二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 東方刃暁録-sword morn record - ( No.85 )
日時: 2014/04/02 09:23
名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)

見ていた者の視界を覆い尽くした霊夢が放つ光。

その光が消えると同時、 


——パリン


あっさりとした音と共に術式は崩れ去った。

同様に暁が作っていた透明な壁も消えてなくなった。

咲夜がそれを見て走りだす。

暁 「む、今触ると汚れるぞ?」

咲夜 「知らないわよ! そんな格好になってまで変なこと言わないで!」

そう叫んで咲夜は、倒れている血まみれの暁を抱き上げた。

咲夜 「永琳!」

暁 「すまん、永琳。負けてしまった」

咲夜が呼ぶまでもなく、すぐ後ろまで来ていた永琳に顔だけ向け、謝った。

永琳 「あら、負けちゃったのね」

なんでもないようにアリスを背負った妹紅を連れて現れた輝夜が言う。

暁 「ああ、完敗だ」

これからどうしようか、と暁は思案する。

咲夜 「そんなことより治療でしょ!」

なんとなくのほほんとした雰囲気に咲夜が怒るが、

暁 「いらないぞ? とりあえず霊夢達が先だろう。一晩眠ればこの程度治る……よな?」

国士無双の薬の副作用がいつまで続くかわからない暁は、永琳に尋ねた。

永琳 「ええ、そうね。でもそれはウドンゲの為に作った薬だから、貴方が使ってこれからずっと先に何かしらの害があるかもしれないわ。それがわかるまでは紅魔館にいなさい」

暁 「……ありがとう」
永琳が今言ったことはつまり、自宅療養なのだろう。

輝夜 「永琳は恥ずかしがってああ言ったけど、ずっとわからないことになるからずっといなさいってことよ」

と輝夜がこっそり耳打ちした。

暁 「良いのか? 俺は」

輝夜 「良いもなにもないわ。永琳がいなさいって言ってるのよ。それに私はそんな簡単に殺されるほど弱くないわよ」

と、腕を曲げ力瘤を作るような仕草をする。

まったくできていないが。

霊夢 「あーちょっと良いかしら?」

暁 「なんだ?」

霊夢 「物は相談なんだけど、宴会の準備手伝ってもらえない? 昨日から始める予定だったんだけど、まだ何もやってないわ」

魔理沙も明日まで起きなさそうだし、と霊夢。

輝夜 「それならうちでやりましょ。襖開ければできるわよね、永琳」

永琳 「ええ、広さは十分ですよ」

じゃあ決まりね! と、一人元気よく言った。






暁 「戻らないのか?」

紫に外界へ買い物を輝夜が頼み、その後咲夜と暁を残しみんな永遠亭に戻っていった。

因みに観戦していた者も含めこの場にいた者は全員永遠亭に泊まっていくことになっている。

咲夜 「心配したんだから」

ぽつりと咲夜が言った。

ずいぶんと心配をかけてしまったようだ。

暁 「すまなかったな」

そう言って咲夜の頭を撫でようとしたが、手が上がらないことに気付いてあきらめた。

咲夜 「いいえ、違う。本当は異変起こすって言ったときに止めるべきだった。でも、お嬢様のためだったから…暁を止められなかった……」

一呼吸置いてもう一つ言った。

咲夜 「ねえ、暁」

暁 「あー、すまん。問いに答える時間が無いようだ」

ついに人間体を保てなくなった暁は燐光を放ちながら刀に戻った。

咲夜 「お嬢様の立場が私でも同じようにしてくれたかな?」

それでも咲夜はそのまま言葉を続けた。

その問いを最後まで暁は聞かなかったが、赤い刀は光が無い中薄い光を放ち、当たり前だ、と答えたようだった。

咲夜は丁寧に鞘にしまい、今日は久しぶりに刀の手入れをしてあげようと思った。

一人のメイドは大事そうに両腕で刀を抱えながら、暁の血が大量についている事も気にせず、紅魔館に向かって歩き出した。