二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.391 )
- 日時: 2014/09/07 17:22
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: tA56XhER)
三神と別れた後、俺は時間を確認し、晩飯までにはまだ時間があると4階の探索を続けることにした。
もしかしたら、最初に行った時と違う発見があるかもしれないしな。微かな希望を胸に、部屋という部屋を漁ってみたの、だが…。結局目新しい情報は見つからなかった。
『当然だ』という気持ちと『まだ探索不足なのかな』という気持ちがぐちゃぐちゃに混ざり、何とも言えない気持ちで自室へと戻ろうとしていた。
そんな折、偶然そばを通りかかった鷹取に呼ばれ倉庫へ行くことになった。一体なんなんだろう…?
「すまんな、突き合わせてしまって」
「いや…お前の考えていることはお見通しだよ。どうせ倉庫で珍しい食べ物を見つけたんだろ?」
「べっ、別に自分はいつでも食事のことを考えているわけではないぞ?!考えようとしたときにちょうど腹が減るだけで…」
「はいはい」
「お前、絶対本気で話聞いてないだろー!!」
どうせ食べ物のことだろうと彼女をからかっていたら、どうやらそうではないらしい。
珍しく鷹取は俺の言動にむくれつつも倉庫の奥へと行き———とある鉢を持ってきた。
「……これは?まだ枯れていないようだが…」
「自分もこれを見つけてびっくりしたぞ。これは…『サボテン』だ」
「サボテン?!サボテンって、花が咲かない植物なんじゃないのか?!」
「侮ってもらっては困るぞ片桐!サボテンだって植物だ、花だって咲く。…このように、白く可愛らしい花をな」
そう言いつつサボテンを見る彼女の姿は、いつも見ている野生児ではなく———普通の『年相応の女の子』のように見えた。
そうだ、彼女だって女の子なんだ。普通の女の子とは趣味が違うくとも、こういう可愛らしい趣向だって持っているんだ。
「水もないのに、よくここまで綺麗な花を咲かせたものだな…」
「鷹取も密林で過ごしていたのなら、そういう花や植物だって沢山見てきたはずだろ?」
「あぁ。自分は、気付いた時から森で過ごすのが普通になっていて…。どんな危険な密林だと言われても、生き残れる自信があった。それは、自分の命を繋ぐ糧になる『命』があったからだ。
だが———今は違う。『気を抜けば』死ぬ。いや…気を抜かなくても、いずれ消えてしまうのではないかという思考が自分の中でぐるぐると回っているんだ」
「鷹取…」
「生き抜くことに出でた能力のはずの『超高校級のサバイバー』が、聞いて呆れるだろ?自分だって…死ぬのは怖いよ。今までだったら、死ぬのなんて『怖くなかった』。だけど…今は違うんだ。こうやって、片桐や寺坂と仲良くなって、同年代の友達が沢山できて…。そんな中での『殺し合い』だろ?
信じていた友達が友達を殺すのなんて…。見ず知らずのうちにショックを受けていたのかもしれない。今、そう思うよ」
サボテンを抱えながら、覇気のない顔でそういう。鷹取は『死』と隣り合わせの状況にいながらも、『死』という恐怖は感じていなかった。それは、その死に『感情』が重なっていなかったからだ。
———だが、今は違う。鷹取には、周りに仲間がいる。だから怖いのだそうだ。目の前から仲間がいなくなっていくことが。せっかく友情を築き上げても、それが儚く崩れ去っていくことが。…今まで同年代の友達を持ったことがない、実に彼女らしい不安だった。
「だけどさ…鷹取は生きてる。運がいいのか、本当に『サバイバー』の肩書の能力なのかは知らないけどさ。
確かに今まで死んでいったやつのこと、今思い出しても『どうして助けてやれなかったんだ』ってずっと思う。だってそうだろ?『昨日こうしていたら』『あの時こうしていたら』ってたられば論を論じて、変わるもんならとっくに変えてるよ。でも———過去は変わらないんだ。
悔やむのはいつでも出来る。だけど…『今日を生きる』ことは、今しか出来ないことなんだ。そうだろ?鷹取」
「…………」
「そのサボテンの花だってそうじゃないか。鷹取、お前言ってたろ?『水もないのによく綺麗な花が咲いたな』って。サボテンも俺達と一緒のように、極限の生活を送りながらこうして綺麗な花を咲かせたんだ。
———だから、さ。『今日を生きようぜ』。鷹取」
元気がない鷹取なんて想像つかないからさ、と付け加える。すると…彼女はしばらく沈黙を続けた後、豪快に笑って俺に向き合った。
「ど、どうしたんだよ!」
「そうだよな、そうだよな…。自分、らしくないことを思っていたのかもしれない。確かに友達が死んでいったことは悲しいよ。でも…それで『今日を生きる』ことをあきらめちゃ———駄目なんだよな」
そう言って笑顔を見せる鷹取は、もうさっきの覇気のない彼女ではなかった。いつも通りの、元気でワイルドな少女だった。
———良かった。鷹取、元気になってくれたみたいだ。
「そういや、このサボテンどうするんだ?」
「せっかくだから食堂のテーブルにでも置くか!そっちのほうが水分もあるしな」
「長テーブルか…。まぁ、何もないよりはましだろうな。丁度花も咲いてるし」
「あぁ。なら、早速置きに行こう!!行くぞ片桐、置き終わったらおやつの時間だ!!」
「お前今何時だと思ってるんだ?!」
いつも通りの鷹取の言動。相変わらずだったけど、これが鷹取の姿だったんだろうな。そう思う。
俺は彼女の背中を追いながら、そんなことを考えていたのだった。
- Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.392 )
- 日時: 2014/09/08 19:42
- 名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: J7xzQP5I)
『希望ヶ峰学園 学園長がお知らせします。オマエラ、おはようございます。朝です。朝ですよー!今日もはりきっていきましょー!』
———三神や鷹取の気持ちが少し分かった昨日。みんなそれぞれに思いを持ちながら、このコロシアイを生き抜いている。
……だが、確かに行動を起こしかねないやつもいる。俺達にはそいつらを『止めなければならない』役割があるのだ。その結果、俺がけがをすることになっても———誰かが死ぬよりはましだ。そう思っていないとやっていられない。
そう、気持ちを切り替えていかねば…もう、この殺し合いを生き抜くことは出来ないのだろう。
そう思いながら俺は支度をし、朝食会を済ませたのだった。
今日は特にこれといった行動はなかった。更衣室の前をすれ違った時、またもや鼎野と春白が口論を繰り返していたのだが、その時は丁度早緑と三神がその場にいたので執り成しを得た。
これ、本当に2人を和解させないと、殺し合いにまで発展してしまうぞ…。
そう思いながら、俺は晩飯を食べるために食堂に行った。食堂には、丁度時間が被さったのか自作の忍者食(と言っていいのだろうか…)を食べる鼎野、それを無関心そうにただ黙って見ている瑞哉、そして…………。
「……あ、片桐」
「よぅ瀬川。……大丈夫なのか?」
「みんなのお蔭で何とかな。だけど…そんなに警戒薄めてていいのか?俺は『裏切り者』なんだぞ?」
「それはそうだけど…。少なくとも、今のお前に殺人ができるとは思えない。だからさ、一緒に晩飯食べてもいいか?」
瀬川がいた。どうやら、鼎野に無理やり連れてこられて一緒に夕食を食べることになったらしいのだ。瀬川からは、昨日醸し出されていたなんとも言えないオーラは消えていた。今の彼は『いつも通り』の、仲間の瀬川夏樹だった。
———これも演技なんだろうか。だめだだめだ、あいつを信じるって決めたのはどこの誰だよ。自分の中で生まれる邪悪な気持ちを抑え込み、俺は軽い夕食を出す。
瑞哉にも分けようとしたら案の定断られた。そうか、精神料理しか食べないんだっけ。
「…片桐は本当お人よしだな。俺の正体が分かっても、こんな風に接してくれるなんて」
「嫌なんだよ、今まで仲間として過ごしてきたやつを急に『敵だ』って思い込むのが。きっとみんなも同じだと思うぜ」
「なぁ…片桐の旦那。俺…どうしたらいいのか…分からないんだよ。里にいたころだって、今も信じてるけど、『あいつ』は里の人間を襲った。でも…こんな状況で…また…瀬川まで同じ道を歩まないだろうかって思ったら…いてもたってもいられなくて…」
「……で、瀬川と一緒に晩飯食べようって連れてきたわけだな」
鼎野も、もう限界だったようだ。すれ違うたびに瀬川に対する罵倒を浴びせられ、そのことで喧嘩になり、挙句の果てには通りかかった他人に止められる…。
彼の中でも彼女に対する憎悪を消そうとはしていたらしい。だけど…もう、その『友を傷つけた憎悪』は消せるに消せぬものまで膨らんでしまっていた…。あいつの話を聞いて、俺は咄嗟にそう判断した。
———鼎野の不安を聞きながらも、ゆっくりと食事の時間は流れていく。そんな中、ふと瑞哉がこう呟く。
「……白メガネ。あの時、どうして嘘をついたの?」
「嘘?」
「『人を殺すつもりだった』って。嘘でしょ?……レイにはお見通し。きっと、忍者もそれ分かってて男装に反論したんでしょ?」
「人の目ってさ、意外に自分では気づかないほどに変化してるんだよ。だから分かった。瀬川が『人を殺すつもりだった』って言ってた時も、『嘘をつているな』って。
だから…だからこそ…言葉だけで判断した春白が…許せなかったんだよ…!!」
「だからって、殴る必要性ないだろ?!相手は仮にも女子なんだ…」
「女子だって関係ないだろ?!あいつは友を穢した、それだけで人間の屑なんだ…。だから、だから…!!」
「……たぶん、忍者止めても止まらないよ。これ」
「なんでこんな、みんな疑心暗鬼になってるんだよ…」
「……白黒の狙いはこれなんだと思う。裏切り者の正体を自分から言わせることで、そいつが『自分を殺すかもしれない』という疑心暗鬼を生み出す。当然1週間は過ごしているわけだから、それなりに絆も出来ている。だから、白メガネを庇護する連中も当然出てくる。
白黒は、その疑心暗鬼の中で殺し合いが起きることを…望んでいるんだと思う」
「「…………」」
瑞哉から発される、淡々とした推論に思わず黙ってしまう。だが、モノクマは俺達に『コロシアイ』をしてほしいんだ。だったとしたら、今のこの状況は…春白と鼎野が敵対しているこの状況は…。『あいつの一番望んでいる』状況なんじゃないか。
だとしたら止めるしかない。しかし———もう深く捻じ曲げられてしまったこの関係を、元に戻せるとも思えなかった。
「……アンテナ、それでも止めなきゃダメだよ。そうでなきゃ…絶対に誰か死ぬ。レイでも分かる」
「そうだけどさぁ…どうやって止めれば…」
止められないものを、どうやって止めればいいんだ?対抗策を考えようとしても、思考がオーバーフローを起こし反応してくれない。
これじゃ考えられないじゃないか……!!
そんなやりとりを見て、瀬川は食事を終えたのか黙ってその場から去る。彼は食堂から去る直前に———俺達に、こんなことを言ってきたのだった。
『けじめをつけなきゃいけないのは、俺のほうだから』
———その言葉の真意に気付くまで、残り2日。