二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【戦国BASARA3】影近黒子【武田軍】 ( No.16 )
日時: 2014/04/18 17:00
名前: 天良 (ID: YxUxicMi)

日が暮れていくにつれて曇天の空が濃くなっていく。

その後、猿飛は才蔵について色々な事を聞いた。

どうして、躑躅ヶ崎館の前に倒れていたのか、幸村の軍に居候させてもらっているのか、全て順番に百地に問いかける。

「……才蔵の……事か……うーん……」

気がのらないのか、項垂れたまま直らない。何処か淋しげな目で百地は話始めた。

「あれは……俺が若い時やったかな……」



斑に散らばる木漏れ日を眺めている、炎天直下の道上。無言で歩き続ける忍の群れの一番前に俺は立っていた。

織田軍との戦に勝利したのは良いものの、多くの犠牲者と血を流す者が居た。俺は、その者達にどの様に接して良いのか分からず、ただただ、思いの捌け口を探して俯くばかりだ。

この空気を変えようとしたものが一人。俺の中の一人だ。口を開いた。

「……ん?誰や……あれ?」

俺の声にざわつく群れから俺は離れてその影の元へ走った。影に近いその髪の毛に、黒子の様な存在感の無さ。

まだ幼子。だが、殺意を抱いている様な目に蹴落とされそうになる。

血に染まった小刀から滴る血をつまらなさそうに指で拭き取った影の脚は、酷く怪我をしていた。

「…………お前……は?なんて言う?」

咄嗟に口から溢れた言葉に後悔をする俺に、影は言葉を返した。

「才蔵。才蔵って名。」


簡単なのか、もしくは話すのが苦痛なのか……。
表情を読み取れないようにするために、話終わるまで笑顔の百地。

猿飛の心の内には一つ、思うことがあった。

自分と似ているのだ。

彼も村を捨てて、自分の師・白雲斎と地塗られた過去を忘れる為に修行に励んだ事がある。その記憶は消えないまま、師は消えた。時々、蘇るあの時の記憶は、今も思い出されていた。

「……ま、俺はアイツに真っ直ぐ生きてもらいたいねェ……」

遠い目をした百地は、不思議と猿飛の目には猿には見えなかった。

自分の事を言おうとした時、戸が壊され黒い煙が屋敷内に立ち込めた。

「百地様!村が……村がっ!」

血走った目の若者に黒い影が触れた。地面の下から生える黒い手は影の様に黒く、人の思いと恨み、嘆きが混じりあった暗さがある。

外から聞こえる村人の悲鳴の奥から微かに聞こえる、啜り泣く様な歌声は百地の身を一段と強ばらせた。

『開け根の国……根のやしろ……』

家康に会った日の時に聞いたあの歌声……

それは、織田軍残党にて織田信長の妹。お市の歌声だ。

「百地さん……」

「……頭さん……才蔵に伝えてや……」

こそこそと耳打ちをした百地の言葉は、猿飛の目を大きく開かせた。

一瞬、気が迷ったが、それが最期の言葉になるであろうと猿飛は闇に消えていった百地を見送った。

「……俺様はこんな事、性に合わないだけどね……はァ……」

暗く、薄気味悪い手で砕かれる百地の身を見ない様に猿飛の目は山の方へと向けた。

胸騒ぎの理由を知った今は、見なかったふりをすることによって消えるのでは無いかと思った。

そのまま……暗い闇夜を無言で走る猿飛は呟いた。

「才蔵は、幸せ者だね……」