二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- chapter00 〜アリエナイ日常、ありえない新生活〜 ( No.31 )
- 日時: 2014/05/23 23:20
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: EE/vzbC4)
「そういや、片桐先輩はどうやってここまで来たでありますか?」
黄瀬が発した一言で、俺ははっと我に返った。
どうやってここまで来たか?そんなの…決まってるじゃないか。
「教室で過ごしていたら、急に眩暈がしたんだよ。で、次に目を覚ましたらあの教室で机にうつ伏せになっていたんだ」
「えっ?!私も同じなんだけど!!」
藍川が驚いた顔で俺を見る。
すると、各々が俺も私もといい始めた。みんなが同じ状況、いったいどういうことなんだ…?
「ここにいる全員が揃って気を失って、あの教室で目覚めた…。そもそもここは希望ヶ峰学園なのか?」
「教室の場所もその他の場所も同じッ!!!明らかに希望ヶ峰学園だろうがああああああ!!!!」
「浅峰クン、うるさい。黙れ」
「そういう『スケッチブック』は他人にもっと興味を持ったほうがいいと思うよ?」
「変な外国人に言われたくないね。それに何そのあだ名?センスがないのも程があるでしょ」
「ちょっと!言い過ぎですよ!」
全員が俺と同じことを経験している…?何か、おかしい。
考えていると、不意に七花が声を荒げる。
「あれ…?僕のスマホがない」
「え?!そういえば…私のトロンボーンもない!!どこいっちゃったんだろ…!!」
「鞄とかの中に入ってないの?」
「カバンがそっくりそのままなくなっていたの!!あぁどうしよう、トロンボーンないと私落ち着かないのにーー!!」
「そういえば、手持ちのパズルゲーム以外が入ってるケースもどっかに消えちゃった…」
「なぁ、みんなのカバンや持ち物もそうなのか?」
「どうやらそうみたいだ。人形が入った鞄も、裁縫セットもしっかり無くなってやがる」
そういえば、と俺も起きた状況を思い出す。
確かに、周りには何もなかった。鞄も綺麗さっぱりなくなっていた。
「それにしても、ここが希望ヶ峰学園だとしたら、この変な扉はなんなわけ?重厚過ぎて学園とは思えないんだけど」
「だから!!ここは学園ではなく密林のジャングルなんだろ?!」
「黙ってろ単細胞」
「誰かの犯罪に巻き込まれちゃったかもー?あいたんこわーい♪」
「んなわけねえだろおお!!!きっと学園が用意したイベントだって俺のカンが騒いでるぜえええええ!!!!」
「だから煩い黙れ」
「ねみぃ〜…」
「もう、喧嘩はいい加減にしろよ!!」
小鳥が喧嘩をおさめようと動いた、まさにその時だった。
ピーンポーンパーンポーン…
『あーっ、あーっ、マイクテスッ、マイクテスッ!!』
「な、なんだぁ?!」
俺は突然なったチャイムに周囲を見渡す。
すると、不自然に壁に貼り付けられたモニターが光っているのが分かった。見てみると…。
影になって姿は見えないが、動物のようなシルエットが映っているのが分かった。おそらく声もそこから流れているのだろう。
それは場違いなほど、能天気な声…。
俺はその声に強烈な不快感を抱いていた。
『大丈夫?聞こえてるよね?えーっ、ではでは……
えー、新入生の皆さん。今から、開会式を執り行いたいと思いますので、支給体育館までお集まりください。体育館の場所は分かるよね?書いてあるからね!ちゃんと間違えずにくるように!』
ぷつり。
音声が切れた。
みんなを見てみると、そこにいる誰もが困惑した面立ちだった。
「……何。今の声」
「体育館に集まれ、って言ってたみたいですね」
「どうする?行ってみる?罠かもしれないけど…」
「行ってみるしかないであります!不思議な出会いが私達を待っているでありますよー♪」
「なんでお前はそう能天気なんだよ…」
一部の面子はバラバラに体育館へと足取りを進めていく。
…俺はというと、さっきの放送の声を気にしていた。声からの『嫌な予感』が未だに頭から離れないのだ。
実は本当に学園側のドッキリで、体育館に入ったら種明かしをしてくれる、なんてオチも考えてみたが…。どうも違和感だけが残る。
でも、そう考えていたのは俺だけではなかったらしい。
「本当に大丈夫なのか?」
「校内放送だってどっかおかしいし、なーんか怪しいよな…」
瀬川、小鳥、ディム、夜長、早緑、寺阪、瑞哉、月樹野、そして俺がその場に残っていた。
「…でもさ、ここで待ってたってなにも変わらないよ。行ってみたほうがいいとは俺も思う」
「そうだな…」
確かにそうだ。
体育館にどんな危険が待っているのかは分からないけど、行ってみなければその危険の正体も分からない。
手掛かりのない今は…。進むしかない。
「…行くぞ」
俺達は勇気を振り絞って、体育館への一歩を踏み出す。
それぞれの顔を見てみると、みんな不安らしく、あの放送から沈黙を保っている。
でも、それも無理はないと思う。逆にあんな放送を聞かされた後で平穏を保っていられるほうがおかしい。
俺は胸に残った不安と違和感を奥にしまい込み、体育館まで歩き出した。
- chapter00 〜アリエナイ日常、ありえない新生活〜 ( No.32 )
- 日時: 2014/05/24 18:02
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: WpG52xf4)
意を決して体育館に入ってきたが…。いつも体育の時間に使っている、何の変哲もない普通の体育館だった。
だだっ広い空間の中に、俺達18人はいた。少人数だからなのか、その広さがやけに広く感じる。
「なんだろうねぇ?誰もいないねぇ」
「誰かの悪戯だったんじゃないの?」
「そんなことないですよ。まったく、放送した主はいつでてくるのでしょうか…」
待ちくたびれた早緑がそう呟いた、その時だった。
俺達が「普通じゃない」光景を目の当たりにすることとなるのは…
「お〜い、全員集まったー?それじゃあ、そろそろ始めよっか!!」
どこからともなく声が、先ほどの校内放送の時のものが聞こえたかと思うと、『ソレ』はいきなり現れた。
白と黒のカラーリングで、身体の半分を分けている。白いほうは可愛らしいクマだったが、黒いほうは赤い目に牙を向けた口と、恐ろしさを助長させるようなデザインだった。
「なにこれ?!ぬいぐるみだぁ〜♪」
「ヌイグルミじゃないよ、ボクはモノクマだよ!希望ヶ峰学園の、学園長なのです!」
「学園長?」
思わずその訳の分からない物体に釘付けになる。
ただ、良い印象を持つことはなかったが。
「ヨロシクね!!」
場違いなほど明るい声。
場違いなほど能天気な振る舞い。
間違いない、先ほどの声の主はこいつだろう。
俺達の抱いていた不安と違和感はいつの間にか、底知れない恐怖へと変わっていた。
…一部を除いては。
「かわいい〜!!あいたんのペットにならない〜?」
「ダメでありますよ、喋るヌイグルミなんて珍しいであります!私がお持ち帰りするであります!!」
三神がかわいいかわいいとはしゃいでモノクマの前で飛び跳ねている。その後ろで、まじまじと黄瀬が三神の隙を狙っている。
おい、こいつの正体が分からないのに動いて大丈夫かよ…。
「ヌイグルミが喋る?うーん…ぴよぴよにもそんな感じのキャラクターいたなぁ」
「熊ならばきっと強いんだろうな!!自分と勝負しろ!!」
波希と鷹取もモノクマについての感想を漏らす。
俺は一瞬どうすればいいのか分からなくなった。
「だからさぁ、ヌイグルミじゃなくてモノクマなんですけど!しかも、学園長なんですけど!」
「どうせ操り糸がついてるんだろ?見せてみろ、切ってやるから」
「ラジコンかなんかで動いてるんじゃないのー?」
「自動で動く機械が中に入ってたりして」
「だから操り人形でもラジコンでも中に機械も入ってないの!ボクはモノクマなの!」
「……動いてる熊 汚らわしい……」
「ねぇねぇ、解体すればいいんじゃないの?ぬいぐるみなら夏樹君辺りが詳しそうだし」
「人形を壊すとかあんた正気か?」
俺は何も言えずに、ただその光景を見ているだけだった。
あいつはこの希望ヶ峰学園の学園長だと言っていた。でも、仮にこれが何かのイベントだというのなら、おふざけも大概だ。
「あのさぁ、ボクにはNASAも真っ青の遠隔操作システムが搭載されてて!って、夢をデストロイさせるような発言をさせないで欲しいクマー!!」
「ありきたりすぎて面白みに欠ける。もっと面白い語尾を言ってくれ」
「突っ込むところそこ?!」
「じゃあ、進行も押してるんで、さっさと始めちゃうクマ。みんな整列するクマ」
「なんかクマクマ言い出したぞこいつ」
「ご静粛にご静粛に。えー、ではでは…」
「…諦めたな」
「起立、礼!オマエラ、おはようございます!」
「「おはようございます(ッ)!!」」
「挨拶してどうすんのよ!!」
元気にあいさつをする小鳥と浅峰に、思わず夜長が突っ込む。
あいさつする状況か?これ…。
「まぁまぁ落ち着いて。では、これより記念すべき『異学年交流会』の開会式を執り行いたいと思います!まず最初に、これから始まるオマエラに、異学年交流会について一言。
えー、オマエラのような才能あふれる高校生は、"世界の希望"に他なりません!そんなすばらしい希望をもっと高めてもらうために、オマエラには『この学園だけ』で、共同生活を送ってもらいます!みんな仲良く秩序を守って暮らすようにね!」
「…は?」
「え〜、そしてですね…その共同生活の期限についてなんですが」
何を言われたのかさっぱり理解できない俺達に、モノクマは言い放った。
「期限は……ありませ〜ん!!つまり、オマエラは一生ここで暮らすのです!」
期限は、ない?一生ここで暮らす?
俺のいやな予感は、現実味を増してしまったような気がした。