二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.401 )
日時: 2014/09/11 19:31
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: R7lCf21o)

しばらく椅子に座って気分を落ち着かせ、鼎野の様子を見に行くことにした。
食堂に残っているメンバーに軽く連絡を済ませ、さっさと保健室へ向かう。




保健室では、鷹取に治療をされている鼎野と、早緑がいた。鼎野の肩からの血は既に止まっており、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
———どっちにせよ、大事に至らなくて良かったよ本当…。ほっとしていると、早緑がこちらに気付いて近づいてくる。


「幸い、命に別状はなかったようです。私もびっくりしましたよ…」
「だけど、あそこで鼎野が動いていたら肩が使い物にならなくなっていたぞ。処置をしたのは正解だったようだな」
「鼎野、大丈夫か?怪我もだけど…気分のほうも」
「悪いな、みんな…。俺のせいでこんなことになっちまってさ」


鼎野はバツが悪そうに俺達を見回した後、一礼して謝った。あんな事件を起こすつもりはなかったのか、彼の顔には罪悪感だけが残っていた。


「……なぁ、無理して話さなくてもいいんだが…。どうしてあんなことになったんだ?」
「それ、私も聞きたかったです。やはり…春白さんが原因なのですか?」


とりあえず聞きたかったことを聞いてみる。思い出したことで怒るのは避けたいので、最大限のクッションを置いて、だがな。
それを聞いた鼎野は、一回深く深呼吸をして、朝の出来事を話し始めるのだった。


「実は——————」



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「ふわ、ぁ〜…。あれ、今日は俺が一番乗りなのか…?みんな起きるの遅いな」


俺が食堂に入ってみると、そこはもぬけの殻。俺が一番乗りなんだなってすぐにわかったよ。
みんなを待っている間に腹が減るのもなんなので、軽食でも食べようかと椅子から立とうとしたんだ。
そんな時———厨房から、あいつは出てきた。


「…………やぁ、『殺人犯庇いの忍者君』」
「なんでここに来たんだよ」
「ボクだって人間さ、お腹は空くんだよ?だったらなんだ、ボクがここに来てはいけない理由でもあるのかい?」
「テメェ……。一昨日瀬川に言ったこと忘れてねぇだろうな」


———春白は俺を見るなり瀬川の事を罵倒してきた。そのことだけでも怒りは募っていたんだが…なんとか理性で抑えていたんだ。
だけど…あいつの放った一言で——————




「ふん、人殺しのことなんか思い出したくもないよ。『さっさと死んでしまえばいいのに』」
「…………春白おおおおおおおおお!!!!!!」




——————俺の理性が、切れた。
たとえ裏切り者だということが真実であっても、ここまで過ごしてきた仲間。俺はそれを蔑ろにする春白が許せなかった。
黒夜を蔑ろにしたあいつらと同じことを、目の前で春白はしていた。
考えるより前に俺は春白の首を掴み、取っ組み合いの喧嘩となる。


「汚らわしい手で触るんじゃないよっ!!!ボクは当然のことを言ったまでだろ?!」
「謝れよ!!!瀬川はそんな奴じゃない、お前のせいで今も落ち込んでるかもしれないだろ?!」
「そんなのあの人殺しの勝手じゃないか!!!ボクは悪くない、正論だっ!!!このおっ!!!」


——————グサッ


「…………っ!!!」


春白も怒りが収まらなかったようで、俺の肩にナイフを刺してきた。痛い。痛い。止めどなく血は流れ出ている。
しかし、そんなことどうでもよかった。こいつをぶちのめさないと、気が収まらなかった。
だが———痛みがそれを許してはくれない。


「死ね!!!死ね!!!死んでしまえ!!!」
「お前達何やってるんだよ!!!」
「喧嘩はやめたほうがいいよ…」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「……それで、鷹取と波希がこっちに来て…。今に至るってわけさ。結局、俺は一時の感情で人を殺す手前まで来てたんだよ」
「———くそっ」


なんでそんなことにまで発展してるんだよ……!!!どうして互いに悪いところを認め合わないんだよ……!!
朝の展開を聞いて、その言葉だけがぐるぐると頭の中を回っていた。
早緑と鷹取も動揺を隠せないようで、顔が青ざめていた。


「鼎野さん、死ぬ手前だったんですよ…?どうして理性を失っちゃったんですか…」
「だが、自分も鼎野の気持ちはわかる。大切な友人が、そんな風に憎んでいる奴に罵倒されれば…自分もそうしてしまうかもしれない」
「このままじゃ、本当に殺し合い起きちまうぞ……」


———暫くの沈黙の後、まだ動くなとの言葉も無視して鼎野は保健室を後にする。
彼曰く、「少し頭を冷やしたい」とのことらしい。


「俺も考え整理したいからな…。朝食食べて、部屋で休んでるわ」
「わかりました。私、朝ご飯作りに戻りますね」


……そうだ。この選択でいいはずだ。鼎野も、冷静さを取り戻したら改めて話を聞くことにしよう。
———俺は自分の中で結論を下し、朝食を食べに食堂まで戻ったのだった。

Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 (非)日常編 ( No.402 )
日時: 2014/09/21 15:23
名前: ランスロット ◆/.5aaSlLPY (ID: 0v5zLN0X)

その後、朝食会は滞りなく終わった。今回の事態を引き起こした奴らは結局来なかったのだが、今はそれでいいのだと俺は心の中で決めていた。
そんな日中の時間帯であった。自室でくつろいでいた俺の元に、インターホンが鳴る音が鳴り響く。
誰だろうと思って扉を開いてみると、瑞哉が扉の前に立っていた。
どうやら、アルターエゴが自分と俺を呼んでいる、とのことらしい。


「というか、よくアルターエゴに話しに行ったな」
「…レイじゃない。あっちから話しかけてきただけ」
「瑞哉らしい回答だな…」


瑞哉が言うのだから本当だとは思うが、コンピューターにまで素っ気なく返事するんだな…。
そう思っていると、彼女が不思議そうに俺を見つめてくる。待たせるのもまずいし、モノクマに見つかってしまったら元も子もなくなってしまう。俺は気を取り直し、瑞哉と共に大浴場へと向かっていったのだった。




「……連れてきた」
『あぁ、悪いな』
「雨唄。今回は一体何の用なんだ?」


俺達が大浴場にやってくると、雨唄が足音に気付いたようでそのパソコンの音を響かせて来る。
俺達が誰にも見つかってないことを確信した彼は、ほっと一息ついた表情をし、本題へと入っていく。


『実は…俺をネットワークに繋いでほしいんだ』
「ネットワーク?!確かにネットに繋げれば、外がどうなってるか分かるとは思うが…。危険なんじゃないのか?」
「…………ねっとわーく?」
『危険かもしれないけど、それくらいどうってことないよ。それに、俺だってみんなの役に立ちたい。みんなが外の情報を得られれば、あのクソグマに一泡吹かせることだって出来るかも知れないだろ?』
「でもさぁ…!!」
「ねっと、わーく…」
『まずはそこのお嬢さんに説明しないとダメなようだな…』


アルターエゴは、『自分をネットワークに繋いでほしい』と言うのだ。確かにネットにつなげられれば、外の情報を得られる可能性はぐっと高くなる。しかし…そんなところが本当にあるとは思えないし、なにしろモノクマに見つかった際にどうなるかが予想が付かなかった。
機械でもこいつはもう俺達の仲間だ。そんな大事な仲間を、みすみす死なせるわけにはいかない。…危険な目に合わせるわけには、いかないのだ。
隣でネットワークについて考え込んでいる瑞哉にそれについて説明し終わった後、アルターエゴは再び俺達に説得を試みる。


「でも、ネットワークに繋げられる場所なんてないぞ?それにお前は仲間だ。目の前で『自殺します』って言ってるような奴の提案を呑むわけにはいかない」
『でも、外の情報知りたいんだろ?頼む、繋いでくれ…』
「……レイはネットワークに繋ぐの、賛成。お兄の情報わかるかも知れないし…パソコン、すごく必死に語り掛けてきてる。……ここはパソコンの気持ちを尊重してあげようよ、アンテナ」
「瑞哉、でもさ…」
『片桐がこれ以上仲間を失いたくないのは分かる。だけど、その為に何も行動しないのは違うと思うんだ。どうせここから出るったって、俺は絶対モノクマに見つかってなんかされてしまうんだと思う。
 だったら、何もしないで何かされるより、何かアクションを起こして、あのクソグマにやられたほうがマシさ』
「雨唄…」


雨唄の目は、本気だった。画像だが、機械だが、まるで本当に生きている人間のように、画面上に移る彼の目には意思が写っていた。
ここまでされてしまっては『駄目です』とは言えない。ついに俺は…アルターエゴの提案を呑むことにしたのだった。
だがそこで問題が1つ浮かび上がる。『この学校にネットワークにつなげる場所があるのか』という問題である。


「ネットワークに繋げる場所…。あるとは思えないけど」
『そんなところがあったとしても、あいつ隠してるだろうからな。まずはそこを見つけないことには…』
「……レイ、知ってるかもしれない」
「え?!」


———ふと、瑞哉がそんな声を漏らす。彼女曰く、学校を探索していた時にそれっぽい部屋を見つけたのだという。
信じられない話だったが、信じるしかない。俺は彼女に案内を頼み、アルターエゴをネットワークに繋ぎに行くことにしたのだった。


「どこに…俺のジャケットの中に隠すか」
「アンテナのジャケット、大きめで良かったね」
『———ついたら教えてくれよ。しばらくスリープモードにするからさ』


そんな会話を繰り広げながら、瑞哉の案内でその『場所』に行くことになったのだが…。
瑞哉、いくら抵抗がないとはいえ男子トイレにずかずか入るのはよくないと思うぞ。お婿さんいなくなっちゃうぞ。


———男子トイレの向こうには、隠し部屋があった。隠し部屋には監視カメラがついておらず、机が一つぽつんと置いてある。机の周りには、何かプラグのようなものがたくさんついているが…。
……本当にあったとはな。奇跡って、こういう時に起きるものなのかもしれない。


「ついたぞ。監視カメラもついてないし、大丈夫そうだ」
『そうか。手間かけさせて悪いな』
「すぐにプラグつけるから、ちょっと待っててくれよな」
『やさしくしてね…?』
「余計な勘違いをさせるようなマネはやめろ!!!」
「…………?」


———雨唄、最後の最後にふざけやがって。プラグつけてやんねぇぞ…?
呆れつつも机の中に入っていたプラグの紙らしきものを見ながら、ネットワークにつなぐ準備をする。
瑞哉は、俺のそばでずっとその光景を眺めていたのだった。そして———


「よし、出来た!これで大丈夫だろ。雨唄、ネットワークに行けるか?」
『…………。うん、通り道は出来てる。これなら情報を集められそうだ』
「よかった…。来てよかったね、アンテナ」
「瑞哉、ありがとう」
「………バカ」
『いちゃつくのはそこまでしろー。時間はかかるかもしれないけど…絶対に情報を掴んで戻ってくるよ。俺を信じて待っててくれ』
「背中はお前に預けたぜ。——————『友』よ」


照れる瑞哉と共に、アルターエゴを見守る。暫くして、パソコンの画面上に『ネットワーク接続中』の文字が浮かび上がった。
彼が頑張ってくれることを信じて、俺は瑞哉と共にそれぞれの自室へと戻っていったのだった。