二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chapter02 〜明日の登らない丘へ〜 ( No.161 )
日時: 2014/06/16 18:28
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: A23NMJNa)

———微かな期待を持って2階に上がったはいいものの、すぐにその期待は崩れていくことになった。
階段を上って2階へ行ってみると、そこには1階と同じように不気味な壁だけが広がっていた。そうか、ここもモノクマが改造してしまっていたのか…。
現実を知り、俺は落胆する。そんな俺を見て、早緑は心配そうにこちらに顔を近づけた。


「片桐さん?大丈夫ですか…?」
「あ、あぁ!大丈夫さ、微かな期待をもあいつは砕いてくれて、ちょっと落胆してただけだ。覚悟はしてたんだけどな…」
「えぇ。この階に、何か脱出出来る方法があればいいんですけどね…。片っ端から部屋を調べてみますか?」
「時間もあるし、そうしようかな。近いところから順に調べていこう」


とりあえず近い場所から順に調べていくことにした俺達は、碇のマークがついてある扉の前へと近づき、入ってみた。


「あっ、片桐に早緑!遅かったな」
「寺阪に鷹取、それから浅峰か。ここはどんな場所だったんだ?」
「見てわからないのかッ!!!ここは、プールだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「体感温度が上がっててプールだとは気付きませんでした…。しかしこの場所といい、更衣室のような場所で間違いなさそうですね」


3人の話を聞いてみると、ここはどうやら『プールに繋がる更衣室』のような場所らしい。俺達が入ってきた部屋には、青い扉とピンクの扉2つがあり、それぞれ男子と女子の更衣室となっている。そして、そこを潜り抜けるとプールが広がっているみたいだな。


「それと、一つ伝えてほしいとモノクマに言われたことがある」
「モノクマに?」
「うむ。それぞれの更衣室に入る際は、『各自の生徒手帳をかざす』ことで入ることが出来るらしいんだ。だから、違う性別の更衣室には入れないようになっているそうだぞ」
「しかし、『他人の生徒手帳で入る』ことは出来ますよね?例えば、私の生徒手帳を使って片桐さんが女子更衣室に入ったり…」
「…片桐はそういう趣味があるのか…?」
「変な勘違いを起こす言葉遣いはやめてくれ!!」


…早緑が変な言葉を言ったせいで、鷹取に妙な目つきで見られてしまった。そ、そうだよな、あいつも女の子…って何考えてんだ俺。
そんなことを話していると、不意に3人の後ろに見覚えのあるぬいぐるみがひょっこり姿を現す。


「………しませんよ」
「ん?何か声がしないか?」
「許しませんよ!!そんなハレンチなこと!!!」
「ぐわああああああああああああ?!?!」
「驚きすぎだろ!!でもお前も前触れもなく出てくるなよ!!」
「えへへ、オマエラを驚かせようと思ってね!許してね、てへりん☆」
「…正直気持ち悪いですよ…」
「ひっど〜い!!」


急に現れては早緑の悪意のない毒に落ち込むモノクマ。本当に何がしたいんだこいつ。


「…で、さっきの話に戻るけどさ。そんな破廉恥なことは許しません!!男女の関係は健全に行かないとね!」
「さっきの会話聞いてたのか?!」
「あったりまえじゃ〜ん。ボクを誰だと思ってるの?この学園の学園長なんだよ?オマエラが何を話しているのかは、その監視カメラで筒抜けなのです!!」
「…それで、お前はどう動くんだよ?」
「そんな不健全な行動を諌めるために、校則を一つ追加させていただこうと思いまーす!!それはね?


 『電子生徒手帳の他人への貸与を禁止します』という校則でーす!!」


…つまり、そのモノクマがいう『不健全』に対応するために、電子生徒手帳の貸与を禁止するって校則が追加されるのか。
まぁそんなこと考える奴なんかいないだろうし、自分のがあるからこの校則自体は意味のないことなのかもしれないが…。


「ふーん、貸すことは駄目なんですね」
「…うぷぷぷ、そうだよ。貸すことは禁止するよ。これでオマエラも健全な学園生活を送れるね!某風紀委員の熱血クンも大喜びだね!!」
「…ごめんなさい、余計なひと言で校則を追加させてしまって…」
「まぁ、喋っちゃったもんは仕方ないさ。破らないように守っていけばいいだろ」
「そうだぞ!自分も他人の生徒手帳を使う気もないしな!」
「気にするなよ!」
「気にしたらキリがないぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「お前はとりあえず黙っとけ浅峰」
「うぷぷぷ、青春だね〜。それじゃ捜索がんばってください!!まったね〜!!」


モノクマは俺達の会話に満足そうに笑うと、物凄いスピードでその場を去ってしまった。
…俺達もそろそろおいとまするとするか。


「それじゃ、俺達他の場所も回ってみるよ。じゃあ食堂でな」
「ああ、探索がんばれよ!」


3人に見送られながら、俺達も更衣室を後にした。

chapter02 〜明日の登らない丘へ〜 ( No.162 )
日時: 2014/06/16 20:57
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: JZOkdH3f)

次に俺達は「2-A」と書かれている教室に入ることにした。
ええと、今は80期生が1年生のはずだから…俺達が使っていた教室にあたるな。とりあえず、俺達は扉を開けて中に入る。


「昇クン!こっちに来てたんだねー!」
「あ、早緑ねーちゃんも一緒だー!!よーっす!!」
「藍川、小鳥。ここには何かあったか?」
「何もないんだよな…。1階の教室とほとんど同じ。教室の妙な落書きだけだよ」


そう言いながら、小鳥は呆れつつ黒板のほうを指さす。黒板には、モノクマの可愛らしい落書きと「ボクはモノクマ」というセリフが書かれてある。普通の学園生活なら可愛らしい悪戯だなとは思うが、今はあいつが用意したとしか思えずどこか不安がよぎっていた。


「もしかしたら何か大事なものとかあるかもしれないから、私達はもうちょっとここを探索していくよ。昇クン達はどうするの?」
「私達は色々2階を見て回るつもりですよ」
「あ、それなら一回図書室に行ってみるといいと思うぞ!すごい本の量で圧倒されるはずだから」
「丁度俺達も行こうと思っていたんだ。ありがとな」
「それじゃ、お互い頑張ろうねー!!」


藍川と小鳥が元気よく手を振るのに反応し、俺達は図書室へと向かった。


———教室からしばらく進んでいくと、「図書室」の立札が目に入ってくる。スペース的にかなり歩いただろうから、かなり広い部屋なんだろうな…。
圧倒的な広さを想像しながら、俺は図書室の扉を開いてみる。


「…あ、片桐君。それに早緑さんまで」
「想像していたよりすっごい量の本だな…。暇潰しと言っても過言じゃないよ」
「ああ、様々なジャンルの本が並んでいる。もしかしたら片桐の趣味に合う本もあるのかもな」
「瀬川!3人には連絡してくれたのか?」
「あぁ。春白は書庫にいるし、残りの2人も自分なりに探索を続けてるよ」


俺達が入ってきたのに気付いたのか、瀬川がこちらに近づいてくる。3人にはすでに連絡が回っていたようで、3人ともそれぞれに探索を続けているようだ。
…それにしても圧倒的な本の量だな。思わず目が点になる。


「すごい本の量ですね…。ショコラの本とかもあるかもしれません」
「パズルゲームの攻略本は流石になかったよー。ちぇっ」
「あからさまに残念がるなよ…。ん?あれは何だ?」


話を続けていると、ふと低い本棚の上に1枚の手紙が乗ってあるのに気がついた。
思わず手に取ろうとすると、瀬川が先に取って後ろに隠してしまう。


「何するんだよ!」
「あんたには関係ないだろ?ここには大したこと書いてないから」
「無造作に置いてあったものを見て何が悪いんだよ…」
「ふぅん、そんな大したことないものを見たがろうとするんだね、キミは」
「春白!」


ふと声がしたかと思うと、扉の向こうから春白がやって来た。相変わらず、俺達を見下す目だ…。
彼女は瀬川の隠した手紙を見ると、半ば呆れたように俺に言ってのけた。


「ここの図書室に重要そうな情報はなかったよ。けど…ボクはここにしばらくいようかねえ」
「お前にとっていい情報でも手に入ったのか?」
「いいや?ボクの暇つぶしの場所が見つかったと喜んでるだけさ」
「パズルゲームの本がない時点で僕にはお察しだよ…」
「あの、瀬川さん。本当に見せてもらえないのですか?その手紙」


自慢げに書庫へと戻っていく春白をよそに、早緑がそう聞く。彼は一瞬顔を歪めたが、すぐにお得意のポーカーフェイスを取り戻し首を振った。
どうやら意地でも見せてくれないらしいな。


「…何か学園に関する情報だと思ったんだけどなあ」
「本当に大したことないから。…『話すべき時が来れば』話すよ」
「…何か言いましたか?」
「いんや、何も。ほら、他の部屋調べるんだろ?早くしないと日が暮れちゃうよ」
「僕、部屋で寝てくるよー…。本の羅列で眠くなってきちゃった…」
「波希さんは相変わらずですね…」


———返答する時の瀬川、妙に雰囲気変わっていたような気がするが…気のせいか。
俺はゆらゆらと自室へ戻っていく波希を見送り、図書室を後にした。


「…さて、後は向こうの教室ですが…。A組の教室と同じく、何もないのかもしれませんね」
「でも誰かしら探索している可能性もある。行ってみようぜ」


早く行こうと急かすと、不意に早緑はくすくす笑い始める。


「何がおかしいんだよ」
「片桐さん。…私のこと、信じていてくださいね」
「…え?そんなこと言わなくても信じてるよ。殺し合いは起こさせないって。早緑だってそうだろ?」
「うふふ、ちょっと確かめてみただけですよ。片桐さんは優しいんですね」
「…んなこたねえし!さっさと2階の探索終わらせようぜ」


———なんだよ、早緑の奴。調子狂うなあ。
…だけど、悪い気はしなかったのは…ここだけの秘密、な。

chapter02 〜明日の登らない丘へ〜 ( No.163 )
日時: 2014/06/17 18:25
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: Qv./XS1Y)

…そんなこんなで俺達は2階の残りの教室にやって来た。予想通り、扉の上には『2-B』と書かれている。
多分何もないんだろうなと期待せずに扉を開いてみると…。


「…どうも」
「あ、片桐君に早緑さんじゃん!やっほー!」


七花と三神がいた。珍しい組み合わせだな。彼らに話を聞いてみるも、重要そうな情報は得られなかった。
やっぱりここにも何もなかったんだな…。黒板にも無造作に書かれたモノクマの落書きがあるだけだ。


「何もないって落胆してる顔。期待通りです」
「あー、あんた絶対あたし達のこと信じてないでしょー。あたし達だって頑張ってるんだからねー?」
「一緒くたにしないでくれないかな」
「ひっどーい!!あいたんと一緒に行動できて嬉しくないのーー?!」
「ま、まぁまぁ落ち着けって…」


暫く彼らの話を聞いていると、七花の対応に不満げなのか三神が突っかかり始めた。…この2人、かなり相性悪そうだぞ…。
隣ではその様子を見て早緑がくすくす笑っている。…何がおかしいんだ?


「あ、そういえば…。1階の寄宿舎にも新しく行けるようになった場所があるそうだよ。ついさっき鼎野君が教えに来てくれました」
「『それでは、ドロンいたす!』とか妙にノリノリだったよねー」
「さすが、忍者ですね…」


こんなところで忍術披露しなくてもいいだろうに…。俺は鼎野の忍術に半ば呆れつつ、はいはいと返答をした。
———寄宿舎にも新しく行けるようになっている場所があるのか。後で行ってみないとな…。
俺達は三神と七花に一声かけ、教室を後にした。


「次は寄宿舎に行くんですよね?」
「あぁ。どこが新しく行けるようになったか知りたいしな。早緑も来るか?」
「もちろん。一緒に脱出口を目指しましょうね!」


そう言って早緑は笑う。作り笑いなのか本当の笑みなのかは知らないが、俺は彼女の笑顔を見て少しだけ気が楽になる気がした。
———この笑顔を、もう悲しみに染めてはいけないんだ。だから…俺は頑張らなきゃダメなんだ。
自分にそう言い聞かせ、足早に寄宿舎へと向かった。






———で、寄宿舎にやって来たはいいものの…。一体どこに行けるようになったんだ…?
辺りを見回していると、ふと早緑が声を漏らす。


「…あそこ、テーピングが外れてますよ!」
「のれんがかけられてるみたいだが…。銭湯か何かか?」
「行ってみましょう!」


彼女が目を向けた先には、藍色ののれんがかけてある扉が見えた。確か、そこは最初に調べた時には『KEEP OUT』のテーピングがあり入れなかったはずだ。
…これも、学級裁判を乗り越えたご褒美ってことなのか…?複雑な気持ちを抱え、俺はのれんの向こうへと行ってみる。


「片桐君、早緑さん!ご無沙汰してますね」
「さっき別れたばかりだろ…。ここは風呂場のようだけど、やっぱりそうなのか?」
「おう。月樹野の姉御と隅々まで調べたけど、どこからどう見ても大浴場みたいだ。向こうに男と女が裏表になってる掛札を見つけたから、混浴じゃないみたいだな」
「シャワーだけでは物足りなかったんですよ…。これは助かりますね!」
「えぇ、女の子を集めて一緒にお話でもしながら入りたいですよね」
「…片桐の旦那。覗くこと考えてたらきっと殺されますぜ。某熱血体育委員に」
「んなことするかよ!!」


鼎野の野郎、あくどい顔してとんでもない提案してきやがった。そんな顔も知らず、月樹野と早緑はやんややんやと女子会ムードで会話が進んでいる。…ほ、本当に覗かないぞ?!
———あいつ、次変なこと企んで来たら大声で「ヘンターイ!!」って叫んでやる…。


「行けるようになったのはこの大浴場だけですか?」
「いいえ、私達の個室の手前の奥にある倉庫も解放されたみたいです。瑞哉さんが向っているはずですよ」
「ひ、一人でか?」
「あぁ。俺達も誘ったんだけど、見事に断られちゃってな…。でも、倉庫だから沢山の日用品や保存食が揃ってたぜ。暇潰しになりそうなものもありそうかもな」


倉庫、か…。あの道、あまり通らないから扉があるのに気付かなかった。行ってみてもいいかもな。


「行ってみるよ。ありがとな、2人とも」
「私達は先に食堂に戻って軽食の準備をしていますね」
「分かりました。軽食楽しみにしてますね!」


俺達は月樹野達と別れ、倉庫へと向かって歩いて行った。
倉庫への道を進んでいると、確かに黒い縁取りの扉が目につく。そうか、これが倉庫なのか…。
意を決して扉を開けてみると、そこには情報通り沢山の物と…。


「…………」


瑞哉がいた。瑞哉は隅っこで何か作業をしている。
…話しかけたほうがいいのか?これ…。不安に思いつつも瑞哉に話しかける。


「瑞哉?何やってるんだ?」
「……霊媒。何か察知できないか調べてる」
「そうか、もしかしたらここに住み着いた霊とかから話を伺えるかもしれませんしね!」
「…………(ギリィ)」
「え?私何か悪いことしたでしょうか…」


早緑が彼女に話しかけると、彼女の顔は不機嫌そうにしわが寄り、彼女を睨み付ける。
…どうやら早緑のことを相当警戒して嫌っているようだな…。当の睨まれた彼女は何のことか分からずしどろもどろしていた。


「……お兄以外の人、嫌い」
「ここから脱出したらその『お兄』にも会えると思うぜ?だから睨むなって」
「……お兄は死んだ。お兄はいない…」
「死んでるのか?」
「……お団子、悪い大人と同じ感じ。嫌い」
「そ、そんな!私はただ瑞哉さんと仲良くなりたいだけなのに!」


———これ、切り上げないと延々と続けそうだぞ…。
俺は睨み付ける瑞哉をなんとか宥めさせ、食堂へ行くように諭した。


「……アンテナ、気を付けて。お団子、悪い人」
「…どういうことだ?」


彼女が聞いていない隙を狙い、瑞哉が俺にそう呟く。…一体なんなんだろう?


「私達も戻りましょうか。そろそろ皆さんも戻ってきてるかもしれませんし」
「あぁ、待たせたら悪いしな。戻ろう」


…きっと、気のせいだよな?早緑が何か暗い過去を抱えてるとか…。瑞哉と早緑、仲良くなってくれればいいんだが。
俺はそう思いながら、食堂へと戻った。