二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 非日常編 ( No.411 )
- 日時: 2015/02/20 21:15
- 名前: 灯焔 ◆/.5aaSlLPY (ID: n/BgqmGu)
「瀬川……おい、瀬川……!!」
「落ち着け鼎野!とりあえず瀬川を降ろすのが先だ!」
「…………」
言葉が出てこなかった。
当たり前だ。昨日まで生きていたあいつが、曲がりなりにも俺達を導いてくれていたあいつが———。
目の前で、死んでるんだぞ。鼎野が叫ぶのも、錯乱するのも当たり前のことじゃないか!!
俺だって普通の状態じゃいられなかった。———ただ、ただ、動かない人形と化した瀬川の亡骸を見ることしか出来なかった…。
棒立ちになっている間にも、寺阪と鷹取が瀬川を縄から解放し、床へと降ろす。
本当に———死んでいるんだな。床へと横たわった瀬川はだらんとしており、生気が感じられない。
瀬川が本当に死んだということを、改めて思い知らされた。
「一体誰が瀬川を…許さない、許さない……!!」
「鼎野!!!」
「———で、これからどうするんだ?このまま捜査っていっても…」
「するしかないよ。ちゃんと事件を解決して、瀬川君を弔ってあげなきゃ」
「あ、ああ……」
アナウンスを聞きつけて、三神と早緑、そして瑞哉がやって来ていた。三神は横たわった瀬川を見て身体の力が抜けたのかへたり込み、早緑は瀬川の隣で涙を流していた。瑞哉は———ちょっとだけ苦しい顔をしていた。
そう、だよな…。波希の言うとおりだ。ここで棒立ちになってたって、何も変化があるわけじゃない。俺達が解決しなきゃ、死んだ瀬川に顔向けができるはずがない。
解決、するんだ。俺達の手で———。
「捜査…しよう」
「片桐さん…」
「ここで悲しむことはいつだって出来る。だけど…なんであいつがこんな目に合わなきゃいけなかったのか、答えを出せるのは今だけなんだよ。俺だって瀬川を殺した犯人を許さない。
あいつは確かに裏切り者だったけど、仲間だった。仲間なんだよ。今までだって俺達に協力してくれてた。もっと裏切り者らしいことも出来るはずなのに———あいつはそれをしなかった。瀬川は俺達を信じていたからだと、俺は思ってる」
「そう…だね。あいたんも瀬川君にいっぱい助けてもらった。だから…今度はあいたん達が苦しんだ瀬川君を助けてあげなきゃね!」
「……レイ、アンテナを信じてる。アンテナなら絶対…間違った選択はしないって」
「みんな…」
みんなも捜査をすることに賛成してくれた。……改めて嬉しかった。こんな緊迫状態の中でも、絆は確かに強くなっているってことを感じられて。
———でも…。『あいつ』はそれを微塵にも砕いて来るのだった。
『ククク、無様だね』
瀬川の死を嘲笑うかのような冷淡な声———。
その声に振り向いてみると、壁にもたれかかって俺達を見ている春白が佇んでいた。
死んだ瀬川を見るその眼は———まるで汚物でも見るようなものだった。俺はそう感じる。
「無様ってなによ!!人が死んでるんだよ?!」
「でもキミ達には好都合なことだったんだよね?だって…今回の殺人は『裏切り者』である瀬川夏樹の死。誰が殺したんだか知らないけど、今回は礼を言っておくよ。ありがとう」
「春白お前——————!!!」
「鼎野!!!よせ!!!」
春白から向けられる俺達への言葉。『裏切り者を殺してくれてありがとう』と。その顔は少しだけ微笑んでいた。今は———その顔が、何よりも怖かった。人の死をこんなにも嘲笑える奴がモノクマ以外にもいたなんて———。
鼎野は瀬川を侮辱されたのが癇に障ったのか、春白のもとへとかけていく。怒っていた。当たり前だ、俺だって今の春白には悪意しか感じない。
「なんだよ?裏切り者を庇ったキミに用はないんだけどね?」
「前言撤回しろ!!!瀬川を侮辱するな!!!」
「なんだい、何を言うかと思えばこの前と同じことを…。キミも学習しないねぇ、脳内サル以下なのかい?
瀬川夏樹は裏切り者。それは揺るぎない事実だろう。そいつが死んだというんだから、むしろ喜ばしいこと——————」
「うるせえっ!!!!!」
『瀬川よりお前のほうがよっぽど裏切り者だよ!!!!!』
ダンッ!!!!!
———春白が長ったらしい嫌味を言い終える前に———あいつは、鼎野は殴った。あいつの右頬を。グーで。
普通なら男が女に手を挙げたということで早緑辺りから「最低です」とか聞こえてきそうなもんだったが———。今はそんなことも言ってられなかった。
鼎野は確実に、春白に怒っていたのだから。
「——————!!…何するんだい?」
「出てけよ」
「今なんて…」
「出てけっつってんだろ!!!人の死を嘲笑う奴に捜査する資格はねえ!!!」
「鼎野…」
そう訴える鼎野の目には涙が溜まっていた。
———鼎野も、瀬川の死を受け入れようとしているんだ。きっと…。だから許せなかったんだ…。
「———フン。こんな事件、解決する気にもなれないね。むしろこっちから願い下げだ、出て行ってやるよ。
やっぱりキミ達といるとイライラしてしょうがない。それじゃあまたね、裁判場で会おうじゃないか」
春白は鼎野を睨んで俺達に吐き捨てた後、スタスタとその場を後にした。
———しばらくの静寂。それを破ったのは……鷹取の「喧嘩してる場合じゃないだろ」という諫めだった。鼎野は思わず謝る。
「そうですよ、喧嘩はなりません!…まぁ、今のは私もちょっとカチンと来てしまいましたが…」
「とにかく捜査を始めよう。あいつに何が起こったのかを…俺達で明かすんだ」
俺達は決意したようにお互いに顔を見合わせる。
颯爽と登場したモノクマから今回の事件のファイルを貰い、今回の捜査を始めることにした。
今回の見張りは、検死役の鼎野と「俺に任せておけ」と胸を張る寺阪が担当することになった。
———瀬川の死の真相を、俺達で明かすんだ!
- Chapter04 〜絶望に咲く一輪の花〜 非日常編 ( No.412 )
- 日時: 2015/02/22 20:56
- 名前: 灯焔 ◆/.5aaSlLPY (ID: yU3pc2AF)
〜美術倉庫 瀬川ノ死体 前〜
「とりあえず…モノクマファイルを見てみるか」
とにもかくにも、解決すると決めたならきっちりやらなきゃな!
俺は素早い手つきでモノクマファイルを開く。今回も事件の被害者の情報が簡単にまとめられていた。
被害者:「超高校級の人形師」瀬川夏樹
死因:圧迫死
死亡時刻:不明
死体発見場所:学校3F 美術室内 美術倉庫
備考:死体は吊り下げられていた。首の痕以外の傷はなし。
『モノクマファイル4』
瀬川の被害状況がまとめられている。今回は『死亡時刻』の欄が不明になっている。
『死体の状況』
瀬川の死体は吊り下げられていた。
あの長ったらしいロープで瀬川の首を絞めたのだろうか…?
死亡時刻が不明、か…。今回も厄介な事件になりそうだな。
もう4回目なのか、みんなの捜査をする目は真剣みを増していっている。仲間の犠牲、それがあったからこそ…俺達は前へ進めているんだということを自覚しなくてはいけない。
とりあえず瀬川の死体の状況について調べないとな。……くそ、だれがこんなことを…。
検死をしている鼎野の邪魔をしないように瀬川に近付く。瀬川はまるで眠っているように…死んでいた。
「俺に首を絞めた痕の判別が出来るわけないしな…。それは鼎野に任せて、ほかに何か気になるものはないか調べてみよう」
…とはいっても、絞められた痕以外の気になる点なんて…。
あれ?ブレザーのポケット、片方おかしい形になってるぞ?恐る恐る近づいて中を漁ってみる。すると……
中からくしゃくしゃになった写真が出てきた。
「写真?」
思わず開き見てみる。
今より幼いイメージ…具体的に言えば小学生くらいの背丈の瀬川と、彼の親であろう水色の髪の男性が笑顔で写っている。
この人が、瀬川の父さんなのかな…?とりあえずメモしておこう。
『家族写真』
小学生くらいの瀬川と、その父親であろう男性が笑顔で写っている。
写真はくしゃくしゃになって瀬川のポケットの中に入っていた。
しばらく写真を見つめていると、ふと寺阪が俺を呼ぶ。
寺阪のほうに行ってみると、彼は不思議そうにロープを見つめている。ロープなんて見つめてどうしたんだろうか…?
瀬川には絞め痕があった。首にもあったものだし、これで絞められたのは間違いなさそうなんだけど…。
そのことを話すと、寺阪は首を横に振ってこう俺に言う。
「いや、そうじゃない。首を絞めるにしては…ロープが長すぎる気がするんだ」
「え?」
「思い出しても見ろ。七花が起こした事件…確か、電気コードで藍川の首を絞めたんだったよな。
今回の事件に使われたであろうロープ…それよりも長い気がするんだ」
「言われてみれば…」
寺阪に言われもう一回じっくりとロープを見つめる。…確かに七花が使ったロープよりも長い。
———このロープ、もしかしたら『殺人だけに使われたものじゃない』のかな…?
『ロープ』
瀬川の殺人に使われたであろうロープ。
前に七花が殺人に使った電気コードよりも長さが長い。
俺がメモし終えると、寺阪はこう続けた。
「あと…これは俺の証言になるんだが、聞いてくれるか?片桐」
「もちろん!事件解決になることなら何でも聞くよ」
「そうか、有難い!実はな…………
俺は昨日、夕飯を瀬川と一緒に食べた。裏切り者だって知ってても…やはりお前の言う通り瀬川は仲間だ。だから、無理やり食堂まで引き連れて一緒に食べたんだ」
「瀬川と一緒に?あいつ、どんな表情をしてたんだ?」
「さすが人形師…俺には判別もつかないくらい普通の表情をしていた。まぁ、俺は他人の表情を読み取るのが得意じゃないから見逃してしまっただけなのかもしれないけどな!!」
「そこ自信満々気に言うことじゃないと思うぞ」
「っははは、片桐にツッコミを食らうとは俺もまだまだだな!!!」
「だから……まぁいいや。それで、その『夕食を食べた時間』って何時くらいなんだ?」
「んん———夜時間が始まるちょっと前に別れたから…。『9時から9時45分まで』は一緒にいたはずだ」
「ありがとう。瀬川は夜時間以降に殺された、んだな…」
「あぁ…」
『寺阪の証言』
昨日、瀬川と一緒に夕食を食べた。
一緒にいた時間は午後の9時から9時45分まで。
「……俺がもうちょっと瀬川を慰めてやれれば…殺されることもなかったのかな」
「自分を責めるなよ、寺阪。起きちゃったのはしょうがないんだ…。俺達に出来るのは、」
「あいつのために事件を解決することだろ?」
「わかってんじゃんか」
「はははっ、単純なことは覚えるのが得意だ!!」
「だから自信満々気に言うことじゃないってば」
寺阪、瀬川のこと信じてたんだもんな…。そんなあいつが死ぬのはつらいはずだ。
でも———乗り越えなくちゃ、俺のためにも、寺阪のためにも、あいつのためにもならない。
そろそろ鼎野の検死も終わりそうだし、それまでにもう少し部屋の情報をまとめてみるか…。
そう思い、寺阪と軽く会話を交わしその場を後にした。