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Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.120 )
日時: 2014/04/03 08:55
名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)

第三十章−予定調和‐


咲夜はゆっくりと落ちていく帽子を見送った。

帽子は切れたが、咲夜自身はただの髪の毛一本ですら切れることなく健在していた。

暁 「ほう、今のを避けるか。流石は紅魔のメイド。」

いつもと変わらない調子で暁が言った。

それ自体何でもないことのように。

咲夜 「突然何するの?」

なんとなく不穏を感じとった咲夜は静かに質問を投げた。

暁 「何、見てのとおり切ろうと思ったのさ」

いつの間にかいつもの着物姿に戻った暁は、無表情にそう言った。

暁 「紅魔館との縁をな。おまえを斬れば、俺を幻想郷に縛り付けるものはなくなるだろう」

咲夜 「それは一体どういう……」

理解を拒否するように咲夜は聞く。

暁 「幻想郷を出る。それだけのことだ」

その咲夜が聞いた意味を理解しながら暁は言うことを止めなかった。

それは或いは自分に言ったようだったかもしれない。

暁 「狭き世界の家族ごっこにもいささか飽きた」

その言葉と共に自らを呪から解放する。

同時に膨れ上がる威圧感。

暁 「全てを終わりにしよう、咲夜」




——嫌だ




暁を拾った日もこんな満月の夜だった。




——嫌だ




それから生きてきた時間に比べれば短い間だが、様々なことがあった。




——嫌だ




いつの間にか日常になった暁が、いなくなると言う。




——嫌だ




「嫌よ!!」

堪えきれないように咲夜が叫んだ。

それは咲夜の一番ストレートな想い。

まだ。もっと。ずっと。

日常を過ごしたかった。

今の紅魔館にいたかった。

咲夜 「勝手にいなくなるなんて絶対に許さない」

対立した二人の想い。

ならば、やることなど幻想郷において一つしかない。

咲夜 「手足圧し折ってでも連れて帰るわ!」

それが開戦の合図だった。