二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.380 )
- 日時: 2014/09/01 21:38
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: IzBKD/r0)
ところかわって脱衣所。だいぶ早く着きすぎたのか、そこにはまだ片手で数えられる人数しか揃っていなかった。
全員が揃うのを待っている間に、さっさと準備でもしておくか。俺はロッカーの扉を開け、パソコンを取り出す。電源ボタンを押すと、雨唄が俺に気付き挨拶をする。
『……よお』
「起こして悪いな。実は少し気になるものを見つけてしまって」
『気になるもの?』
「見知らぬ名前が書かれたUSBだよ。ここに閉じ込められた人物の名前じゃなさそうなんだけど…。心当たりあるか?」
『名前を言ってくれないと分からないぞ』
「あ、悪い。USBに書かれてたのは『中森奏太郎』って名前だ。何か知っているか?」
『ちょっと待ってくれ。データベース漁ってくる』
そう返事をすると、雨唄は画面上からパッと姿を消した。どうやら『中森奏太郎』という人物のデータを探しに行ったようだ。
……彼が探している間に、早緑が瑞哉と春白を連れて脱衣所に入ってくる。彼女に呼ばれたのか双方共に相当不機嫌そうに見えた。……俺が迎えに行ったほうが良かったかな…。
「なんとか説得して連れてきました…」
「面倒な役割押し付けてごめんな…。俺も準備があったんだ」
「……準備なんておさげがやればよかったのに」
「つまらない見世物だったらボクは帰るからね?」
「まぁまぁ、そう言うなって。……みんな、話を始めたいんだがいいか?」
全員揃ったのを確認したため、俺は話を始める。まず手始めに持っていたUSBを見せると、一部が声を発した。まさかUSBが見つかるとは思ってもみないもんな…。
そして、俺はそのUSBについて説明を始める。
「鷹取が俺に預けてくれたこれなんだけど、持ち主らしき名前…『中森奏太郎』という名前が書かれてあったんだ」
「『中森』…?どこかで、聞いたような…」
「うーーん……俺もどこかで聞いたような…」
俺が持ち主の名前を喋ると、早緑と寺坂が首を傾げる。もしかして…心当たりがあるのか?
思わず聞き返してみると、2人とも『聞いたことがあるような気がするだけ』という答えが返ってきた。そりゃそうか、まだどんな人物かわからないもんな…。
「で、俺達を呼んだ理由は『そのUSBの中身を俺達で共有する』って魂胆?」
「まあ、そんなところだな」
「だったら早く見よう。もしかしたら思いがけない収穫があるかもしれないからな」
瀬川に諭され、俺はUSBをパソコンに差した。しばらくのローディング時間が経った後……その動画は、流れ始めるのだった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
『わっくん!みっくん!ほらみんなも!!記念すべき新76期生誕生の瞬間を動画に収めるぞーーー!!』
『ソータ君、あまりはしゃがないでよ?』
『俺76期生じゃないんだけど』
『いいじゃんいいじゃん、奏太郎クンのお仲間なんだしさっ♪ほら龍之介クンも!!鈴花ちゃんも!!一緒に映ろうよー♪』
『お、おう』
『ふ、ふんっ。今回だけだからね…』
———流れ始めた映像は、教室内での出来事だった。オレンジ色の髪をしたメガネの青年が、クラスメイトらしき人物を募って動画を撮ろうとしているらしい。
だが………映っている人物が『問題』だった。
「どうして…俺と、藍川と、春白が映っているんだ…?!」
「それに、神崎も…。俺のクラスメイトも映ってる。どういうことだ…?」
「ボクの記憶にない出来事だよ…反吐が出る」
76期生の面々も、身に覚えのない出来事のようだ。それをあざ笑うかのように、映像は続いていく。
『よーーーし全員揃ったぞーーー!!!せーので『新76期生、バンザーイ』って言うぞぉ!!』
『俺も言わなきゃダメなの?』
『当ったり前じゃん!!みっくんはオレの大事なウィザウチュナイなんだからさー♪』
『黒歴史の話をするなああああ!!!』
『ほらほら、早くしないと動画の限界時間来ちゃうよ…』
『急げ急げー♪』
『よ、よーし!俺も気合を入れていくぞ!!春白も叫べよな!!』
『……仕方ないな』
『いくぞー?!せーのっ』
『『新76期生、バンザーイ』!!!!!』
———ザザザッ ザザ———
ぷつり。
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…本当に訳が分からなかった。動画の中の寺坂や春白、藍川はとても楽しそうにクラスメイトや神崎と話をしていた。
そもそもあいつらが他の学年の生徒と交流を始めたのも、この殺し合い生活が初めてのはずだ。それに———この動画が偽物でないなら、少なくとも『寺坂、藍川、春白』は『クラスメイト』ということになる。
「俺と春白がクラスメイト…?」
「寺坂、どういうことだ?!あいつとクラスメイトだったのか?!」
「……いや、分からない。思い出したくても思い出せないんだ……」
「USBを見たせいで、謎が増えちゃった感じだね」
「見ないほうが良かったのかもしれないな…。寺坂なんか混乱しすぎて頭がショートしかけているみたいだし」
しまった、と思った。だが、流してしまったのを過去に戻すことは出来ない。当事者である春白はともかく、寺坂に至ってはなにがなんだか分からずに頭にハテナマークがたくさん浮かんでいた。気がした。
「…とりあえず、今回の報告会はこれでお開きにしたほうがいいんじゃないでしょうか?寺坂さんの件もありますし…」
「そうだな。俺、鷹取と一緒に寺坂を部屋まで送ってくるよ」
「ああ。自分も早緑に賛成だ。それじゃーな、片桐!」
———これ以上混乱も深めるのもダメだというので、今回の報告会はお開きになった。あーあ、寺坂に悪いことしちゃったな…。
そう思いながら改めてパソコンを見てみると、ふくれっ面の雨唄がこちらを向いていた。
どうやら留守中に動画を再生されたことにご立腹らしい。
「なぁ、それで『中森奏太郎』の正体は…」
『教えてやらない』
「勝手に動画を再生したことは悪かったって、もう!」
———その後、雨唄は気がおさまっても詳細を教えてくれなかった。…つくづく人間性が強いアルターエゴですこと。俺は心の中でつっこんだのだった。