二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.108 )
- 日時: 2014/04/02 11:58
- 名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)
第二十七章−争いたくは無かった−
生物の気配を感じない。
虫の音も動物の鳴き声も一切聞こえない。
しかし、森は静寂に包まれてはいなかった。
破壊音が一直線に進んでいく。
紅い剣と紅い剣とがぶつかり合い、その衝撃を逃がさず利用して再び距離をとった。
フランも一旦バランスを崩しながらも、羽を広げ追撃を仕掛けようと暁に迫る。
そのまま暁を壊そうと手を握ろうとした。
しかし、暁は後ろを振り向く事無く周りの大木を三本切り倒す。
予定調和のようにフランに向かって倒れこむ大木。
即座に対象を切り替え左右の手を握り、大木の二本を破壊する。
握りこんだ右手を正面に倒れてくる大木に叩きつけると、風船のようにパンッと弾けた。
だが、上に向かって伸びた腕は、たとえ吸血鬼と言えども隙になる。
メキ……。
暁の爪先が、フランの脇腹に深々と突き刺さる。
フランは横にくの字に折れ曲がり、大木に打ち付けられた。
折れた肋骨が肌を突きぬけ、肺が破けたのか、呼吸音が笛のように鳴る。
瞳の中の狂気の色が揺らいだ。
しかし、フランは明確な意志を持って紅剣を握る。
——禁忌「レーヴァテイン」
木を薙払いながら進む大剣に、自らの刃を乗せてフランの力で投げ飛ばされる。
フランはレーヴァテインを片手に、体を引き絞る。
自分は砲台、砲弾はレーヴァテイン、狙いは暁。
空中に投げ出されたところで、単純で直線的な攻撃など暁には容易に避けられる。
だが、避けるわけにはいかなかった。
「憑符『鬼神哀愁歌』!」
レーヴァテインの大きさを遥かに上回る規模で展開され、飲み込むように内包した。
そのまま押さえ込む為に力を籠める。
暁 「ぬぅ……」
そこまでして、なお暴れて拘束を振りほどこうとする剣に夕霧が唸る。
ここで振りほどかれるわけにはいかなかった。
暁の後ろに広がるのは人里。
いつの間にか森の端まで着ていたのだ。
避ければ、人里を裕に滅ぼして余りある紅剣が、そこで破壊の限りを尽くすだろう。
暁 「ぐ……うぉォォォォ!!」
暴れ回る紅剣を押さえ込み、強引に左手を握る。
徐々に白が勢力を強め、飲み込んでいく。
フラン 「いつもそうだよね、夕霧は」
レーヴァテインとは違う小型の紅剣を携え、暁にいつでも斬り込める位置にフランが現れる。
フラン 「他者の為に傷ついたり苦労したり。ううん、それが悪いって言ってるんじゃないよ……でも」
翼を一度はばたかせる。
それだけで、スピードは最高速へ。
フラン 「だったら私の為に傍にいてくれても良いじゃない!!」
振り下ろすだけで良かった。
それだけで、豆腐でも切るかのように暁は切り裂かれたことだろう。
それに待ったを掛けたのは、打ち込まれた一本の槍だった。