二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.105 )
- 日時: 2014/04/02 11:35
- 名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)
暁は刀を抜かず、ステップを刻む。
フランのキレは、宴会の時に見たレミリアに勝るとも劣らない。
七色の羽により空中での制動も暁の一段上を行く。
そんなフランに対し、暁は回避という選択肢だけを選んでいた。
容易なことではない。
ただでさえ破壊するという危険極まりない能力の上に、殴られるという事象も致命打になりかねないのだから。
擦った瞬間に吹き飛ぶこともありえる。
それを把握していながら、なお反撃という選択肢を取らない。
右足が破壊された。
瞬時に復元。
右腕を破壊しようとフランは、小さな手を握る。
だが、破壊は起こらず、不審に思ってもう一度握ると右腕はちゃんと破壊された。
身体の一部を失っても暁は、即座に回復。
隙を見せない暁に、フランはスペルをぶち込めない。
しかし、今日のフランは冴えていた。
思い通りに能力が働く。
破壊の規模すら自在になっていることは、暁の右足だけを破壊できたことでわかったことだ。
フラン 「避けてばっかりじゃ……」
暁の着地の瞬間に足元を破壊。
流石にそれには、暁はバランスを崩した。
もしここで刀を抜いていれば、打ち合うことも可能だったかもしれない。
だが、暁は抜かなかった。
いや、抜けなかった。
それは甘さか。
暁には右手、右足を一度破壊されながら、フランに刀を向ける覚悟がなかったのだ。
フラン 「ほら、すぐ壊れちゃうよ」
——禁忌「レーヴァテイン」
迫りくる紅に対し、暁は詰んでいた。
体勢として童子切も扱えず、哀愁歌では間に合わず、羅生門ではフランごとぶった切ることになるし、将門では遅すぎる。
無論、そのまま避けられるなど甘いこともない。
だから、それを避けられたのは暁の力じゃなかった。
美鈴 「やっぱりダメです!」
後ろに突き飛ばされ、傾いていく視界のなか、赤い髪を見た。
いつも被っている帽子は、走ってきたときに飛んでいってしまったのか、今は見当たらない。
状況の変化にされどレーヴァテインは止まらず、美鈴を通った。
一拍遅れて噴き出す鮮血。
散った鮮血を見て、暁は漸く今起こったことを理解する。
暁「美鈴!」
暁が叫んだ。
後ろに倒れこみそうになった美鈴を抱き留める。
美鈴 「くっ……流石に全力でガードしてもキツいですね」
力なく美鈴が言った。
暁 「バカ野郎! なんでこんなことをした!!」
美鈴 「女の子に野郎……はないですよ」
はは、と弱弱しく笑う。
美鈴 「暁さんを壊しちゃったら、フランお嬢様は必ず後悔すると思います」
理由なんてそれだけで十分です、と美鈴は言った。
美鈴 「だから、フランお嬢様を止めてあげてください」
そう言いきると、糸が切れるように意識を失った。
幸い傷は致命傷ではなさそうだが、血を流しすぎたのだろう。
暁 「パチェ! いるだろう?」
パチュリー 「そんなに大声出さなくても聞こえるわ」
どこからともなく現れたパチュリーは、美鈴を引き取り魔法で浮かべて運んで行く。
暁「美鈴を頼んだ」
パチュリー 「大丈夫よ、美鈴は私が死なせない」
一度振り返り、言葉を紡ぐ。
そして、フランと暁を一瞥し
パチュリー「頑張りなさい」
背を向け、そう告げた。