二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.106 )
日時: 2014/04/02 11:41
名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)

あかつきは一度深呼吸した。

そうして、一度息を吐いた後、刀を抜いた。

フラン 「ハハ、アハハハハハァ!!」

フランは楽しみが増えたように歪んだ笑みを見せる。

フラン 「本気の暁はどんなかな? せめてすぐに美鈴みたいにはならないでね」

あかつき 「フラン」

暁は執事でありながら、あえてそう呼んだ。

暁 「もう、やめないか?」

刀を抜いたのは、決意の証。

どんな手を使ってでも壊されない。

ただ叩き潰すための意志ではなく、必要ならば躊躇わぬ為の自分への意志表明。





甲高い笑い声が響く。

狂ったように、否、実際狂って、フランは笑った。

可笑しくて可笑しくてたまらないように。



——お・こ・と・わ・り・だ・よ♪



砲弾の如く、螺旋状に回転し全身で突っ込む。

それはさながらレミリアのクレイドルの様な。




——憑符「鬼神千手観音」




暁はキャッチボールでもするように左手で掴み、そのまま握り潰した。

その指の隙間を数多の蝙がすり抜け、再びフランを形成する。

それを追撃するために握りこぶしのまま、横に一回転し遠心力に乗せて刈り取るようにスイング。

フランは身体をちょっと傾けるだけでこれを回避。

拳はそのまま壁に突き刺さり、壁は蜘蛛の巣状に罅を作り、館を揺らした。

暁はフランを無視し、左手の先を起点に縮小、さらにこめかみの高さに刀を構える。

そこに左手を添え、繰り出す突きによる斬撃は四本、しかし響いた音は一つ。





——仏世「色即是空」





剣の才を持たぬ暁が、それでもなお剣を振り続けた結物。

破壊力という一点において辿り着いた究極の一。

無論それがただの四連撃には非ず、あのフランを閉じ込めておくための部屋の壁をぶち破った。

大人がゆうに二、三人は通れそうな大穴から暁は勢いよく飛び出す。

フラン 「逃げる気? 逃がさないよ!」

同じく壁の穴から飛び出すフラン。

その穴を抜けたばかりのフランに



——居合「鬼神斬」



暁は容赦なくスペルカードをかました。

「禁忌『フォーオブカインド』」

四人のフランが視界を埋め尽くす斬撃の一本一本を丸ごと破壊しきり、暁の追撃を開始する。

暁は後ろを振り向かない。

ただひたすらに走っていく。

ことスピードに関して言えば、暁はフランに劣っている。


振り向き、様子を確認する余裕など微塵も存在しない。

だが、そこまでしても差は歴然だった。

フラン 「捕まえた♪」

暁 「くっ……」

頭上からの一撃を横に跳ねることで避け、そのままバックステップで少しでも距離を稼ぐ。

それも二、三歩で追いつかれてしまう。

当たり前だ、元より差があるものが前に走るものと後ろに下がるもの、どちらが速いかといえば確実に前者。

全力で逃げている暁の背後に回り込む一人。

暁は勘だけで頭を下げた。

一瞬前まで頭があった場所を紅い剣が通り過ぎる。

それは、レーヴァテインを縮小したような100センチほどの剣で、破壊の力が込められていた。

しかし、その程度では暁の動きは止められない。

バックステップしていた勢いをそのまま足に伝え、後ろに振りぬく。

確かな手ごたえとともにフランの分身の一人が消滅。

暁に向けてフランの分身たる二人が、挟み撃ちのように迫るが、左右から同時に振るわれた剣を一刀のもとに両断。

剣を切られてできた隙に右側のフランに向けて逆袈裟切り。

振り上げた刀の流れで左側のフランに袈裟切り、そして消滅させる。

切った勢いで足を曲げ、前に飛び出し再び走り出した。

フラン 「うぅ……禁忌『クランベリートラップ』!」

捕まえたと思った暁がさらに逃げ出すのを阻止するために、暁を囲う弾幕。




——喪符「鬼神哀愁歌」




フランの足どめという思惑は外れ、暁は一分の迷いもなく強行突破を選択。

そしてそれはこの場面での正解だ。

純粋に避ける、スペルカードを使う、どの選択肢をもってしても、一瞬でも迷えば即距離を詰められていただろう。

今ならばフランは自らの分身たる三人を潰され、多少なりとも疲弊している。

それ故に、出だしが遅れた。

暁一人では、フランを討伐はできても止めることはできない。

少しでも距離を稼がなければならない。

目的地はもう少し先なのだから。