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Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.388 )
日時: 2014/09/05 21:37
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: iVC2SMbZ)

『希望ヶ峰学園 学園長がお知らせします。オマエラ、おはようございます。朝です。朝ですよー!今日もはりきっていきましょー!』


———夜が明けた。あの衝撃の昨日から、1日経った。
まさか瀬川が『裏切り者』だなんて…。あいつが言っていた言葉、それが脳裏にこびりついて離れようとしない。瀬川はこうして俺が考え事をしている今でも、『誰かを殺す』計画を立てているのだろうか…。
ただぼーっとしている。時間だけが過ぎていく。


「瀬川もだけど、春白と鼎野も大丈夫かなぁ…」


ふと、そう漏らす。そうだ。問題なのは彼だけではない。彼が『裏切り者かどうか』で口論になった時、主に春白と鼎野との間で亀裂が走っていた。
あの場は寺坂のファインプレーでなんとか収まったが、次に2人が鉢会ったときはどうなるのだろうか。もし2人きりになってしまったら———最悪の場合、どちらかが『殺されて』しまうかもしれない。…それだけは避けたい。
とにかく、こんなところでごろごろしているわけにも行かないよな。俺は無理やり身体を起こし、食堂へと向かっていったのだった。




「……あれ?人数少ないな」
「おはようございます、片桐さん。そりゃあそうですよ、昨日あんなことがあったんですから…」


食堂には早緑、波希、寺坂、鷹取がいた。瑞哉と春白はいつも来ないからいいとして、三神と鼎野、そして瀬川が来ていない。
理由を尋ねると、3人とも気持ちの整理がつかないから朝食会に参加できないとのこと。三神はともかく、鼎野は瀬川が裏切り者だったことにかなりショックを受けているだろうからな…。しばらく考える時間をとったほうが賢明なのは、目に見えていた。


「……瀬川、申し訳なさそうにしていた。そんなあいつが殺人を起こすのか?」
「話したのか?」
「あぁ。朝食堂に向かう途中で早緑と鷹取と会ってな。食堂で待っててもなかなか来ないものだから、様子を見に行こうと全員に話を聞いて回ったんだ」
「だけど、瀬川君は自分で『裏切り者だ』ってカミングアウトしているんだよね?彼は人形師だし、演技も得意だろうし…。その『申し訳なさそう』ってのも演技かもしれないよ?」
「波希さん、春白さんと同じこと言ってるんですね…。なんだか悲しいです」
「『可能性』の話をしただけだよ。とにかく、瀬川君の警戒はといちゃいけない。それは…わかってるよね?」
「それは、そうですけど…」


朝食を食べながらそんな話をする。俺があの手紙を見つけなかったら、あいつはカミングアウトせずにすんだのだろうか。もし見つけたとしてもモノクマにはぐらかしていれば、こんなことにはならなかったのだろうか。
後悔と自責の念がぐるぐると頭の中を回りまわる。


「…でも、自分は瀬川を信じたい。一緒に過ごした時間は少ないが、それでも『仲間』なんだ。瀬川が殺人をしようとしたのを見かけたら…意地でも止めるさ」
「鷹取…」
「俺も同意見だ。仲間が過ちを犯そうとしていたら、それを正してやるのが仲間だろ?」
「当然です。私も、そのつもりでいますよ」
「寺坂…早緑…」
「………本当、『人間』ってなんなんだろうね」


少なくとも、今日この場にいるメンバー(波希は分からないが)は『瀬川を信じる』ことに決めたようだ。
———うん、俺もあいつを信じることにしよう。あいつの表情が演技でだって、あいつも結局は人間なんだ。話を聞くうちに本音がぽろっと零れるだろ。
そんな話をしながら、朝食会を過ごしたのであった。






夕方頃の話である。
まだ何か情報はないかと4階を探索していたところ、音楽室で三神が黄昏ているのを発見した。朝食会に顔を出していなかったから心配だったのだが、見たところ風邪もひいてなさそうだし具合も悪いわけではなさそうだ。気分は落ち込んでいると思うが…。
今の状態の彼女に話しかけるのは勇気がいったが、意を決して話しかける。


「———三神。そこで何をしてるんだ?朝食会来ないから心配したぞ」
「ひゃあっ?!ってなんだ片桐くんか。びっくりさせないでよー」
「いやあ、悪い悪い…」


俺に話しかけられたことにびっくりしたのか、彼女は俺を見た途端ふくれっ面で俺を見る。
……まぁ、謝ったら「あいたんは心が広いから許してあげる」って許してくれたんだけどな。


「……三神、瀬川のこと———まだ頭が混乱しているのか?」
「当たり前じゃん…。モノクマに呼ばれたと思ったら瀬川くんが裏切り者って言われて、あの手紙を見て、鼎野くんと春白さんが喧嘩を始めちゃって…。どうしようって思ったら、朝食会に出る元気もなくなっちゃったんだ」
「三神…」
「あいたんが地方でアイドル活動をしているときだってそうだった。『地方民』だっていうだけで都会の人は変な目であいたんを見て。あたしは沢山の人に笑顔を与えたいから頑張ってアイドル活動してるのに、『地方民のくせに』って目で見られるのが嫌だった。
 今まで頑張ってたものが———全部、音を立てて崩れていくような気がしたの」
「苦労、してきたんだな…」
「あいたんは昔から都会に憧れてた。でも、その都会に裏切られて、何も信じられなくなって———。自暴自棄になったんだ、あたし。
 だけど———あたしを支えてくれるプロデューサーさんやADさんは信じてくれたんだ。『人は生まれで決まるものじゃないよ。あいたんの魅力を『伝えたい』って思ったら、絶対気持ちは伝わるんだ』って」
「———だったら、その気持ちで瀬川を救おうよ。三神にだって仲間を思う気持ちは十分ある。だから…その気持ちをもって瀬川と話せば、あいつだってきっと分かってくれるよ」
「どうして、そう言い切れるの?瀬川くんはもう心無い人間に戻っちゃったかもしれないんだよ?」


三神の過去を聞き、俺はそれを『瀬川を助けるために使えないか』と提案する。だが彼女はまだ、瀬川を信じれずにいたらしい。
だけど———俺達が信じなくて、状況が変わると思うか?


「俺達が信じてやらなくて、だれが信じるんだよ。三神だって———そうやって『超高校級のご当地アイドル』になったんだろ」
「……うん。そうだね。ここで瀬川くんを見捨てたら———あいたんは心無い人達と一緒になっちゃうね。
 ———信じるよ。あたし。だから…もう心配しなくていいよ!」


そう言って顔を上げる三神は、元気な少女そのものだった。
『人を信じる』。彼女に、大切なものを教えてもらった気がする。俺はそう感じていた。