二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.352 )
日時: 2014/08/25 19:05
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: XVANaOes)

『希望ヶ峰学園 学園長がお知らせします。オマエラ、おはようございます。朝です。朝ですよー!今日もはりきっていきましょー!』




「もう、朝なのか…?」


最早聞きなれてしまったアナウンス。それと同時に自然に目が覚める俺の身体。もう…この生活にも『慣れてしまった』 ———痛感するな。こうして同じ場所で眠り、起きることを繰り返していると…。
今まで何人が殺され、何人が死んでいっただろうか。そいつらをどうにかして守ってやれなかったのだろうか。結局は———誰も止めることができずに、俺も死んでいくのではないだろうか。
3度の学級裁判を経験し、俺の心は既に疲れ果てていた。……が。


「……みんなが待っているんだ。行かないと———」


そうだ。まだ俺一人になったわけじゃない。これ以上犠牲を減らさないためにも、俺達全員で協力して、ここから脱出しなければならないのだ。ここで『疲れ果てた』と諦めてはならないのだ。
迫りくる後悔の念を心の奥底に抑え込み、俺は素早く支度を済ませ食堂へと向かっていった。





「おはよう、片桐君!…随分顔色悪いんだね、まぁ昨日あんなことがあったからね…」
「あ、あぁ…。まだちょっと気分が悪いみたいだ」
「顔色が悪くても、片桐がこうやってちゃんと食堂に顔を出してくれただけでも自分は安心したぞ。もう誰も欠けてほしくないしな」
「『頑張れば何とかなる』、俺は今でもそう思っている。今までの殺人が止められなかったのは、全て俺達の頑張りが足りなかったからだっ!絶対に…絶対に、悲しい裁判なんか起こさせやしないぞ!」
「みんながみんな寺坂の旦那みたいに立ち直ることは出来ないっての。だけど———無理矢理でもそう思わないと、もうこれからはやっていけないからな」
「片桐さん、絶対に無理はしないでくださいね。私…顔色が悪いあなたを見て、心配したんですから…」


食堂には、瀬川と瑞哉、春白を除いた全員が俺を待っていてくれた。早緑に至っては目に涙を浮かべ、俺が来たのに安心したのか「大丈夫ですか?」「手は暖かいですね、ちゃんと生きてますね!」とかわけのわからないことを言ってくる。心配してくれるのは嬉しいが、ちょっと大げさすぎやしないかなぁ…?
瀬川はどうしたのかと聞くと、今日は彼が朝食を作っているため現在厨房にいるらしい。瑞哉と春白は相変わらず、みたいだが…。
そんな話を続けているうちに、瀬川が食事をもって厨房から食堂に現れた。
そして、俺を見るなり「おはよう」と軽く挨拶を済ませ、食事を並べ始めるのだった。


「月樹野みたいに上手くはないけどさ。人間食べなきゃ餓死してしまうだろ?早く朝飯食べちゃおうよ」
「おお!さりげに瀬川の飯を食べるのは初めてなんだよな!自分、すごく楽しみで腹が急に減ってきたぞ…」
「相変わらずだね、鷹取さんは…」


鷹取の大きなお腹が鳴る音を聞いた後、それぞれいつも座っている席に座った。すると、やはり空いた席が嫌でも目に入ってしまう。
———ここに集まった頃には、この長テーブルには空きがないほどに人がいた。確かに…いたんだ。
だが……辺りを見回してみると、そこに座っている人数は…既に、俺も含めて半数以下になっていた。たった1週間で、それだけに近い人数がいなくなってしまったのだ。


———朝食を食べながら、俺は昨日の裁判を思い出す。絶望病にかかり、笑いの感情が不安定になってしまった藍川。そして、みんなのムードメーカーで、常に周りに笑顔を与えていた小鳥。
そんな2人が———これまた不幸にも絶望病にかかってしまった七花によって、殺されてしまった。
七花だと指摘した直後の彼の表情……。言葉では表しきれないほどに、狂っていた。彼は殺人を犯すことを『楽しい』と、『うきうきする』と、話していた。
見ていられなかった。あの面倒くさがりやな七花が。殺人を『楽しい』と思って面倒臭がらずにやるなんて……。彼を貶めた『絶望』という存在。死んでいった彼の背後に潜むその『絶望』が———俺は怖かった。


「———あの、片桐さん」
「…………」
「片桐さん?片桐さん、しっかりしてください!」
「…………」
「片桐さんってば!!」
「うわあ?!」


不意に、早緑に自分の名前を呼ばれ現実に帰る。彼女の顔を見てみると、俺のことを心配そうに見つめていた。それは、近くにいた三神も、寺坂も、波希も、鷹取も、一緒だった。
———俺、本当に参っているのかもしれないな…。


「片桐の旦那。朝食が終わったら少し休んだほうがいいんじゃないのか?冗談抜きで顔色が悪いぞ」
「七花は…自分の意志で殺人を犯したのかな、って思ってさ」
「それは、…。自分にも分からないぞ。だが、七花が藍川と小鳥を殺したのは事実だ。自分達がそうやって暴いたんじゃないか」
「あいつだって、モノクマに『絶望病』なんてわけわかんない病気をまき散らされなかったら、殺人を犯さなかったはずだ…。あいつがナイフを持って行ったところだって見ているんだ、あの時に止めておけば…」
「片桐さん!結局は起こってしまったことなんです、自分を責めないでください!!」


自分でも何を言っているのかわからなかった。どうしてそんな言葉がぽろぽろ口から零れるのか。自分でも理解が不能だった。
このまま気持ち悪い思いを続けているのなら、いっそ死んでしまったほうがマシ。そう思うまでに俺の心は追いつめられていた。
だが——————





『………アンテナ、自暴自棄になってる。自暴自棄はダメ、アンテナは生きてここを出なきゃならないの』





———ふと聞こえた瑞哉の声で、俺はまたしても現実に引き戻されることになった。

Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.353 )
日時: 2014/08/26 19:24
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: MJoef3nH)

「瑞哉さん…」
「お前、人といるのは嫌なんじゃなかったのか?」
「アンテナ、昨日から具合悪そうだったから。心配してこっちに来ただけ。…みんな、気付かなかったの?」


声の方向を向いてみると、瑞哉が俺の方を向いて立っていた。彼女なりに俺のことを心配して来てくれたらしい。あの人嫌いの瑞哉が、なぁ…。
瑞哉は俺の容態について淡々と説明し、自分の推論を語る。それに付け足すように彼女は言う。『一緒に過ごしてきて気付かなかったのか』と。
そりゃあ普段なら気付くやつが瑞哉以外にもいるかもしれない。だけどこんな状態なんだ。みんな、自分のことで精一杯なんだろう。他人のことまで———気が回ってられないのだ。
もう…8人も死んでいるんだからな…。


「でも、自暴自棄はダメ。アンテナは死んじゃダメ。アンテナは…『みんなを希望へ導く存在』だから」
「…どういうことだ?」
「レイはお兄みたいに予言できるわけじゃないから断言できない。でも…アンテナのことは信じてもいい。レイ、アンテナとなら死んだお兄を見つけられるんじゃないかって思う。根拠はないけど…そう思う。
 だから…アンテナだけは絶対に『死なせない』」
「瑞哉…」
「瑞哉さん…。私達のこと、信じてくれるんですね」
「信じるって決めたのはアンテナだけ。他のみんなは嫌い。特におさげ」
「え、えぇ…。私まだ瑞哉さんに嫌われてたんですか…。ショックだな〜…」


この発言も瑞哉らしいといえば瑞哉らしかった。でも…『信じる』って言ってくれて…嬉しかった。
そうだ。まだ死ぬわけには行かないんだ。まだ俺は一人じゃない。一人になってない。まだ、ここに9人いる。俺も入れて10人いる。
———俺は、まだ負けてない!!!


「…ごめん。俺、少し参っていたみたいだ。こんな短期間で仲間が次々に死んでいって…。もう『こんなの嫌だ』ってふさぎ込んでいた。でも…まだ一人じゃないんだよな。
 『過去』はどうすることもできないけど、『未来』はどうとでも変えられるんだよな」
「そうだよー!まだあいたん達は生きてるんだよ。死んでいったみんなのことは悲しいよ?だけど…だからこそ、生き残ってここから出ていかないと駄目なんだって、今なら思える。ここで諦めて、モノクマのいう通りにしちゃったら…あいたん、絶対に後悔すると思う」
「自分もだ。ここで挫けてしまったら、天国で見守っている浅峰になんて顔すればいいのか分からないからな。なぁ、寺坂」
「あぁ。ここにいる全員で、もう誰の犠牲も出さずに、ここから出るぞ!!」
「……お兄は死んでる。けど……生きていてほしい……」
「うふふ、そうですね!」


———いなくなったみんなのことを後悔するのは、もう少し先でいいだろ。ここから出た後だって遅くない。
絶対に、絶対に、ここから『みんなで』出るんだっ……!!


「となれば、やることは一つだろ?」
「何をするんだ?」
「鷹取の姉御、今まで学級裁判の後には何が起こってたかな?」
「うーーーーん………。さっき朝飯を食べたせいで忘れてしまったぞ…」
「忘れてどうするんだよ!」
「…そうか、今までも学級裁判の後には新しく行ける場所が増えていたな。もしかして———」
「そう。『まだ見ぬ未開の地』があるんだよ。きっと4Fのことだと俺は思うぜ。どうする、片桐の旦那?さっさと捜索しちまうか?」


急に鼎野は何を言い出すかと思ったら、新しく捜索できる場所が出来ただろうから行こうという誘いだった。普通だったらモノクマがここでしゃしゃり出て『鼎野クン、ボクのセリフ取らないでよ!』とくるはずだが。今回ばかりは来なかった。
あいつ、今頃セリフとられて泣き寝入りしてるんだろうな。姿が容易に想像できて逆に面白い。


「そうですね、私も賛成です!」
「僕も……さっさと捜索したほうがいいと思うよ。早緑さんに賛成」
「そうか、未開の地に足を踏み入れるんだな!」
「鷹取さんが言うと別の意味に聞こえるんだけどー…」
「ほらほら、さっさと行かないと夜時間になっちまうぞ。時間は有限なんだ、大切にな」
「はーい」


話し合いの結果、春白には早緑と波希が連絡をすることになり、俺達は新しく開いたであろう4階を捜索することになった。
三神の一言で一同はばらけ、食堂にはほとんど人がいなくなる。
俺も早く4階の捜索に行かないとな。そう思って食堂を出ようとしたの、だが……。

















『親父……。俺、どうすればいい……?』







後ろから声がする。振り向いてみると……。


















——————瀬川が、説明しきれないくらい悲しそうな顔で、『どこかで見たような』紙を持っていたんだ。
話しかけようとしたけど、雰囲気で『話しかけるな』と分かってしまった。今は彼を一人にしておいたほうがいいかもしれないな…。





そう思って、俺は食堂を後にした。