二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.121 )
日時: 2014/04/03 08:57
名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)

苛烈にして激情。

表面にそれを押し出しながらも、頭の中で咲夜は至極冷静だった。

「(何にしても理由が薄すぎる)」

それが何度も先の会話を反芻した咲夜が出した結論だった。

正しく理解する(納得しないが)ならば、暁は幻想郷を出ていきたいらしい。

だとすれば、なぜ今自分(咲夜)を切ろうとしたのか。

その理由が薄すぎるのだ。

暁が一人でいる場面などいくらでもある。

それこそ早朝部屋から出ていく暁にも気付けていないのだから、そのタイミングで抜け出せばこれは必要ない。

気付けば追うだろうが、博霊大結界を越えてしまえば追うこともできない。

その中でこのタイミング。

更に言えば、咲夜を切る理由がない。

別の理由があるとしか思えないのだ。

それも相談もしないほどの理由が。

「(みんな自分勝手ね)」

咲夜は心の中で言った。

永琳も暁を追い出そうとした時そうであったし、輝夜も異変時マヨヒガに行くのにほぼ独断。

そして今回の暁である。

出ていきたいと言った暁を引き止める自分が、自分勝手な我が儘を押し通そうとしていることを理解しながらも咲夜はそう思った。

だからこの言葉は批判ではなく同族愛好だったかもしれない。

ただ今は。

自らの日常を続けるために。

自らの自分勝手を以て。

暁の自分勝手を叩き潰す。

「(とりあえず一発殴って理由はそれからでいい)」

ここで負ければ、その先に後悔があるのは目に見えていた。

とにかく暁を止めなければ。

冷静に分析していた部分を弾幕用に切り替えていく。

一片の敵意も害意もなく、ただひたすらに日常を守るために。

咲夜はその初撃、三本の太刀筋を避けることなく避けたのだった。






暁はまばたきの間に三度、刀を振るった。

無論、それで被弾させられるとは考えていない。

だから、咲夜が弾幕を抜いてきたのはいい。

だが、避ける素振りすらないのはどういうことか。

暁の見た光景は明らかに被弾した咲夜が無傷で抜けてきた、というものだった。

驚愕の間もなく右手を振りかぶる咲夜を見た暁は、四太刀目の斬撃を踏み込みのタイミングで叩き込む。

しかし——

暁「ぬぅ」

咲夜は既に斬撃の安置にあった。

それはまるで瞬間移動のように。

鞘走りを終えた刀はどう足掻いたところで咲夜を捉える軌道には至らない。

逆に咲夜の右手は正確に暁の心臓を捉えた。

詰まる呼吸と止まる世界。

それは被弾を余儀なくされる隙。

刀の付喪神として、ほぼ人間を再現しているがゆえに生まれた隙だった。

咲夜は一度目を瞑り



——傷魂「ソウルスカルプチュア」



一手目となるスペルを発動した。

頭を思い切り殴り付けたような衝撃が暁を襲う。

一瞬断絶しそうになる意識を気合いで繋ぎ止め、竹林の竹を一本掴み体勢立て直し、視線を上げた。

その作業の終わりと咲夜がスペルを唱えるのと同時。

「おいおい……」

思わず暁が声を洩らす。