二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chapter00 〜アリエナイ日常、ありえない新生活〜 ( No.10 )
日時: 2014/05/18 17:42
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: G8tpxkEf)

———あ、れ……。



———俺は確か、神谷にノートを借りる予定で…。



———でも、受け取ろうとした瞬間に眩暈がして…。



———何が…あったんだろう…。



———と、とりあえず起きなきゃ……。




気だるい体を起こしてみると、そこにはいつもと雰囲気が違う教室の風景が広がっていた。
教室には何故か俺だけがいる。おかしいな、さっきまで神谷達はすぐそばにいたのに…。
とりあえず周りを見回してみる。…すると、早速『普通じゃない』ものを見つけた。


「なんだこれ?!」


窓がなければいけないその場所に、なぜか鉄板が打ち付けられていた。
壁も、何となくいつもと違うような気がする。


「…ここ、希望ヶ峰学園だよな…?」


自分で口にし、改めて周りを確認する。確かにそこは教室ではあったが、異様な雰囲気が漂っていた。
———なんというか、俺の知っている学園のはずなのに『違う場所に来てしまった』ような…。そんな感触がした。


「とりあえず、教室出てみるか…」


とにかく、まずはここがどこなのか確認しないと。意を決して教室の扉を開く。
教室の外にも誰もいなかった。…そして、そこで俺は確信することになった。




ここは『希望ヶ峰学園だ』という真実を……。




購買部の場所も、体育館の場所も、変なテープで塞がれているが保健室の場所も、シャッターが閉まっているが2階へと続く階段の場所も全く一緒だった。
ただ、変な赤い扉や『絶望ホテル』と書かれた置物と、それに続く道があったのは身に覚えがなかったのだが。


調べて回っていたおかげで大体の場所は把握できた。しかし、一つだけおかしなところがある。
それが———『人が全くいない』ということなのだ。
今の時間は12時前後のはず。教室から出る前に時計で確認したから間違ってはいないはずだ。
今の時間帯なら、購買部に出入りする人がいてもおかしくはないはずだ。


「玄関に出てみるか」


玄関ならだれかいるかもしれない。そう希望を持って、俺は玄関ホールへと足を踏み出した。


「あれ、あんたもここで目を覚ました口でありますか?」
「人がいた…!!」
「今来たにーちゃんで18人…。キリもよさそうだし、話し合いする?」



玄関ホールには17人の少年少女がいた。そして………俺をまじまじと見つめていた。

chapter00 〜アリエナイ日常、ありえない新生活〜 ( No.11 )
日時: 2014/05/19 20:07
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: TV0MM72m)

玄関ホールには、確かに俺ではない17人の少年少女がいた。
まさかこいつらも俺と同じくここで目を覚ましたのかな…。見たことのない奴らばかりだが、恐らくこいつらも『超高校級の肩書』を持った生徒に違いない。それだけはわかっていた。


「あんた、他に人間らしきものは見つけなかったか?」
「人間らしきって…。ここには人間以外いないだろうよ」
「他にも思い当るところは全部行ってみたんだけど、人がいないんだよな…」
「ってことは、今ここにいるのは私達だけってことですよね?」


ぼさぼさの黒い髪を纏めた小麦色の肌の少女と、おさげと巨乳が目につく少女が俺に話しかけてくる。


「あ、だったらあいたん達に名前教えてほしいなー。誰か分からないと何て呼べばいいか困るし…」


話を聞く限り、もう自己紹介は終わってしまったらしい。彼らについては…後で個別に話しかけたほうが良さそうだな。
とりあえず俺は自分の名前と肩書をみんなに話した。


「分かった。俺の名前は片桐昇。79期生の『幸運』として学校に入学してきたんだ」
「へぇ〜…。狛枝クンや苗木クンと一緒の肩書なんだ」
「体格的に運動系の能力だと思ったんだがなあ」
「俺そんなに筋肉あるほうじゃないんですけど…」


俺の肩書が『幸運』だということが意外らしく、数人がこそこそと話し始めた。運動系の能力って…。俺、あんまり運動得意じゃないんだけどなあ。
ま、まぁとりあえずみんなに話しかけてみようか。とりあえず左に群がっているグループから…。


俺は橙色の帽子を可愛らしくかぶりこなしたツインテールの少女のほうに顔を向けた。



「私は藍川夢光!昇クン、よろしくね〜!」



藍川夢光(アイカワ ユメミ)。
どんな旋律も美しく、そして落ち着きのあるような『生きている音』をトロンボーンで吹く『超高校級の演奏家』だったはずだ。
76期生で、同じく音楽系の能力で入学してきた『藍川寧』の姉らしい。…聞いたことはないけど、きっと物凄いきれいな音を響かせるんだろうな。


「あー、なんか『大したことない』って思ってるでしょ〜!!迷惑しちゃうな、もう〜!!」
「ち、違う…じゃなかった、そんなこと思ってませんって。きっとすごいんだなあと思っただけですよ」
「敬語ってなんか堅苦しくて嫌いなんだよね〜。私にはため口でいいからね!」
「で、でも…」
「た め ぐ ち !!」
「お、おう…」


…随分強引な人だな。
音楽家関係の能力だからもうちょっと大人しい人を想像してたんだけど、どうやらそうではないらしい。
賑やかになるのはいいと思うけど、うるさすぎるのはちょっとなあ…。
俺は藍川と軽く挨拶をした後、青いダボダボのパーカーを来た少女に近づいた。



「ボクの名前は春白鈴花。言っておくけどキミらとは仲良くする気はないよ」



春白鈴花(ハルシロ スズカ)。
幼い頃から絵を描くのが好きで、小学生の時に文化祭に使う衣装のデザインを公園で書いていたところ、有名なデザイナーの目に留まりそのままデザイナーデビューしてしまった逸話のある『超高校級のファッションデザイナー』だ。
今では衣装をデザインしてほしいと世界各国から予約待ちの状態らしい。彼女のデザインしたものは即完売するほどの人気なんだとか…。


「…いつまでそこにいるの?デザインの邪魔なんだけど」
「そんなこと言わなくていいじゃないか。せっかくの女の子なのに…」
「ふぅん、ボクを女の子だって見破ってくれるんだ。珍しいやつ。ま、興味はないけどね」
「そ、そうか…」


どうやら俺と仲良くする気はさらさらないようだな…。厄介な奴め。ただ、ここから脱出するためにはこいつとも協力していかなくちゃならないから、どうにかして仲良くなりたいもんだがな。
俺は春白がデザインの続きを始めたのに気を取り直して、黒の学ランが目を引く大柄の男子に近づいた。



「俺は寺阪龍之介だ!よろしく頼む、片桐!」



寺阪龍之介(テラサカ リュウノスケ)。
この学園にやってくる以前、彼の通っていた学校で応援団長を務めていたらしい。そこで、彼に応援されると『どんなことでもできそうになる』といわれている『超高校級の応援団』…だったよな。
彼の母校で応援された部活は、全国の大会で優勝したり、世界大会で好成績を収めているんだとか。応援の力ってすごいな。


「…にしても、一体ここはどこなんだ?」
「さぁ…。希望ヶ峰学園だってことは分かるんだけど…。ところどころ、違うところがあるように見えるんだ。とにかくここを脱出しないとだろ?」
「第一目標はそれだろうな。その為に出来ることなら俺に言ってくれ、『やれば必ずできる』んだからな!」
「頼りにしてるぜ」


体格的にも、性格的にも頼りになれそうなやつだと俺は感じた。
俺にも何か運動系の能力があれば、寺阪に応援してもらえることもあったのかな…。ちょっとだけ自分の能力を一瞬恨んだぞ。
俺は寺阪と別れた後、おさげで巨乳の美少女に近づいた。



「私、早緑詠って言います。片桐さん、よろしくお願いします」



早緑詠(サミドリ ヨミ)。
幼い頃から様々なチョコ菓子を作り上げてきており、その腕はプロも顔負けレベルの『超高校級のショコラティエ』。
味もそうだが、見た目のデザインが一番凄いんだとか。実際に見たことはないが、なんか飴細工みたいに難しいものも簡単に作っちまうんだろうか。


「片桐さんはチョコはお好きですか?」
「チョコ?人並みには食べるけど、あんまり甘すぎるのは得意じゃないなあ」
「うふふ、なら今度お手製のビターショコラでも如何ですか?甘さ控えめなので、甘いのが苦手な方でも美味しく頂けると思いますよ」
「本当か?なら、食べてみようかな…」
「はい!私、腕をふるっちゃいますね!」


なんというか『優しいお姉さん』的なイメージを植え付けられる。
こういう優しい人が学校にいるからこそ、クラスメイトはバランスが取れるんだよなあ。まぁ、それは置いといて。
超高校級のショコラティエが作るチョコか…。どんな味がするんだろう。少しだけ楽しみになってきた。

chapter00 〜アリエナイ日常、ありえない新生活〜 ( No.12 )
日時: 2014/05/20 19:39
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: RXugjDaQ)

俺は早緑とビターショコラを食べる約束をして、別れた。
次は右に群がっているグループに話しかけてみるか。そう思って、俺は青いジャージを着ているつんつん頭の男子の方に目を向けた。



「浅峰小太郎!!それが俺の名前だァーーーーーー!!!!」



浅峰小太郎(アサミネ コタロウ)。
彼にかかればどんなに運動音痴の生徒でも運動能力をつけてしまうというとんでもない逸話のある『超高校級の体育委員』だ。
彼自身の運動能力も非常に高く、どんなスポーツでもそつなくこなしてしまう才能を持っているんだってさ。
ここのグループは77期生のメンツみたいだな。


「片桐ッ!!お前は運動は好きか!!!」
「え?」
「えじゃねーーー!!!運動は好きか嫌いかって聞いてるんだァーーーーー!!!」
「え、あ、あの…す、好きです…」
「もっと大きい声で喋ろよ!!!」
「(面倒な奴だな)」


見た目から覚悟はしていたが、なんか凄い暑苦しい奴だな。これ以上かかわったら干からびてどうにかなるかもしれない…。そういや、神崎の知り合いにそんな感じの奴がいたな。まぁ、今はどうでもいいけど。
俺は浅峰がこちらに気付いていない隙を見計らって、羽の髪飾りをしている少女のほうに顔を向けた。



「あたしは夜長早美って言うのよ。覚えないとただじゃ置かないからね!!」



夜長早美(ヨナガ ハヤミ)。
なんと初出場の大会で「本当に初めて出場したのか?」と思うほどの演技力を発揮している『超高校級のバトントワリング選手』。
えっと、特に「コンタクトマテリアル」っていう、バトンを手や指で回転する動作が凄いって神谷が言ってた。


「なによ!自己紹介終わったんだから離れなさいよ!!」
「な、なんだよ急に…。ここに一緒に閉じ込められた中なんだし、普通に話そうぜ」
「ふ、ふん!!アンタなんかと友達になんてなりたくないんだから!!さっさとどっかに行ってちょうだい!!」
「(ツンデレのテンプレありがとうございます。)」


ツンデレが手足生やして歩き始めたほどの典型的なテンプレを見せてくれるな、こいつは。でも悪い奴じゃなさそうだし、一緒に過ごしていく中で仲良くなれたらいいんだけどな。…今の状態じゃ絶対無理そうだけど。
俺は夜長に挨拶をした後(もちろん華麗にスルーされた)、赤いマフラーを付けた着物の男子に顔を向けた。



「俺は鼎野一郎太。よろしく頼むぜ」



鼎野一郎太(カナエノ イチロウタ)。
今現在いるのかどうかすら俺には信じがたいが、こいつの肩書を見た瞬間歴史のど真ん中に吸い込まれたような感触を覚えた。
どうやら現在も民間の機関への潜入や悪徳政治家の暗殺まで、様々なことをしている任務成功率100%の『超高校級の忍者』らしい。
てか、忍者って現代まで受け継がれていたことにびっくりなんだが。



「…どうした、俺の顔に何かついてるか?」
「い、いやぁ。忍者って時代劇の存在だと思ってたからさ。実際に見るのは初めてなんだ」
「そうか?忍者って結構色んなところにいるんだぜ?基本隠密行動だから表に出ないだけでさ」
「そうなのか…。じゃあご近所さんも忍者だったり…」
「わりぃ、嘘だ」
「嘘かよ!!」


俺に対しても普通に話しかけてくれるし、時代劇の「ござる」口調の忍者のイメージが総じて崩れていった。少しだけ話をしてみると、どうやら鼎野は『下っ端体質』らしく、自分で物事を考えることを苦手としているらしい。…忍者だからか?
俺は鼎野の体質に疑問符を浮かべながら、お嬢様結びのオシャレな服装をした少女のほうに顔を向けた。



「月樹野ゆうです。よろしくお願いします」



月樹野ゆう(ツキキノ ユウ)。
沖縄にある有名老舗旅館「月桂樹」の55代目若女将であり、ある時期に経営難になった旅館を再び立ち上げたとニュースにもなった『超高校級の女将』だ。
旅館だけじゃなく、彼女のほうもテレビで取り上げられるほど有名なんだって。かくいう俺もテレビでなら彼女の顔を見たことはあった。実際に見るとこんな感じなのか。


「あ、あの!片桐さん、お腹とか空いてませんか?」
「うーん、目覚めたばかりだからあまり空いてないかもなぁ。というか、よく飯の話できるな」
「まだ左も右も分かりませんし、だったらご飯の話をしたほうがいいですよ。さっぱり系でしたら塩むすびでも…」
「夕方の時に話そう、それ。今はする話じゃないと思うんだ」


なんかおっとりしているな。でも、こんな感じの奴に限って中身がキレてたり凄い度胸を持っているんだよな。ま、旅館立て直したくらいなんだから度胸は俺よりもあるんだろうけどさ。
とりあえず、食事の心配はしなくてよさそうだ…。