二次創作小説(映像)※倉庫ログ

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.27 )
日時: 2014/01/03 22:52
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: OI3XxW7f)

(ゲートウェイ様 ご参加ありがとうございます!)
石丸『そうだな…七海くんなら、何か一緒に考えてくれるかもしれない。行ってみよう』




———トントン。





「はいはーい。いるよ?」
「僕だ、石丸だ…。話がしたい、入れてはもらえないだろうか」
「…あの話のこと、なんだね。本当に私でいいの?」
「田中くんも罪木くんも、今は話せる状態じゃなさそうだしな…」
「わかった。入って」


古びた扉の音が僕に響いてくる。扉の向こうには、声の主…七海くんがいた。七海くんは、心配そうに僕の顔を見た後、僕を部屋の中まで案内してくれた。…流石はゲーム内のプログラム。こんなことでも動じないのだな…。
小さなティーポットのお茶を、彼女は2人分用意する。僕は用意されていた木の椅子に腰かけ、カップに注がれたお茶を一口飲んでみる。
…清楚な紅茶の味が、口いっぱいに広がる。それと同時に…僕はこれから何をすればいいのか…「可能性」を考えてみるきっかけも生まれた気がした。
とりあえず、七海くんに今の僕の気持ちをぶつけてみる。
———僕は、これからどうすればいいのだろうか。七海くんは僕の話を最後まで聞いて、こう切り出してきた。


「…それは、私が導く答えじゃないと思うな。石丸くん達みんなで考えること…だと、思うよ?」
「しかし…もうこのゲームをクリアする意味も意義もなくなってしまった…。僕達はこれからどうすればいいのだ…!!」
「『意味がない』か…。そうだなー、石丸くん。苗木くん達は『可能性が全くない』とは言ってなかったよね?」
「あ、あぁ。『助かるかもしれない』とは言っていたが…」


そう…だが…。それが本当かどうか、という確証はどこにもない。もしかしたら、苗木くん達だって嘘をついている可能性がある。…そんな考えを持ってしまう自分が嫌だった。本当は…僕もわかっているのだ。その可能性に…『すがりたい』のだ。
でも…。もしその『可能性』が嘘で、ゲームをクリアしても元の世界に帰れなかったら?僕だけが犠牲になるのならいい。だが…今は田中くんも罪木くんも傍にいるのだ。彼らまで戻れず、もしかしたら存在が抹消され…。考えるだけで恐ろしかった。


「…石丸くん」
「僕だけならまだしも…仲間が犠牲になるところなど僕は見たくないっ!!」
「でも…ここでじっとしていて、外に出ることなんて出来るのかな?」
「…………」
「きっと今は田中くんも罪木さんもつらい気持ちで一杯だ…と思うよ。でもね?石丸くんが動くことで、2人にも何か…変化が起こる。私はそう思うな」
「七海、くん…」
「苗木くんのいう…『可能性』。私は信じても…いいと思うな」


そう言いながら、七海くんは僕の両手を優しく包み込むように握ってくれた。…プログラムとは言えない、僕達と同じ…人間の手…だった。
七海くんの言葉で、僕の頭の中には一筋の光が見えたのかもしれない。…今は、やるべきことも、理由もない。だからこそ…だからこそ、苗木くんの言った『可能性』を信じて進むしかないのだ…。それだけが、僕達がゲームクリアをする『理由』になりえるのだから。
決意を伝えると、七海くんは微笑んで席を立った。…何をするつもりなんだ?


「読んでこようか、石丸くん。他の…2人をさ」
「そうだな……」





石丸「七海くんに任せるか…?それとも自分で行こうか…」


①七海に迎えに行ってもらう
②自分で迎えに行く

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.28 )
日時: 2014/01/09 23:58
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 3Em.n4Yo)

石丸『そうだ…。僕が呼びに行かなければ意味がない…』


僕は七海くんに「ありがとう」と気持ちだけ受け取り、自分で2人に話すことを決めた。やはり……ここは自分で話すべきなのだ。自分の決意を。
そう思い、僕は隣の部屋へと向かった。そう———田中くんの部屋だ。
僕は部屋の前でうろたえる。やはり……決めたからと言って、行動に移すのは容易いことではない…。でも、駄目だ。ここでくじけては、先へは進めない。


「よーし…!!」


僕はゆっくり深呼吸をし、扉を数回ノックする。すると、いつものようには覇気のない、珍しく本当の自分を見せている田中くんが出迎えてくれた。


「田中くん…七海くんの部屋まで来てほしいのだ。そこで…話をしよう」
「しかし…話など、俺には…」
「とにかく来てほしい。これからどうするかは…みんなで決めたほうがいいと思ってな。まぁ、無理なら来なくてもいいが…。僕は罪木くんを呼びに行ってくる、もし行けるのだったら…」
「お前は…どうして…そこまで真っ直ぐな瞳を携えられている」
「……僕も、はっきり言えばどうすればいいのか分からないのだ。だからこそ…話し合うべきなのだ」
「……本当に、変わった奴だな。お前は」


そういって、田中くんは重い腰を上げ部屋を去っていく。…どうやら、話を聞いてもらえるようだ。さて、急いで罪木くんも呼んでこなければな…。
そう思い、僕は足早に罪木くんを呼んで一緒に七海くんの部屋へと向かった。


「石丸君、お疲れ様。紅茶ならあるから飲みたいときは言ってね」
「あぁ、感謝するぞ七海くん!それでは…2人とも、僕の決意を聞いてほしい」
「決意、ですかぁ…?」
「僕は…『このゲームをクリアしようと思う』」
「つまり…『苗木と日向の提案を呑む』ということなのか」
「あぁ…」


そこまで言ったところで黙り込む。…やはり、2人とも乗り気ではないらしい。それはそうなのだ、あんな事実を知ってしまった後じゃ誰もがそう思うだろう。しかし…歩みを止めてはならないのだ。僕達にはまだ…ゼロには近いだろうが『可能性』が存在していることに気付かなくてはいけない。


「苗木くんと日向くんの言葉…。僕ははっきり言って今も信じられない。だが…今は『それ』にかけるしかないのだ。ここで蹲っていても…何も始まらないのだ」
「それは…そうですけどぉ…。もしゲームをクリアしたとして…皆さんが外に出られなかったらどうなるんでしょう…」
「『もし』の話はやめよう。恐らく…それは許されない世界なのだ、ここは。だからこそ…提示してくれた『可能性』を信じて進んだ方がいいと気づいた。…無理強いはしない、もしよかったらでいい。僕達と…これからも旅を続けてくれないだろうか。『ゲームクリアのための』…」


ダメ元で2人に向かい頭を下げる。強引にでも「ついていく」と言った七海くんはともかく、やはり…無理強いは出来ない。ここで戦わずに永遠を過ごすのも『一種の選択肢』なのだからな…。
しかし、帰ってきた言葉は僕の思惑とは反していた。


「……フハッ いいだろう。その案、俺様は乗るぞ。貴様とは『特異点』という繋がりを持った仲なのだ。地獄の果てまで付き合ってやろう」
「わ、私もついていきますよぉ…!確かにここにずっといたほうが安全だとは思いますけどぉ…。やっぱり、一人は嫌ですしぃ…。石丸さん達と一緒にいた方がきっと、何か新しい発見もあると思いますしぃ…」
「…いいのかい?最悪の場合…死んでしまう恐れもある」
「そんなものは承知の上。俺様は…易々と死なぬ」
「…決意は固まったみたいだね。良かった、みんなが…希望を持ってくれて」


決意を固めた僕らを、七海くんは優しく見守ってくれていた。もちろん、彼女も最後まで付き合ってくれると言ってくれた。
…これから先、何が起こるかは僕にも分からない。だからこそ…前へ進もうと思う。きっと…そうすることで…運命も変えられるのではないだろうか?
とりあえず今日のところはここで解散し、仮眠をとることにした。明日…。明日が一端のスタートライン…なのかもしれないな。

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.29 )
日時: 2014/01/11 19:29
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: y5kuB1W.)

———そして、次の日。
苗木くんと日向くんがパブに入ってきた連絡を受け、僕らは覚悟を決めて彼らの座っている席へと急いだ。
…正直言って、まだ完全に決意を固めたわけではない。しかし……何もしないよりは行動したほうがマシだと、今は思うことが出来るようになった。それも……ある意味『成長』なのだろうか……。
僕らが席に着いたのを確認すると、苗木くんが口を開き、話が始まる。


「それで…結論は出た?」
「あぁ。はっきり言って、まだ君達の言葉を信用したというわけではない。だが……その『可能性』にかけてみようと思うんだ」
「じゃあ…!!」
「はいぃ…。ぜひ、パーティに入ってくださいぃ…!!」
「…ありがとな。あの反応だったから、断られること前提で調べ物をしてた」
「ハッ 俺様を誘わなかったことを後悔せずとも済んで良かったではないか…。貴様、命拾いしたな」
「意味不明発言続ける田中は置いといて…。それじゃあ、俺と苗木はしばらくこのパーティにお世話になるってことで」
「うん。よろしくね」


僕は苗木くん、そして日向くんと握手を交わし、仲間になったことを再確認する。…心強い仲間ができたものだ。
とりあえず食事をしないかとの罪木くんの提案で、僕達は軽く食事を済ませることになった。まぁ、昨日はあんな事実を聞かされていたせいで空腹を忘れていたが、電脳世界にいるとはいえ疲れもするし、腹も減る。そう、人生の『舞台が違うだけ』であって、僕らはここに『生きている』のだ。
他愛ない会話を交えながら食事を終え、次の活動拠点について話し合うことになった。


「ねぇ…ここにはもう新しい情報はなさそうだよ?次の場所へ行くの?」
「そうだね…。この町からなら、『ラーム』っていう街か『ノーヴェム』っていう街に行けるんだけど…どっちに行ったらいいのかなぁ」
「うーん…多分、『ラーム』に行くルートだと、私達の強さだと全滅しちゃう可能性が高いよ。だったら…素直に『ノーヴェム』に行ったほうが私はいいと思うな」
「わ、私は痛いのは嫌ですぅ…」
「だったら、次の目的地は『ノーヴェム』で決定だな!」
「未開の地が俺様を呼んでいる…。貴様も感じないか?闇の息吹を…」


話し合いの結果、森を抜けてすぐのところにある『ラーヴェム』という街に行くことになった。確かに…ここだけだともう新しい情報は得られないと感じていたのだ。
次の街で……誰かと合流できればいいのだが。疑惑と不安が、僕の胸を満たしていく…。だが、不安だと言っている場合ではない。僕らは…前へ進まなくてはいけないのだ。
そう気持ちを切り替え、僕らは手早く準備を済ませて『ラーヴェム』への道を進んでいったのであった。





例え進んでいったその終着点が………『死』という最悪な結末で終わったとしても。
立ち止まるわけにはいかないのだ。




『苗木 誠』
『日向 創』 が、パーティに加入しました。



file0.『ひとつの事件のハジマリ』 END.