二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter02 〜明日の登らない丘へ〜 ( No.159 )
- 日時: 2014/06/16 09:36
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: xBHsg906)
『希望ヶ峰学園 学園長がお知らせします。オマエラ、おはようございます。朝です。朝ですよー!今日もはりきっていきましょー!』
またいつものアナウンスだ。俺は気だるい体を無理やり起こし、目の前を見据える。
…ディムの殺害から、夜長が校則違反で処刑されるまで…。あれは夢だ。そう思いたかった。だけど…。
目の前に広がっているのは赤い壁。壁。壁。昨日まで俺が寝泊まりしている、不気味な自室そのものだった。
…それで俺は確信した。昨日起こった出来事が…全て『現実』だということを…。
後悔だけが俺の脳裏に残る。だが…ここで立ち止まっていたら、死んだ3人に顔向け出来ない。とにかく食堂に向かおう。
俺は迫りくる後悔を脳裏に抑え込み、食堂へと向かっていった。
「あっ、おはようございます片桐さん!昨日は…大丈夫でしたか…?」
「おはよう早緑。ちょっと気分は悪いけど、動かないわけにもいかないしな。そういうみんなは大丈夫なのか?」
「大丈夫…とは言えないけど、ディムにーちゃん達を失っちゃったんだ…。俺たちが、生き抜かないと」
「夜長さん、もう僕のこと起こしてくれないんだよね…。ちゃんと起きなきゃ駄目だよね」
食堂では、いつも通り早緑達早起きチームが俺を迎えてくれていた。だが、その顔はどこか辛辣そうにしている。そりゃそうか、昨日『人の死』というものに3回も巻き込まれているんだから…。
そんな話を続けているうちに、瑞哉と春白、七花を除く全員が食堂に揃う。
月樹野がいつも通り厨房から食事を持ってきて、長テーブルに用意する。
「お待たせしてすみません、朝食のご用意ができました」
「いつもお疲れ様だよ、ゆうちゃん!早く食べようよ!」
「藍川は切り替え早くて羨ましいよ…」
それぞれ、いつも座っている席に座る。
…すると、3つの新しく空いた席が目についた。藍川の席の隣、三神の席の隣、そして…早緑の席の隣。
そこは、紛れもなく昨日いなくなった仲間の席。
ディム、黄瀬、夜長の席だった。
「人…少なくなりましたね」
月樹野がふと、そう漏らす。テーブルにぽつぽつと空いた空席が、俺に『もうそいつらはいない』ということを伝えているようだった。
…そうだ、もういくら祈ってもあいつらは戻ってこないんだ。昨日、昨日俺達が…殺してしまったようなものだから…。
俺は静かに目を閉じて、昨日の学級裁判を思い出す。
学級裁判の議題は、『誰がディムを殺したのか』だった。
捜査、そして議論を重ねた結果、犯人は黄瀬だということが判明した。
彼女は自分を救ってくれた恩人の安否を確認したいがために、殺人を犯してしまった。そして…彼女は自分のトラウマを抉られるような思いで、炎の爆発に巻き込まれ死んでいった。
そして…それに耐えられなくなった夜長が、モノクマに暴力を振るって殺されてしまった。
その誰もが、モノクマの手によって踊らされていた。確かに殺人を犯した黄瀬にも非はあるが、その巨悪の根源は…モノクマなのだ。
殺人を強要された時は『学級裁判』なんてルールは説明されていなかった。そして、ディムが殺されてから説明が入った。
その時…黄瀬、どういう気持ちだったんだろう。
「…黄瀬だって、一時の『出たい』という感情で動いてしまったんだ。誰も責められないよ」
「それは…自分達も分かるぞ。だが、人を殺すなんて駄目だ!」
「分かってるよ。けどさ、俺達だって同類だろ?黄瀬は、結果的に俺達が殺したようなもんなんだから」
「片桐…」
とてつもない罪悪感に襲われる。あの時、黄瀬を犠牲にしなければ俺達はここに立っていない。
『自分達が黄瀬を殺した』そう考えてもおかしくない。
「…だからだ。もう殺し合いなんて起こしちゃ駄目だ。俺達が団結して、モノクマに立ち向かう。そして脱出方法を見つける。今は…それしか出来ないよ」
「瀬川の言うとおりだァァァァァァ!!!!」
「否、過去のことを悔やんでいても仕方がない。俺達は前を見据えて、今やれることをやらなくては!!」
「うん、あいたんもそう思ってたところだよ!死んじゃったみんなの分まで…生きなきゃ!」
「そうだな」
俺達は互いを見て、互いに頷く。
「…そうだ。いつまでも悔やんでいても仕方がないんだ。俺達には、まだやれることがある」
俺もみんなのほうを向いて、頷いた。
…そうだ、俺達は前を向いて…もう昨日のような恐ろしいことが起きないよう…。抵抗しなければならないのだ。
その為に、今は前を向いていよう。俺は、心の底にそんな思いを植え付けた。
- chapter02 〜明日の登らない丘へ〜 ( No.160 )
- 日時: 2014/06/15 16:41
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: GXllTEMy)
「…で、オマエラは何を糧にそんな絆なんか語り合っちゃってるの?」
不意に、テーブルから声が響いた。その正体は、俺達もよく知っている『アイツ』だった。
…本当どこにでも現れるんだな。
「呼ばれて飛び出てモノクーーーマーーー!!モノクマだよっ!!」
「急に現れないでよ!!びっくりするじゃん!!」
「だってー、オマエラなーんか雰囲気良くなっちゃってるからさ、邪魔したくなっちゃってさ」
「しなくても結構だ」
俺を含めた全員の目がモノクマを睨み付ける。
流石に全員に反抗的な態度を取られるとは思っていなかったらしく、モノクマはわざとらしく「しょぼーん」と落ち込んでしまった。
「オマエラ全員に睨み付けられるなんて僕悲しいよ〜。某大乱闘するゲームの2作目ならその隙を攻撃されて吹っ飛ばされちゃうよ〜」
「スマ○ラかよ!!」
「せっかく新しい情報をオマエラに教えてあげようと思ったのに…ボクもう帰ります」
「待って。新しい情報、って言ったよね?」
モノクマが発した「新しい情報」というフレーズに、波希が声を発する。
彼はそれが嬉しかったらしく、「うぷぷ」と笑みを漏らしこう言った。
「そうです。学級裁判を無事乗り越えたオマエラにご褒美を持ってきたのです」
「ご褒美…?」
「はい!!ではでは、発表しちゃいますよー。今回、困難を乗り越えたオマエラにご褒美として、新しい世界への進出を認めます!!」
「…つまり、どういうことだ?」
「わかんない?『2階へのシャッターを上げた』ってことだよ?」
「つまり…俺達は『2階へと行けるようになった』ってことでいいんだよな」
「そうそう、瀬川クンの言う通りです!」
学級裁判を乗り越えたから、『シャッターを上げて2階へと進出できるようにした』か…。あいつ、なにを考えてるんだよ。
まぁとにかく、こんなところから出られる可能性が広がったということに感謝はしたほうがいいんだろうな。
「探索に特に制限はありませんので、どうぞご自由に探索してみてください。それじゃ、まったね〜!!」
モノクマは笑顔で両手を大きく振り、テーブルから落ちて跡形もなくいくなくなった。
…あの戻り方は何とかならないのだろうか。いや、そういうことを考えている場合ではない。
学級裁判を乗り越えたご褒美に、2階へと行けるようになった。つまり、2階を探索して『それ以上の階への階段があって、それもシャッターで閉まっていた場合』また殺人が起きなければ先へ進めないというわけだ。
「上に行けるようになったんだよね!でも、なんで小分けにして出す必要があるんだろう?」
「モノクマさんは『学級裁判を乗り越えたご褒美』って言ってましたよね?もしかしなくても、私達に学級裁判を行ってほしいのでしょう」
「駄目だ!!あんな悲しい裁判、もう起こしちゃ…!!」
それぞれが、それぞれの感想を漏らす。
そんな中、前向きに小鳥が発言を返した。
「とりあえず、新しく行けるようになった場所を探索してみようぜ!何か新しい発見とか、運が良ければ出口らしきものも見当たるかもしれないし!」
「うじうじ考えているのは自分の性分に合わない。自分も小鳥に賛成だ!」
「あいたんも!」
鷹取と三神が小鳥の提案に賛成する。
…そうだな、今はそのことを考えている場合ではない。
「…で、どうする?今回もグループ分けする?」
「うーん…別にグループに分かれなくてもいいんじゃないかな?行けるようになったのは学校エリアの2階だし、それぞれ見つかったところを重点的に探すようにすればいいと思うよ」
「でも、単独行動は危険だ。なるべく複数人で行動することにしよう」
「りょうかーい!じゃあしゅっぱーつ!!」
藍川の威勢のいい掛け声を皮切りに、食堂にいたメンバーがぞろぞろとそこを後にする。
いつの間にか時間は経ち、そこに残っていたのは俺と早緑、瀬川だけだった。
「私達も行かなきゃ駄目ですね。早く行きましょう、片桐さん!」
「あ、あぁ。でも、七花達3人はどうする?あいつらにまでモノクマが情報を伝えてるとは思えないんだけど」
「だったら俺が連絡してくるよ。春白はともかく、瑞哉と七花なら協力してくれると思うしさ」
「分かった。それじゃ頼んだぜ、瀬川」
瀬川に3人への連絡を任せ、彼を見送る。
「2階も前の学園と変わってないのでしょうか…」
「行ってみればわかるさ。行こう、早緑」
「はい!」
俺達はお互いを見て頷き、食堂を出て新たな場所…2階へと向かって歩いて行った。