二次創作小説(映像)※倉庫ログ

ジルクファイドの過去話 ① ( No.77 )
日時: 2014/08/24 23:50
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 8bddVsaT)

ジルクファイドが封印されてしまうまでの、悲しい過去のお話です。





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———やぁ、俺の過去話を聞きに来てくれたのかい?

みんなご存じの通り、俺はみんなとは違う存在。『心臓』という『心』を持たない、造られし存在だよ。
それでも、俺には大事な人がいた。俺を造ってくれた、仲良くしてくれた、支えてくれた———大切な人たちが。

そんな大切な人達を忘れないためにも…君達に、今一度話しておこうかな。




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〜巨大宇宙ステーション 『NOVA』〜



これは、遠い遠い昔、まだエムゼが宇宙を造り、地球を造ったばかりの頃にさかのぼります。
その時には既に『宇宙』に人間が住むことに成功していたんだ。太古の文明は極めて凄い進化を遂げ、優秀な科学者達のおかげで、宇宙で暮らしていけるエネルギーを採取することに成功した。
その実験もかねて、科学者の一部は家族ごと巨大な宇宙ステーションへと引っ越した。
その中に———俺を造ってくれた『恩人』は存在したんだ。





「おじいちゃーん!!まだはつめいおわらないのー?あたしもうおにんぎょうあそびあきちゃったぁ〜!」
「ちょっと待っておれ。もう少しでお前のお兄ちゃんが完成するからね」
「おにいちゃん?おにいちゃんって、だれ?」
「ワシは今、自立型のロボットを開発しているんだよ。見ていくかい?アンナ」
「うん!みるみるー!」
「お父さん、もっと自分の身体大事にしてよ…。ただでさえ病み上がりなんだから、体調管理はしっかりしないと駄目よ?」
「ほっほっほ。ワシはまだまだピンピンしておるわい。ワシはこいつを仕上げるまで死ぬわけにはいかんのじゃよ。分かってくれ、ユナ」
「本当研究熱心なんだから…」


最近、私の父は研究室にこもり、一向に出てこない。10年前、宇宙ステーションに引っ越してきてから、彼は『アンナの兄を造る』と研究に浸ってしまったのだ。
研究に籠るのは研究者としてごもっともだが、もっと自分の身体や家族のことを考えてほしいものだ。ただでさえ持病が悪化して昨年床に就いたばかりだというのに。
病み上がりに動くにも程がある。私は、彼が毎日研究室から出ないのを見てそう思っていた。


彼は、今『自律型のロボット』を開発している。なんでも、人の言うことをただ実行するものではなく、『自分で物事を考え、行動する』ようにプログラムさせたものらしいのだ。
正直言って、ロボットが『自分の意思で動く』なんて、私には想像もつかなかった。ロボットには心がない。だから意思を持つこともない。今まで生きてきて、私の中の答えにはそう根付いていた。
それでも、父は諦めなかった。アンナのため、私のためと言って、研究を進める手を辞めなかった。何が彼をそんなに動かしているのか…。私には到底見当もつかなかった。


———そんな日々を過ごしていた、某日である。
急に、父が私とアンナを研究室のとある一部屋に連れてきた。どうやら、自分の造っていた『自律型ロボット』が完成したので見てほしいというのだ。
『絶対に自律するわけがない』私はそう確信していたが、父がどうしてもというので———仕方なく、彼に付き合うことにしたのだった。




〜研究室B〜




「よく来てくれたねユナ、それにアンナ。ワシの最高傑作の完成披露宴には、まずは家族であるお前さん達を連れてきたかったんじゃよ」
「本当に自力で動いて、自分の意志で動くの?」
「おにんぎょうさんじゃないのー?」
「そう。これは今までのロボットとは違い、『自分で考え行動する』心を持ったロボットじゃ。もしロボットにも心があれば、きっと便利な世になっていくじゃろうからの」
「到底信じられないわ。ロボットはロボット、命令を遂行するための『機械』でしょ?」
「それはこいつを見てからいうのじゃな。そーれっ!!」


私が半信半疑になっているのを見抜いたのか、彼はさっさと『それ』に被さっている布を外して見せた。
そこには———白い肌の、整った顔立ちをした青年が———まるで本物の『人間』のように———眠っていた。
…だが、起きる気配は一向にない。


「起きないじゃないの」
「おっきいおにんぎょうさんだねぇー」
「当たり前じゃ。まだ『動力源』を入れてないからの」


そういって父は懐から『とあるもの』を取り出す。それは深緑色に淡く輝いており、まるでその中に『生命』が生きているようだった。
それは何かと父に聞いてみると、彼はこほん、と咳を一回して説明をし始めた。それは———私の理解の外の話だった。


「これは、『玄武石』のレプリカじゃよ」
「玄武…まさか、『四方神石』なの?!」
「ちゃんと聞いとらんかったんかい、これは『レプリカ』じゃよ。音を司る神様がこの宇宙、そして地球を創られた際、世界を守ることを命じられて造られた4体の聖なる獣…。その力が宿っている『石』を我々研究者が調べ、同じ効力を持つものを作り上げたんだよ」
「だから『レプリカ』ね…。それを『彼』に入れて、起動させるのね?」
「あぁ、見ておれよ。ワシの計算が間違ってなければ、この石を胸にはめ込めば…彼は目を覚ますはずじゃ」


父は玄武石のレプリカを『彼』の心臓部分にはめ込み、心臓をネジで固く締めた。本当にこれだけで目覚めるのかしら…。
そう思ってしばらく見ていたら———。










『…………コールドスリープ 解除

     セット オールグリーン

     異常無しを確認 『Zirkfied01』 起動します』













父の想定通り、『彼』は目が覚めたのであった。

ジルクファイドの過去話 ② ( No.78 )
日時: 2014/08/30 23:48
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: esFsElNI)

———目覚めた彼は周りをキョロキョロ見回した後、父の方向を向いて跪いた。今まで見てきたロボットと同じ、その行動。
私はそれで確信した。『父の実験は失敗した』のだと。しかし———彼は諦めていなかった。優しく、「跪くのはやめなさい」と言った。
目の前のロボットは跪くのを止め、不思議そうな顔をしながらこちらを見たのだった。


「お父さん、やっぱり跪いたじゃない。実験は失敗だったんじゃないの?」
「いや?最初から自律する生命などおらぬよ。これから共に『暮らす』ことで、人格を形成させていくのじゃ」
「『暮らす』?」
「あぁ。言ったであろう?彼はアンナの『兄』だと」


そう言いながら、父は目の前のロボットを見る。ご主人からの命令が下らないのか、彼は未だに不思議そうな顔をして首を傾げていた。


「そうじゃな。彼に『名前』を付けなくては」
「名前…お父さん、本当に彼を『人間』として暮らさせるつもりなの?」
「おじいちゃーん!これなんてよむのー?」


アンナは彼の型番の文字列を見てそう尋ねる。父は彼女の純粋な目に喜びを感じ、彼女に『ジルクファイド01』だということを答えた。
———すると、彼女は笑顔でこう答えたのだった。




「じゃあ、アンナのおにいちゃんの名前は『ジルクファイド』だね!」




——————こうして、俺『ジルクファイド』が生まれたのだった。
その後、一緒に過ごしていくうちに、俺には『自我』が生まれてきた。食べることを覚え、身体を動かすことを覚え、知識を覚えた。……10年後には、俺は『普通の人間』と同じように過ごすことが出来るようになっていた。


普通のロボットならば、10年後と言ったら身体にもガタが来始め、『古版』として新型の開発に勤しむ頃なのだが…。
俺は、当時と変わらない姿で成長したアンナと共に過ごしていた。俺を造ってくれた恩人である博士は病気でこの世を去り、アンナの母であるユナも、また美しい女性として成長を遂げていた。
そんな某日のことである。宇宙ステーションにて平和に暮らしていた俺達に、『とんでもない』通達が舞い込んでくるのは。


「ジルク、見てみて!これ、ジルクが生まれたばかりの頃のアルバム!わたし、こんなに小っちゃかったんだな〜」
「そりゃあもう。このくらい小さかったんだから」
「えぇ〜?そんなに〜?」
「アンナ、ジルク。ちょっと来て。話があるの」


俺が生まれてきたばかりの頃のアルバムが見つかったと、アンナと一緒に見ていた時。ユナが俺達を呼んだ。
何事かと話を聞くと、どうやら『宇宙政府軍』からの要請で、俺を兵器として活用したいとのことだ。
10年以上経っているにも関わらず、俺が当時と変わらない精度を発揮するのに、政府軍の上層部が目を付けたそうなのだ。


「もちろん、私は反対したわ。でも『上層部の命令に反するとどうなるか分かっているのか』と脅されて…。ごめんなさい、ジルク」
「ジルク、戦争しにいっちゃうの…?わたし、ジルクと離れるのはいやだよ!!」
「宇宙…政府軍、か…」


最近異世界からの来訪者が多く、この宇宙ステーションも損害が増え始めた。だから、ここは全面戦争で地球軍の強さを見せつけようという魂胆らしい。
上層部の扱いの酷さはユナから数年前に聞いていたのだが、まさかここまでとは。上層部には『人情』というものがあるのだろうか。機械の俺でも、そこまで感じることが出来るほど、ユナの顔は引きつっていた。


「……俺、行くよ。行かなきゃアンナやユナが酷い目に合っちゃうんだろ」
「ジルク…。私も、アンナと一緒で貴方には戦争に言ってほしくないの。貴方は機械だけど、父さんの造ってくれた大事な『息子』。アンナの『兄』なの」
「ジルク、いっちゃやだよ!!」
「でも……ここで俺が『行かない』って行ったら、2人は何をされるんだ?俺は自分が傷つくより、アンナやユナが傷付くところを見るのが嫌なんだ。
 それに…俺は機械。10年以上経ってもずっと元気でいる『兵器』なんだよ。だから心配いらない。絶対に…勝って戻ってくる」


本当は俺も行きたくなかった。だけど、行かなければ2人がどうなるか分からない。
俺の『行く』という衝動は、『2人を守りたい』という思いから来ていたのかもしれない。
あいつらは俺を単なる兵器だとしか思っていないのだろう。だが…俺は『心を持った』一つの生命なんだ。




…………それを、教えてあげなくちゃ。