二次創作小説(映像)※倉庫ログ

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.7 )
日時: 2013/12/09 18:35
名前: ランスロット (ID: R7lCf21o)

…ここは…どこなのだ…?



…確か…突然現れたブラックホールに吸い込まれて…



…駄目だ…頭が回らない…。



『……丸さぁん!!』



……誰かの声が聞こえる…。



『……かり……くださいよぉ……!!』



……ははっ、この期に及んで死ぬのか…。



『石丸さぁん!!』



「いたっ、いたたたたたたいたいいたいっ!!!」


急に襲ってきた痛みに意識を取り戻すと、目の前では罪木くんが僕の頬を思いっきり殴っていた。…グーで。


「石丸さん起きてくださぁい!!」
「起きてるから…殴るのを止めてくれないか…ぐはぁっ?!」
「ごごごごごめんなさぁい痛かったですかぁ?!」


僕が起きたのを確認したのか、安堵の表情と申し訳ない表情が入り混じったような複雑な表情を罪木くんはしていた。
エプロンに軽く泥がついているようだが…それ以外は彼女は怪我をしていないようだ。…良かった。
…にしても頬が痛む…。罪木くんの腕力はどれだけあるのだ…痛い。


「気が付いたらこんなところにいて…。田中さんとも離ればなれになってしまって…歩いていたら石丸さんが倒れていて…。私もう心配で心配で…うぇぇぇぇぇぇ…!!」
「心配してくれてありがとうだぞ、罪木くん。罪木くんも無事でよかった」
「そんな…私なんて…」


彼女にお礼を告げると、ネガティブになりつつも微笑みを見せてくれた。
…それにしても、ここはどこなのだ…?周りを見回してみるが…。古代の文献に載っていそうな街の雰囲気だった。いつだろう…中世の時代のような…そんなものをこの街から感じた。


「ここはどこんだろうな…」
「普通に考えたら…ブラックホールの中の世界…ですよねぇ」
「バーチャル空間…というわけでもなさそうだしな」


とりあえず街を散策しようとした、その時だった。







『ぬわあああああっ?!』







…どこかで聞いたことがあるような声と共に僕に衝撃が走る。声の主は十中八九田中くんだろうが…。僕の上に落ちてくるとは…。お…重い…。


「た、田中さん!!」
「貴様ら…無事か…」
「石丸さんが無事じゃありませぇん!」
「何?!石丸はどこに…」
「君の下敷きだぞ…」


僕がそう告げると、田中くんは自分の今やっていることに気付いたのかすぐに離れてストールで顔を隠してしまう。そして言った。「…ごめんなさい」と。
別に気にしていないが…。まさか落ちてくるとはな。危うく潰されそうになったぞ…。


「田中さんも無事でよかったです…!」
「……ごめんなさい石丸君ごめんなさい」
「いや、僕は大丈夫だ…。気にするな、田中くん」
「……うん……。……ッハハハハハ!!!俺様が折れるだと?!そんなわけなかろう!!」


相変わらずだな。だがいつもの調子を取り戻してくれてよかった。…僕は改めて街を見回してみる。
ここは、どこなのだろう。僕達は過去へと飛ばされてしまったのだろうか…?
剣の印の着いた看板や、「PUB」と書かれた看板、いかにも現代では表せないような風貌の建物がいくつもあった。
…そんな光景を見続けていると、ふと一つの人影を見つける。


「…あれ?あれは…」
「あの…あれって…人…じゃないですかぁ?」
「考察の余地もない。人間だ」
「もしかして、巻き込まれた仲間なのではないか?!」


向こうもこちらに気付いたようで、近づいてくる。
その人物は、ウサギのリュックをしょった、藍色のカーディガンが特徴的な女子だった。

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.8 )
日時: 2013/12/10 19:16
名前: ランスロット (ID: 4l3rs7gO)

「えっと…初めまして、だよね?」


僕達の前に現れた少女は、立ち止まって開口一番にこう言った。
僕は黙って頷くが、田中くんと罪木くんは複雑な顔をする。…彼女に、何か思い当たることでもあるのだろうか?
…しかし、その思いも無用だったようだ。すぐに、元の表情に戻る。


「私は七海千秋。この『新世界プログラム』の案内役だよ」


彼女の名前は『七海千秋』というらしい。そして、今僕達が立っているこの場所が…彼女の話だと「プログラム」の中だというのだ。…未だに信じられずにいるが…。
彼女の瞳に嘘はない。とりあえず、信じるしかないだろう。
そして、罪木くんは個人的に抱いていただろう疑問をぶつける。


「あ、あのぉ…『新世界プログラム』って何ですか…?」
「うーん、詳しくは私も分からないんだけど…。『魂を呼び戻す装置』っていったら分かりやすいかな」
「魂を呼び戻す…だと…?!」
「うん。私のお父さんがメインでプログラムを考えていたんだけど、途中でどこかに行方不明になっちゃってさ…。それで、『苗木誠』さんとそのお仲間さん達でプログラムを完成させたんだって」
「苗木くんが…?!」


彼女は何を言っているのだ…?魂を呼び戻す?苗木くん達がこのプログラムを完成させた?
わけのわからない言葉を並べられて、僕の頭がどんどん混乱していくのが分かった。
そんな僕達を察したのか、彼女は「とりあえず、パブに入ろうよ」と提案してくれた。
確か彼女はさっき「案内人」と言っていた。七海くんに従っていれば…しばらくは安心だろう。


「分かった。七海くん、よろしくな」
「自己紹介やこの世界でのルールなんかはパブで教えてあげるね。じゃあ、ついてきて」


僕は黙って彼女についていき、目覚めた際に際立って目立っていた「PUB」と呼ばれる建物に入る。
中は人で賑わっており、楽しそうな笑い声がこだましてくる。
罪木くんはそれに感嘆の笑みを浮かべており、田中くんは性に合わないのかちょっと不機嫌そうな顔をしていた。
そして、七海くんに案内されて僕達は1つの小さなテーブルを取り囲むようにして座る。


「…うん。三人ともアバターはちゃんとあるみたいだね」
「仮の姿…。とは、どういう意味だ」
「この世界ではね、『現実世界の脳』と、『電脳世界での身体』を一体化させて行動させているんだ。
 だから、『この世界での死』は、『現実世界での死』だと思っておいたほうがいいよ」
「ふゆぅ…。じゃあ…ここで死んじゃったら…現実世界に戻れないってことですかぁ…?」
「うん」


残酷な現実だ。ここがバーチャル空間だということは、七海くんから軽く説明を受けよくわかった。しかし、やはり疑問が残る。『ここでの死』は『現実世界での死』…。では、僕らの本当の身体は現実世界にあるというのだろうか?
気になって七海くんに聞いてみたが、答えてくれなかった。しかも、うまくはぐらされてしまった気がする。


「…とりあえず、君たち3人のアバタータイプを調べないとね」
「アバタータイプ?」
「うん。この空間のクリア条件、つまり現実に戻る条件は『この世界を牛耳る魔王を倒すこと』。そのためには、アバター自身で戦う必要があるんだよ。ゲームで例えたら…。『TRPG』って感じかな」
「ほう…。この空間では戦闘が出来るのか。面白い」
「この装置を使って調べるんだよ〜。ちなみに私はこうね」


そう言って七海くんは懐から小さな装置を取り出す。それを自分の胸の前に充てると、目の前にホログラム化された情報が映し出される。
…それには、七海くんの情報が詰まっていた。



【七海 千秋】(ナナミ チアキ)
職業:ゲーマー タイプ:サポート
武器:8bit如意棒 属性:雷
HP:400 SP:600 力:20 体力:30 魔力:30 精神:20 スピード:20 運:40
【スキル】
『目力』より目にして、相手の弱点を探る。

【能力】
『ゲーマー』ST異常「麻痺」無効。

【備考】
『新世界プログラム』の案内人。ただ、案内人は彼女しかいないため出会えたらラッキー。ゲームをやりながら寝るというとんでもない特技が得意。


「これが七海の持ちし『能力』というわけか」
「うん。じゃあ、誰から調べてみる?誰がどのタイプかで、ダンジョンでの戦い方も違ってくるからさ」



石丸「さて、誰の能力を調べるか…」


①石丸清多夏
②田中眼蛇夢
③罪木蜜柑


※今回からストーリー分岐が始まります。読者の皆様、興味がありましたらご協力をお願いします!

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.9 )
日時: 2013/12/11 18:18
名前: ランスロット (ID: VKAqsu.7)

『…それじゃあ、僕が行こう』


話し合った結果、僕が最初に七海くんに調べてもらうことになった。
そのことを七海くんに伝えると、彼女は微笑んで頷き、黙って装置を僕の胸へと当てた。
すると、僕の目の前にホログラム化された情報が出てくる。これが、僕の『能力』ということなのか…。




【石丸 清多夏】(イシマル キヨタカ)
職業:風紀委員 タイプ:アタック
武器:古風な刀 属性:光/無
HP:600 SP:400 力:40 体力:20 魔力:20 精神:30 スピード:30 運:30
【スキル】
『静聴せよ!!』1ターン敵のターゲットを自分に全て向ける。

【能力】
『風紀委員』ST異常「疲労」無効。

【備考】
超高校級の風紀委員。折り目正しい熱血漢。上級生であるはずの田中や罪木を取りまとめ、リーダーシップをとっているある意味すごい人。




「石丸君は…アタッカータイプだね。能力値を見る限りだと、物理攻撃が得意なパラメータになっているよ」
「アタッカータイプ?」
「さっきアバタータイプを調べるって言ったよね?この『アタック』とか私の『サポート』とかがアバターの所属しているタイプだよ。
 このタイプによって、誰が何をすることに長けているのか、を分けることができるんだ」


…つまり、僕は力が高くて魔力が低い。完全なる「物理攻撃」タイプというわけか。体力も低いし、前線で戦っていればすぐに倒れてしまうな。戦い方の基本はヒット&アウェイ、ということなのだな。


「あと、【スキル】。これは、戦闘を有利にする便利な技が揃っているよ。アバターによって、覚えるスキルは全部違うんだ」
「じゃあ…私や田中さんのスキルは…。全然違うものになるってことなんですよねぇ…?」
「うん。【能力】は、各アバターが身に着けている能力のことだよ。これは自動的に発動するから、コマンドで使う【スキル】とは全く別物なんだよ」
「ほう。石丸が所持し能力の力は『疲労無効』と書かれてある。つまり、石丸は『疲労』しないということか」
「うん。そういうこと。『疲労』のST異常は戦闘以外でも面倒になることが多いから、石丸君にそれは効かないってのは強み…だと思うよ?」


…七海くんの話を聞きながら、僕はふと「武器」の欄を見る。
僕は刀なんか所持していないが。どういうことだ?


「七海くん。武器の欄に書かれている刀はどういうことだ?僕は刀なんか持っていないのだが」
「石丸君。利き手に力を込めてごらん」


言われたとおりに、右手に軽く力を込める。
すると、右手に何かをつかんでいる感触を感じた。恐る恐る見てみると…。僕は、古びた刀を掴んでいた。


「武器は各アバターが出し入れできるんだよ。罪木さんや田中君も、利き手に力を込めれば武器が出てくるから、覚えておいてね」
「はぁい…」
「ちなみに、石丸君が装備できるのは『刀系』の武器だよ。それ以外を持とうとすると重くて持てないはずだから、気を付けてね」
「了解した」


僕の能力が分かったところで、七海くんは「次はどっちにする?」と聞いてきた。
さて…どちらを先に調べようか。




①田中眼蛇夢
②罪木蜜柑

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.10 )
日時: 2013/12/12 20:42
名前: ランスロット (ID: /jFrgiog)

『…じゃあ、次は私が行ってもいいですかぁ…?』


どうやら次にステータスを見るのは罪木くんのようだ。
…さりげなく田中くんが不服そうに見えるのは気のせいにしておこう。





【罪木 蜜柑】(ツミキ ミカン)
職業:保健委員 タイプ:ヒーラー
武器:ナイフ 属性:無
HP:300 SP:600 力:20 体力:10 魔力:30 精神:40 スピード:20 運:30
【スキル】
『応急処置』味方1体のHP30%回復

【能力】
『保健委員』ST異常の発生率が5分の3に低下。

【備考】
超高校級の保健委員。希望ヶ峰学園に入学してからはいじめられることもなくなり、充実した毎日を送っている。石丸や田中は「私を許してくれた人」として懐いている。





「罪木くんは…魔法使いタイプか?」
「魔法使い、というよりかは僧侶タイプだね。アバタータイプがヒーラーだし、覚えるスキルもそれっぽいし」
「闘いでの傷を癒す役割、というわけか。意外に重要な所が出たな」
「ふゆぅ…期待されても困りますぅ…」


しかし、田中くんの言うとおりだと僕も思う。
僕達が前線で戦っていても、ダメージを負いすぎてやられてしまっては元も子もない。罪木くんの存在は、とてもありがたいことだ。
ただ、罪木くんの体力が僕以上に低い。彼女への攻撃を防ぐのが最優先になりそうだ。


「あと、罪木さんの能力は『ST異常発生率の低下』だね。地味に役立つ能力…だと思うよ?」
「そこは断言しましょうよぉ…」
「武器の欄を罪木くんが装備できるのは『短剣系』ということになるのか」
「医療機器なんかも触ってるから、だろうね。このチョイス」


念のために罪木くんも武器を出して見せる。
彼女の武器は、女性でも扱いやすそうな小型のナイフだった。


「あとは田中くんだね。こういうTRPGには慣れてそうだけど…。なんか、物凄い能力が出てきそうな気がするよ。
 いくらなんでもチート能力は出ないと思うけど…」
「でも調べてみないと分かりませんよねぇ…?」
「この覇王田中眼蛇夢様に恐るるものはない。さぁ七海よ、俺様の中に秘めし力を開放するのだ!!」
「…案外ノリノリだな、田中くん…」


僕の最大限のツッコミも、今の田中くんには届かなかった…。

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.11 )
日時: 2013/12/13 23:13
名前: ランスロット (ID: /jFrgiog)

『さあ、俺様に秘めし力を開放するのだ!!』


やけに張り切って田中くんが七海くんに指示をする。自分の番を気にしていたのだな…。
つっこみたかったが、それを言ってしまえば僕が危険に晒されると思い、やめておいた。





【田中 眼蛇夢】(タナカ ガンダム)
職業:飼育委員 タイプ:マージ
武器:ナイフ 属性:無
HP:400 SP:600 力:20 体力:20 魔力:40 精神:30 スピード:30 運:30
【スキル】
『ライトニング・ヴォルト』雷属性の魔術。敵1体にダメージ

【能力】
『飼育委員』ST異常「毒」無効。

【備考】
超高校級の飼育委員。孤独を好み、近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが実は寂しがりや。石丸、罪木とは「握手」という契約を行った「特異点」として兄のような目線で見ている。





「田中くんは…」
「うん。完璧に『魔法使い』タイプだね。自分で思っている想像の世界が現実になったのかも」
「七海よ。何を戯言をぶつぶつ並べているのだ。俺様は!いずれ地獄をも統べる覇王となる男。この程度の能力値で…満足できるか」
「といいつつにやけてますねぇ…」
「…………」


罪木くんの的確なツッコミに、田中くんはすかさずストールで顔を覆ってしまう。
…だが、戦力的には僕とはまた違った意味のアタッカー要因になるようだな。僕と田中くん、2人の駆け引きが重要になってきそうだ。


「へぇ、田中くんには『毒』が効かないんだ。これは便利だね」
「毒?」
「うん。ST異常の中でも特に厄介なのが『毒』と『疲労』。毒はST異常を治さない限り戦闘以外でも発症するし、疲労は宿屋で休むかST異常を治すかしないと治らないんだ。
 だから、石丸くんと田中くんの初期能力はかなり優秀だと思うよ」
「ハッ 当然だ」
「それと、田中くんの装備可能武器は『魔法銃』だね。銃にも剣と同じようにたくさん種類があるから、間違えないように覚えておいてね」


田中くんは確認のために利き手に念を込める。
すると、田中くんの右手に何かの呪文が書かれた銃が現れた。…これが、魔法銃というわけか…。


「…これで、全員の能力が分かったわけだが…。これからどうすればいいのだ?」
「そうだなー…。このプログラムのルールも説明したいし、ダンジョンに行ってみない?」
「ダンジョン?」


…七海くんからまたわけのわからない言葉が発せられた。「ダンジョン」とは…?
以前不二咲くんと兄弟がゲームをやっていた時にもそんな言葉を聞いたような気がするが、それと同じ意味なのだろうか…。
田中くんはともかく、罪木くんも僕と同じように頭に疑問符を浮かべていたので、七海くんに説明を求めた。


「うん。プログラムに入ったアバターは、ダンジョンに挑んで、魔王と戦えるようになるまでレベル上げをするんだよ。
 まぁ…ざっくりいえば、『ゲームクリアのために必要なもの』って感じかな」
「えっと…ということはぁ…私達がダンジョンで強くなれば…魔王も倒せるってことですよねぇ…」
「そういうことだね。ここは初心者が集まる集落だし、ダンジョンも初心者向けのが揃ってるよ。とりあえず、近くの『モノモノ洞窟』に行ってみよっか」
「むぅ…」
「どうした、石丸。何か思い当たることでもあるのか」
「いや、そうではない。今すぐにダンジョンに行くか、街の人に情報を聞くか迷っていてな。
 七海くんに見つかるまで、ここで僕達の他にいたクラスメイトはいたか?」


さっきから気になっていたことを2人にぶつけてみる。
目覚めてから時間は少しは経ったと思うが、全くクラスメイトと鉢合わせないとは…。何かがおかしい。
31人もここに飛ばされてきているのだから、一人くらいは見つけても何もおかしくはないだろう。


「そういえば…いませんでしたねぇ」
「石丸は、街の住民に質疑してから洞窟へと堕ちようと考えているのか」
「まぁ…そうだな。仲間のことも気になるしな…」
「分かった。石丸くん達に任せるよ」




石丸「さて、どうするか…」


①ダンジョンに向かう
②街の人に聞き込み調査

file0.『ひとつの事件のハジマリ』 ( No.12 )
日時: 2013/12/15 18:40
名前: ランスロット (ID: 5p/ciDZ4)

『先に情報を集めたい。街に行ってもいいだろうか』


僕を含めた3人で話し合った結果、洞窟に向かう前に街で情報収集をすることにした。
…今の今まで、僕等以外の仲間に会っていない。これは…おかしい。街の人が何かを知っているのなら、少しでも知ってからダンジョンに向かっても遅くはないだろう。
そのウマを七海くんに話すと、彼女は優しい笑顔を浮かべながら頷いてくれた。
僕達は手分けをして、街の探索と聞き込み調査を行うことにした。
…そして、数十分後。


「ただいま戻りましたぁ…」
「おかえり罪木くん。何か情報は掴めたかい?」
「はい…」


疲れている罪木くんを椅子に座らせ、街で手に入れてきた情報をまとめることになった。


「鉄を扱いし店には初老の人間がいた。この街は『初心者が集まる街』との噂が広がっていて、余程のことがない限りはこの街に召喚されるらしい」
「…ということは、他のみんなはワープ中にバグにあった可能性が高いね。ここの他だと初心者向けの集落は…北方面の『アルカノス』っていう街くらいしかないから」
「それに、僕等以外に街に入った人間は見なかった、と言っていたな。…僕達の他には、本当に誰も飛ばされてきていないようだな…」


みんなは、無事だろうか…。
突き付けられた現実に落胆しているその時、ふと罪木くんがこう言い始めた。


「あのぉ…占い師のお婆さんに聞いたんですけどぉ…」
「どうしたの?」
「半袖の男の子とパーカーの男の子が一緒にダンジョンに入って行ったって…話を…聞いたんですぅ…」
「まさか…!!」


思わず田中くんと顔を見合わせる。
恐らく、占い師のお婆さんの情報が正しければ…『半袖の男の子』は『日向創』くん、『パーカーの男の子』は『苗木誠』くんということになる。
…まさか、二人がここに来てダンジョンに入って行ったとはな…。
とりあえず、合流を急ぎたいところだ。


「罪木さん。どこのダンジョンに入って行ったか分かる?」
「洞窟って言ってましたぁ…」
「それじゃあ丁度いいね。ここら辺の洞窟っていえば、『モノモノ洞窟』しかないからさ。戦い方をマスターしながらその2人を追ってみよう」
「分かった。それじゃあ、ダンジョンに向かおう!七海くん、案内を頼む」


そう言うと七海くんは「合点承知!」とこちらに向けて敬礼をし、先頭を歩いていく。
…苗木くん、日向くん。まずは…二人に話を聞いてみよう。吸い込まれる前の話について、そしてこの『新世界プログラム』について…。