二次創作小説(映像)※倉庫ログ

(1) ( No.7 )
日時: 2014/02/01 18:29
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「ようこそ、プロトコル大陸【半永久機関(エターナルシティ)】へ!」

 広大なる都市。聳え立つビルの数々。正直、いまだに此処が電脳空間とは思えないほどに。
 ブランの話によれば、この町には多くのデジモンが住んでおり、ウイルスとワクチンの垣根を越えて平和に暮らしているんだとか。

「ウイルス種全てが悪と言う訳ではないのです。人間にも良い人と悪い人がいるのとの同じでね」
「どーでもいいよ、んなことは」

 気だるげに新志は呟いた。

「俺を此処に連れてきた理由を好い加減、教えてくんない?」
「嗚呼、それですか。さっきは言いそびれてしまいましたからね。確か、オメガモンのところでしたか。オメガモンは長らく戦い続けた邪悪なデジモンとの戦いで、体が汚染されて黒い破壊の悪魔”オメガモンズワルト”となってしまったんです」
「オメガモンズワルト!?」
「はい、そうです。彼こそが十年前に起こった【電脳大感染】の元凶」

 オメガモンズワルトの放ったウイルスは世界中のネットワークを汚染し、停止に追い込んだ。
 背中に嫌な虫が這って行く。
 拳を新志は握り締めた。


「へっ、武者震いがすらァ。名前を聞いただけで、言霊から伝わってくる、どんだけそいつが強えってことがな!」

 浮かべた笑みには闘志が篭っていた。

「俺は親父の仇のウイルスを討つために、そのソフトを開発することを夢見てきたんだ。だけど、今黒幕が明らかになった。つまり、そいつをぶっ潰せば俺の仇討ちは達成されるわけだな!!」
「は、はぁ」
「つーわけで、俺はそいつぶっ飛ばしてくる! じゃあな!」
「どっち行くのか分かってるんですか」
「……」

 駆け出そうとした瞬間、立ち止まった。
 当分、こいつとは付き合うことになりそうである。さもなくば、この電脳空間を延々さ迷うことになるだろう。
 御堂新志という少年の弱点は一人で突っ走りがちになることだ。

「……よろしくな」
「分かったならよろしいです。そういえば、ドルモンはどうしたんですか?」
「ああ。あの戦いの後、デジヴァイスの中に戻っちまった」

 そういうと、デジヴァイスを見た。タブレット型で、スマホにも似ていた。

「あれ、でもこれをこうして……」
「使い方分かるんですか?」
「分からん、でも何となくだけど使える気がする」

 ピッピッと音がすると、光が飛び出してドルモンが飛び出してきた。

「おうアラシ! もう元気一杯だぜ!」
「そうか。なら良かった」

 安心する新志。あの戦いの後、ボロボロになってぶっ倒れたのはどこへやら。

「やっぱり、フツーの進化はダメだったよ新志」
「ん、どれどれ?」

 新志はデジヴァイスを色々いじくり”進化ツリー”という欄を見つけてタッチした。

「進化ツリー?」
「デジモンの進化表のことです」
「何か、すげぇ壊れてるんだけど」

 崩壊していた。進化ツリーは、ドルモンのマークの上からは”データなし”とあり、確認できなかった。

「これも、【大感染】の所為ってかよ」
「そうです。オメガモンズワルトのウイルスの影響を強く受けたデジモンは進化ツリーを破壊されて進化できなくなりました。しかも、子孫にまでそれは受け継がれました。成長期以上からは進化できなくなったんです」
「あれ……待てよブラン」

 画面が切り替わる。すると、壊れたツリーの上から新たなるツリーが表示された。

「やはり、超進化の所為ですね。私が貴方を選んだ理由。それは、貴方がエヴォリューションエナジーの所持者だったからです。貴方にこの世界を救ってもらうため」
「だけど、何故なんだ? 親父のペンダントにコレが?」
「そこまでは分かりません」
「それによォ、そもそもエヴォリューションエナジーってなんだ?」
「何か、は分からないんですがね。突然現れ始めた物体で、現実世界に現れていることが多いんです。役割としては、エヴォリューションエナジーというのは、進化ツリーを復元するためのものです。Ver1から3まであり、それぞれ復元できる段階が違います」
「でも、このEXは復元は愚か新規に上書きしちまったわけだな」
「私も分からないんです。何故、貴方のエヴォリューションエナジーが変化したのか。あるいは、元から変化するように仕掛けられていたのか」

 憶測を語っていても仕方が無い。取り敢えずは、街に入らなければ。
 だが、やはり都市と言えば都市だ。もっとも、テレビでしか見たこと無い東京・渋谷にも余裕で勝てるほどの大都市だが。
 そもそも現実と電脳を比べてはいけないのかもしれない。

「んじゃあ、そろそろ街に入ろうか。この様子だと、まだ当分帰らせてもらえそうにねえな、ハハッ」
「あったりまえです! 貴方には、英雄の力を秘めたデジモン、ドルモンを使って奴に立ち向かってもらわなければ!」
「わぁーたよ」

 だが、新志は思っていた。案外、勉強とかしなくても良いんならこの世界も悪くないのではないか、と。
 だが、いずれは帰らなくてはならないことも承知していた。
 だからこそ、今のうちにエンジョイしたかったのだ。
 この、未知の空間を。


 ***


「ねぇ〜、つぅ〜かぁ〜さぁ〜」
「何だ」

 つかさと呼ばれた少年は少女に向き直った。パソコンにキーボードを置き、空っぽになった育成ケースを見つめていたのは目に見て分かった。
 彼は機嫌がものすごく悪かった。先日、自らが育成に手をかけていたガオスモン六匹を抹殺されてしまったのだ。
 何故だ? 育成方法が悪かったのか?
 とあれこれ回想しているうちに、腹が立ってきた。全ては、あの少年のせいだ、と。

 天才ハッカー、信条司は非常にムカ付いていた。

 全てを語るならば、これ以上に良い言葉は無いだろう。

「あたしほしいな〜、あのエヴォリューションエナジーver.EX。」
「馬鹿、長官に手を出すなと言われているだろう、ティコ」
「デジモン持ってないあんたが、あたしに刃向かうの?」

 茜色の髪をなびかせて、意地悪な笑みを浮かべて。まるで、自分が優位に立ったと言わんばかりにティコと呼ばれた少女は司の顎に手をやった。

「ほしいな? 貴方も。あのエヴォリューションエナジーも、全部」
「悪いが、俺はお前に落とされるつもりはさらさらない。腑抜けた奴ならば、今のお前の態度でイチコロだろうがな」
「ダ〜メ。あんたはあたしだけのものなんだよ? それが嫌なら、あたしのパートナーで調教するまで」

 そういうと、デジヴァイスと思われる機器を手に持った。光が幾つも現れる。

「リロード!」

 ティコのデジヴァイスからは茨を全身から生やした植物型デジモンが現れた。中央には巨大な花が咲いており、雌しべの部分は顔面となっている奇妙なデジモンだった。

「悪いが、貴様に調教されるつもりなどさらさらない!リロード!」

 現れたのは、巨大な紅い恐竜のようなデジモン。それも、ティラノサウルスがお似合いだろうか。

「……ちぇー」

 ティコは残念そうな顔を浮かべると、そのままデジモンをデジヴァイスに戻してしまった。

「とにかく、近いうちにゲットしてあげるんだから! 貴方も、エヴォリューションエナジーも!」