二次創作小説(映像)※倉庫ログ

第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」1 ( No.2 )
日時: 2014/01/24 21:30
名前: 幻灯夜城 (ID: z0poZTP7)

此処は、幻想郷。忘れられた者達が集う場所。
その一角にある『博麗神社』。
今日もそこには、賽銭客を待つ貧乏巫女と白黒の魔法使いが駄弁っているのであった……。

——

第一節『葉っぱと巫女と魔法使い』

——

「なーなー、何か依頼来てないのか?」
「ない」
「ちぇー、退屈だぜ」

赤白の巫女服の少女——博麗霊夢は、今日も暇だ暇だと騒ぐ白黒魔女の相手をしていた。

この魔女、最近余りに暇だからって毎日のように自分の所へ来ては依頼が無いのかと聞き、そして無いと知っては色々やって自分の家へと帰っていく。とんぼ返りのスペシャリストかとでも褒めてやりたくなる。
そんなに暇なら自分で探して来い、とも一時は思ったが、よくよく考えれば妖怪退治のスペシャリストが私であるという事実は覆しようもない状態となっていたので当たり前かと誇る。誇れるようなことでもないのだが。

何も無いことを知り、何度目に聞いたか分からない退屈を示す台詞を何時ものように聞き流し、私はいつも通りに神社を掃除すべく箒を取りに戻る。実際私も暇と言われれば暇なのだが、そこの白黒とは違ってちゃんと巫女としての仕事もやるのだ。他と一緒にしないで欲しい。

「平和でいいことじゃない」

何時もの日常を示す箒で落ち葉を掃く作業をしながら、何時も通りの基調な日常を尊ぶような事を言う霊夢。

「とか言って、もう長い間妖怪退治してないだろ?」
「そうね。それが?」
「だとしたら……お前も結構溜まってんだろ?」
「お賽銭と同じく何も溜まって無いわよ」

何時もの日常に飽き飽きしているかのように世話しなく落ち葉を掃うように動きながら、悪戯っぽい笑みを浮かべて私に同調を求めてくるように刺激を求める魔理沙。

こんな馬鹿馬鹿しくて、でものほほんとした春日和のような一日が毎日続いていくのだろう。確かに春の眠気に誘われる程度には退屈であるが、散り行く桜を眺めて風情に浸りながら花見、弾幕勝負、その他諸々のイベント等があるから飽きさせてくれない。それは夏祭りのように、人を引き付けてバカ騒ぎを起こさせ続ければ、それに便乗して新たな騒ぎの種を撒いてくれる。馬鹿馬鹿しくも、楽しい世界。

「またまた〜強がりはいけないぜ?ほら、お姉さんに話して「そんなに暇ならほら、掃除してよ。善行積みなさい」

魔理沙が余計な事を口走る前に霊夢は何時ものように世話しなさそうに掃除しながら手伝いを要求する。無論、魔理沙の性格から考えてやるわけないだろうけど。

「えー、参拝客に掃除させる神社なんて初耳だぜ」

「参拝客」というワードに反応し、霊夢の動きが一瞬だけ停止した。そして何かを求めるようにグルりとUターンし魔理沙の方へ向き直る。

「参拝客なら、」

そして、何かを求めるように手を出して彼女に告げた。

「お賽銭」
「お!?」

聞いてたのかお前——、
でも、魔理沙の様子はそういう何時ものからかうような調子ではない。
神社の門の向こうを見て何かを発見したような様子だ。

「どうしたの?」
「誰か来るぜ」

誰か、魔理沙以外の客なんて珍しい。依頼者とかだろうか、それでなければ霖之助か、はたまた魔理沙が借りパクしてきた所の店主が怒って乗り込んできたのか。鬼か蛇か天使が出るかと気になり釣られてそちらを見る霊夢。
門の向こうよりやってくるのは、小さな小さな影だった。見た事のない少女だった。

まず、とても目の保養になる色合い——そう、若草色をしている。さらに言うならば、その、何というか外見が幼い。そういう意味ではその道の人間から見ても目の保養になるだろう。

そして、

(人間、じゃないわね……。妖怪、かしら)

そう、妖怪だ。外見こそ人間の形を保っているがこの妖怪退治の道をやって数十年。妖怪であるかそうでないか位の判別はつく。

そして、少女は此処まで走ってきたのか息を切らしていた。
そして息を整えた少女はちらりと不安そうな瞳で神社を、私達を見回した後にこう聞いてきた。

「あ、あの……博霊神社って、ここであって……ますか?」



第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」2 ( No.3 )
日時: 2014/05/29 16:05
名前: 幻灯夜城 (ID: .DDflOWn)

「ええ、そうだけど」

不安げな少女の問いに何処か気を使うように、此処が自身のおわす所であるとしっかり答える霊夢。
その言葉が聞こえるまで、少女の表情は何処か曇り空のように不安気なものであったが、答えを聞くと同時にその顔を一輪の花のようにぱぁっと太陽が顔を出したかのように輝かせた。

「やった!やっと着いたー!」

その言葉とその表情には長い間待ちわびていた物にやっとありつけたというような、それはそれは苦労したのであろうというのが見えて取れる。

「えっと……お参り、してもいいですか?」
「お参りー? こんな巫女さんのとこなんざやめ「もっちろん! ささ、こっちこっち」

はるばる遠方からやって来てくれた(?)参拝客に対して無礼な態度を取るわけにもいかない。何か余計な事を魔理沙が口走り始めたので力強い肘打ちを彼女の脇腹にかました後、霊夢は緑色の少女を賽銭箱まで導いてゆく。
何かブツブツ言いながらやられた脇腹をさすって起き上がる魔理沙。そんなものはお構いなしに目の前の参拝客の少女を見ていたが、少女が一向に地蔵のように固まって動かない。

「……どうしたの?」
「いや、その……見てるんですか?」
「あ、そうよね、ごめん」

じっと監視されるように見つめられれば参拝しようにも出来ないわけだ。軽く謝罪を述べて一旦霊夢は後ろ——昼時の空を見る。

緑色の少女は一旦こちらが後ろを向いたのを確認したのか、何かを願うように神社の方へ向き直った。
そして、素直に従う気の無い霊夢はそのタイミングを見計らい賽銭箱の方を向いた少女の方へ向き直り、じっと注視する。

(しっかり見るなよ……)

その様子を半ば苦笑いで見ていた魔理沙。
そして、二人の様子などお構いなしに手元に銭を持つ少女。

「えっと、確か、ご縁があるようにって入れるんだよね……」

その手元にある銭は明らかにちっぽけな額。
思わず舌打ちをかましてしまう霊夢。一瞬嫌味ったらしい何かが聞こえてきたので反応してしまう少女。間一髪慌てて後ろを向いたため、気づかれてはいないようだ。

「気のせい……かな?」
「気のせいならよかったんだが」

アンタは黙ってなさい魔理沙。

「えっと……それっ」

その言葉にほっと一息付き、少女は手に持っていたお賽銭を賽銭箱に入れる。聞こえてくる音は賽銭の量に比例して当然侘しい。
二礼に一拍手。その過程でそっと目を閉じ、少女が願いを唱える。

「幻想郷の全ての植物が、元気でありますように……」
「それっぽっちの割りに随分大きな願い事……」

ついうっかり本音を漏らしてしまう巫女。

「えっ、あっ、や、やっぱりちょっと少なかったですか……?」

そして、聞こえていたのか太陽のような笑顔に曇りが差したかのような不安を覗かせ焦る少女。

「え、あ、ついうっかり本音が。そ、そうね、もうちょっとあげた方が神様もやる気でるかも……」
「お前、さいってーだな」

無論霊夢の言ったことに保証もへったくれもない。むしろ賽銭目当てというかなり不純な動機のため思わず魔理沙も苦言を呈してしまう。
だが、その反応を受けた少女の様子が若干おかしい。何というか、真に受けているようなそんな気がしてならない。

「しょうがないよね、みんなの元気のためだもん……」
「え、あ、え? そ、そんなに!?」

言いながら少女が取り出したのはおおよそ賽銭の範囲を超えていると思われる額の札や小銭。一般人で多く入れたとしても、目の前の少女が入れようとしている額を見れば自分の信心深さを問われてしまう程。
これには流石に霊夢も慌てるしかない。魔理沙も少女の奇行染みた額の賽銭に何だ何だと驚きっぱなし。

「おいおいやめとけって。そんな金妖怪がそう簡単に集められるもんじゃないだろ?」

魔理沙もここまで行くとさすがに止めざるを得ないと思ったのか少女に忠告を入れる。ここまで来ると貧乏巫女だなんだとかというよりも、少女の方を心配せざるを得なかった。
だが、少女の方はまるで聞く耳を持たんと言わんばかりに

「えいっ」

——バサァッ

霊夢、及び魔理沙、及びこの博麗神社を知る者からすれば、一生に一度聞くか聞かないかの豪快な音であったのは間違いない。
まさかと思うが自分の些細なケチのせいでここまでの額を負担させてしまったとは。何時もの霊夢らしからぬ罪悪感が生まれてくる。

「これで、神様はお願い聞いてくれるでしょうか……?」
「えー、あー……」
「お前のせいだぞー。どうする?」

非難がましくも、何か事件の予感を掴み取ったのかニヤニヤしながら霊夢に問いかける魔理沙。あの笑顔が数倍憎たらしく見えるのは気のせいであってほしい。

「よ、よし!」

もうこうなりゃヤケだ。腹を括ろう。

「キャッ……お参りしてくれたんだし、私が少しお話聞いてあげようかな!」
「ほんとですか!?」

再び太陽のように明るい笑顔を見せた少女。

「まぁ、これも仕事の内だから。ささ、上がって。お茶でもだすから」
「おぅ」

その言葉に反応し、魔理沙がさりげなく付いていこうとする。

「あんたは呼んでないわよ」
「まぁそうつれないことを言うなって。ちょうど退屈してたところだし」
「邪魔だけはしないでよ?」
「ははー、巫女様の仰せの通りにー」

そして霊夢が導くままに、三人の姿は境内の奥へと消えていった。

第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」3 ( No.4 )
日時: 2014/01/25 22:22
名前: 幻灯夜城 (ID: ejqmpl56)

「はい、粗茶だけど」

そう言って霊夢が座布団に座る二人に差し出したのは白い湯気を上げる二つの湯飲みであった。別に宴会の場でない以上は酒を出す必要なんてないわけだし、客人相手ならこれでいい。
お茶請けもいるかな——と一瞬考えたが、無かったので考えなかったことにした。

二人とも受け取った茶を飲み始める。少女の方は初めは熱さのためにふぅっと息を吹きかけていたが、やがて淵に口を付けて口腔に注ぎ込む。

「美味しいです、お茶」
「それはよかった」
「私は飲みなれてるけどなー」
「アンタは押しかけ常連客だからでしょ?」

それぞれ全く違う反応を示しているのを見ながら二人に同じく座布団に正座する霊夢。
座るなり、早速少女に切り出した。

「——それで、どうしてあのお願いのためにこの神社に?」
「はい、……あ」

言われるなり早速事情の説明に取り掛かろうとする少女であったが、ここで何かに気づいたかのように霊夢達二人を見回した。

「まだ自己紹介していなかったですね」

……成る程。
あの賽銭騒動のゴタゴタで、霊夢も魔理沙もすっかり名乗るのを忘れていたのだ。年に一度入るどころか一生に一度入るか入らないかの額が博麗神社に収められたため色々慌てていたのも事実であるが。

「瀬笈 葉(せおい は)って言います」
「葉、ねぇ……随分変わった名前」

にこり、と緑色の清清しい気を纏った少女——葉は己の名を誇らしげに名乗る。確かに、霊夢の言う通り妖怪にしても人間にしても葉を"よう"と読ませずに"は"と読ませる名前は珍しい。一生に一度か二度、見かけるか見かけないかの偶然だろうか。

と、ここで魔理沙が、

「じゃあ、葉っさんだな。葉っさん」

とまたもや珍妙な事を言い出した。

「その深く腰を落としそうな呼び方はやめて」
「えー、いいじゃん。強そうで」

間を入れずに霊夢は突っ込む。こんな深く腰を落として魔物に突きをくらわしそうな呼び方なんぞあってたまるか。

「私は博麗霊夢、よろしく」
「私は霧雨魔理沙だ。よろしくな!」

「博麗 霊夢さん。霧雨 魔理沙さんですか。よろしくおねがいします!」

葉は二人の名を聞いた後に元気一杯に挨拶をした。そして、二人の名前を「はくれい れいむさん……きりさめ まりささん……」と復唱し繰り返し続けていたが「……はくれい れいむさん?」と一瞬だけ霊夢の名前の所だけ立ち止まる。そしてかみ締めるようにして一度その名を呟き、霊夢の方を向いた。

「博麗 霊夢さん……」
「ん、どしたの?」
「あ、いえ……。えっと……異変を解決する、巫女さんですか?」

その声音にはやっと捜し求めた何かを見つけたかのようなものが含まれていた。そして問いかけてくる、異変を解決する者かという問い。

「呼び方は霊夢でいいわ」
「ああ、私も魔理沙でいいぜ」
「え、えっと……じゃあ「さん」付けで」
「私は葉って呼ばせてもらおうかな」

すかさず初対面で緊張している葉の緊張を解すようフォローを入れる。
が、初対面では流石に直すわけにもいかなかったらしい。そのまま「さん」付けを選ぶことを葉は続行した。
ちなみに霊夢は呼び捨て。これはいつもどおりである。

「確かに、私は異変を解決してるけど?」
「ちなみに私も異変解決してるぜ。趣味だけどな」

そしてさりげなく混ざってきた魔理沙と同時に葉に肯定の意を示した。異変を解決して何十年経ったのかは覚えていない。こんなのんびりとした時間の中で覚えているかなんて問われずとも、「NO」と答えてしまいそうだけど。
(それにしても、魔理沙さん、も異変を解決するんだ……)
葉は内心思う。お姉ちゃんから聞かされていた「異変を解決する存在」は「博麗神社の巫女 博麗霊夢」だけであったのだから。しかし、いざ来てみれば魔理沙さんも異変を解決する存在なのだという。

——ここまで来て、結構話が逸れていることに気づく三人。
そんな中、霊夢が早速葉に事情を伺い始める。

「……それで、どうしてこの神社までお参りに?」

葉の方もまた、気を取り直して表情を引き締め、霊夢の方へ向き直った。

「それが……」

霊夢から事情を問われ、少し頭の中で整理する葉。
そして彼女の方を向き直り、説明を始めた。

「私の住んでいた辺りの植物が、全部元気が無くなっちゃって」