二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.32 )
- 日時: 2015/01/09 22:12
- 名前: 諸星銀佳 (ID: checJY8/)
§番外編 副隊長の見た夢§
——夢か現か幻か。
よく分からない世界にいると感じるときがある。夢にしてはあまりにも現実味を帯びていたり、夢と分かっても見ている間はそれが現実だと思っていたり。
そんな世界に、私は放りこまれた——
見たことの無い乗り物を全力で動かしている。車にも似たタイヤが前後に一つずつ付き、握っているグリップで進行方向を体重移動で決めたり、車でいうブレーキのような役割を果たしている。マキはその乗り物の後ろに見たことも無い女性——お嬢様というべきか——を乗せていた。顔は朧げでよく見えないが、服装からするとどこかのお金持ち、と言った感じだろうか。
「くそっ、なんて速さなんだっ」
アラガミに食われる前であろう風景がマキの横を通り過ぎていく。建物は林立し、生活感が漂っている。彼女が全力で駆け抜けている道の斜め下には川が流れている。
「撒かないとっ…!」
マキは思い切り曲がり、路地裏に入った。すると、見覚えのある人が立っていた。
「シエル…?」
シエル特に何を言うわけでもなくそこに立っていた。ただ一ついつもと違う点を上げるとすれば、手になにか白い塊を持っていたことだ。マキは止まろうと思ったが、いかんせん追われている身だ。後ろに乗せているお嬢様、を追っ手に渡すわけには行かない。
マキがシエルの前を通り過ぎようとしたときだった。シエルはタイミングよく白い塊を乗り物についた籠に投げ入れた。
「…?」
少し速度を落としつつ、その塊を手に取った。どうやら、紙のようである。くしゃくしゃに丸められていた。広げると、地図のようなものが書き記されている。
——此処に行けということか…?
マキは記された場所に向かうことにした。
追っ手を何とかかわし、一息ついたマキ。
「ここまで来れば…大丈夫…だろ…」
後ろに乗っているお嬢様、にも声をかける。なんとか平気のようだ。マキの横を沢山の人が通りすぎていく。車が行き交い、見たことも無い三色の光が一定時間で点滅を繰り返していく。
アラガミに食われる前の世界はこのような感じだったのかと思いながら、荒くなった呼吸を整えていたときだった。急に悪寒を感じた。
辺りを見回すと、物陰から見覚えのある人物が姿を現した。
帽子を目深に被り、片まで髪を伸ばし、紫をあしらった服を着た「彼」。
「——ギル…!」
ギルバートはこちらに気付き、再び動き出した。彼もまた、マキと同じ乗り物に乗っている。
「くそっ、もう追いついたかっ」
マキは進行方向を急転換させ、来た道を戻っていく——と言っても、先程来た道とは川を挟んだ向こう側だが——。
マキとギルバードはお互いに全力で逃げ、追っていく。時には坂を、時には広場を駆け抜けていった。
だが、差はみるみる縮まっていく。当然だ。まずは女子と男子の差。これだけでも十分大きいのにも関わらず、マキは後ろに見知らぬ女性を乗せている。此処まで逃げてきただけでも奇跡と言うべきだろう。程なくしてマキは捕まった。
「待て…ギルっ!」
荒い息の中でマキは彼を止めようと懇願した。しかし、彼は振り向きもせず、乗せていたお嬢様だけを連れ去っていった。彼女は嫌がっていたが。強引に連れ去られてしまった。
「どうして…ばれた…?姿は…見えなかった筈…」
マキは倒れた乗り物の籠に入った紙を拾い上げた。するとそこにはなにか小さなものが付いていた。
「GPS!?」
普段は、オペレーターが位置情報を確認するためにつけているぐらいだろうか。それ以外では見たことが無い。
「くそっ…くそっ…」
まだ整わない息の中、マキはただ只管に悔しがっていた。
「!?」
目の前にはいつもの天井が広がっていた。息は若干荒い。それが夢だと気付くのに時間はかからなかった。
「夢…か…」
それにしても奇妙な夢だった。なんだかどっと疲れたマキ。今日は特にミッションが無かったのが幸いだ。ゆっくりとラウンジへ向かった。
「遅かったな副隊長」
そこにはムツミから食事を受け取るギルバートの姿があった。彼はマキのげっそりとした顔に何か違和感を覚えた。
「なんかあったのか?」
「いや…少し、変な夢を見ただけだ」
「夢?」
ギルバートの隣に座り、ムツミに軽く何か作ってくれ、とオーダーする。
「どんな夢だったんだ?」
マキはなんだか可笑しくなって一人で笑った。ギルバートはさっぱり分からないといった様子だったが、この後のマキの一言で驚いた彼の顔を彼女は一生忘れないだろう。
「お前を、一瞬嫌いになりかけた夢だよ」
——そんな夢を見たんだ。
※この話は執筆者である私が見た夢を参考に描きました。あやふやな部分もありますが、この夢を見て私が本当に一瞬ギルを嫌いになりかけたのは内緒です。※