二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.117 )
日時: 2014/04/03 08:52
名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)

暁は一人、咲く夜を待っていた。

暁の格好も、いつもの代わり映えしない着物ではなく、黒のチノパンにロンT、キャスケット型の帽子とどことなく現代風な格好だった。

暁にとって着物が気合いが入ってない服装、と言うわけではなく、戦闘にも使う服であってこのような機会には不適切だと思ったが故の服装だ。

咲夜 「ごめん、お待たせ」

「いや、俺も——」

息を呑んだ。

今さっき来たところだという常套句は接げなかった。

いつもの服装を黒くしただけ(細かい場所は違うが)で随分と印象が違う。

銀色の髪と黒が相まって艶やかさが際立ち、髪がとても綺麗だった。

咲夜「ど……どう?」

暁 「……」

咲夜「暁?」

暁 「いや、すまん。正直見違えた」

ようやく復帰した暁は、自らの状態を正直に吐露した。

ただ、繕う程の心の余裕もその必要性もなかっただけなのだが。

咲夜 「ふふ。ありがとう」

暁の様子に化かした様な気分になり少し上機嫌な咲夜は、笑みを零しながら言った。

咲夜 「それで? 今日はどこに行くの?」

暁 「そうだな、これを被っておけ」

そう言って自分が被っていた帽子を咲夜に被せる。


暁 「人里へ行こうか」

咲夜は素直に従うことにする。

自分の意見がなかったということもあるが、出かける前レミリアに『相手のリードに従うこと』と厳命されていたからだった。

こと男性については百戦錬磨、一騎当千のレミリアの言うことだからこそ、咲夜はそれに逆らわないことにしたのだった。

ただ、かぐや姫が貢ぎ物をたくさん頂いていたような時期には、デートは主流ではなかったのであるが。

そこまで気が行かないくらいには、咲夜も舞い上がっていた、ということだろう。

二人は並んで人里へ向かって歩きだした。

咲夜は忘れたが故に気付くことはなかった。

今自分がいる場所は、自分が羨んだ場所に近いことに。









村人 「おはようございます、暁さん」

暁 「おはよう、息子さんは元気か?」

村人 「おかげさまで。また暁さんが来るのを楽しみにしてましたよ」

定型句のような会話を人里の見張りの人間と話している。

会話を聞いた限り、相当何度も出入りしているようだ、と咲夜は思った。

村人 「おや、そちらの方は?」

と、ふとした流れで咲夜に話題が飛ぶ。

全く別のことを考えていた咲夜は咄嗟に対応できなかったが、

暁 「こっちは「あ、紅魔館とこのメイドさんですね」っと」

暁がフォローを入れる前に、見張りの人間はそう言った。

どうやら咲夜のことを元々知っていたらしい。

村人 「あぁ、あんまり引き止めてもなんですね。どうぞ御通りください」

そうして、雰囲気を悟ったのか見張りの人間は道を開け暁に先を促した。

暁 「失礼するよ」

そう告げながら暁は失敗したと思い、頭をかいた。


咲夜 「だから帽子かぶせたのね」

咲夜は暁の隣を歩きながら、少し嬉しそうに言う。

咲夜 「人里には買い物とかに来たり、お遣いとかで来てるから大丈夫なのに」

普段ならしないような暁の失敗が可笑しかった。

暁 「うむ、では役立たず君は回収するとしよう」

暁が手を伸ばし帽子を取ろうとするが、咲夜は帽子を両手で押さえ暁の少し前に出て振り返りながら言った。

咲夜 「いいの。これ気に入ったから」

暁 「そうか?」

咲夜 「そうよ。さっ、行こ?」

その笑顔は暁にとって少し眩しかった。