのか」
清水
「もちろん関係していないわけがないよ。考えてみてよ。浴場に来るよう誘われてたのは柴白さん。だけど実際に犯人に誘われて浴場に来たのは図川君。その二つが繋がらないからこそ僕らは事件の謎を解決できなかったんだ。だけど、実は繋がってたんだよ。もう一度メッセージに注目してみてよ。特に図川君のメッセージの方をさ」
士導
「そうか!『図川のスマートフォン』のメッセージ。あれこそが最大のヒントだったのか!」
海土
「あれが最大のヒント?俺たちにも分かるように説明してくれ」
士導
「確かに『図川のスマートフォン』のメッセージは意味がわからなかった。だけど、それは図川が持っていたからなんだ。一方で柴白には『一緒に風呂でもどうだ?』のメッセージが来ているが本来柴白は浴場にくる理由がなかったはずだ。つまり、図川のスマートフォンと柴白のスマートフォンは犯人の手によって入れ替えられていたんだ!」
鍵村
「『今日は危ないから戻りな』ってメッセージ。あれは保健室から自室に戻りなって意味だったってことか。それならば、どちらのスマートフォンのメッセージも意味がわかるし図川がどうして浴場に来たのかやっと明らかになったな」
黒薔薇
「忘れてはいけないぞ。私たちの目的はトリックを明らかにすることではなく、犯人を明らかにすることだ」
士導
「もちろん分かっているさ」
清水
「図川君が浴場に誘われたってことは呼んだのは男子だろうね。ここまで来れば犯人は絞られるし、なんなら静流君はもう気づいてるみたいだね」
士導
「ああ。俺が持っている証拠と照らし合わせれば犯人の正体はもう明らかだ。犯人は…」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.151 )
- 日時: 2020/04/13 18:29
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
士導
「犯人は…海土じゃないのか?」
海土
「何を言い出すかと思えば、冗談はよしてくれよ」
捕鷹
「犯人は図川を浴場に呼び出そうとしていたことから犯人は男なのは間違いない。だけど、いきなり海土が犯人と決めつけて良いのか?犯人と言うからには【何か証拠】があるのだろうな」
【何か証拠】 ← 『変色したシャツ』
士導
「証拠はこれだ。よく見ると図川が着ていたシャツは黒く変色しているんだ。俺と捕鷹は海土が『パラズン』を制作するところに立ち会っていたんだけど、その時海土は『パラズン』に混ぜる予定だった瓶を割ってしまいその中に入っていた液体をシャツに浴びてしまったんだ」
捕鷹
「確かにそうだったな。だが、その液体を浴びたが海土のシャツは黒く変色していなかったはずだぞ」
士導
「それだけでは変色しないんだよ。あの液体は水を混ぜることで黒く変色するんだ。実際、瓶を割った後、海土が液体を水と混ぜたことで黒く変色していた」
海土
「待てよ。『パラズン』にはその液体ももちろん入ってるんだぜ。そうなると俺以外も全員が所持しているわけだし俺に罪を擦り付けようと自分から【『パラズン』をシャツにかけた】かもしれないだろ」
【『パラズン』をシャツにかけた】 ← 『黒薔薇の証言』
士導
「残念だけどそれもないんだ。なぁ黒薔薇?」
黒薔薇
「そうだな。私はここにいる全員に『パラズン』が使われたかどうか確認していたが、柴白以外の全員はまだ『パラズン』を使わず自分で持っている。その柴白の『パラズン』だが、柴白の近くに爆弾の破片とは違う透明な破片が落ちていた。その透明な破片が柴白の『パラズン』だと考えている。
清水
「柴白さんは、何らかの理由で浴場に訪れそこに『パラズン』を持って行ったんだ。そこで爆発に巻き込まれ柴白さんは吹っ飛ばされた。その時に『パラズン』も割れてしまったんだろうね」
士導
「つまり、あの液体を浴びた可能性があるのは海土以外に考えられないんだ」
海土
「そもそも犯人のシャツと図川のシャツが入れ替えられている前提で話しているがもともと図川のシャツって可能性もあるだろ。大体、あの液体さえ浴びれば黒く変色するわけで、浴びるのは『パラズン』じゃなくてもいいんだ。だから、図川が理科室に入り間違えてあの液体を浴びてしまったのかもしれないぜ」
鍵村
「何かないのか?あのシャツが犯人のものだと確定できる【証拠】は」
【証拠】 ← 『図川が着ていたシャツ』
士導
「図川が着ていたシャツを見てくれ。図川のものにしては少し大きすぎるだろ。図川は超高校級のマスコットってだけあって体格はかなり小さい。それにも関わらず、大きめのシャツを着ているし、それにボタンを掛け違えているんだ。自分が着ていたらボタンを掛け違えていることに気づくはずだ。だけど、ボタンが直されていないってことは犯人が着させたんじゃないのか」
清水
「その大きめのシャツは海土君のものなんだね」
海土
「お前らは間違ってる!あいつが着ていたシャツは黒く変色していたが、俺は浴びただけで黒くはなってなかっただろ」
士導
「そうだ。あの液体は水と混ぜなければ黒くはならない。だから、お前は水に触れたんだ」
海土
「言っとくが俺は水なんて浴びてねぇぞ」
清水
「海土君何か勘違いしてるんじゃないの。水を浴びる必要はないよ。殺された場所は浴場だったんだよ。湿気が水分の代わりをしてくれるし、サウナに行けば汗だってかくはずだからその時は変色に気付かなかったのかもしれないけど、じわじわと変色してきたはずだよ」
司翼
「なるほどな。図川が偶然に浴場にきたと見せかけるために自分のシャツを着せたが、その時は気付かなかったのか」
清水
「海土君何か反論はないの?」
海土
「あ、あるに決まってんだろ。柴白だ。柴白はどうして浴場に来たんだよ。あいつが図川を殺したんじゃないのかよ」
清水
「柴白さんが浴場に来たのは偶然だったってもう結論が出たと思ってたよ。そうだね、柴白さんが犯人ではない証拠があるとするなら。黒薔薇さんは知ってるよね」
黒薔薇
「そいつに言われて答えるのも気分悪いが、そうだな。私は昨日の夜時間になる前に食堂の前あたりで柴白を見てるんだ。さらに付け加えるなら食堂を出た後で浴場に向かってるようだったな。まぁその意図はわからないが」
鍵村
「柴白が夜時間前に食堂に?それから浴場も?」
士導
「どうしたんだよ」
鍵村
「私のせいだ…。私はみんなと話し合った後保健室に寄ったんだ。そこで柴白に」
-----------------------------------------------------------------------------------
鍵村
「今日は忙しくなりそうだ。夜になる前にご飯くらいは済ませておけ。それに昨日は一日中寝てたんだ。できれば風呂にも浸かっておけ」
柴白
「そうするよ。ありがとう奈夜ちゃん」
------------------------------------------------------------------------------------
鍵村
「私があんなこと言ったから柴白は浴場に…」
清水
「黒薔薇さんが見た柴白さんが最後だったら彼女はその後すぐに殺されたんだろうけど。その時の彼女は凶器となった落ち武者ソードを持ってたの?」
黒薔薇
「いや何も持ってなかったな。厳密には右から見ただけで左手に何かを持っているかは確認できなかったが、落ち武者ソードを持っていたら流石にわかるだろ。これは予想だが、そもそも左手は『パラズン』を握っていて落ち武者ソードなんて持つ余裕はなかっただろうがな」
鍵村
「答えろ海土。お前が犯人なのか」
海土
「…」
鍵村
「黙り込んでんじゃねーぞ!答えろ!」
士導
「落ち着け鍵村。それに海土。お前が答えないなら、今から今回の事件を最初から説明する。その説明に少しでも間違いがあるなら反論してくれ。これで俺は最後にしたいんだ」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.152 )
- 日時: 2020/04/15 18:34
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
クライマックス推理!!
act1
最初に犯人が利用したのは、落ち武者が動機と一緒に俺たちに配ったスマートフォンだ。犯人はそれを使い図川を浴場に呼び出した。犯人は図川が浴場に入った後凶器を持ち続いて浴場に入った。そこで、犯人は図川を落ち武者ソードで殺すつもりがそうはいかなかった。犯人はそこで図川ともみあいすぐに殺すことができなかった。だから、犯人は図川を殴りつけたりして気絶させた。しかし、そこでもみあった結果図川の歯が階段に落ちたんだ。
act2
図川を気絶した後犯人は今回の犯人を誤認させるためにサウナの仕切り板を破壊しようとサウナに爆弾を投げ入れた。そこでも誤算があったんだ。サウナが爆発した瞬間柴白はそこにいたんだ。おそらくは風呂に入ろうとして浴場に入ってから図川の叫び声でも聞いたんだろうな。手に『パラズン』を持っていた柴白はサウナに行ってしまった。そこで爆発に巻き込まれたんだ。
act3
サウナを爆発させた犯人は図川をサウナまで移動させた。そこで初めて犯人は柴白が横たわっていることに気が付いたんだ。だけど、その時まだ柴白は生きていた。まさに犯行の途中だった犯人を目撃してしまった柴白は口封じのために殺され、続いて図川も落ち武者ソードで刺し殺した。
act4
二人を殺してしまった犯人は急いで偽装工作に取り掛かった。犯人が思いついたのは図川のスマートフォンと柴白のスマートフォンを入れ替えることだった。でもその時犯人は気がつかなかったんだ。柴白宛てにメッセージが来ていたことをな。さらに、犯人は図川が偶然浴場に来たことを装うために自分が着ていたシャツを図川に着せたんだ。ここでも、犯人は一つミスをした。自分の着ていたシャツに水を浴びると黒く変色する液体が付着していることを失念していたんだ。
そして、それが可能だった人物。それは海土慎之介!お前しかいない!
クライマックス推理 終了!!
--------------------------------------------------------------------------------------
士導
「これが事件の全貌だ」
海土
「ああ。反論する気力も起きねぇくらい完璧な推理だ。そうだ、犯人は俺だ」
落ち武者
「議論の結果が出たようですので、それでは投票タイムに移りましょうか」
鍵村
「まだだ。まだ聞いていない。柴白を…。二人を…。なぜ殺した!」
海土
「ただ、出たいそう思っただけだ。俺は一刻も早く外に出る理由があるんだ。どうやって出ようか考えている時ちょうど首謀者探しが始まった。全員が首謀者に夢中になっている今だからこそチャンスだと思ったしそれに清水が見たっていう人影に罪を擦り付けられるかもしれねぇ、そう思ったんだ。それ以上は何もない。本当にそれだけだ」
鍵村
「何がそれだけだ。それで得たものと失ったものを理解しているのか!得たものなんて何もなかっただろ。お前の欲に柴白は」
落ち武者
「鍵村さん。言いたいことは投票タイムの後で言ってもらえますか。お前たちは手元のスイッチでクロだと思う人物に投票してください。もうそんなことしなくてもいい気もしますが、一応ルールなのでね」
-------------------------------------------------------------------------------------
「今回も大正解です。柴白さんと図川君を殺した犯人は海土慎之介君なのでした」
静かな裁判場に落ち武者の声が響き渡る。
海土は黙ったまま歯を食いしばっていた。それが自分がしてはいけないことをしてしまった後悔なのか、クロだって決まってしまったことに対してかはわからない。ただ、どんな理由があろうと自分のために海土が仲間を殺したのは事実だ。許されることではない。
だけど、俺は口を開けなかった。どんなに海土を責めても、問いただしても戻ってこない。失ったものはもう戻ってこない。
俺はそう考えていたが彼女だけ違った。
「お前の欲のために柴白は殺されたんだぞ」
「すまない」
「お前がやったことは希望に溢れる才能を持った人間の行為ではない。お前がしたことは”超高校級の負け組”と同じだ!」
「じゃあどうしたらいいんだよ!謝って済む話じゃないのはわかってる。だけど、謝るしかできない俺に他にどうしろってんだ。後の処刑で死ねば許してくれるのか。どうしたらお前の怒りをおさめることができるんだよ!」
外から見てもわかる。鍵村の握りこぶしがブルブルと震えている。そのまま、その手で海土に殴りかかった。
バシッという音が響いた。
「私の怒りはおさまらない。それはお前が死んでもだ」
海土はよろめきながら立ち上がると鍵村の目を見つめて言った。
「お前は俺みたいになりたいのか?違うだろ。俺は憎まれるほどのことをした。それはそうだ。一生俺のことを憎めばいい。だけど、落ち武者はそういうところに付け込んでくるんだ。お前が今やるべきことは生きるってことなんだよ。俺を恨むのも憎むのも生きてなきゃできねぇだろ!」
鍵村の握りこぶしがほどかれ、その場に崩れ落ちた。膝だけじゃない。涙もだ。行き場のない怒りは涙に形を変え、裁判に零れ落ちた。
「さて、話も終わったようですので、そろそろやりましょうか。今回も超高校級のマッドサイエンティスト海土慎之介君のためにスペシャルなおしおきを用意しました」
「鍵村。柴白が最後に呟いたこともお前のことだった」
「それでは、張り切っていきましょう。おしおきターイム!!」
「奈夜ちゃん。ありがとうってな」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.153 )
- 日時: 2020/04/16 21:40
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
海土くんがクロに決まりました
おしおきを開始します
超高校級のマッドサイエンティストのおしおき
「ケミカルパラライズ」
目を開けると俺はそこにいた。
普段俺がいつも両手に持っているもの。
そう、ここはきっとフラスコの中だ。
俺の目の前には落ち武者の大群がいる。全ての落ち武者が右手に同じ容器を持っている。
俺ならばそれが何かわかる。落ち武者が持っているのは俺が作った『パラズン』だ。
先頭の落ち武者が『パラズン』を俺が入っているフラスコに注ぎ始めた。
『パラズン』の効果は浴びると体が硬直してしまう。
全ての落ち武者がこのフラスコに『パラズン』を注ぐってことはつまり一歩もここから動けなくなってしまうってことだ。
「まずい!」
俺は注がれる『パラズン』を浴びないようにフラスコから出ようとするが、足場のないガラスは俺を外に出すことを許さない。
「くそっ!!」
俺にはまだしないといけないことがあるんだ!ここから出る義務があるんだ!
こんなところで立ち止まれないんだよ!
しかし、『パラズン』はフラスコの底の全てに届きわたっていた。
『パラズン』が俺の靴から染み込み既に足に接触していた。
動かない。
その効果を期待して作ったのだから実験は成功だとも言える。俺の発明は確かに成功している。だからこそ、外の世界に出て俺のこの才能を使わなければならない!
だが、『パラズン』は言うことを聞かない。
次々と注がれる『パラズン』は既に腰の近くまできていた。
下半身は全く動かなくなっていた。感覚のかの字もない。
自分の発明品が自分の命を奪い取るきっかけになるとは俺も思いもしなかった。
『パラズン』が注がれる音はもう耳元まできていた。時々水面に跳ねた『パラズン』が顔に当たる度その部位が動かなくなる。
もう笑うことすらできなくなっている。
俺は目を瞑り、これから起こる出来事に備えることにした。
そして、『パラズン』は俺の全身を包み込んだ。
そこから先はもう覚えていない。いや、覚える必要もない。
「さてと、これでできました。超高校級のマッドサイエンティストの『パラズン』漬けでございます」
海土の体は『パラズン』で満たされたフラスコの中でぷかぷかと浮いていた。
超高校級のマッドサイエンティストは毒薬の海をいつまでもいつまでも泳ぎ続ける。
まるで、死んだ魚のように。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.154 )
- 日時: 2020/04/18 22:08
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
海土の最期を見届け、四回目の学級裁判が終わった。
絶望だけが漂う裁判場に俺たちはまた立っていた。生き残った者たちはいずれまたこの絶望を味わうことになってしまう。
もう俺たちはコロシアイなんてしない。いつも同じことを思っていた。だけど、その度に俺たちの思いは踏みにじられる感覚になる。
「お前たちの人数ももう半分を切ってしまいましたね。最初の頃にコロシアイなんてしないと言っていましたが」
俺たちは何も言い返せないままその場にただ立ち尽くすことしかできなかった。今までの俺ならまた同じ感覚に苦しめられていただろう。俺以外もきっとそうだ。だけど、ここまで生き残ってきた仲間たちは違う。
「だからこそだ。俺たちはもう絶対コロシアイなんてしない」
「その言葉を何度聞いてきたと思っているのですか?自分自身の心にも聞いてみてください。何度その言葉に騙され続けてきたか」
「じゃあ実際お前の言う通りになるか見ていればいい」
「君は知らないんだね。団結って言葉をさ。人は苦しい状況になればなるほど信頼し合い団結するんだよ」
「だから何だと言うのです?まぁその言葉が自分たちの胸に返ってきた時はそれはそれで面白いのでこれ以上の言及は避けておきましょう。それではまた明日」
裁判場を後にした俺は自室のベッドの上で永遠と天井を眺めていた。
俺はここから出た後で何がしたい?海土には明確な理由があるようだった。ここから出ることに必死だったから出た後のことなんて考えたことがなかった。そもそもの記憶が失われているわけだから俺自身が何をしていたかなど考えても結論など出ないわけだが。
何故か分からないが俺の体は勝手にベッドを飛び出し海土の部屋に向かっていた。
部屋には至る所に試験管やフラスコが置かれていた。それも揃いも揃って中に見たことのない色をした液体が入っていた。きっと自室で何かの実験をしていたのだろう。むしろそれ以外に何をしていたのか想像もつかない。
ホワイトボードにも専門用語を思われる言葉がたくさん書かれていた。
俺はそのホワイトボードに貼られたボロボロになった紙切れに目が留まった。
「余命一ヶ月の妹がいる…」
そう書かれていた。海土の動機はこれだったんだ。確かに海土はここに来た時から理科室の品揃えに感動し、入り浸っていた。それは科学者としての血が騒いだのではなく、最初から全て妹を助けるための薬を作ろうとしていたんだ。そして、実際に外に出ようとしたってことは妹を助ける薬は完成したってことじゃないのか。この大量の試験管やフラスコの中に完成品が眠っているかどうか俺には分からない。
結局特に薬品に触れることなく俺は海土の部屋を出た。
今日は夜もずっと起きていたから眠気がいつもより早くに襲ってくる。俺はふらふらとした足取りで今度こそ眠るため自分の部屋に向かっていた。その目の先俺が見たのは、誰でもない人影だった。
華狗也が言っていた俺たちの誰でもない人影。俺たちを苦しめている黒幕の正体。
眠気で思考がまとまらないけど、俺はその影に向かって無心に走っていった。人影が角を曲がっていく姿をしっかりと確認した俺はその後に続いて角曲がった。
「あれ?静流君?そんなに慌ててどうしたんだい?」
俺が追いかけた先にいたのは華狗也だった。いやそんなはずはない。
「お前こそこんなとこで何してんだよ。いたんだよ。お前が見たっていう人影がさ」
「え!?それは僕も手伝うよ。僕はこっちを探すから静流君はそっちをお願い」
俺は華狗也に言われた通りまた走り出した。
「お前私を殺そうとしていただろう?」
食堂に腰かけていた華狗也に黒薔薇は投げかけた。
「学級裁判を運営しているんだからわかるでしょ?容疑者にすることは簡単だけど、犯人にするには証拠が不可欠なんだよ」
「今お前について徹底的に調べている。お前が生きていられるのも今のうちだ」
華狗也は笑ったままの顔をやめない。それどころか静かにだが、さらに笑い出した。
「まだ僕のことを探っているの?まぁ仕方ないか。天才がいなくなってるからね」
さらに華狗也は続ける。
「僕を殺したければ殺せばいい。僕の役目は生きることじゃない。導くことだ。たとえ死んだとしてもね役目を全うできるならそれで構わない。そういう風に僕はできてるんだ」
華狗也は立ち上がり黒薔薇を残して食堂を出た。
「勝ち組が勝つ順当すぎるゲームなんて何が面白いんだ。そうは思わないか?」
chapter4 絶望の深淵 完