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コロシアイ学園生活残り２９日


昨日、海土と別れた俺は夕食もとらずに自分の部屋に戻り魂が抜けたかのようにベッドに倒れた。１日に頭に入る知識量が限界を超え、オーバーワークしていたからだろう。
俺はベッドから起きあがるとふらふらとした足取りで食堂を目指した。朝から頭が痛い。


「どうした？しんどそうだな」
食堂に入って真っ先に聞こえてきたのは向付の声だった。
「んー、いや大したことない」
俺が辺りを見回すとやはりあの三人はいなかった。それにもう一人、海土もいない。俺はまさかと思い海土の部屋まで走った。考えたくはないが殺された可能性だってあるはずだ。しかし、それは今に襲ってきた。おそらく俺は朝から風邪気味だったのだろう。急に身体の中の力が弱まっていくのを感じた。地面に立つ力をも失い、俺は海土の部屋の前で倒れた。

本日二度目の起床をした俺は今の状況を把握できずに頭の中がハテナでいっぱいになっていた。
確か俺は海土を呼びに行ってそれから…。そうかそこで気を失ったのか。…ん？海土、そうだ海土はどうなった！
俺は勢いよく立ち上がると部屋を出ようとした。すると
「おい、どこ行くんだ？」
どこからともなく海土の声が聞こえる。俺が後ろを振り返るとそこにはイスに深く腰を掛け、本を読む海土の姿があった。
「海土？何でお前が俺の部屋にいるんだ？」
海土は本をパタリと閉じると本に集中していた目が俺に移る。
「士導、ここ俺の部屋だ。お前が俺の部屋の前で倒れてたから寝かせてやってたんだよ」
「そ、そうだったのか。すまなかったな。俺は海土が食堂に来ないからもしかしたら殺されたんじゃないかと思って海土を呼びに行ったんだ。お前何してたんだよ」
海土は少し奥にある小さなテーブルを指差した。その上に置いている小さな機械がある。あの機械は昨日、理科室で見つけて海土がずっと見ていたものだ。何でもすごい電気が出せるとか海土は言っていたが。
「昨日結局ずっと見てても興味が冷めなかってよ。今日も朝から見てたってわけだ」
俺は内心でホッとすると海土の方を振り返った。すると海土は突然険しい表情になった。
「だけどな。さっき落ち武者から呼び出しくらって今俺ら以外はみんな体育館に行ってる」


俺と海土はダッシュで体育館に向かうと中ではすでに落ち武者の演説が始まっていた。俺は地面に落ちている２つの封筒に目をやると続いてみんなが手に持っているものと照らし合わせる。間違いなく同じものだった。そして、地面に落ちているのは俺と海土の分だろう。
「士導君、遅かったですね。我は二回同じことを話すのが嫌いなので誰かから聞いてください。それではさようなら」
そう言うと落ち武者は俺たちの前から姿を消した。


「つまりこの封筒の中には俺たちがコロシアイをするための動機が入ってるんだな。そして、明日の夜までにコロシアイが起こらないと、この封筒の中身が世間に広まってしまう。コロシアイが起これば封筒は処分され中身も公表されないか」
俺は封筒の中身を確認する。中には紙切れが一枚入っておりそこには

ー士導静流は母親を殺した

と書かれてあった。

士導静流は母親を殺した

そんなわけがない。俺の母親を殺したのは間違いなく落ち武者だ。一昨日見せられたディスクに俺の家族が殺されていく映像があったのは落ち武者が俺の家族を殺しその場を撮影したからに違いない。こんな濡れ衣で俺を、俺たちを脅そうってのか？バカバカしい。
「みんなも何を書かれてたかは知らないがこんなもので人殺しなんてするなよ」
「だよな。たかがこれくらいで俺様を脅せると思ったのか落ち武者め」
俺は紙をクシャクシャにして食堂の端にあるゴミ箱にシュートした。
「そう言えば、海土あれ理科室に戻しとけよ」
海土は一瞬頭にハテナを浮かべたが、意味がわかり手をポンっと叩く。
「りょーかい」

部屋に帰ると俺のベッドの上に何かが入った黒い箱が置かれていた。上から覗くと、そこにはナイフからワイヤーなど殺人するのには欠かせないと思われる器具が大量に入っていた。「お前たち全員に無料で支給しています。使いたい時に使いたいだけ使ってください」と書かれた紙を箱の一番上に添えて。
こんなもの使って殺人なんかする人間がここにいるか？頭の中を整理していくと一人だけやってもおかしくない人間が頭に浮かんだ。
華狗也だ。あいつならやりかねない。そう思った俺はすぐに華狗也の部屋に向かった。

「珍しいね。静流君から僕に会いに来てくれるなんて」
「お前なら人殺しもやりかねない。だから見張りに来たんだよ」
華狗也は俺に茶を入れると俺の向かい側に座った。
「少なくとも今は人殺しなんてしないよ。今は僕だって命を優先したいからね」
俺は鋭い視線で華狗也を見つめる。華狗也はわざとらしく手で顔を覆い隠すと指と指の隙間から俺を覗いてくる。こいつと喋るといつもペースを持って行かれる。後イライラが止まらない。
俺は気を確かにするため目の前にある茶を一気飲みして「ぶはぁ」と声を上げる。しかし、ペースは再び華狗也よりになった。
「そんなに僕が心配なら今日はここで寝たらいいじゃないか？徹夜でも付き合うよ」
「分かった。今日は徹夜して徹底的にお前を見張る」
「自宅警備員の僕は徹夜慣れしてるからね。もし静流君が寝ちゃっても起こしてあげるよ」
徹夜して見張っていれば大丈夫だと思ったが念のため落ち武者から支給された殺人用具は俺の部屋に置くことにした。これで華狗也に犯行はほぼ不可能。つまり、殺人は起きない。
時計は一時を過ぎていた。だんだんと自分でも何をしているかわからなくなってきて、なぜか華狗也とオセロすることになっていた。まだ眠たくはないが徹夜慣れしていない俺の目では一時ですらいつもと違った感じがした。
「59対5。また僕の勝ちだね。って勝敗どころじゃないか。眠たいなら寝てもいいんだよ」
「まだ眠たくはないな。とりあえずはお前に一勝すらまでは寝る気はない」
「そうこなくっちゃ」

キンコンカンコーン。
「お前たちグッモーニン！朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
まだ華狗也に一勝もできずに夜が明けた。案外、目はパッチリとしていて今日過ごす分には問題はなさそうで爽快感すらあった。
「華狗也。今日はお前も食堂に来い」
嫌な表情もせず華狗也はコクリと頷いた。

コロシアイ学園生活残り２８日


俺が華狗也を連れて食堂に着くころにはもう全員が集合していた。その中には先日来ないと言っていた連中までいた。
「なんだお前ら。何のつもりだ？」
「来ちゃいけねーのか？」
春ヶ咲は俺を睨めつけながら喧嘩腰に言った。俺は別に、とだけ言うと席に座った。
「ぎゃあああああ」
「白ちゃん！どうしたの？」
車鳥は床を指さして言った。
「虫」
食堂の空気が一瞬にして凍り付く。そんな中で華狗也だけは「朝からテンション高いね」と笑っていた。
今時高校生にもなって虫如きであんなにも叫ぶ人間がいることに俺は心底ガッカリしていた。あれと俺を同じ人種として見られたくはないものだ。

朝食を食べ終えると俺たちは順次に食堂を出て行った。俺は華狗也と一緒に部屋まで戻ると対戦中だったオセロを再び始める。一方的に華狗也有利な盤面だったが、華狗也のミスで俺に時代が回ってきた。俺がやっと勝てると思い３１つ目の白を置いたとき、ピンポーンとインターホンが部屋に鳴り響いた。
「ちょっと清水君出てきて。って士導君もいるのか。ちょうどいいや」
そう言うと地近は手招きしながら俺らを理科室の前まで連れて行く。そこには俺と華狗也以外にも数人が集まっていて、全員がドアの向こうを見ている。
「何で僕らを呼んだの？」
「さっきから白ちゃんがいないから探してたら理科室が開かないことがわかって中真っ暗だからどうなってるかもわかんないし。だから人集めて一緒に開けてもらおうと思って」
確かにドアを開けようとしても、何かが引っかかっているようで開く気配がない。さらに理科室の中は暗黒で何が引っかかっているかを確認しようにも確認できない。
俺たちは全員で突進して理科室のドアを強引に開けることに決めた。前傾姿勢をとると、全員一斉にドアに向かって走り出した。
バンっという音と同時に強烈な光が俺たちを襲った。光は一瞬だったために理科室はまだ暗闇のままだった。俺は壁を伝い手探りで電気のスイッチを探し当てそれを押す。するとそれは俺たちの目の前に現れた。
「きゃあああああ！！」
地近の悲鳴が理科室にあっという間に広がっていく。
今度は虫じゃない。人間。黒こげになった車鳥白が吊り下がっていた。
「ピンポーンパンポーン。死体が発見されました。一定の捜査時間の後で学級裁判を開きます」
アナウンスの直後に落ち武者は俺たちの後ろに立っていた。
「お前たち驚きましたか？今のは『死体発見アナウンス』と言いまして、死体を三人以上の人が初めて見ると今のアナウンスが流れます。それからこれを」
落ち武者はまだ現実を受け止めれていない俺たちに黒いファイルを手渡した。
「それはザ・落ち武者ファイル。この事件の状況を簡単にしたものです。学級裁判にも役立つと思うので大切に保管してください」
ほとんど落ち武者の話が入ってこない俺たちだったがただ一人冷静な人間がいた。
「学級裁判って何のこと？」
「清水君いい質問です。学級裁判とはお前たちが今回の事件をお前たち自身で議論しあい、誰が『クロ』つまり犯人なのかを当ててもらいます。もし『シロ』つまり犯人以外の人間が裁判に勝てば『クロ』だけがおしおき、もし『クロ』が勝てば『クロ』だけが卒業でき、『シロ』全員がおしおきされます」
「おしおき？」
「またまた清水君ナイスな質問。おしおきと言えばもうあれしかないですよね？そう処刑ですよ。しょ☆け☆い。とりあえずは学級裁判に臨むため証拠集めから始めてください」
落ち武者は俺が振り返るともうそこにはいなかった。証拠集め、学級裁判、おしおき。俺たちが生きる道がそこにしかないとわかり俺は顔をあげた。落ち武者通りの展開に進むのは吐き気がするが、学級裁判とやらで犯人を見つければいいんだ。絶対に犯人を見つけてみせる。

しばらくするとみんな動き始めていた。
俺は華狗也と天井から吊り下げられていた車鳥の死体を降ろすと死体と落ち武者ファイルを照らし合わせながら捜査を始めた。

ザ・落ち武者ファイル１

死者　　超高校級の騒音　車鳥白

死因　　高温の熱による全身火傷

死亡時刻　　午前８時１５分

死亡場所　　理科室


今は８時２０分。と言うことは車鳥は俺たちが開けた時に死んだのか。確か朝食が終わり全員が食堂を出たのが８時だったはず。犯人はわずか１５分でこの空間を作り出したってことか。俺たちが死体を降ろした時に使ったはしごだが、あれも吊り下げるために犯人があらかじめ用意してたのだろう。
俺は死体のそばにある機械を見つけた。それは昨日海土が珍しがっていた電気計だった。今まで見なかったが何となく電気計の裏側を見てみるとそこには「品名ミョルニル」と書かれてあった。

『ミョルニル』
海土が珍しがっていた電気計。とても強い電気を出すことが可能。

そして、そのミョルニルから何本ものワイヤーが束になってドア付近を経由して車鳥の手足にくくりつけてあった。
「これは鉄製のワイヤーだね。さぞかしよく電気を通したことだろうね」
「華狗也お前触ったのか？」
「電気を通しているんだから鉄製以外考えられないでしょ。その機械の強烈な電気を通したからワイヤーも死体も全てが黒こげになっているんだと思うよ」

『鉄のワイヤー』
ミョルニルから延びてあった鉄製のワイヤー。電気を通して黒こげになっている。

『黒こげの死体』
ミョルニルの電気を浴びて全身火傷を負った。黒こげになっているのでそれ以外はわからない

ワイヤー、死体以外にも黒こげになっているものがその場にはもう一つあった。車鳥を吊っていたロープだ。ワイヤーから車鳥を経由してロープも電気を浴びて黒こげになっていると考えるのが妥当だ。

『首吊りようのロープ』
ミョルニルの電気を浴び黒こげになっている。車鳥の首に巻かれている。

ー車鳥の部屋ー

俺は理科室から出ると、次点で怪しい車鳥の部屋に足をのばした。まず車鳥の部屋の綺麗さに感動した。逆に言えば、部屋が綺麗と言うことはここでは犯人と車鳥のやり取りがなかったということなる。しかし、車鳥の部屋にはあるものがなかった。落ち武者から支給された殺人用具の数々が。犯人は車鳥の殺人用具を使い殺害したとすれば車鳥の殺人用具は一体どこにある？

『車鳥の部屋』
部屋は綺麗で争った形跡はない。

『車鳥の殺人用具』
部屋から車鳥の殺人用具が消えていた。

俺が部屋の中での捜査を終え、部屋から出ようとすると勝手にドアが開き外から柴白が入ってきた。
「大丈夫か？顔真っ青だぞ？」
「う、うん。でも後悔してるんだ」
「後悔？」
柴白は溜め息をつき俺の方を向いた。
「昨日ね車鳥さんに中田さんと一緒に寝ないかって誘われたの。でも私そういうのあんまり慣れてなくて断っちゃって。私がずっと一緒にいればこんなことにはならなかったのかなって思っちゃうの」
「それはお前のせいじゃない。気にするな。俺たちは今目の前にあることだけをしてればいいんだ」
柴白は俺に創られた笑顔を見せると車鳥の部屋に入っていった。

『柴白の証言』
昨日車鳥に中田と寝ることを誘われたが断った。

俺は部屋を出ると、再び理科室に向かった。死体を見るというよりは他の人の話を聞きたい。理科室に行けば人が人が集まっているのではと考えたのだ。
俺の予想は当たっていた。地近、図川、華狗也、海土、そして司翼が理科室にはいた。
「静流君。理科室の棚からこんなものが見つかったんだよ」
そう言って華狗也は黒い箱を俺に手渡す。それは間違いなく落ち武者から支給された殺人用具だった。それもおそらく車鳥のものだ。犯人はあらかじめ車鳥の殺人用具を奪い理科室に持ってきたということになるのか。そして、理科室ではもうすでに犯行の準備が完了していてそこに車鳥を連れてくる。もしそうだとしたら１５分で犯行も可能なのかもしれない。
最初に理科室の異変に気づいたのは地近だ。彼女から話
聞いておくか。
「地近。お前最初に理科室に来たよな。その時の話を聞かせてくれないか？」
「うん。私は朝食後に白ちゃんと喋ろうと思って白ちゃんの部屋に行ってもいないから探してたの。そしたら理科室が開かないし真っ暗だしでみんなを呼びに行って開けたら中から…」
地近の顔色が急に悪くなる。
「車鳥を探し始めたのはいつぐらいだ？」
「８時１０分ぐらいだと思う」

『地近の証言』
８時１０分ぐらいから車鳥を探し始め、理科室の異変に気づく。

「え？地近さん、車鳥さんを探してたの？」
横から割り込むようにして図川が声を出す。
「図川も車鳥を探してたのか？」
「そうじゃないんだけど、僕ここにまだ友達いないからさ友達作ろうと思ってみんなの部屋を訪ねて行ってたんだけど車鳥さんいなくてさ」
「それも８時１０分くらいのことか？」
図川は首を横に振る。
「僕は朝食後すぐにみんな部屋を回っていったよ」

『図川の証言』
朝食後すぐに全員の部屋を回ってコミュニケーションを取りに行ったが、車鳥は不在。

８時過ぎには車鳥は部屋にいない。もしくは、そもそも部屋に戻っていないのかもしれない。犯人を除いて、全員が車鳥に会ったのは朝食の時が最後だったのか。
しかし、俺の予想を裏切る証言を僕は得ることができた。
理科室から地近が出て行きそれと同時に中田が入ってきた。俺が名前を呼ぶと中田はすぐに俺の方を向いた。
「お前昨日車鳥に寝ようと誘われたんだよな。あれ行ったのか？」
「あぁ。行った。車鳥に誘われて一緒に寝たんだ。なぜか私の部屋で」
「お前も車鳥に最後に会ったのは朝食の時が最後だったのか？」
「いいや。私は朝食後車鳥と一度私の部屋に戻った。だけど、車鳥はすぐに戻るから待っててとだけ言って私の部屋を飛び出したて行ったんだ。それでずっと待ってたが帰ってこないと思ったところで死体発見アナウンスを聞いて急いで理科室に向かった」

『中田の証言』
車鳥に誘われ一泊した。朝食後一度会っているが車鳥はすぐに姿を消した。

俺は中田に礼を言うと次は死体をもう一度眺めた。ワイヤーを目で辿りミョルニルも眺める。そしてもう一度ワイヤーを辿っている時だった。扉の底にテープが貼られていることに俺は気が付いた。傷つけないようにテープを剥がす。俺はそれをポケットにいれると再びワイヤーを目で辿る。車鳥の顔を見下ろした時、アナウンスが校内に鳴り響いた。
「いやいや、初めての学級裁判で我もドキドキしていますよー。それでは学級裁判を行いますので直ちに食堂横にある赤い扉の前まで来てください」

『ドアに貼りついたテープ』
ドアの底に貼り付いていた。用途は不明。

「静流君。行こうか」
俺は頷くと早足で赤い扉の前に向かった。
赤い扉を開くとそこエレベーターになっていて、学級裁判場にしか向かわないらしい。俺はそのエレベーターに足を踏み入れる。小さなエレベーターの人口密度が高くて気分を損ないそうだったが、学級裁判場へ思ったよりも早く着いた。
落ち武者は自分の名前が書かれている場所に移動してくださいとだけ言うと、自分の席に座った。

超高校級の騒音車鳥白を殺した犯人を見つけるため

命がけの学級裁判は幕を開ける！！


コトダマ一覧
『ミョルニル』
『鉄製のワイヤー』
『黒こげの死体』
『首吊りようのロープ』
『車鳥の部屋』
『車鳥の殺人用具』
『柴白の証言』
『地近の証言』
『図川の証言』
『中田の証言』
『ドアに貼り付いていたテープ』

学　級　裁　判　開廷！！

落ち武者
「では、最初に学級裁判の簡単な説明をしておきます。学級裁判では、クロは誰か？を議論し、その結果はお前たちの投票により決定されます。ただしいクロ見つけたらクロがおしおき、もし誤ったらクロ以外がおしおきされ、クロだけが卒業できます。では議論を始めてください」

地近
「そんな議論ったって何から話し合えばいいの？」

清水
「それはみんなが【今一番知りたがっていること】を話し合えばいいんだよ」

宇津木
「今一番知りたがっていること？」

士導
「車鳥を殺した犯人ってことだろ？まわりくどい言い方をするな」

海土
「とりあえずは落ち武者ファイルに書かれてあることを確かめていこうか」

春ヶ咲
「死者は超高校級の騒音、車鳥白。死因は全身の火傷だったな」

鍵村
「【全身火傷を起こすほどのもの】で殺されたってことだよね？そんなものって理科室にあったっけ？」


【全身火傷を起こすほどの】　←　『ミョルニル』


士導
「いや、あったはずだ。理科室に置いてあった『ミョルニル』なら全身火傷の感電死を起こせても不思議ではないはずだ！」

清水
「おそらく『ミョルニル』で間違いないだろうね。それ以外に凶器になりそうなものはなかったし、そもそも死体が死因は感電死であることを物語っているしね」

地近
「その『ミョルニル』から出てた【コード】で白ちゃんまで電気を通したってことだよね？」


【コード】　←　『鉄製のワイヤー』


士導
「それに同意だ。まぁコードじゃなくて『鉄製のワイヤー』だけどな」

憩崎
「だけどよ。本当にその『ミョルニル』ってのが凶器なのか？」

黒薔薇
「どういうこと？」

憩崎
「だってよ、俺様はあれに触ったけど感電なんかしなかったぜ」

柴白
「確かにそうだよね。あんなに一瞬で黒こげに出来ちゃうほどの電気が通ったワイヤーなのに、それを触っても感電すらしないなんて」

士導
「憩崎が言ってることもわかるが、それはないんだよ」

司翼
「…あれほどにまで強烈な電気を通してワイヤーの方がその意味を失ってしまった」

清水
「そういうことだね」

向付
「ドアを開けた時ほうき星みたいにあんなにも光って本当にビックリしたよ」

歌土井
「そのことなんだが、車鳥が電気を浴びて光ったのって空中だったよな？あれは車鳥が【空中に浮遊】してたってことか？」


【空中に浮遊】　←　『首吊りようのロープ』

士導
「それは違うな！ワイヤーと同じように黒こげになっていて見分けつかなかったが、車鳥の首にはロープが巻きつけられていたんだ」

中田
「感電したときにロープも一緒に感電したというわけか」

海土
「だけど、犯人はどうやってそこまでのことをあの短時間でやったんだろうか？確か俺たちが食堂を出たのは８時。死亡したのが８時１５分だろ？早すぎじゃねーのか？」

向付
「食堂に来てた車鳥さんがダミーだったとか？」

清水
「仮にダミーだとしても車鳥さん以外のみんなは食堂にいたはずだよ。まあ、ダミーなんてことはないけどね」

地近
「むしろ理科室で発見した方の白ちゃんがダミーで実は【部屋で殺されていた】とかは？それでみんなの目を盗んで理科室のダミーと交換したのかも」


【部屋で殺されていた】　←　『車鳥の部屋』


士導
「それはないよ。部屋で襲われてたのなら部屋がもっと荒れていたはずだ。だけど、部屋は綺麗なままだったんだよ」

捕鷹
「綺麗なままだったんなら【車鳥の部屋に入らず】【犯人の部屋で殺された】んじゃないのか？」


【車鳥の部屋に入らず】　←　『車鳥の殺人用具』


士導
「犯人が車鳥の部屋に入っていないはずがないんだよ。なぜなら、俺たちに一つずつ支給された殺人用具の入った黒い箱が車鳥の部屋にはなかったんだ」

清水
「ちなみにそれはその後理科室の棚から発見されたよ。つまり、犯人は一度車鳥さんの部屋には入ってるんだ」

春ヶ咲
「やっぱり車鳥は理科室で殺されたんだな」

宇津木
「理科室で殺されたとしても犯人は一度車鳥さんの部屋に入らなくちゃいけないんでしょ？そんな人っているの？」

海土
「自分から部屋に入ったなんて自白する人間なんていないだろ。犯人と疑ってくださいって言ってるようなもんだろ」

捕鷹
「【証拠】があればいいのだけど」


【証拠】　　←　　『柴白の証言』


士導
「車鳥の部屋に入ったかは別にして、車鳥と会った人間ならいるはずだ。そうだろ？柴白」

柴白
「…えぇ！私ですかっ！」

憩崎
「てことは柴白が犯人だな」

地近
「柴白さんが白ちゃんを…っ！！」

柴白
「違うよ！私は殺してなんかいない！」

士導
「お前ら落ち着け！」

清水
「とりあえず、最後まで静流君の話を聞こうよ」

士導
「俺が言いたいのは柴白が犯人ってことじゃない。柴白は昨日車鳥に誘われたんだったよな？」

柴白
「う、うん」

黒薔薇
「誘われたって何を？」

士導
「柴白は昨日車鳥に一緒に寝ようと誘われたんだ」

中田
「それうちも誘われたよ。急に一緒に寝ようよ！って言われて」

士導
「だけど、何で断ったんだ？」

柴白
「私…あんまりそういうの慣れてなくて。他人と寝るなんてとても…」

清水
「なるほど。でも、今の話だけだと柴白さんは車鳥さんの部屋に入ることは可能だったわけだよね」

鍵村
「どういうこと？」

清水
「柴白と中田さん以外に質問なんだけど。他に一緒に寝ようって誘われた人はいる？」

歌土井
「そんな話朝食の時に聞かなかったし誰も誘われてないんじゃないか？」

清水
「おそらく。誰も誘われてないだろうね」

図川
「つまり…どういうこと？」

清水
「柴白さんは車鳥さんが部屋を出ることを知っていたことになるよね。車鳥さんが中田さんの部屋に行ってる隙をついて車鳥さんの部屋に入り込み殺人用具だけを奪った。そうも考えられない？」

司翼
「だがそれは中田にも言えることなんじゃないか？中田も【ずっと部屋にいた証拠】なんてないわけだろ？」


【ずっと部屋にいた証拠】　←　『中田の証言』


士導
「いや、中田は車鳥の提案にのって、一緒に寝てたらしいんだ」

中田
「そうそう。昨日はうちの部屋にずっといたよ、車鳥と。あとさ、車鳥は理科室で殺されたんでしょ？てことは、理科室に車鳥を呼ぶ必要があるわけじゃん？柴白が犯人だとして理科室に車鳥を呼んで車鳥は来るのかな？」

春ヶ咲
「明らかに怪しいもんな。素直に従うはずもないか」

中田
「地近なら理科室に呼べるんじゃない？」

向付
「確かに、地近さんに呼ばれたなら車鳥さんは理科室に行きそうだね」

地近
「ちょ、ちょっと待ってよ！」

図川
「でも、それなら殺人用具の方の説明はどうするの？」

清水
「説明なんて必要ないよ。ね？中田さん」

士導
「なんのつもりだ。さっきまでは柴白を脅してたくせして次は中田か？」

清水
「違うよ。犯人と決められる前に中田さんに喋るチャンスをあげただけだよ」

海土
「清水、俺らにもわかるように言ってくれ」

清水
「りょーかいー。つまり犯人は

中田さんだよ」

中田
「は？何言ってるの？」

清水
「みんな中田さんに釣られすぎだよ。そのせいで一番殺人を犯しやすい人を見失ってたんだ」

中田
「うちがみんなを釣った？そう言って清水がみんなを釣ろうとしてるんじゃないの？」

清水
「どう思ってもらっても構わないよ」

春ヶ咲
「何かしらがあるから清水は中田が犯人だと言ってるわけだろ。清水の推理を聞かせてくれ」

清水
「そうだね。まず僕が不自然に思ったのは泊まった部屋だよ。中田の部屋だって聞いたけどそれはあってるよね？」

中田
「あぁ。車鳥に言われて私の部屋で泊まった」

清水
「柴白さんにも聞いときたいけど、誘われたのは車鳥さんだよね？」

柴白
「うん。車鳥さんに誘われたの」

清水
「ありがとう。でも、普通そういうのって主催者の部屋に泊まるもんじゃないかな？」

捕鷹
「私も主催者がなぜ中田の部屋に泊まってたのかは気になってはいたが、中田が犯人ならつじつまが合う」

清水
「そう。この宿泊イベントを仕掛けたのは車鳥さん、ではなく中田さん。君なんだ」

憩崎
「なるほどな。それで、中田は車鳥を誘った後で車鳥に柴白を誘わせたのか」

黒薔薇
「柴白には断られたが、車鳥が中田の部屋にいる間は車鳥の部屋は空き部屋ということも中田ならわかる。その瞬間に殺人用具を車鳥の部屋から持ち出したのか」

海土
「さらには一泊過ごした仲なわけだ。車鳥も中田の言うことをある程度信用するようになった。で、それを利用して理科室に呼び出したわけだ」

中田
「なかなかの推理だけど、やったのはうちじゃない。殺したのは地近で間違いないわ。地近は朝車鳥を探してたなんて言ったけど、あれは殺したのを【誤魔化そうとしてるだけ】だったのよ。車鳥を殺した後は車鳥の部屋から殺人用具を理科室に運んだ。この推理で間違いないわ」


【誤魔化そうとしてるだけ】　←　『地近の証言』


士導
「地近が犯人なら無理があるすぎる。大体地近は８時１０分に部屋を出て探してる。時間が少なすぎるし、そもそもお前の推理は矛盾している！」

中田
「私の推理が間違っている？大体地近が【部屋にいた証拠】だってないわけでしょ？」


【部屋にいた証拠】　←　『図川の証言』


士導
「図川、お前の話を聞かせてくれ」

図川
「僕？でも何のことかさっぱり」

士導
「朝のことだ。図川は８時過ぎからみんなの部屋を訪ねていってたんだよな？その時地近は部屋にいたか？」

図川
「うん、いたよ。その後地近さんは車鳥さんを探しに行ったはずだよ」

清水
「じゃあ図川君。君がみんなの部屋を訪ねて回った時中田さんは部屋にいた？」

図川
「そう言えば…いなかったよ」

司翼
「ん？中田は車鳥と帰ってからはずっと部屋にいたんじゃなかったのか？」

鍵村
「図川が部屋に来てる時はすでに犯行中だったわけね」

地近
「それとは話は違うけど、さっき士導君が言った矛盾って何のことなの？」

士導
「もし、犯人が地近だった場合中田の推理はおかしかったんだよ。だって俺たちが入るとき部屋はワイヤーがドアの底に詰まってたせいで入れなかっただろ？中田は地近が車鳥を殺してから部屋に戻り殺人用具を運びこんだと推理したけど、その殺人用具がなければ車鳥は殺せない。車鳥を殺す前に殺人用具を理科室に運んでおかなければあの空間を作ることはできなかったはずなんだよ」

清水
「それにただ殺すだけならロープを首に巻き窒息死で良かったはずなのに、わざわざ『ミョルニル』を使って手間のかかることをしたよね」

中田
「それがどうした？」

清水
「君は【手かがりとなるものを消したかった】んじゃない？」


【手かがりとなるものを消したかった】　←　『黒こげの死体』


士導
「電気を使い体ごと真っ黒にしたのは車鳥が中田にとって不利益なことを仕込んでたからだったのか？」

清水
「そうだろうね。例えばダイイングメッセージとか。今となってはわからないけれどね」

捕鷹
「さて、中田。何か反論は？」

中田
「あ、ある。あるよ！だってうちは…」

清水
「まだうちは殺してないとか言うつもり？だったらもう投票するけど」

憩崎
「いや、待てよ。車鳥は俺様たちが理科室を開けたときに死んだんだろ？もし電気を浴びていたならそれ以前に死んでいたはずだろ？」

中田
「そ、そうよ！開けた時に電気を浴びたならあんたたちの推理はおかしいわ！」

向付
「中田は開けた時いなかったけどな」

柴白
「それってどういうことなんだろ？ドアに詰まってたならドアが電気を通さないものだったとか？」

宇津木
「【電気を通さないもの】がドアの物質だって言いたいのよね？ドアが電気を通してたらドアの方が電気で黒こげになりそうだしね」


【電気を通さないもの】　←　『ドアに貼りついていたテープ』


士導
「ドアは関係ないよ。なぜなら…

士導
「なぜなら、あのドアの底にはこれが貼りつけられていたんだ」

柴白
「それは？」

清水
「絶縁テープだよ」

士導
「おい、俺の台詞をとるなよ。と言うかお前これが貼りついていたのを知っていたのか」

清水
「まぁね。僕の不注意で剥がし忘れちゃったけど、流石は静流君。ちゃんと剥がしてきてくれるとは」

春ヶ咲
「お前らだけで喋ってんじゃねーよ。絶縁テープってなんだよ！」

清水
「文字通りさ。わかりやすく言うと電気を通さないテープさ」

士導
「犯人はこれをワイヤーとドアに貼り、ドアが開いた時にワイヤーからテープが剥がれるような細工をしたんだ。だから俺たちがドアを開けた時に電気が流れ出し車鳥は…殺されてしまった」

海土
「今度こそ終わりだな。中田お前なんだろ？」

鍵村
「まあもう何を言ったところで中田が犯人だというのは変わらないでしょうけど」

中田
「…ふ。落ち武者…投票数タイムに入ってくれ」

落ち武者
「わかりました。それではお前たちはお手元のスイッチで犯人だと思う人物に投票してください。果たしてその答えは正解なのか不正解なのか。れっつぼおおぉと！」

中田
「お前たちの勝ちだ」



学　級　裁　判　　閉廷　！！

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「大正解でーす。超高校級の騒音車鳥白さんを殺したのは中田乃亜さんでした。いやぁそれにしても一発目からなかなかの殺人計画でしたね。監視カメラからですが、見入ってしまいましたよ」
落ち武者は笑いながら中田を見つめるが、中田は落ち武者と目を合わせようとはしなかった。
「その殺人を間接的にお前が犯させたんだろっ！！」
俺は落ち武者を睨みながら人差し指を立て、そして指す。
「はて？我は弱みを世間に流すとは言いましたが、殺人を犯したのはそこの中田さんでしょう」
ぬいぐるみのせいで表情がわからないが、絶対に嫌な顔でにやけている、それだけは確信できた。お前が渡した封筒が動機になった、そう言おうと俺は再び落ち武者を睨んだ。
「お前かが」
「やめろ士導」
俺を止めたのは誰も予想だにしなかった人物、中田だった。
「落ち武者の言うとおりだ。殺したのはうち、封筒の中身にうちは負け車鳥を殺した。だから今お前の敵なのは落ち武者じゃない仲間を殺したうちなんだよ」
「中田…」
中田は今にも涙が出そうな瞳をしながら俺を見つめる。俺もただ中田を見つめた。
「士導…頼みがあるんだ。うちの部屋に落ち武者から渡された封筒とうちのドラムスティックがある。もし、ここを出れたらその２つを『池面海人』という人間に渡して欲しい」
「わかった。必ずここを出て渡してやる」
中田はありがとうと言いながら俺に手を差し出した。
「あいつのやり方は汚い、だけど負けないでくれ」
俺も中田に手を差し出した。そして、何も言わずに頷いた。
「さて、感動のシーンもこれくらにしてそろそろ行っちゃいましょうか、おしおき、おしおき。もう待てないのでやっちゃいましょう。それではー、おしおきターイム！！」