二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- (2) ( No.3 )
- 日時: 2014/01/29 18:35
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
「何だ、これは」
少年はふと呟いた。パソコンのデスクトップや、ホログラム状に浮き上がったモニターをタッチしながら、訝しげに画面を睨む。
ピッ、ピッと映し出された画像の解析を始めた。そこには、広大な大地が広がっていた。
だが、問題はそこではない。そんなものは、もう見慣れている。眼鏡を直して再三画面を睨んだ。
「侵入者?」
後ろから声が響いた。茜色の髪にピンを止めて、ややショート気味にした少女だ。
この、やや開けた部屋の中でサーバーの管理を行っている少年が耳に止めるくらいだから、少し大きかっただろうか。
「嗚呼、そうだ。まさか、こんなときに限って……な。まだワープ中だから、幾らでも対策は取れる。恐らく、素人だろうな。一人は少女型のデジモンに”アバター”を”変換”してやがる」
「へーえ。私達以外で現実世界(リアル)から仮想電脳世界(デジタル)に”直接”アクセスできる人間なんて、居ないと思っていたんだけどね」
「ふん、僕から言わせれば……」
「”格好のヒジキ”でしょ?」
得意げに少女は言った。間違ってる。言葉の使い方というか、言葉自体が。
ため息をつく少年。その、裂けたような鋭い目でダメ出しする。
「馬鹿”格好の餌食”だ。アレか? 夕食の食卓に並ぶアレじゃないんだぞ?」
「ごめん、ごめん、日本語って簡単なようで難しいからさぁ」
「君が馬鹿なだけだ馬鹿」
「ふぇ? ストレートすぎるよぉ〜」
涙目で訴える少女。あざとさを強調しているつもりだろうが、この少年にはまるっきり使えないのであった。
「相手が敵性のハッカーならば、容赦なく捕縛するのみだ」
「私達と同じ子供っぽいけど?」
「カモフラージュだ。恐らくな。こっちも”変換”を使ってこちらの油断を誘ったのだろうが、やはり素人だな。逆に目立っていることに気付いていまい」
そういうと、少年は一枚のモニターを展開する。そして、余裕綽々と言った笑みでタッチした。
「【対抗】。ガオスモン六匹と、ワープ中の奴らをミス誘導しろ」
「りょ〜かい! って、アレを六匹!? 捕縛する気無いよね?」
少女は、緊迫した表情で続けた。
「捕縛どころか”殺すつもり”!?」
と。
少年は、笑み一つ零さずに答える。まるで、何も感じていないかのように。感情の無いマシーンのように。
「ふん、俺も丁度こいつらの力を試しておきたかったところだ。それに、敵にかける情けなど、最初から無い」
「ちょっと、ちょっとー! 幾らなんでも、あいつらはヤバいっていうか……」
「最悪進化させればなんら問題はない」
「いやいやいや、根本的な問題の解決に至っていないんだけど!?」
慌てて答える少女の顔も見ず、少年は「送信」ボタンを押してしまうのだった。
「……どーなっても知らないよ? てか、あんたは行かないわけ?」
「ふん、遠隔指揮で十分だ」
画面を見据えると、いつに無く厳しい表情でため息をついた少年であった。
***
「……どこだぁ、ここはぁ」
御堂新志は酔っていた。急に、引きずり込まれるような感覚を覚えた後、ジェットコースターと同等の衝撃を感じ、さらにそれを生身で受けたため、今にもリバースしてしまいそうである。
「ようこそ、ここがデジタルワールド・プロトコル大陸中央都市、半永久機関(エターナルシティ)です……あれ?」
少女は、辺りを見回した。
彼女は確かに町といった。だが、実際に自分達がいるのは森だ。うっそうと木々が茂る森である。
「夢だ、夢なんだぁ……」
新志が呟くと、少女は彼の頬を抓った。
痛い。夢ではないようだった。
「分かった、分かった! 夢じゃねえのは分かった! だけどよ、ここって都市かぁ? どっからどうみてもジャングルみてえな森林……」
「まずいですね」
少女は言った。まるで、何かの危機にさらされているような顔で。いや、実際問題さらされているのは新志なのだろうが。
「どうやら、何らかの以上が原因でこの森に飛ばされたらしいです」
思わず、辺りを見回す。
パッと見は普通の森となんら違いは無かった。上空に龍らしき影が飛んでいるのと、近くにナメクジと呼ぶには大きすぎる生命体が這っていること意外は。
「うわぁー!! 化けモンだァー!!」
「バケモンじゃありません。地面を這っているのはヌメモンと、上空を飛んでいるのはバードラモンですね」
「何それ!? 何モンなんだよ!?」
「電脳生命体、デジタルモンスター、通称”デジモン”。この世界を生き続ける宿命を負った、現実世界の生物を超越する力を持つ生命体、と理解していただけたら幸いです」
少女は、淡々と続けた。……タブレット端末を見ながら。
はっきり言うが、順応してきている自分が怖い。こんな生命体がうろつく場所で、自分は何をさせられるためにここへ?
というか、少女においては思いっきりその端末を読みながら解説していたのだが。
「棒読みじゃねえか、丸っきりそれを読んでんだろうが!!」
「う、うるさいですね! 何も読んじゃいませんよ! かく言う私もデジモンですし」
思わず、腰が抜けた。「大丈夫です」と続ける彼女。はっきり言って、もう帰りたかったが、好奇心が邪魔をする。
まぁ行こうかなと思って逃げなかった自分が馬鹿だった、と感じる新志。見回せば、確かに他にも奇妙な生命体はいた。
特に、体中が機械で出来たクワガタムシのようなデジモンや、空中をふわふわ浮いているつぼみのようなデジモンなど、色々居た。
順応してしまっている自分が怖い。
「とにかく、この森からはすぐです。速やかに森の出口へ向かいましょう」
「あ、ああ」
と、持ち前の好奇心で不覚にも足を踏み出したそのときだった。
草むらからガサガサと幾つも音がする。見回せば、辺り全体からだ。周囲のデジモンは恐れをなすように逃げ出してしまった。
刹那、恐竜の首に足が付いたデジモンが何匹も飛び出してきて、自分達を囲ってしまった。
みんな、牙をむき出しにして低くうなっている。まるで、犬のように。
「そ、そんな……! こんなときに限って、こんな厄介なデジモンに目を付けられるなんて!」
”デジモンデータNo1 ガオスモン ウイルス種 成長期
非常に強暴で気性は荒い爬虫類型のデジモン。しかし、水が苦手でよく水溜りでおぼれて気絶しているシーンを確認できる。必殺技は、口から適度に熱い炎を吐き出す「キロフレイム」”
その外見は、青い皮膚に覆われた一見すれば唯の爬虫類だったのだが、前足は無く、首から後ろ足だけが生えているような形だ。
それらは皆威嚇するように吼え始めた。恐怖心を駆り立てる。
十四年という、やや長い人生の中でも死に直結するような危機に瀕したことのない新志は腰を抜かして、ただただ成り行きに任せるしかないのであった。