二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.31 )
日時: 2015/01/07 12:43
名前: 諸星銀佳 (ID: checJY8/)


§第四章 束の間の安息§

「何故ですか!納得できません!」
マキは早々にサカキの部屋へ言った。
「無理も無い…だが、向こうの言い分も正しいだろう?ロミオ君が命の危険に晒されたのは確かだが、それは彼が飛び出していったからだろう」
「しかし、それは神機兵が止まったから仕方なくだ!止まっていなかったらロミオはそんな風にしなかっただろう。すなわち、その責任はラケルにある…」
「マキ君」
彼女の言葉を遮るようにサカキが言葉を被せ、首を横に振った。
「一年だ。それまでに今以上にラケル博士に対抗できるだけの知恵と力を手に入れなさい。協力は惜しまないからね」
黙り込むしかなかった。

ラウンジに行くと、ロミオの血の力覚醒を祝うための食事が所狭しと並んでいた。
「あ、ブラッドの副隊長さん!探してたんだよ!ムツミ、頑張りすぎちゃったみたい!沢山あるから冷めないうちに食べてね」
ニコニコとムツミが食事を勧めてきた。マキは軽く返事をし、人が少ない窓際の席へと腰掛けた。辺りを見回すと、ロミオを中心に賑やかな会食となっている。第一部隊やクレイドルも一緒だ。
視界の隅に人影が映った。テーブルの上に取り分けた食事とグラスを置いた。
「お疲れ様でした」
シエルだった。

事の一切をシエルに話すと、彼女は驚きこそ見せたが慌てる様子は無かった。
「そうなんですか…君が大変なときに何も出来なくて…ごめんなさい」
「シエルは何もしていない。私たちが不在の間、ブラッドを護ってくれてありがとう」
「いえ…」
気まずそうに、下を向くシエル。
「まぁ…暫くまた任せることになるな」
「どういう…事でしょうか」
「またというか、いつもシエルに任せてるか…いや、うん…言いにくいんだけどな。私は数日懲罰房処分だ。心配するな。博士とは離れたところだ…盗聴したんだ。妥当な処分だ。何日になるかは分からないが…臨時の副隊長として、宜しく頼む」
シエルは悲しげな表情を浮かべた。申し訳なくなって頭を軽く叩く。なんとか話題を切り替えようと、彼女が運んできた食事を口に運びながら考える。そしてやっと出た話題がこうだった。
「ロミオも血の力が覚醒したことだし、より戦局が優位になったな。お前たちの力を合わせれば、無敵だな」
「君も…必要です」
それ以上会話が続けられなくなって——実際には続けたら彼女を傷つけると思って——、マキは食事を掻き込んだ。ごちそうさま、と彼女に告げてその場を去った。

程なくしてマキは懲罰房に入った。その間はマキが頼んでいた戦術理論の本をサカキに運んでもらい、熟読した。難しかったが、今まで経験してきた戦場の風景を思い出しそれに当て嵌めて考えていくと納得できた。また筋力が衰えないように筋トレをしたりもした。
それと同時に、彼女は考えていた。

『お前たちの力を合わせれば、無敵だな』

そう言った自分。ジュリウスの「統制」——味方をバースト状態にし、チームの攻撃力上昇を図る——。シエルの「直覚」——敵情報をいち早く伝えるだけでなく、分断している仲間の敵情報をも知れる——。ギルバートの「鼓吹」——一時的に攻撃力上昇——。これにジュリウスの力が加わればどうだろう。圧倒的な力になる。また、ナナの「誘引」——自分を犠牲にする代わりに他のメンバーの攻撃力と防御力上昇——。そんなナナが危なくなったら、ロミオの「離散」だ。
それに比べて自分の力は「喚起」——戦闘中に効果はないものの、他の神機使いと親しみあううちに相手の潜在能力を覚醒させるという能力——。血の力が覚醒しているブラッドに必要な力だろうか。いずれ第一部隊やクレイドル、防衛班の面々に力を授けて欲しい、という名目で使うぐらいだ。今まで彼らの血の力の覚醒を助けてきたとはいえ、戦闘中はなんら使えない力だ。
「私は…ブラッドに、必要なんだろうか…」
そう思っていたから、シエルに「君も必要」と言われた後に言葉を続けられなかった。
皆を護る。そう思っていたのに、もう、必要ないのかもしれない。ラケルから護れればいいのかもしれない。

考えれば考えるほどやるせなくなって、マキは全てを投げ出して布団にもぐった。