二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.104 )
- 日時: 2014/04/02 11:22
- 名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)
第二十六話−覚悟−
間違いなく何かある。
暁はそう考えていた。
美鈴の行動は明らかに不信であったし、それのフォローにパチュリーが現れたことも珍しい。
元々図書館から出てくることも珍しく、ましてやパチュリーが人のフォローなど見たことがない。
そんな思考を流しながら、フランの部屋までたどり着いた。
そこにどんな思惑が潜んでいようと、自らやるべき事は執事であり、明日までそれを全うすることだ。
そう心に言い聞かせ、ゆっくりと扉をノックし、そうして暁は扉に手を掛けた。
いつもと変わらぬ部屋にいつもと変わらぬベッド。
そこにあってフランはいつもと違った。
いつもは横になっているベッドの上で、体を起こしてぺたりと座り込んでいる。
暁 「おはようございます、フランお嬢様」
いつも通りの言葉に、いつも通りの返事はない。
この五日間、暁の挨拶に嬉しそうに返していたフランが何も言わないのだ。
暁は歩を進める。
後一歩で手を伸ばせば届く位置まで来たときだった。
フラン 「ねぇ、暁」
暁は足を止めた。
まるでその距離は、踏み込めぬ壁であるように。
フラン 「暁はいなくなるの?」
「……」
何のクッションもなく、話は核心であった。
純粋さ故に。
フラン 「ねえ」
無表情に、声すら色を失いただ暁の返事を求めた。
暁 「執事ではなくなる、ということならば、えぇ、その通りです」
暁は、純粋さ故に染まりやすいことを知りながら。
フラン 「本当に?」
暁 「えぇ」
事実だけを告げた。
嘘や虚構はその場しのぎにしかならないことを知っていたからだ。
それはフランに悪影響である。
そういう判断だった。
今の暁は、フランの世話係なのだ。
そうである以上、嘘は吐けなかった。
フラン 「そっか……。いなくなっちゃうんだね……」
二人の間に沈黙が漂う。
長い長い沈黙の後、ポツリとフランが呟いた。
フラン 「でも……」
それは二つの要因による幸いだった。
一つは、長年にわたる闘争の中で、奇襲的な気配への知覚が敏感であったこと。
もう一つは、初日以来フランといるときには、常に鬼切丸であったこと。
この二つが暁を初撃から守った。
七歩分の間合いの先に、ベッドだったものの粉砕された残骸が舞っている。
フラン 「壊れちゃえば、そんなことできないよね」
粉塵の中でフランは笑った。
狂気。
暁の中に浮かんだ言葉だった。
暁 「そういえば、今日は満月でしたか」
執事になって以来、夜に外に出ることもなく、月齢をすっかり忘れていた。
満月の夜、吸血鬼が最も力を得る日。
だが、同時に
暁「Lunatic……狂気ですか」
狂気を最も強く得る日でもある。
どこからその情報を得たのかは、暁にはわからなかったが、暁がいなくなることが引き金となり、狂気が破壊に傾いてしまったことだけは理解できた。
フラン 「あんまり早く壊れないでね。楽しくないから」
そうして、フランは暁に襲い掛かったのだった。