二次創作小説(映像)※倉庫ログ

chapter02 〜明日の登らない丘へ〜 ( No.189 )
日時: 2014/06/21 21:36
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 5YaOdPeQ)

次の日も何も起きずに朝食会は終わった。……こう平和な日が何日も続いて、モノクマもコロシアイを諦めてくれればいいのだが、そうもいかない。
あいつはそういう奴じゃない。何年だって、何十年だって俺達を待つはずだ。
———こんなことを思っていても仕方がない。気分転換にどこかに行ってみようかな、と思ったその時、俺の扉が勢いよく開いた。


「片桐ィィィィィッィ!!!今からプールで泳ぎに行くぞぉぉぉぉぉぉ!!!」
「はぁ?!急にどうした、それにうるさい」
「お前は今日暇だと俺のカンが騒いだんだよっ!!いいから行くぞぉぉぉぉぉ!!」
「うわっ?!確かに暇だけど……って引っ張るなよ!!!」


俺の返事も待たず、浅峰は俺の首根っこをつかみプールまで直行してしまった。
……あいつの力が意外にも強く(体育委員だから当たり前か)、息切れを引き起こしそうになったのは黙っておこう。




「ここだっ!!」
「おー、だれかと思えば片桐か。お前さんも泳ぎに来たのか?」
「浅峰に無理やり連れてこられてな…」
「はっはっは、そりゃあ大変だったなぁ。ま、せっかくだし泳いで行けよ。鷹取もプールにいるだろうし」
「お前らよく一緒にいるよな。気が合うのか?」
「気が合うんじゃないっ!!互いの魅力に惹かれあうんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「そ、そうなのか…」


更衣室には、すでに水着姿になった寺阪がいた。話を聞いてみると、どうやら鷹取も一緒に来て、既にプールで泳ぎ始めているらしい。…仲、いいんだな。
どうやら水着はモノクマが様々なサイズのものを用意してくれていたらしい。…スクール水着だったけど。物凄く趣味悪かったけど。
渋々それに着替え、プールへと行ってみる。そこには…………。




バシャバシャバシャバシャ!!!




「…なんて泳ぎ方してるんだよ?!」
「んー?誰かほかに来たのかー?片桐かー?」


……鷹取が足を上にして泳いでいた。シンクロナイズドスイミングでも出来るんじゃないかというほどのバランス感覚だ。
どうやら彼女曰く『大きな魚を得るための秘術』だというが…。なぜそれをここで発揮する。
しばらく呆れていると、水着に着替えた浅峰と寺阪がプールにやってきた。


「……俺、泳げないわけじゃないけど泳ぐの苦手なんだよなぁ」
「何ぃ?!だとしたら死活問題だっ!!俺が泳げるようになるまで指導してやるっ!!!腹を括れ片桐ィィィィィィィィィィ!!!!」
「はぁーーーーーー?!」


…半ば無理やり水に落とされ、浅峰によるきっつーいきっつーいご指導が始まると思っていた。
だけど…あいつの教え方は妙に上手く、それほどきつく感じなかった。むしろ、彼に教えを乞うほど疲れが吹き飛び、自分でも早く泳げるような気がした。


———そんなこんなで、1時間くらい経ったのかな。泳ぎに自信のなかった俺は、しっかりと水を掻いて泳げるようになっていた。
これが『超高校級の体育委員』のなせる技なのか…?


「…凄い、本当に泳げるようになった!!ありがとう、浅峰!!」
「あ、ありが……え?」
「どうした?」
「い、いや…。そういう風にお礼を言われるのは初めてだったもんでな…。狼狽えてしまっただけだッ」
「……ん?お前、学園生活で他の人に運動を教えたりしなかったのか?」


ふと、浅峰の顔から暑さが消えたと感じる。何かあったのかな…。
すかさず彼にそのことを聞いてみる。すると、彼は覇気のない声でこう話し始めた。


「…俺は、自分でもこの性格で貫き通していいのかと悩むことがある。そのせいで中学生でも、人から避けられ続けてきたからな」
「(まぁ、あの熱血じゃ近寄りにくいよな…)」
「…そのおかげか、俺はずっと一人だった。希望ヶ峰学園に入ってもそれは変わらない。そう、自分に言い聞かせてた。
 自分の発言で回りが引き、俺は孤独になっていったんだからな…」
「…………」
「そんな俺にも、ちゃんと声をかけてくれた奴がいた。それが…俺の一年先輩、『超高校級の放送委員』として活動していた『松崎紫水』という奴だった。
 あいつは俺の性格にも引かないで、ちゃんと真摯に受け止めてくれていた。『それがおマエの魅力なら、引く必要ないだろ』とな…。それから、俺は自分を貫くことにした。

 『こんな俺でも、分かってくれる奴がいる』それが、分かったからな」


…浅峰…。あいつ、自分の性格をちゃんとわかっていたんだな。それが変えることのできないものだってことも…。
浅峰は浅峰でいいんだよ。俺だってそう思う、変わる必要なんかないのさ。変わってしまったら…きっと自分が自分でなくなってしまうから。


「その先輩の言葉、俺も分かるよ。浅峰がどんな奴だってさ、今のお前が浅峰なんだろ?だから、浅峰は浅峰のままでいい。そのまっすぐなほどの暑苦しさが、お前の魅力なんだからさ」
「片桐…。お前、なんだか松崎先輩に似ているなっ」
「えっ えぇ?!」


なんかそんなことを言われてしまった。だけど…少しだけ浅峰の内面が分かった気がする。
あいつもあいつなりに苦労してるんだな。……浅峰の暑苦しさを貫く理由が、俺も少しだけ分かったような気がした。


———その後、さっきと同じようにプールを泳いでいた鷹取が床に頭をぶつけてしまい、浅峰の指導は終わってしまったんだけどな…。