二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 第参話 ( No.10 )
日時: 2014/03/21 08:53
名前: 天良 (ID: 2jjt.8Ji)

雑賀から帰ってきたの武田軍の話……



ジリジリと太陽が照りつけて肌を焦がす様に上っていく。

蝉の音とかき氷の冷たさが頭に響く。

「猿飛の旦那ー?俺の服知らんー?」

「佐助ー?かき氷、もう一杯、俺と才蔵殿にー!」

「あー、はいはい。才蔵の服はあっちに干してある。それから、かき氷だねー?」

今日も猿飛は戦国オカンぶりを発揮させていた。

こー見えても彼は真田に忍びた((ryこりゃ失敬。真田忍隊の隊長でもある。

だが、家事・洗濯・忍としての仕事。彼には休む暇があるのだろうか?それを考えた才蔵と幸村は猿飛の為に有給休暇を取らせる事にしたのだった。

「いい?!洗濯はあっちで、ご飯の炊きすぎはお館様の御容態に障ると駄目だから。掃除は隅々まで、布団を干すのは三日に一回でいいから。わかった?!」

「分かっとる。」

「大丈夫でこざる!」

こうして、幸村と才蔵の楽しい(?)一週間が始まったのであった。

一日目

「佐助に言われた様に……まずは、掃除でござる……」

「幸村の旦那。やっぱり……アレを……」

アレと言われて出してきたものは二本の長いホウキと薄い布のようなものだった。

「しかしっ、アレをすると佐助に何を言われるか……」

「大丈夫!怒られへん、ちゃんと綺麗になるし。」

「確かに!!」

子供のように笑うと二人はそれぞれの掃除道具を持った。

幸村は二本の長いホウキ。才蔵は薄い布のような雑巾。

「武田が総大将!」

「百地丹波が一番弟子!」

「真田幸村!!」

「霧隠才蔵!!」

「「うるァァァアァォォォオォ!!!!!!」」

だだだっと廊下を駆け抜ける足音は凄まじいものだった。

幸村は障子の上のホコリを落とし、それを才蔵が雑巾を投げつけてキャッチする。この方法は才蔵が考えたもので技の練習にもなるし部屋も綺麗になる。まさに一石二鳥。

だが、そのリスクは計り知れないものだった。

バキッと音がし、障子が吹っ飛んでいき、間違えて投げた手裏剣が宙を舞う。

「な、なんとか、一周したな……」

「あ、あァ、障子の一つや二つ、なんとかなるでござろう……し。」

「いやァ!ええ汗かいた!」

「楽しかったでござる!」

息が上がりながらも次の仕事へ向かった。

障子や掃除道具は、後回しらしい……

Re: 【戦国BASARA3】影近黒子【武田軍】 ( No.11 )
日時: 2014/03/23 19:58
名前: 天良 (ID: JPHNpDb7)

昼食、夕食、一日目のご飯は猿飛が用意してあったのでなんとかなった。

だが、問題は次の日からだ。

二日目

「幸村の旦那!今日は何します!?」

「そうだな……しかし、腹が減っては何をするにも……」

ぐーっと腹の虫が鳴る幸村に才蔵は頷いた。

「俺も、腹へって動けへんねよな……」

朝10時、いつもより遅い起床に猿飛の有り難さを感じられる。

猿飛は毎朝、美味しい飯を用意してくれるのだが、自分達で猿飛に休ませたのだ。なんとかしないと日がくれる。

「よし!俺は、器用や、何でも出来る!!」

立ち上がると即座に台所に立つ。

そして、白米を抱き上げ目分量で付け合わせを作った。

「完成!百地様より教わった、豆腐田楽や!」

串にさした白い豆腐に味噌をつけ、それを香ばしく焼き上げたものだ。

「これは、伊賀の名物では……」

「いい香りがしますね……」

武田の臣達がひょこひょこと顔を覗かせた。

「これなら、猿飛殿を越すかもな……」

その言葉に「もう越えてるわ。」と誰にも聞かれぬ様に呟き幸村に田楽を渡した。

「さ!幸村の旦那!食ってみて下せェ!」

幸村は目を輝かせ田楽を口に放り込むとからんっと焼けた箸を床に落とした。

「旨すぎて、倒れてるわ……え?倒れてる?」

田楽を飲み込んだ瞬間、幸村は呻き声と共に倒れていった。

「ゆ、幸村殿……」

「幸村の旦那ァァァァ!!!」



額の上に桶に入れた水を勢いよくかけた。

「ひゃうっ!」

水に濡れた赤い鉢巻を握ると才蔵が顔を除き混んだ。

「女みたいな声だして……大丈夫か?」

「……大丈夫だが……一体なんだ?あの時感じた、感覚は……」

「感覚?」

うむっと頷くと幸村は話始めた。

「田楽を口に入れた瞬間、ふわっと体が軽くなって……意識が吹っ飛んだのだ。」

「それって、俺の作った料理が……」

「まぁ、ハッキリ言えば、不味かった。」

ニカッと笑う幸村に才蔵は持っていた水をかけて

「あ、ありえへんわ!!」

とだけ言い捨て台所へ走っていった。

その後、才蔵が倒れたのは言うまでもなし……

Re: 【戦国BASARA3】影近黒子【武田軍】 ( No.12 )
日時: 2014/03/24 22:32
名前: 天良 (ID: 0O230GMv)

「うー、えらい目におーたわ……」

自分で作った料理を口にしたところ、酷いものだった。

昔、彼は親に料理を作ったところ、特に親には異常は無かったのだが、母親の友人に食べてもらったところ、お世辞にも美味しいと言う言葉は聞かなかったと言う。その後、病で床についているという知らせが入ったという思い出がある。

「俺、殺傷力が猿飛の旦那より上なんやな……」

ズキズキと痛む頭をおさえながら廊下を歩いていると襖を見つけた。

暖かそうな日がさしこみ昼寝には丁度良さそうだ。

「おおっ、ええ感じやな……」

思ったより広く、縁側には歴史を感じる赴きがある。

ただ気になるのは漆喰についた人形の傷と何回も直した跡があることだ。

「……幸村か……?」

後ろを振り向くとスキンヘッドに髭の回りに生えた髭が特徴的な男が寝ていた。

「違いますけど……誰です?」

才蔵の無礼極まりない言葉に男は少し微笑みを返してくれた。

「幸村の師……武田信玄だ……」

「武田……信玄?」

首を傾げると武田は微笑みを強くすると才蔵に言った。

「知らなくてもよい。……その方が助かる……」

武田は才蔵を手招きすると目を瞑った。

「……あ、あの……」

「ん?」

「……俺、霧隠才蔵言います!」

何を言っていいのか分からずに自分の名前だけを言い残し、その場を立ち去った。

その様子を、ただ、静かに笑いながら見つめる武田は一人呟いた。

「……百地殿……おぬしの弟子は、立派になったぞ……」

まるで、死んだ人に言うような物言いで、また眠った……



顔を真っ赤にしながらその場に立ちすくんだまま動けなかった。

ふぅと早鐘をうつ心臓を止めるように息を吐くと、いつの間にか暗くなっている事に気づく。

「……旦那、今日の飯、何食うやろ……」

明日、明後日、その次も猿飛は帰って来ない。実際、一週間とは言ったものの約五日間程で帰ってくると言伝てを預かっている。

まぁ、何でも、幸村の事が心配らしい。

猿飛らしいと言えばらしいのだが、それと同時に忍らしく無い。

「才蔵殿ォォ〜〜!??どこでござるかァ!!!」

ヤバッと小さく言うと裏口から出ていった。どうして逃げたのかは自分でも分からなかった。

「才蔵殿……?」

幸村の声が聞こえるが無視をして見る。

「お館様、才蔵殿を見掛けなかったでござるか…!?」

(え?お館様?)

襖を開けた先に居たのがお館様だろうか?

幸村がよく言っているのがお館様。あの方は武田信玄。

ぐるぐると頭の中で何かが回っている。

「やはり……目は覚めぬか……」

いつもは聞かない幸村の小さい声は才蔵の頭のなかをより一層ぐるぐる回らせた。

焦れったくなった才蔵は近くにあった一際高い木に飛び乗った。

身震いするほどの寒気が襲い何となく、嫌な予感がする。

「猿飛の旦那、大丈夫かな……」

曇天の空を見上げぼそりと言った。

Re: 【戦国BASARA3】影近黒子【武田軍】 ( No.13 )
日時: 2014/03/24 22:36
名前: 天良 (ID: 0O230GMv)


家人の方々に作って貰った善を食べていると、見たことのある手裏剣が飛んで来た。

猿飛からだ。

手紙が巻かれてあり少しだけ焦げている。

とても嫌な予感がするが、読まなくてはならない気がする。いや、必ずや読まなくては。

「……え……」

持っていた椀を手から落とすと目を見張った。

信じ難い内容だが、これは事実だ。受け入れたくない。

「才蔵……殿……」

次第に顔が青ざめていき死ぬ前の様なか細い声で何かを訴えるかのように幸村にぼやいた。

「……俺の、師匠……百地丹波……ははっ、弱ェな……」

目頭が暖かいモノでいっぱいになっていく。

(あ……嫌な予感って……これやったんやな……)

自分の力の無さに、自分の師の力の無さに、腹立たしい気持ちと寂しい感情で胸が張り裂けそうになった。




さて、今までの状況を説明しますと、甲斐武田領内の前で倒れていた伊賀流の忍、霧隠才蔵。百地丹波の教えにより顔の半分を覆っていた紙により武田軍の忍、猿飛佐助に正体をバラされた。
よって、雑賀衆との戦いについていく。
その途中、真田幸村の好敵手、奥州の独眼竜・伊達政宗。そして竜の右目として名高い片倉小十郎に出会う。その時、伊達政宗に自らの苦無を手渡し天下を取ったら取り替えしにいくと誓った。
雑賀衆で出会ったのは大きくなり雑賀衆の頭領になった昔の友人、雑賀孫市。
前田の風来坊、前田慶次とも接触し真田幸村の元でもうしばらく居候することにした。
少し落ち着き、猿飛佐助を休ませると武田信玄と出会う。
そして、自分の留守の間、第六天魔王の一人であり、その妹であるお市率いる織田軍残党に伊賀の里を潰されてしまう。そんな事は知るよしもない才蔵は本当に居場所を失ったのかと悲しさを感じていた。