二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【リク募集中】クリエイティヴ・ワールド ( No.112 )
日時: 2016/05/27 23:03
名前: 伊那谷ユウナ (ID: YVCR41Yb)

※ある意味ifなお話です。何話か続きます




本日は晴天。しかし、とある主従の仲は…殺意通り越して瀕死でした。

「…で、今回の喧嘩内容は?」

しかしそれは想定内。フェアはてきぱきとお菓子をテーブルに並べながらリビエルに聞いた。

「それがなんと『餡子は粒餡か漉餡か』という至極どうでもいい内容でしてよ…」
「あれ、前も似たような内容で喧嘩していなかった?」

正確にはそれは『犬派か猫派か』なのだが…まあリビエルの言う通りマジで至極どうでもいい内容なので、この際気にしないようにしよう…読者の方々に分かりやすく言うと、あの二人の喧嘩内容は大抵『キ○コの山派か、た○のこの里派か』のようなものが多い…後は分かるな?
ーーーさて。日常の1ピースとして組み込まれてしまったセイロンとユーインの喧嘩だが、フェア達は次第に二人の喧嘩を割って入って止めるのを諦めてしまい、まあ暫く放置すりゃあいつもの状態に戻る…という事で。触らぬ神に祟りなし、だけども神を拝んでバチは当たらないだろう。そのような独断と偏見で現在は、ラウスブルグの美しい中庭をバトルフィールドにフェア達は離れた場所でお茶会を開いていた…勿論、お菓子は全てフェアの手作りです。

「でさ、肝心のその『あんこ』とか『つぶあん』とか『こしあん』って…何よ?」
「それは自分が説明しましょう!」
「簡潔になさいよー?」

たまたま…というか大体暇で近辺をふらふらとしている為、今回の件に容易く駆けつける事が出来たシンゲンがよく分かっていないリシェルを筆頭にした一部の者達へ説明する。
餡子というのは言わばシルターンの甘味の中身のひとつ…豆類などを煮て、練った具である。見た目は焦げ茶色の塊で見る人によってはあまり綺麗とは思わないだろうが、食わず嫌いはよくない…これがまた、独特な甘さで美味しいのだ。そんなこんなで、その他の細かい点は以下省略。とにかく餡子の種類、製造法は八百万の神とまではいかなくとも沢山ある。中でも王道とされるのは粒餡と漉餡だ。
粒餡は豆の皮をなるべく破らないようにし、豆の形を残した餡。対する漉餡は小豆を潰し裏ごしして豆の種皮を取り除いたものである。

「…つまり?」
「あの二人はこう言いたいんですよ。豆の食感を楽しめる粒餡か、それとも口当たりが滑らかで上品な漉餡…どちらが一番か!シルターンの者としては人生を賭けても解けぬ難題。そりゃあぶつかるのも無理ないですよねぇ…あ、ちなみに自分は粒餡派ですー」

ちゃっかり粒餡派のユーインを味方するシンゲン。しかし、こればかりは好みだから仕方ない。

「にしても餡子ねえ…そんなに美味しいのかしら?」
「じゃあ作ろうか?」
「作れんの!?」

まあ偶々ダメ親父が作っていたところを覚えているだけで、自信はないけどね…というフェア。だとしてもそれはそれで充分凄い気がするのだが。という訳でフェアはそのまま、城にある厨房へと向かったのであった。

…ところで、肝心の喧嘩はというと。

「…よし、決まりね」
「決まりだな…ここからは文句無しだぞ」
「当然」

負けた方に課せる内容…罰ゲームが決まったらしい。二人は距離を取って、構えた。

「で、今回の罰ゲームは何ですのー?」
「負けた方が四つん這いになって勝者の椅子となるの…どう?屈辱的でしょう?」
「え、えええー…」

内容はアレだったが、二人の目はマジだった。そしてユーインは話を続ける。

「ただし私が負けた場合、女である私が椅子になるというのは倫理的にどうかと思う。という訳で…クラウレが私の代わりに椅子となる事が決まったから」
「待て!今、聞き捨てにならない事を言わなかったか!?それと俺を当たり前のように巻き込むんじゃない!!」

だがしかし、喧嘩で怒りがデッドヒートな二人には反論など通じない。そしてユーインは刀を、セイロンは杖を全力で振りかざす。

「餡子は粒餡ッ、でしょうがぁぁぁ!!」
「この阿呆ッ、漉餡に決まっておろうがぁぁぁ!!」

というなんとも言えない叫びでぶつかる二人…という場面に行くはずが、そうもいかなかったようでーーーお菓子をもぐもぐと食べていたミルリーフは気付く。誰か来た、と。

「あ、まっ…!」

ミルリーフは止めに入ろうとした。けれど遅かった。遅すぎた。
『それ』は鈍器を振りかざすように疾く、重い一撃を二人に叩き込んだのだ。

「ぐむっ!?」「ぎゃっ!?」

それには予想外だったのか、二人は避けることは出来ずにそのまま地面にめり込んだ。あまりの出来事に二人だけではない、観戦していた一同も呆然としていた。そして『それ』は言い放った

「……全く。喧嘩などしなくても、どの餡も美味しいに決まっているでしょう?」

ーーー少女だった。

多分、ミルリーフと同じか上かの背丈。被るように着込んだ美しい装束と切り揃えた赤髪に石榴の瞳は現実とは程遠い、人形のような愛らしさを形作っていた。だが、何よりも目を惹いたのは…鹿のようなその角。

「あの娘は竜、なのか…?」
「あれ、セイロンに似てる!?」
「ホントだな…確かに似ている」

と、ここでセイロンとユーインがばっ、と顔を上げた。すると二人はみるみると口をあんぐりと開け、そのまま体温の色を失い、青ざめていった。

「なっ、なぁ…っ」
「えっ、ええ…っ!?」
「何ですか?その間抜けな反応は…久しぶりの再会でしょう?ならば先ず、挨拶なさい」
「「お、お久しゅうございます!!!」」

二人はすぐさま正座となり、また頭を下げた。まさか、あの無駄にプライドが高い二人が即座に正座となるとは…世も末にも程がある。一体、あの子は何者だろうか?

「若。不躾な質問ですけど、その愛らしい少女は貴方の妹さんですか?」

そうシンゲンは聞く。が、セイロンは恐怖で震えているのか、答えてくれない。代わりに少女は彼に質問した。

「……何故、そう思いまして?」
「若もですけど、その装束はシルターンの中でも上物…平民にはとても手に出せるものじゃあありませんよ。それにお二人はよく似ていらっしゃる。なので妹さんかなと思ったのですが」
「馬鹿!確かにそうだけどそうじゃないわよ…!」

ユーインは慌てていた。シンゲンの言う通り、確かに少女が着ているのは高級品だ。そのあたりの推理はよく当たってはいる…が、ひとつは違った。

「サムライ殿。確かにわたくしは彼の身内です…けれど、それは違うわ」
「えっ、じゃあ何だというのです?」
「…このお方は我の、」

ここで、恐怖故の沈黙を保っていたセイロンが掠れた声でこう言った。












「………………我の【母】だ」
















ーーーは?











「「な……っ、






なんだってェェェェ!!?」」






…つ、つづく!!