二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.363 )
日時: 2014/08/30 19:04
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 159hnrL3)

———しばらく歩いていると、また扉が見えてきた。扉の前にあるラベルには『科学室』と書いてある。まぁ科学室ってあるんだから科学室なんだろうな…。
扉を開けて中に入ると、薬が入っている棚の前で何か考え込んでいる鼎野と、先ほどの不安を微塵も見せないいつも通りに戻った瀬川を発見した。
しかし、捜索前の言葉を俺は聞いてしまっている。今瀬川に話しかけられる勇気もなかったので、俺は鼎野に話しかけることにした。


「鼎野。何やってるんだ?」
「ん?……誰かと思えば片桐の旦那じゃないか。ここは正真正銘の『科学室』、どこもかしこも実験に使う器具ばかりさ」
「そりゃあ…見た感じそうなんだよなぁ。で、鼎野は目の前の棚を見て何を考え込んでいるんだ?」
「いやぁ、逆立ちで安眠できる薬品はないかなぁと考えていたんだよ」
「ねぇよそんなもん!!!」


相変わらずの鼎野に思わずつっこんだ。まぁ、それは置いといて、俺も目の前の棚をよく見てみる。
棚は3つに区切られており、『A』『B』『C』と書かれたシールがそれぞれに貼ってある。
そのシールの区切りの奥には、びっしり薬品のようなものが並んでいる。…アルファベットで各種類にでも分けてあるのだろうか。
もしかしたら毒薬なんかもここにあるのかもしれない。調べるならば慎重に調べていかないといけないな。


「えーと、まずは『A』の棚から調べてみるか…」


試しに『A』の棚の薬品を一つ取ってみる。…といっても俺は薬品に詳しいわけではないので、どんな薬品が入っているのかは分からない。
まさか毒薬とかじゃないだろうな…。モノクマ、こういう普通のケースに毒薬を入れてこの中の誰かを殺そうという魂胆かも…


「それ、『プロテイン』だぞ」


後ろから声が下ので思わず振り向いてみる。すると、瀬川が呆れた顔で俺を見ていた。
———というか知っているのなら早く言ってくれよ。


「瀬川…お前、ここ調べたのか?」
「あぁ、軽くな。俺の見解だと、

 『A』の棚にはプロテインなんかの『栄養剤』。ビタミンAだのBだのもここに入ってたな。
 『B』の棚には睡眠薬なんかの『一般的な薬品』。風邪薬や頭痛薬なんかもあったな。
 ……で、『C』の棚には毒薬がびっちり詰まってあった。触らぬ神に祟りなし、ってところか」
「毒薬?!もしかしたら、黄瀬や月樹野の事件で使われたのも…」
「ここにあった毒薬がガシャガシャの中に紛れ込んでいた、って考えてもいいかもな。今思い出してみれば、ここに入っているCの棚のビンと、あの毒薬のビン。形状が一緒だったように思える」


———瀬川の話をまとめると、『A』と『B』の棚に害は無し、『C』の棚には触らないほうがいいってことなんだな…。
毒薬がこんなわかりやすいところに置いてあるのもどうかとは思うが、モノクマは俺達に殺し合いをしてほしいはずだ。殺人助長の手助けになるものは積極的に置いていく、のか?
どっちにしろ迷惑極まりないのだが。


「モノクマ、明らかに魂胆が見え見えだよなぁ。俺達に殺し合いをさせるためにこんな分かりやすいところに毒薬置いちゃってさ」
「報告会の際に『Cの棚には絶対に触るな』って言えば大丈夫だろ。春白はともかく、今は殺し合いを起こそうなんて連中は絶対いないんだからな」
「『絶対いない』か」
「どうした、瀬川?片桐の旦那の言ってることがどこかおかしかったか?」
「……いや、言葉通りだと思ってさ。悪いな、変な気を遣わせてしまって」
「瀬川……。無理だけは絶対にするなよ。みんな、お前のこと心配しているんだから」
「ふふっ、心配してくれてるの?片桐はお人よしだな。でも…ありがとう」
「あ、あぁ…」


変なことを言い出したので励ましたが、なんかうまく言いくるめられたような気が…。本当に、瀬川に何が…。考えすぎかな。
まぁ、今の様子なら大丈夫だろうからこの場は他の場所を調べることにした。
俺は鼎野、瀬川双方と軽く挨拶を済ませ、化学室を後にしたのだった。





「(ん?あれって…)」


しばらく歩いていると、青い扉の前に春白が立っているのが見受けられた。
前から思っていたが、春白なんかこの頃妙にイライラしているような…。彼女にとって悪いことでも起きたのだろうか。
月樹野の事件でも余裕を崩さなかった彼女がこんなにイライラしているなんて、想像もつかなかった。
まぁ話しかけないわけには行かないので、俺は彼女に話しかける。


「なぁ、春白」
「……なんだい?ボクは今非常にイライラしているんだ、邪魔をしないでくれないかな」
「いやいや、俺何もしてないだろ?!……それで、この青い扉について何かわかったのか?」
「……はぁ。本当キミ達はバカそのものだね。ラベルくらいちゃんと見たらどうなんだい?」


様子がおかしいと感じても、話す態度はそのままか。ある意味春白らしいとは、思うんだけど…。
それにしてもこの人はいい加減『気遣い』というものを覚えたほうがいいと思うのは俺だけなのだろうか。
———俺は気を取り直し、青い扉についているラベルを見る。そこには、『情報処理室』と書いてある。


「『情報処理室』?」
「……ボクには関係ないけどさ。この扉、開かないんだよねぇ」
「まさか、春白がイライラしている理由って…」
「このボクが直々に調べてあげているのに、『この扉だけ』開かないなんて、あの白黒パンダは何を考えているんだい?
 鍵の形状も変な形だし、興醒めするよ…」


試しに俺もその扉を開けようとした。しかし……精一杯引っ張っても、押してダメなら引いてみても、扉はびくともしなかった。
……本当に鍵がかかっているみたいだな…。


「残念だったな、春白…。ここを調べても時間の無駄だってことが分かっちゃったからな」
「ふんっ。だったらボクにつきまとわないでくれないかな?キミといると終始イライラする。
 ……ま、他の人よりはまだマシだけどね」
「えぇ……」


春白はそう言った後、スタスタとどこかへ去って行ってしまった。
———今の言葉、結構グサグサ来たぞ、春白。