二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.124 )
- 日時: 2014/04/03 09:03
- 名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)
真剣白刃取りも考えたが、不可能だ、と切って捨てた。
あれが可能だったのは、巨大化した刀であり、必然的にスピードの減衰があったからだ。
神速を以て振るわれている羅生門を受け止めるなど不可能だろう。
咲夜は目を瞑った。
そこに一切の抵抗意志はなく。
何でこんなことになってしまったのか、と思いながらも暁が来てからのことを思い出していた。
初めてプレゼントを貰ったなど小さなことから、異変のような大きなことまで。
そこまで考えて何となく思ってしまった。
「(暁になら、いいかもしれない)」
そうして、無意識に暁に手を伸ばしていた。
決して届くはずのないその手はゆっくりと伸びていき。
「え?」
——指先が暁に触れた。
目を開ければそこには暁が居た。
髪の僅か一センチ手前、そこに見えない壁があるように微動だもせず鬼切丸が止まっていた。
「…………」
暁に表情はなかったが、咲夜には辛いように見えた。
鬼切丸を無視して暁に一歩近付く。
鬼切丸に髪が触れ、暁がピクリと反応を見せる。
両腕を背中に回して、割れ物に触れるように優しく抱き締めた。
咲夜 「もう、やめない?」
辛いように見えた瞬間に咲夜に自分の気持ちは消えていた。
とにかく、辛いことをなくしてあげたいと、ただそう思ったのだった。
抱き締められながら鬼切丸を振り下ろそうとするが、やはり一センチ手前で動かなくなった。
咲夜 「なにがあったの? 言ってくれないとわからないわよ……?」
戸惑い、迷い、鬼切丸は粒子になり暁にしまわれた。
空いた右手は咲夜の頭に触れようとして、それを止めた。
代わりに両手で肩を押し、咲夜の正面に立った。
そして、ゆっくりと話しだした。
暁 「縁を切ろうとした。文字通りの意味で、な」
縁とは本来見えぬ、実体を持たないものだ。
しかし、暁には羅生門によって物理的に切ることができる。
暁 「首筋から右心房を通りそのまま振り抜く。それだけで縁を切り裂ける」
戻し切り。
突き詰めたその技術は、それだけのことをして縁のみを切り、決して傷を付けぬことを可能にした。
暁 「縁を切るというのはよく聞く話ではあるが、これは生易しいものではない。切れた縁に関する情報の一切を失うことになる。つまりは現在のみならず、過去は無論、未来までもなくす。思い出すことも、すれ違うことも可能性は皆無だ」
咲夜 「やろうとしたことはわかった。でも、なんでそんなことを?」
咲夜の疑問はそこだ。
何故こんなことをする必要があったのか。
暁「初めの違和感はレミリアの部屋にてお前が来たことだ」
その時、咲夜は危ない気がした、と言った。
しかし、気がしたというのは何故か。
元来感知能力の優れた咲夜であるが故に、暁はそういうものなのだと、その時は気にしなかった。
暁 「永琳との一戦もそうだ。今になってしまえば、疑問を持つべきだった」
あの永琳が咲夜を、招いてしまうようなへまを犯すだろうか?
そんな中、咲夜は暁の下に辿り着けた。
明らかに不測の事態だろう。
暁 「確信を得たのは今朝の話だが。レミリアに一通り話を聞いた」
フランとの一件での余りに確信に満ちた発言。
既にやるべきことを理解した行動。
確かに暁は咲夜とレミリアが必要だと考え、紅魔館に向かっていたが、それは紅魔館に近付けば見つけてもらえると考えていたわけで、森に入る前に会えるとは思ってもみていなかった。
暁 「パチュリーから聞くに、俺を持ち帰った際『持って帰らなければいけない気がした』と言ったらしいな」
こくりと咲夜が頷いた。
確かにそういった感覚を覚えたのだ。
暁 「此処からは暫く意識を失っていたから推論になるが、咲夜が俺を拾った当時、防衛本能として能力を無差別に振りまいていたと考えられる。幸い咲夜のように一次的に効果を発揮するものではない。従って、何の変化も無かったはずだ。しかし、その効果範囲に咲夜が踏み込んだ」
無を有にする程度の能力。
器がなければ発動しない能力。
その器になったもの、咲夜と暁の間に無かったもの。
「運命…ってやつだろうな、それもとびきり強力な。」
紅魔のメイドと地上の刀。
あり得なかった運命。
だからこそ、反転して強力な運命で結ばれることとなった。
多少の強制力を伴うそれをだ。
時に片割れの危険を察知し、時に強い思いを伝える。
まさに以心伝心。
だからこそ、これを知ったとき暁は切らねばならぬと、そう思った。
暁 「思考誘導。心理誘導。それ以外にもこれだけ強力な縁だ。他の細い縁をいくつも引きちぎっただろう」
つまり、未来を変えた。
出会わないはずのものと出会い、出会うはずのものと出会わない。
伝わらないものを伝える。
知らないはずのことを知る。
もし。
もし、今抱いている感情が作られたものだとしたら。
それを知ってしまったなら。
そして、それをなくす手段を持っていたとしたなら。
暁 「斬るべきであろう。それだけの業だ」
暁は断言した。
否定すべき言葉ではない、とでも言うように。