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二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.119 )
- 日時: 2014/04/03 08:54
- 名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)
メイドは刀に手を引かれ、一寸先も見えない程の闇を進んでいく。
二人とも夜目は利く方であり、特に咲く夜は能力上暗闇程度単に光波が受信できないだけのことである。
その咲夜が自らを闇に置いて行動していることには理由がある。
というのは至極単純で、暁が目をつぶっていてくれと頼んだからだ。
その意図を正確に読み取り、能力による状況察知すら放棄したのだった。
二人に交わす言葉はない。
ただ黙々と道無き道を進んでいく。
体感で若干上り坂を登っていること以外は情報は無い。
周りはひどく静かで、足音が二人分響くだけだった。
ふと、前の足音が止む。
目的には達したということだろう。
暁 「開けてくれ」
短く、暁が告げる。
それにはゆっくりと目を開けた。
——それは一面に広がる星月夜だった
咲夜は息を呑んだ。
自分のいた月はこんなにも綺麗なものだったのかと。
いや、そんな言葉すら陳腐。
暁が短く用件だけ言った意味がわかった。
これに言葉はいらない。
暁の能力で道を作ってきたのか、周りに遮蔽物は無い。
眼下には竹林が広がっており、様子をうかがうことはできない位の暗闇だった。
そして、空の暗闇には月があり、星がある。
たったそれだけの景色がここまで個を魅了するのかと。
幻想郷のどこにいても空を飛べば、この景色は見えるはずである。
それだけに驚嘆も大きかった。
なぜ今まで気付かなかったのか。
いや、今はその気付かなかった事実に感謝した。
今この瞬間に気付けたことに対して。
咲夜は手を伸ばせば届きそうな月に、手を伸ばしかけてやめた。
見惚れるより暁にお礼を言うのが先だと思ったからだ。
「あかつ——」
そうして。
そうして。
帽子は二つに分かれヒラヒラと舞落ちて暗闇に飲み込まれた。
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