二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【SS集】クリエイティヴ・ワールド ( No.85 )
日時: 2016/01/02 01:47
名前: 伊那谷ユウナ (ID: KQb493NG)

前回→>>77




ふと、懐かしい思い出に浸っていた私は目を覚ます。体温は平温に戻っているし、手足の感覚も治っている。
あれからの続きは何だったか。そう思いながらも私は身体を起こすことにした。
ーーーが、何故か身動きが取れない。そして暗い中で視界がはっきりとした後、その理由が分かった。目の前には見覚えのある赤髪に整った顔…
そう彼が、セイロンが。私を抱き寄せて眠っていたのだ。

「う、っ……あああああああああ!!?」

私は混乱のあまり思いきり叫んでしまう。だが、彼は私をがっちりと抱き寄せているため、抜ける事が出来ない。というか、何故起きない!?ああそうだった、彼は一度眠ると起きる時間まで滅多に起きないんだった!!とにかく、ここはどうしたものか…とその時、扉が勢いよく開いた。
「おい、何があった!?」
翼を持つ女は部屋に入った瞬間、石化する。私は、声にならない叫びで必死に助けを求めた。すると何を理解したのか、彼女の気迫が真っ黒に染まる…

「セイロン…貴様ァァ!!」

こうして向けられたのは、矢の群れであったーーー


【転】


「全く…女の寝込みを襲うとは、破廉恥極まりないッ!」

あの後、彼女…アロエリに助けてもらい、セイロンは矢の雨を食らったのだった。ちなみに私が目覚めたのが夜中だった為、皆に迷惑をかけるような形で食堂へと集まったのである。
「本当に、その…申し訳ありませんでした」
「ああ、ユーインは悪くないよ。悪いのはセクハラ紛いをした誰かさんだし」
「その誰かさんは一体誰なのか、我は知りたいものだな…いつつ」
セイロンはところどころ目立つ傷を抑えていた。私はというと、せめてもの情けでストラをかけている。そこにアロエリが止めに入った。
「これ以上はやめろ。貴様はまだ病み上がりだ…無理をすればまた倒れるぞ」
「そうです!事の元凶にストラをかけるだなんて、砂糖の塊をコップ半分に溶かして蜂蜜をたっぷり入れるぐらい甘いですわ!」
リビエルの言葉にますます不貞腐れるセイロン。私は仕方ないとばかりに溜息をつき、言った。
「若様、いきなり叫んでしまった非礼をお詫び申し上げます。ですから…機嫌を直して下さいまし」
「…お主に謝られても、困る」
ここまで機嫌を悪くさせては、何を言っても聞き入れはしないだろう。ユーインはこれ以上、何も言わなかった。
「お主らも夜分遅く、すまなかったな。後、此奴と二人で話したい。店主殿、食堂を借りて良いか?」
「…喧嘩、しない?」
「もうその気力に余裕はないわ…だから、大丈夫」
「はぁ…分かったよ。今度また喧嘩したら追い出すからね」
「かたじけない」
フェア達はそのまま退散する。残された二人は気まずい空気のまま、互いを見やる。そして、セイロンは言った。
「…何が食べたい?」
「!き、気づいてたの…?」
「当たり前だ。お前は丸一日眠っていたのだぞ?」
とりあえず座っておけーーーそう言ってセイロンは厨房へと向かったのである。





「ーーー閑話休題だ」

夜食は美味しかった。というよりも、久しぶりにセイロンの料理を食べたな…と思いながら、ユーインは黙々とその味を噛み締めていた。
「まず、御子殿を助けてくれた事…感謝する」
「んぐっ…御子殿って、ミルリーフちゃんの事?」
「そうだ。彼女はいずれ至竜となる至竜の子…そして、この世界の理を覆してしまう鍵でもある」
「…そう。そこまで言うほど大切だから本来の目的を棚上げしてその子を守っていた、と?」
「……ああ」
セイロンは殴られる覚悟で構えていた…が、当のユーインは「ならいいわ」とあっさり聞き入れてくれた。
「!?よ、よいのか…?我はお前に何も告げず、この世界に来たのだぞ?」
「それは許してない。許す筈が無い。でも、ミルリーフちゃんの話で分かったもの…貴方は必要とされてる。無理矢理それを引き離すなんて、野暮でしょう?」
「御子殿…」
「認めてあげる。貴方が…ここまでやってきた全てを」
でも、殴るには変わりないんだけどね?そう言ってユーインはセイロンを軽くぶん殴り、話を変える。
「セイロン。あの時、セイロンの事を嫌いだって言って…ごめんなさい」
「良い。我も言い過ぎたからな」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
それから淡々とユーインの食事が進む中、離れて見ていたフェア達は…

「ママ、二人は大丈夫…みたいだね?」
「そうね。ホント、面倒な二人組なんだから」
まるで親のような気持ちで彼らを静観していたようであったーーー




次回、最終回!…だったらいいなぁ